PSM II(Professional Scrum Master II)の勉強をしている中で、深く考えさせられたテーマがいくつかありました。
印象的だったので、自分のための戒めも兼ねて記録します。
それは、スプリントレビューやレトロスペクティブなどの場で、
「完成したPBI(プロダクトバックログアイテム)の成果を祝う」 という行為についてです。
模擬問題集にも出てきますが、POがスクラムイベントに参加して、
PBIの完成を祝うが、SMとして、これでいいのか?とかいうシナリオだった記憶....。
チームの成果を称え合う良い習慣に見えますが、スクラムの観点では 「PBIの完成そのものが目的化する」という重大なアンチパターン を引き起こすリスクがある、ということになるようです。
※前提として、メンバー同士のリスペクトや健やかなチームカルチャーを否定するものではありません。ここで扱うのは「何をお祝いの対象(=ゴール)とするか」という目的意識の話です。
何が問題なのか?
一言で言うと、「アウトカム」から「アウトプット」への目的のすり替わり、です。
PBIの完成を祝う文化が定着すると、チームの意識は無意識のうちに次のように変化します。
- 本来目指すべきゴール(アウトカム)
ユーザーやプロダクトに 「価値(Value)」 を届けること
↓ - すり替わったゴール(アウトプット)
PBIを予定通りに 「完成(Done)」 させること
「この機能を届けることでユーザーの課題がどう解決されるか?」ではなく、「どうすれば今スプリントでこのPBIを『完成』させるか?」に意識のベクトルが向いてしまいます。
PBIの完成が「目的化」した際に起きる弊害
PBIを完成させることが目的になると、現場では以下のような健全ではない挙動が発生し始めます。
1. 品質や「Doneの定義」の妥協
「スプリント内に完成させて祝うこと」が優先されると、期限が迫った際に「テストを一部省略して完成扱いにする」「リファクタリングは後回しにする」といったショートカットが起きやすくなります。
2. 「価値のない完成」の量産
PBIに書かれた仕様を消化することだけに集中し、「本当にこの機能はユーザーに必要なのか?」「もっと良いアプローチがあるのではないか?」という疑問や提案が出にくくなります。結果として、誰も使わない機能が「完成」として積み上がっていきます。
また、1スプリントでより多くのPBIを完成させようという意識も働くようになります。(=ベロシティの数字を追うようになる)
3. 未完成に対する過度なプレッシャーと透明性の低下
「完成=善(お祝い)」となる裏返しとして、「未完成=悪」という構造が生まれます。すると、レトロスペクティブなどで「なぜ完成しなかったのか」という追及を恐れ、課題や遅れを早期にオープンにできなくなります。
PBIの一つ一つはあくまで「手段」「仮説」
PBIは、価値を届けるための「手段」であり「仮説」です。
手段の達成(PBIの完成)をお祝いの対象にしてしまうと、チームはその手段を完遂することに最適化されてしまいます。
スクラムにおいて「PBIを完成の定義(DoD)通りに作り切ること」は、プロフェッショナルとして当然の前提条件であり、それ自体が最終的なゴールではありません。
では、何をお祝い・評価すべきなのか?
チームが真にお祝いし、フォーカスすべきなのは
PBIの完成ではなく、「生み出された価値(アウトカム)」 です。
| 避けるべきフォーカス | 目指すべきフォーカス |
|---|---|
| 「今スプリントでPBIを5個完成できたね!」 | 「この機能をリリースしたことで、ユーザーの離脱率が〇%改善したね!」 |
| 「予定していたストーリーポイントをすべて消化できた!」 | 「スプリントゴールを達成し、プロダクトの価値を一歩進められた!」 |
-
「完成」はスタートライン
PBIがDoneになって初めて、価値検証のスタートラインに立ちます。 -
お祝いは「価値」に対して
祝うべきは「タスクが完了したこと」ではなく、「ユーザーや事業にどのような良い変化(インクリメント)をもたらしたか」です。
インクリメントをきちんと作るの自体は前提、というのは改めて理想像が高いな、と....。
これだけでもなかなか難しいと、個人的には思いながらお勉強しました....。
しかも、提供してみなければ、価値が本当に出るかはわからない。
一つ一つのスプリントではこうなると価値提供できたかがわからない可能性もるわけですし、モチベーションを保つの難しいですよね...。
手段ではなく「目的」にフォーカスするために
PSM IIで扱われるこのトピックは、スクラムにおける 「アウトプット(作った量や完成数)」と「アウトカム(生み出した成果・価値)」の違い をはっきりさせます。
一見ポジティブに見える「完成のお祝い」が、知らず知らずのうちにチームから「なぜこれを作るのか?」という問いを奪い、開発者を単なるタスク消化を目的としたチームに変えてしまう危険性があります。
チームが何を成果として扱い、何を喜ぶのか。
「何」を褒めるか、評価するかで、そのチームや人の価値観が変わってしまうということに改めて気付かされる、深い学びとなりました。
後のことを考えず、無闇に誉めてはいけないのですね。
難しいです.....。