特許図面の外注判断が難しいのは、比較できる数字が「1枚あたりの料金」しかないからです。ところが予算と出願日を実際に左右するのは別の要素です。修正が何往復まで含まれるかという契約条項、一往復に何日かかるか、期限が動かせないときの作図待ち行列、そして出願前の発明内容を何人が知ることになるかという秘密保持の連鎖。どれも見積書には載りません。
典型的な失敗はこうです。単価だけ比べて依頼し、上がってきた図面の符号が明細書と食い違い、修正指示は事務所経由の伝言で数日ずつかかり、二往復が終わる頃には予定していた出願日を過ぎている。
この記事では、判断基準表、見積書に載らない4層のコスト、外注前に確認すべき質問リスト、そして「下書きはソフト、勝負の1枚は人」というハイブリッド運用を順に整理します。ソフト側で何ができるかを先に見たい場合は、PatentFig AI の生成画面に製品写真を1枚入れてみるのが早道です。

外注判断を左右する情報の大半は見積書の外にあります。修正条項・往復日数・待ち行列・秘密保持の連鎖です。
早見表:どちらに任せるか
| 場面 | 推奨ルート | 理由 |
|---|---|---|
| 意匠出願で曲面の陰影表現が要る製品 | 作図者に依頼 | 陰影線の入れ方が保護対象の見え方を左右する。経験の領域 |
| 審判・訴訟で使う説明図 | 作図者に依頼 | 読み手は審判官・裁判官。図の完成度そのものが説得力になる |
| 事務所と作図者の連携が長年で確立済み | 外注を維持し、下書きにソフトを併用 | テンプレート・符号の癖・戻しのリズムが擦り合わせ済み。その流れ自体が資産 |
| 試作のたびに構造が変わる開発案件 | ソフト | 設計変更のたびに課金往復が発生する。ソフトなら再生成で済む |
| 出願期限が迫った案件 | ソフト | 待ち行列も修正往復も圧縮できない。ソフトは往復を分単位にする |
| 発明者自身が説明用の図を用意する場合 | ソフト | 必要なのは符号の揃った線画と、気兼ねなく直せる自由 |
「常にこちら」という行は一つもありません。同じ出願の中で、大半の図はソフト、難しい1〜2枚だけ人に、という分担はごく普通の組み合わせです。意匠の陰影がどれほど繊細な領域かは、JPOの意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きを一度通読すると実感できます。
見積書に載らない4層のコスト
1. 修正往復の契約条項
何往復までが料金に含まれ、超えたらどう計算されるのか。契約書で最初に確認すべき条項です。図面は明細書との突き合わせで必ず手が入るので、無償枠を超えた修正が実際の支出を見積から引き離します。この層だけは、依頼前に質問すれば確定できます。
2. 一往復の日数
発明者・弁理士・作図者は直列につながっています。ハッチングの向きを直すだけの一分仕事でも、指示が伝わり図が戻るまで数日単位。修正指示は文章での伝言になるため、意図がずれれば同じ数日がもう一度発生します。
3. 期限リスク
出願日が動かせないとき、作図者の待ち行列も残りの修正往復も圧縮できません。期限の一週間前に二往復残っている状況が、外注ルートで最も高くつく場面です。そしてこの項目は、どの見積書にも載っていません。
4. 秘密保持の連鎖
出願前の発明内容を知る人が一人増えるごとに、締結・管理し、後日のデューデリジェンスで説明すべき契約が一つ増えます。企業の知財部門はこのコストに早くから敏感ですが、個人の発明者は契約書に判を押す段になって初めて気づくことが多いところです。
外注前に確認する質問リスト
- 修正は何往復まで料金に含まれるか。超過分の計算方法は。
- 一往復に平均何日かかるか。急ぎ対応はあるか。
- 修正指示は誰が伝えるか。発明者が作図者と直接やり取りできるか。
