まとめ(時間がない人向け)
- うちの子は特別養子縁組でうちに来ました。将来「なぜ養子だったの?」と聞かれたときのために、審判書の謄本(コピー)を取り寄せてみました
- 手続き名は「謄本交付申請」です(「閲覧・謄写」とは別物なので注意)。審理した家裁支部に郵送だけで申請できます
- 費用は「収入印紙:ページ数×150円」+返信用切手110円(11枚以上は180円)+返信用封筒。届くまで1〜2週間ほど
- 急いだ理由:審判書は30年保存されますが、生みの親の状況など背景が書かれた「調査報告書」は保存期間5年しかありません。子どもが5〜6歳の頃に廃棄期限を迎えるケースが多いようです
- 廃棄前なら「特別保存」を家裁に要望して永久保存に切り替えることもできます
- これは日本ではまだ法律上明文化されていない「子どもの出自を知る権利」(国連子どもの権利条約 第7条・第8条)とも関わってくる話です
以下、制度の背景から手続きの詳細まで書いていきます。
はじめに
うちの子は特別養子縁組でうちに来ました。もうすぐ節目の年齢を迎えます。「この子が大きくなって『なんで自分は養子だったの?』と聞いてきたときに、ちゃんと答えられる材料を残しておきたい」と思い、審判書の謄本を取り寄せることにしました。
電話で家庭裁判所に問い合わせながら手続きを進めたのですが、制度の名前も申請フローも普段まったく馴染みがなく、正直かなり迷子になりました。同じ立場になる方(そんなに多くはないと思いますが)のために、手順をここに残しておきます。
※プライバシー保護のため、氏名・事件番号・具体的な日付・管轄支部名など個別性の高い情報はマスキングしています。運用は支部や時期によって変わるので、実際に申請する際は必ずご自身の管轄の家裁に確認してください。
この記事の内容
- 特別養子縁組とは何か(制度の基本)
- なぜこの制度があるのか(歴史的背景)
- 子どもの出自を知る権利と国連子どもの権利条約
- なぜ「早め」に動く必要があるのか(記録の保存期間の問題)
- 実際の手続き:審判書謄本を郵送で取り寄せる方法(チェックリスト付き)
前提知識:「謄本交付申請」と「閲覧・謄写」は別物です
電話では「当事者等閲覧謄写」という言葉で話を進めていたのですが、後で東京家庭裁判所の公式ページを確認してみると、実はちょっと違いました。当事者が自分の事件の審判書のコピーだけ欲しい場合は、「閲覧・謄写」ではなく「謄本交付申請」で足りるようです。
- 閲覧・謄写:裁判所に出向いて記録そのものを閲覧・書写する手続き(第三者が絡む場合や、記録一式をじっくり確認したい場合向け)
- 謄本交付申請:当事者・事件本人・関係人(またはその代理人弁護士)が、審判書や調書などの謄本(コピー)の交付を郵送または窓口で請求する、もっとシンプルな手続き。今回のケースはこちらに当たります
申請先は事件を審理した家庭裁判所の該当支部(本庁ではなく実際に審理した支部)です。窓口に出向くこともできますが、遠方に住んでいるなら郵送だけで完結できます。
参考(東京家庭裁判所公式):
- 各種申請書式一覧:https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/sonota_syosiki/index.html
- 審判書謄本・調書謄本・証明(確定、送達、係属証明など)申請書:https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/S04-2-1_sinseisho_R8.6.pdf
特別養子縁組とは何か(そもそもの説明)
養子縁組と聞くと一括りにイメージする方が多いと思いますが、実は大きく2種類あります。
- 普通養子縁組:養子になっても生みの親との親子関係(戸籍上のつながり)は残ります。相続や扶養の関係も両方に残る、いわば「籍を追加する」タイプです
- 特別養子縁組:養子になると、生みの親との法律上の親子関係が消滅し、養親と実の親子とまったく同じ関係になります。戸籍の表記も、実子に近い形になります
つまり特別養子縁組は「もう一つ籍を作る」というより、**法律上まるごと生みの親から養親の子どもに“付け替える”**イメージに近いです。子どもの福祉(安定した家庭で育つこと)を目的にした、かなり強い効果を持つ制度なんです。
成立には、こども家庭庁の説明によると、おおむね次の条件が必要になります。
- 生みの親の同意(虐待などで意思確認が難しい場合を除く)
- 養親は夫婦で、原則25歳以上(一方は20歳以上でもOK)
- 養子になる子は、原則15歳未満(2020年の改正以降)
- 養親となる家庭で6か月以上の試験養育をした実績があること
- 最終的に家庭裁判所が「子の利益のために特に必要」と認めて決定すること
この「家庭裁判所が決定を出す」プロセスの記録が、今回取り上げている審判書・調査報告書というわけです。
