特許図面の出発点は白紙ではなく、手元にすでにある素材です。ECサイト用の製品写真、試作前に描いたスケッチ、設計担当者のCADスクリーンショット。三種類とも PatentFig AI の生成ページにそのまま投入して線画にできますが、転び方がそれぞれ違います。写真は背景・反射・遠近の歪みを持ち込み、内部構造は原理的に写せません。スケッチは描いていない細部が一切出ず、複数ビュー間で縮尺が食い違います。CADスクショは情報過剰で、レンダリングの陰影やネジ山がそのまま線のノイズになります。
入力選びを間違えても図は作れますが、直しの回数が大きく変わります。この記事では、三種類の入力の使い分け早見表、素材ごとの準備のコツと失敗の直し方、そしてコピーしてすぐ使えるプロンプトを三つ紹介します。

外装が主役の製品なら、写真からの外観図生成が三つのルートで最速です。
早見表:どの入力をどの発明に使うか
| 入力 | 向いている発明 | 強み | よくある直し |
|---|---|---|---|
| 製品写真 | 外装・造形が主役の完成品。改良点が外から見える場合 | 準備ゼロで外形輪郭が一発で出る | 背景除去、反射処理、正投影への変換。内部構造は写せない |
| 手描きスケッチ | 機構の改良。試作前・製品未確定の初期段階 | すべての線が意図的で、構造の伝達が最も正確 | 細部の追加、ビュー間の縮尺統一 |
| CADスクショ | 設計データを持つチーム。寸法・嵌合が重要な構造 | 比率・穴位置・クリアランスが正確 | 陰影除去、ネジ山の簡略化、無関係な内部部品の非表示 |
一行でまとめれば、外観は写真、機構はスケッチ、幾何学的正確さはCAD。発明のポイントがどこにあるかで、それを一番よく見せられる入力から始めます。
写真:撮り方のコツと、写真では取り返せないもの
撮影時に四つ守ると、後の指示が半分で済みます。製品に正対して撮る。離れて撮り、広角を避ける。背景は無地にする。演出照明を切る。ECサイト用の斜め45度+小物あり、という凝った写真ほど素材としては扱いにくく、小物の輪郭が製品の一部として線画に混入します。
よくある失敗と直し方:
- 背景の混入:チャットで「背景を除去して製品本体だけ残す」と指示し、その図だけ再生成。写真ルートでは毎回やる標準作業と考えてください。
- 反射が謎の輪郭線になる:金属シャフトや光沢面への映り込みは、白い帯や幽霊のような線として現れます。反射部分を単純な素面として扱うよう指示します。
- 遠近の歪み:スマホ写真の「側面図」は実際には斜め図です。正投影の正面図・側面図を明示的に要求します。
- 手や物での遮蔽:デモ写真で手が隠している構造は復元できません。プロンプトでは直せないので、素材を差し替えます。
そして原理的な限界がひとつ。写真から断面図は作れません。カメラはグリップの内部を写せないからです。内部構造はスケッチか構造図で補い、写真には外観図だけを担当させます。
スケッチ:下手でいい、構造が正しければ
スケッチの価値は取捨選択が済んでいることです。写真とCADは情報を無差別に持ち込みますが、スケッチの線は全部、描いた人が必要だと判断した線です。ラチェットの爪とスプリングの掛かり方を描いたなら、それは図に出したいからです。機構系の発明では、この可控性が線のきれいさよりはるかに重要です。
描くときに優先するのは三つ。改良点の構造関係(部品の掛かり方、断面)を正しく描く。部品の横に名称か符号を添える。複数ビューはなるべく同じ縮尺で描く。
弱点も明確です。描いていないものは一切出てきません。二枚のスケッチで縮尺が食い違えば、生成されたビューも食い違います。直し方は、スケッチ由来の図をまず構造の骨格として扱い、部品の位置関係が正しいことを確認してから、チャット指示で細部を一つずつ追加すること。一段階ごとにバージョンを保存しておけば、崩れても前の版に戻すだけです。
CADスクショ:引き算が先、足し算は後
キャプチャ前にできる準備があります。正投影ビューで撮る。ワイヤーフレームか線表示モードがあれば切り替える。無関係な内部部品はCAD側で非表示にしてから撮る。設計担当者に頼めるなら、レンダリングを切った線ビューでの再キャプチャが根本解決です。
それでも初回の変換は大抵うるさくなります。グラデーションは細かいハッチングに、ネジ山は同心円の群れに化けます。特許図面に求められるのは、縮小複製に耐える明瞭な黒の実線で、陰影は形状の理解を助ける場合にだけ使うもの。レンダリングの豊かさはほぼ逆方向です。
作業は必ずこの順で。陰影を落とす、ネジ山を慣用的な略記に置き換える、請求項に関係しない内部部品を隠す。図面が静かになってから、曲面の理解に本当に必要な箇所にだけ陰影線や断面線を戻します。この段階では図ごとの個別再生成が効きます。繰り返し調整が要るのは通常一、二枚だけで、全図を回し直すのは整った図の無駄打ちです。

引き算が終わったCAD由来の線画。残す線を選ぶのは静かになってからです。
プロンプト例:同じ精密ドライバーを三通りの入力で