- 元データは誰のものか。編集可能なベクター・CADデータは納品に含まれるか。分割出願や事務所変更の際に受け取れるか。
- 秘密保持契約は誰までカバーするか。再委託はあるか。
- 納品物と出願先庁の図面要件との照合は誰の責任か。
いちばん抜けやすいのが「元データの帰属」です。編集できない完成図しか受け取っていないと、以後の修正はすべて元の作図者の待ち行列に縛られます。
ハイブリッド運用:下書きはソフト、勝負の1枚は人
安定するのは二段構えです。まずソフトで製品説明や写真から全図の下書きを生成します。正面図・側面図・平面図・斜視図・断面図。弁理士に幾何と符号が明細書と整合しているかを確認してもらいます。そのうえで、本当に難しい1〜2枚、たいていは陰影付きの斜視図だけを、確定済みの線画データを添えて作図者に渡します。解釈の揺れという修正往復の燃料が消えるので、戻しはほぼ一回で収まり、外部に開示する範囲もその図の形状だけに絞られます。
PatentFig AI に渡す下書き用プロンプトは、このくらい具体的に書きます。
次の製品説明から特許図面の下書き一式を生成してください。卓上加湿器:上部に取り外し可能な水タンク、ベース内部に霧化モジュール、側面にミスト量調節つまみを備える。出力は5枚:正面図、側面図、平面図、斜視図、A-A線に沿った断面図。すべて白黒の線画とし、グレーの塗りつぶしは使わない。主要部品には引出線と符号を付け(水タンク10、霧化モジュール20、調節つまみ30、ベース40)、同じ部品にはすべての図で同じ符号を使う。日本出願(JPO)の図面慣行に沿った線の太さと符号配置とする。
気に入らない図はその1枚だけ再生成でき、以前の版はバージョン履歴に残ります。

ソフトで出した多視点の下書き。幾何と符号を確定させてから、人に磨いてもらう図を選びます。
提出前チェック
図面を誰が描いたかにかかわらず、事務所に渡す前にここを確認します。
- 各符号が、すべての図と明細書で同じ部品を指しているか
- 断面図の切断位置・方向が親図の表示と一致しているか
- グレー塗り・カラーがなく、縮小しても線の太さが判別できるか
- 図番号が連続し、図面の簡単な説明と対応しているか
- 元データを保管したか(外注分は受領を確認したか)
余白・符号・陰影・グレー残りといった機械的に拾える不備は、先に Figure Checker に通しておき、人間の時間は符号と請求項の対応確認に使います。方式面の最終判断は弁理士の領分で、拠り所はJPOの審査基準・審査便覧などの一覧です。チェック項目を一覧にした提出前チェックリストは patentfig.ai/ja/resources に置いてあり、登録なしで使えます。
FAQ
ソフトで生成した図面はそのまま出願に使えますか?
幾何・視点・符号の層まではソフトで完結できます。方式適合の最終確認は弁理士の仕事です。実務的には、ソフトで作図、Figure Checker で事前チェック、弁理士が最終確認、という順番が収まりがよいです。
ハイブリッド運用は二重にお金がかかりませんか?
外注に出すのは1〜2枚に絞られ、しかも作図者が受け取るのは確定済みの幾何なので、修正往復は大きく減るのが通例です。節約できるのは単価の合計というより、戻しを待つ日数と期限前のリスクです。
なぜ元データの受け取りにこだわるべきですか?
分割出願、外国出願、事務所の変更。どれも図面の修正を伴います。元データがなければ、そのたびに元の作図者の予定に縛られます。
秘密保持の観点では外注とソフトのどちらが有利ですか?
外注のコストは人の連鎖で、経由する一人ごとに契約が一つ増えます。ソフトの場合は提供者のポリシーの問題に変わります。アップロード内容を学習に使うか、保持期間はどれだけか、削除できるか。この三点を選定基準に入れてください。
下書きから始めるなら、製品写真1枚で試すのが最短です:patentfig.ai/ja/generate