なぜこの制度があるのか ― 歴史的背景
特別養子縁組、実は日本の歴史の中ではかなり新しい制度で、1987年(昭和62年)の民法改正で創設、1988年に施行されました。それ以前の日本には「生みの親との関係を切って実子同様に育てる」ための法律上の仕組みがそもそも存在していませんでした。
制度が生まれるきっかけになったのが、いわゆる**「菊田医師事件」(1973年)です。宮城県石巻市の産婦人科医だった菊田昇医師は、望まない妊娠で中絶を望む女性たちを説得し、生まれた子どもを子宝に恵まれない夫婦に無報酬で託していました。ただ、当時は制度自体が存在しなかったので、実の親の戸籍に出産の記録が残らないよう、養親を実の親として記載した虚偽の出生証明書**を作っていました(いわゆる「藁の上からの養子」)。この行為は医師法違反等に問われたものの、100人以上の子どもの命を救ったとして社会的な支持と大きな議論を呼び、国会でも法整備の機運が高まっていきます。そこから約14年、1987年に法制審議会での検討を経て特別養子縁組制度が全会一致で成立しました。
制度はその後も何度か見直されています。
- 1987年:特別養子縁組制度の創設(対象は原則6歳未満)
- 2018年:「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」施行。民間の養子縁組あっせん事業者への規制と、記録保存の義務化が進みました
- 2019年成立・2020年施行:民法改正で、養子になれる子の年齢の上限が原則6歳未満から原則15歳未満に拡大。審判手続きも2段階に分けられ、養親の負担が軽くなりました
つまり特別養子縁組は、「子どもの命と福祉を守るための現場の緊急避難的な実践」が先にあり、法制度がそれを後追いで整備してきた、という経緯を持っています。そしてその過程で、**「生みの親の記録をどう扱うか」**という論点は、ずっと制度の裏側にくっついてきました。
子どもの出自を知る権利と、国連子どもの権利条約
ここが、実はこの記事でいちばん伝えたかったところだったりします。
日本は1994年に**児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)**を批准しています。条約の中には、こんな条文があります(政府訳をかみ砕くと)。
- 第7条:子どもは生まれたときから名前と国籍を持つ権利があり、できる限り自分の父母を知り、父母に養育される権利を持ちます
- 第8条:国は、子どもが氏名や身元に関する事項をむやみに奪われないよう保護し、奪われた場合は身元関係の回復を援助する義務があります
- 第21条:養子縁組を行う場合は、子どもにとって最も良いことを考え、子どもと新しい親のことをしっかり調べたうえで、国や公的機関だけがそれを認めることができます
国連の子どもの権利委員会は、フランス・ドイツ・スイス・ノルウェー・アイルランドなど複数の国に対して「養子や生殖補助医療によって生まれた子どもが、自分の生物学的な親やきょうだいを知る権利を実現できるよう、努力を強化すべき」という勧告を出してきました。
一方、養子縁組の支援団体である日本国際社会事業団(ISSJ)は**「日本では養子の出自を知る権利が明文化されておらず、養子が出自を知りたいと願った際の支援体制は十分に整っていない」**とはっきり指摘しています。つまり条約上は「できる限り知る権利」が認められているのに、日本国内でそれを具体的に保障する法律や仕組みは、まだかなり手薄なんです。
その「手薄な部分」の一つが、まさに今回のテーマである記録の保存期間です。審判書は30年保存されますが、生みの親の状況や養子縁組に至った経緯が書かれる調査報告書はたった5年しか保存されません。子ども自身が「知りたい」と思うタイミングは、成人したとき、結婚したとき、自分が親になったときなど人それぞれで、子どものうちに来るとは限りません。でも記録の保存期間は、子どもの意思とは無関係に、事件完結からの年数だけで機械的に区切られてしまいます。
つまり、子どもの「知る権利」を将来ちゃんと守れるかどうかは、結局は養親が子どもの代わりに「早めに動く」かどうかに、かなり依存してしまっているというのが日本の現状です。ここから先の実務的な手続き解説は、この構造的な課題を前提にしています。
参考:
- 特別養子縁組制度について/こども家庭庁:https://www.cfa.go.jp/policies/shakaiteki-yougo/tokubetsu-youshi-engumi
- 特別養子縁組 - 制度の沿革(Wikipedia等公開情報を基に要約)
- 児童の権利に関する条約(政府訳)/外務省:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html
