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NTTドコモ 先進技術研究所 赤塚です。この記事では、当日の人出から午後の渋滞を予測し、交通分散を促す、サイバーフィジカル融合の取り組みであるAI渋滞予知を紹介します。

とはいったものの、AI渋滞予知については、ドコモR&Dの広報誌 テクニカル・ジャーナルに詳しくまとめたのでそちらをご覧ください。

この記事では、AI渋滞予知が従来の渋滞予測技術とどう違うのかについて触れたいと思います。

渋滞による経済損失は日本だけでも年間10兆円規模になると試算されており、ハード/ソフトの両面から様々な対策が進められてきました。その中でも、将来の渋滞を予測することは、予測情報を配信することで交通分散を促すなど、ソフト的な対策において重要となるため、数多くの研究が進められています。

従来の渋滞予測技術

従来の渋滞予測技術は、「どんなデータを使って渋滞を予測するか」という観点から、例えば下記の2種類に分けることができます。 1.道路に設置されたセンサから得られるデータ 2.プローブカーデータ

道路設置センサ

道路に設置したトラフィックカウンターという機器から得られるデータや、カメラ映像の解析結果などから、道路上を走行する車両の台数や平均速度を算出し、それをもとに渋滞を予測します。道路に設置されたセンサから得られるデータを使用するのは、下記のメリット、デメリットがあります。
  • メリット:非常に細かく正確なデータが得られる
  • デメリット:設置した場所に関してしか得られない

得られた台数や速度からどのように渋滞を予測するのかには、統計ベース、交通パターンベース、交通理論ベース、機械学習ベースなど様々な手法があり、歴史も長いです。

プローブカーデータ

最近話題のビッグデータというやつで、1台1台の車両(のカーナビなど)に内蔵されたGPSセンサから得られる、車両の速度などのデータをもとに渋滞を予測します。このデータを使用するのは、下記のメリット、デメリットがあります。
  • メリット:規模・範囲が非常に大きなデータを得られる
  • デメリット:センサを搭載した車両のデータのみなので交通量などは正確ではない

道路センサが設置された道路だけではなく、プローブカーデータが走行したあらゆる道路区間についてのデータが得られ、それをもとに渋滞を予測します。ただ、車両やカーナビのメーカー各社がバラバラにデータを持っているため、プローブカーデータだけから、道路を走行する車両の台数などを知りたい場合、その手法自体が研究対象になります。

従来手法の課題

従来の渋滞予測手法で用いられている道路設置センサから得られるデータや、プローブカーデータは、何れも「現在走行中の車両」についてのデータしか得られません。今はエンジンが切れていても、将来的に走行状態になる車両のデータは得られません。そのため、予測する未来が先になればなるほど精度が劣化します。

AI渋滞予知

AI渋滞予知は、渋滞のそもそもの原因である「人」に着目することで、現在走行状態にない車両が未来の交通状態に及ぼす影響までを加味して渋滞を予測します。手法の中身自体は過去の人口と渋滞のデータから、「人口から渋滞を予測するモデル」をつくるという、一般的な機械学習です。

ですが、現在走行状態にない車両の影響までを加味したモデルを作成することができるため、お昼時点の人口の分布から、その日の午後の交通状況(何時に帰れば何時に目的地に着くか)を高精度に予測することができます。「お昼時点」で午後の交通情報を知ることができるので、観光地に来ている人が「もう帰ろうか、もう少し遊んでいくか」という意思決定に活用することができ、交通分散や滞在先の経済活性化(一般的に遅くまで滞在した方が渋滞は避けられる)などの効果が期待できます。

ということで、テクニカル・ジャーナルをご覧ください。

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