ロボットや精密電子機器の出願でよくある失敗は、CADから書き出した美しい等角投影図をそのまま特許図面として提出しようとすることです。等角図は製品の見栄えは伝えますが、請求項の核心——リンクの本数、関節の自由度、腔内の配線経路、基板の積層関係——はほとんど読み取れません。
正しい順番は、請求項が何を主張しているか(機構の幾何か、内部構造か、システム構成か、方法か)を先に確認し、そこから図の種類を決めることです。この記事では、発明のタイプと図面の対応表、4つの具体例とそのまま使えるプロンプトをまとめます。プロンプトは PatentFig AI の図面生成ページにそのまま貼り付けられます。

特許図面の役割は製品を格好よく見せることではなく、請求項の内容を示すことです。
早見表:発明のタイプ × 必要な図面
| 請求項が主張するもの | 必須の図面 | 補正で追加を求められやすい図 |
|---|---|---|
| リンク・カム等の機構の幾何 | 骨格図(線と丸)+動作の連続図 | 動作範囲を示す図;矢印による回転方向 |
| 関節・駆動部の内部構造 | 全体図+切断線を対応させた断面図 | 全体図上の切断線(A-A)の記入 |
| 基板・コネクタ・放熱の積層構造 | 分解斜視図+積層方向の断面図 | 組立状態の図 |
| 制御システムの構成 | ブロック図 | 明細書と一致した名称への修正 |
| 制御方法・判定処理 | フローチャート | 判断分岐の「はい/いいえ」の補完 |
図番の連続性や「図面の簡単な説明」との一致といった形式面は、JPOの方式審査で見られる項目です。JPOの出願書式のFAQを一度通読しておくと迷いが減ります。
なお、ロボットの外観そのものを守りたい場合は特許ではなく意匠の話になり、図面の作法も別物です。JPOの意匠図面ガイドラインに沿って、特許用とは完全に別のセットとして作ります。
例1:グリッパーのリンク機構——線と丸だけの骨格図
関節が何軸あって、各軸がどの方向に回るのか。これを伝えるのに一番確実なのは、リンクを一本の線、関節を丸や円筒の記号で描いた骨格図に、回転方向の矢印を添えたものです。写実的な斜視図は、全体構成の把握用に一枚あれば十分です。
平行リンクやカム機構のように動きの幾何が発明そのものである場合は、初期位置と作動後の位置を並べた連続図か、二点鎖線による仮想線表示で動作範囲を示します。どちらにするかはセット内で統一します。図3〜5は連続図、図6だけ仮想線、という混在は読む側の負担になるだけです。

骨格図はCADの見栄えとは無縁ですが、機構の主張はこの描き方が一番読みやすくなります。
プロンプト:
添付のCADスクリーンショットをもとに、平行リンク式グリッパーの特許図面を生成してください。図1は機構の骨格図:リンクを実線1本、関節を小円で表し、各リンクに符号10〜16、各関節に符号20〜26を付す。回転方向を矢印で示す。図2と図3は同じ骨格図の初期位置と把持位置の連続図で、符号は両図で共通。白黒線画、グレー塗りなし。
例2:関節の内部構造——切断線と対応させた断面図
中空軸の内側にケーブルを通す構成のように、内部構造が請求項に絡む場合、断面図なしで文章だけで説明するのはほぼ無理です。ロボットの関節断面で審査官が追いたいのは、だいたい三つに集約されます。減速機構の配置、軸受による支持構造、配線・チューブの通り道。
作法は機械図面と同じです。全体図に切断線(A-A)を入れ、断面図の図番と対応させ、ハッチングは部品ごとに描き分ける。切断線が抜けると、審査官がどこを切った断面か推測することになります。
プロンプト:
ロボット関節の特許断面図を生成してください。図4は関節部の外観図に切断線A-Aを記入したもの。図5はA-A断面図:中空軸30、その内側を通るケーブル32、減速機構40、軸受50・52の配置を示す。部品ごとにハッチングの向きを変えて隣接部品を区別する。符号は引出線で部品の外側に配置。白黒線画。
例3:精密電子の積層構造——分解斜視図+組立断面
コネクタの嵌合部や放熱構造では、基板とヒートシンクの間に何が挟まっているかは断面でしか示せません。基板の積層構造やシールドケースの重なりが発明に効くなら、分解斜視図に積層方向の断面を添えます。
分解斜視図についてはひとつだけ注意があります。分解図単体で出すと、組み付いた状態でどの部品がどこに収まるのかが読めません。組立状態の図と対にして、両方で同じ符号を使う。これだけで審査官の読解コストが目に見えて下がります。