- ルーツ探しをはじめる前に/日本国際社会事業団(ISSJ):https://www.issj.org/adoption-web/roots/hajimeni
なぜ「早め」に動く必要があるのか ― 審判書は30年、調査報告書は5年しか残りません
今回このタイミングで動いた一番の理由はこれです。特別養子縁組の記録は書類ごとに保存期間が別々に決まっていて、一部は数年で廃棄されてしまいます。
日本国際社会事業団(ISSJ)の公開情報によると、
- 審判書(審判の結論そのもの)は保存期間 30年
- 調査報告書(家庭裁判所調査官が作成する、生みの親の状況・意向、養子縁組に至った経緯、試験養育の経過などが書かれた書類)は保存期間 たった5年
とされています。
つまり審判書自体は長く残るのですが、「なぜ特別養子縁組が必要だったのか」「生みの親がどんな状況・意向だったのか」という、子ども本人が将来いちばん知りたがるであろう背景情報は調査報告書にしか載っていない上に、ずっと短い期間で廃棄されてしまう、という構造になっています。
保存期間の起算点は子の年齢そのものではなく「事件が完結した日(審判確定日など)」からなのですが、特別養子縁組は子が1歳前後の時期に審判が確定するケースが多いため、結果として**「子が5〜6歳になる頃」に調査報告書の廃棄期限を迎える**ことが実務上多いようです。「5歳を過ぎると難しくなる」という感覚の背景はここにあります。
子どもの出自を知る権利という観点(補足)
上で触れた国連子どもの権利条約の第7条・第8条から考えても、養子となった本人が将来「なぜ特別養子縁組に至ったのか」「生みの親はどんな状況だったのか」を知りたくなるのはごく自然なことです。日本ではこの権利が法律上明文化されていないので、記録が残っているうちに動けるのは、実質的に養親(本人が成人した後は本人自身)に限られてしまいます。
対策:廃棄前に「特別保存」を要望できます
保存期間が満了しても、資料的価値があると認められれば**「特別保存」を裁判所に要望することで、廃棄を防いで永久保存に切り替えてもらえる制度**があります(事件記録等の特別保存に関する規則に基づく)。誰でも要望でき、対象の事件が係属していた(いた)家庭裁判所に申し出ます。
やることをまとめると:
- 審判書の謄本は「謄本交付申請」でいつでも(30年以内)取得可能 → 今回の記事の本題
- 調査報告書は5年で廃棄されうるので、必要なら期限内に内容を確認・謄写しておく、または
- 廃棄前に特別保存の要望を出して、記録自体を永久保存に切り替えてもらう
審判書の謄本だけだと「結論」しか分からず、「背景」は調査報告書にしかないケースが多いです。子どもの将来のために両方を意識しておくとよさそうです。
参考:
- 養子縁組の記録(保存期間の説明)/日本国際社会事業団(ISSJ):https://www.issj.org/adoption-web/roots/shinpansyo
全体の流れ(チェックリスト)
| # | やること | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 管轄の家裁(審理した支部)に電話 | 「当事者等閲覧謄写」の申請をしたい、と伝えると話が早いです |
| 2 | 事件番号を確認 | 手元に控えがなければ、氏名+おおまかな時期(子の出生時期/申立てをした年月)で照会してもらえる場合があります |
| 3 | 申請書式を入手 | 家裁ホームページからPDFをダウンロード(後述の「ハマりどころ」参照) |
| 4 | 添付書類を確認 | 基本は「申立人本人の住民票」でOKです(家族全員分は不要、というケースが多いですが要確認) |
| 5 | 返信用の切手・郵送費を用意 | 謄本のページ数に応じて金額が変わります(後述) |
| 6 | 書類一式を郵送 | 申請書+添付書類+返信用封筒・切手 |
| 7 | 受領を待つ | 目安として1〜2週間程度です |
詳細メモ
1. 電話で最初に確認すべきこと
- 自分がどの支部の管轄か(審理した支部=申請先)
- 「当事者等閲覧謄写」という名称を伝えると、担当部署にすぐ繋がります
- 事件番号が不明でも、氏名と大まかな時期を伝えれば照会してもらえることがあります
2. 申請書式の入手でハマった点
家裁ホームページの構成がなかなか分かりにくく、検索でも書式ページがすぐ出てきませんでした。
- Googleの通常検索よりも、**家裁ホームページ内の検索窓(右上)**を使う方が確実でした
- 目的の書式は「各種申請書式」→「当事者間の非開示制度/調停離婚成立後の必要書類等」といった、離婚関連の書式とまとめて置かれているページの中にありました(一見関係なさそうなページ名なので普通に見落とします)
- そのページの中にはリンクがいくつも並んでいるので、「当事者等閲覧謄写制度及び非開示希望申出の書式説明」的な名前のものを探してみてください