トルク調整機構付き精密ドライバーを例にします。改良点はグリップ内部のラチェット機構。三つともコピーしてそのまま書き換えて使えます。
例1:写真 → 線画
この精密ドライバーの製品写真を特許線画に変換してください。背景と小物をすべて除去し、製品本体のみ残す。金属シャフトとクロムリングの映り込みは輪郭線として描かず、単純な円筒面として扱う。正投影の側面図として出力:白背景に黒の実線、グレースケール陰影なし。グリップに10、目盛りリングに12、シャフトに14、ビットホルダーに16の符号を細い引出線付きで付ける。
例2:スケッチ → 整った多面図(悪いプロンプト vs 良いプロンプト)
悪いプロンプト:
このスケッチを特許図面にしてください。
これでは意図をツールが推測することになり、外れた分がすべて手戻りになります。良いプロンプトは、構造の意図・ビュー・符号のルールまで指定します:
この手描きスケッチは精密ドライバーのラチェット機構です。爪とスプリングの掛かり方は描いたとおりに必ず保持してください。線を整え、縮尺を統一し、正面図とA-A断面図の二枚を出力。断面は細い平行斜線でハッチング。爪に20、スプリングに22、トルク調整リングに24の符号を付け、二枚の図で同じ部品には同じ符号を使う。黒の実線のみ、陰影なし。
例3:CADスクショ → 簡略化した線画
この精密ドライバーのCAD正投影スクリーンショットを特許線画に変換してください。レンダリングの陰影・グラデーション・材質ハイライトをすべて除去。ネジ山は慣用的な略記に簡略化。ラチェット機構に関係しない内部部品は非表示に。グリップ内部の機構断面は保持し、細い平行斜線でハッチング。すべての線は縮小しても判読できる黒の実線とし、陰影線は曲面の理解に必要な箇所のみ残す。
混ぜて使う:大半の製品は中間にある
一種類の入力で全図を賄えるのは両極端の場合だけです。純粋な外観製品なら写真だけで足り、完全なCADがある純機構改良ならスクショだけで足ります。大半の製品はその中間にあり、図ごとに入力を割り当てるほうが早く終わります。
- 外観図は写真から。背景除去と正投影変換を一式に適用。
- 発明のポイントである機構図はスケッチから。構造の表現を人が制御。
- 寸法が重要な図はCADスクショから。引き算を済ませてから使う。
出所が三つあるということは、符号がずれる機会も三倍あるということです。図1で12だった部品が図4で21になる類のミスは複数ソース運用の定番なので、組み上げ後に必ず全図で符号を照合します。
意匠出願なら前提が変わる
意匠は物品の外観そのものが保護対象なので、外装を正確に写し取れる写真・CAD由来の図が有力になります。ただし意匠図面には特許と別の作法があり、六面図の揃え方や線種の使い分けは JPO の意匠登録出願の願書及び図面の記載ガイドラインに沿って確認が必要です。特許用に整えた図をそのまま流用できるとは考えないほうが安全です。内部機構が中心の特許・実用新案なら、スケッチ由来の断面図が主図、写真由来の外観図は従属的な位置づけになります。
提出前チェック
- 余白は提出先の要件を満たしているか。
- 線の太さは均一で、縮小複製に耐えるか。
- 符号は全図で一致しているか。
- 明細書に出てくる符号がすべて図にあるか。
- 図の中に背景・小物・余計な文字が残っていないか。
一式を組み上げたら Figure Checker で形式面を先に潰せます。手元確認用の提出前チェックリスト(PDF)はリソースページからダウンロードできます。国際出願の可能性がある案件なら、原版の段階から PCT Rule 11 の作法に寄せておくと、国内移行時に図を作り直さずに済みます。
FAQ
スマホで撮った写真でも足りますか?
足ります。条件は、正対して撮る・背景を無地にする・改良点を隠さない、の三つ。遠近の歪みは生成時に正投影を要求すれば直せますが、撮影時に離れて望遠側で撮っておくと直しが一回減ります。
CADがなくても断面図は作れますか?
作れます。断面図に必要なのは構造関係の正しさで、レンダリング級の精度ではありません。部品の位置と掛かり方を正しく描いた断面の下描きを用意し、切断位置を示して、断面図の作法で出力するよう指示すれば十分です。
三種類の入力から作った図を一つの出願に混ぜていいですか?
問題ありません。むしろそれが普通です。条件は組み上げ後の統一作業で、線のスタイル・ビューの作法・符号を揃えること。どの図がどの素材由来か見分けがつかない状態が目標です。
スケッチが下手だと生成品質に響きますか?
線の歪みは問題になりません。問題になるのは構造の誤りです。部品の位置関係と掛かり方さえ正しければ、縮尺や見た目は生成とチャット修正の段階で解決できます。
生成された図はあくまで初稿です。発明のポイントが正しく描けているか、ビューを足すべきかの判断は、出願人と代理人の仕事として残ります。入り口はこちら:patentfig.ai/ja/generate。写真もスケッチもCADスクショも、そのまま投入できます。