プロンプト:
基板モジュールの特許図面を2枚生成してください。図6は分解斜視図:シールドケース、基板、放熱シート、ヒートシンクを積層方向に展開し、符号60〜66を付す。図7は組立状態の積層断面図:基板とヒートシンクの間に放熱シートが挟まれる位置関係を示す。両図で同一部品には同一符号を使用。白黒線画、グレー塗りなし。
例4:制御システム——ブロック図は名称の統一が第一
モータドライバ、エンコーダ、制御部。ブロック図で一番多い手戻りは、図中の名称と明細書の名称が一語だけ違う、というものです。図では「駆動制御部」、明細書では「モータ制御部」と書いてあると、審査官は対応関係の確認で足止めされ、拒絶理由の中で指摘されれば補正の手間になります。
対策は単純で、符号と名称の対応表を最初に作り、図も明細書もその表から引くことです。制御方法の請求項がある場合は、同じ表を使ってフローチャートも起こします。
プロンプト:
以下の構成説明から特許用ブロック図を生成してください。制御装置100は、エンコーダ110とトルクセンサ120からの信号を受ける状態推定部130と、状態推定部130の出力に基づいて指令値を生成する駆動制御部140と、指令値に従ってモータを駆動するモータドライバ150とを備える。各ブロックは矩形、信号の流れは矢印付き実線。ブロック内の名称は「状態推定部」「駆動制御部」の表記で統一する。白黒線画。
素材からの起こし方
どの素材からどの図を起こすかは、ほぼ固定のルートがあります。
- CADがあるなら、断面図と分解図はCADのスクリーンショットから;
- 実機しかないなら、写真から外観の線図へ;
- ブロック図と骨格図は、仕様書やシステム構成の文章から直接起こすほうが速くて正確です。画像から起こそうとすると遠回りになります。
PatentFig AI で線図の母版を作ったあとは、チャットで「符号12を筐体の外に出して」のように指示して直せます。気に入らない一枚だけを再生成できるので、図面枚数が多くなりがちなロボット案件でも、セット全体を崩さずに済みます。
提出前チェックリスト
- 符号を図から明細書へ、明細書から図へと双方向で照合したか;
- 図番が連続していて「図面の簡単な説明」と一致しているか;
- 断面図の切断線が全体図に記入されているか;
- 分解図に組立状態の図が対になっているか;
- 動作表現(連続図か仮想線か)がセット内で統一されているか;
- 図中の文字は理解に本当に必要な最小限だけか。
PCTに進む可能性がある案件なら、WIPOのPCT規則11を図面側の基準線にしておくと、国内移行後の作り直しが減ります。各庁の形式要件の違いはPatentFigの庁別スタンダードのページを速見表代わりにし、余白や符号の突き合わせのような機械的なチェックはFigure Checkerに流し、法域固有の判断は弁理士に任せます。確認項目そのものは、登録不要で配布されている提出前チェックリストが下敷きにできます。日英中韓の四言語版があるので、外国出願の案件でも同じリストで回せます。
FAQ
CADの等角投影図をそのまま特許図面として使えますか?
そのままでは使えません。特許図面は白黒線画が基本で、等角図では機構の幾何や内部構造が読み取れないためです。等角図は素材としては優秀で、全体構成の把握用に線画へ変換した一枚を図1に残すのが定番です。
一件の出願に図面は何枚必要ですか?
決まった枚数はありません。実務的な基準は、独立請求項に書いた構造・機構・ステップのすべてを、どれかの図で指し示せるかどうかです。指し示せない特徴があれば、その分の図が足りていません。出願後に図を足すと、当初明細書の範囲内かという論点を抱えることになります。
ロボットの外観デザインも同じ図面で守れますか?
守れません。外観は意匠出願の領域で、各方向の図の投影関係が厳密に対応している必要があり、内部構造は描きません。特許用と意匠用は最初から別セットとして作ります。
実機の写真しかない場合、内部構造の図は作れますか?
外観の線図は写真から起こせますが、断面は写真からは出てきません。CADを用意するか、実測とシステム構成の文章から生成するかのどちらかです。
CADのスクリーンショットや実機写真が手元にあるなら、入り口はここです:patentfig.ai/generate
本記事は実務情報の共有であり、法的助言ではありません。実際の出願は最新の公式規則と弁理士の判断に従ってください。