3. 添付書類について
- 申立人(自分)が申立人本人であることを確認できればよく、申立人本人の住民票だけで足りるケースが多かったです
- 「家族全員分の証明が必要か」を電話で確認したところ、申立人本人分のみでよいという回答でした(※支部によって差がありそうなので、必ずご自身の管轄先に確認してください)
- 本人確認のため追加でマイナンバー等の提示を求められる場合もあるようなので、事前に確認しておくとスムーズです
4. 費用の考え方(公式の記入例で確認した正確な計算式)
謄本交付申請書の記入例(東京家裁公式PDF)によると、郵送申請の場合に同封するものは次の3点です。
| 同封物 | 金額・枚数の考え方 |
|---|---|
| ① 収入印紙 | 謄本のページ数 × 150円 × 必要な通数(申請書の指定欄に貼付。消印はしないこと) |
| ② 返信用の切手 | 110円切手(取得ページ数が11枚以上になる場合は180円以上の切手) |
| ③ 返信用封筒 | 返信先を記載したもの |
例:謄本が2ページ×1通なら、収入印紙は 2ページ×150円×1通=300円です。
注意点:
- 電話で聞いた「10ページで1,500円くらい」という感覚は、収入印紙の計算式(ページ数×150円)とほぼ一致していました。ただしこれは印紙代であり、返信用の切手代とは別枠なので両方用意する必要があります
- 申立人の氏名・住所が審判書・調書に記載されているものと異なる場合(引っ越しや婚姻等で変わっている場合)は、つながりが分かる戸籍謄本や戸籍の附票などの添付が別途必要になります
- ページ数が事前に分からない場合は、支部に電話で目安を確認しておくと二度手間になりません
5. 「オンサイトでコピーできる内容」と「郵送で届く内容」は同じです
現地に行けば直接コピーできますが、郵送でも内容自体は変わらない(審判の謄本のみ)とのことでした。つまり、
- わざわざ出向いて手動でコピーする意味はあまりありません
- 郵送申請だけで完結できます
ということが確認できました。遠方在住で立ち会いが難しいなら、郵送一本で進めて問題なさそうです。
6. 電話でのコミュニケーションで地味に苦労した点
- 家裁側の電話は声が小さかったり回線状況で聞き取りにくいことがありました → 重要な用語(書式名・部署名・金額)はその都度聞き返して確認するのが安全です
- 「記録係」など部署名を名乗られても、正式な部署名かどうか判然としないこともあります。あまり気にせず、要件(事件番号照会・書式送付依頼)が通じているかを確認する方が実務的です
振り返り
特別養子縁組の審判書謄本を郵送で取得する手続きは、大枠でいうと
- 管轄支部に電話 → 事件番号照会
- 家裁HPで申請書式をダウンロード(検索窓を使うのが早いです)
- 申立人本人の住民票を添付
- ページ数に応じた返信用切手を用意して郵送
- 1〜2週間で謄本が届く
という流れで完結します。制度名(当事者等閲覧謄写)を最初に伝えると、電話でのやり取りがかなりスムーズになります。
ただ、審判書の謄本だけでは「結論」しか手に入らない点は要注意です。「なぜ養子縁組が必要だったのか」という背景は調査報告書にしかなく、こちらは保存期間5年で早めに廃棄されてしまいます。子どもの出自を知る権利を意識するなら、審判書の謄本取得と並行して調査報告書の扱い(謄写または特別保存の要望)も考えておきたいところです。
同じ立場で申請を検討している方の参考になれば幸いです。
参考リンク(東京家庭裁判所 公式)
- 各種申請書式一覧(当事者間秘匿制度・調停離婚後の必要書類等含む):
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/sonota_syosiki/index.html - 審判書謄本・調書謄本・証明(確定、送達、係属証明など)申請書(PDF):
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/S04-2-1_sinseisho_R8.6.pdf - 特別養子縁組審判の記録・保存期間について/日本国際社会事業団(ISSJ):
https://www.issj.org/adoption-web/roots/shinpansyo
※上記は東京家庭裁判所のものであり、申請先は実際に事件を審理した支部になります。他の家裁・支部を利用する場合は、同様の書式がその家裁のホームページに個別に掲載されているはずなので、支部名+「謄本交付申請」で検索してみてください。
※本記事は個人の体験に基づくメモであり、法的アドバイスではありません。手続きの詳細・必要書類・費用は管轄の家庭裁判所や時期によって異なるため、実際の申請前に必ず該当窓口へ確認してください。
申請書
