はじめに
私はPiやChatBoxなどでOpenCode GoのDeepSeek-v4-flashをメインモデルとして便利に使ってきました。しかし、負荷に耐えられなくなったDeepSeekがAPI価格を値上げしたことをきっかけにOpenCode GoのDeepSeek v4 flash利用量が大幅に減少しました。そこで、さくらのAI Engineを代替として活用できないか検討し、試してみました。
背景
DeepSeekの値上げ
圧倒的な低価格で人気のDeepSeekですが、8月17日から大幅な値上げを行いました。
DeepSeek-v4-Pro GA (DeepSeek-v4-Pro-0813)の公開に伴って発表された値上げでは、OFF-Peak値下げの導入と共に料金が最大12倍に跳ね上がりました。
公式から詳細な理由は発表されていませんが、ネット上では推論コストそのものではなく、過度な需要による高負荷状態を解消するためだと推測されています。
使い放題だったDeepSeek-v4-flash
DeepSeek-v4-flashが際立っていた理由は、公式の圧倒的な安さだけではありません。
高コスパAIサブスクとして知られるOpenCode Goは、月額\$10(初月\$5)という格安サブスクであるにも関わらず、一部例外を除いて月に\$60分の使用を許可しています。さらに、今回のDeepSeek値上げ適用前まではDeepSeek-v4-flashの使用量を2倍に、つまり\$120/月分のDeepSeek-v4-flashを使えていたわけです。
OpenCode GoはDeepSeekの公式APIを利用しているため、当然コストも公式と同様です。Wayback Machineで確認すると、なんと月に15.8万リクエストも使えていたことがわかります。

※推定値、DeepSeek V4 Flashではリクエストあたり 入力 790トークン、キャッシュ 68,000トークン、出力 280トークンで計算とのこと
値上げと改悪
8月17日午前1時46分、OpenCodeは46分前に行われたDeepSeekの値上げに合わせてOpenCode Goでの使用制限を変更すると発表しました。これは予想できていたことです。先述の通りOpenCode GoはDeepSeekの公式APIを利用しています。同時期に、Command Code GOAT等の競合サービスでも同様の制限変更措置が取られました。
しかし、それだけではありませんでした。
それまで月に\$60まで使えていたDeepSeek-v4-flashの使用上限が突然\$15にまで減らされてしまったのです。
さらに追い打ちをかけるように、2倍使用量のキャンペーンも終了してしまいました。
今となっては月に1.8万リクエストしか送れません。
OpenCodeは「Operation Cheepseek」と呼ばれるプロジェクトを進めており、DeepSeekを以前のような価格で提供することを目指しているとしています。公式APIに頼らず独自にホスティングすることで解決を図るようですが、簡単な計画ではないようで実現にはもう少し時間がかかりそうです。
この記事を執筆している間に進展があったようで、\$15分だった使用量が2倍の\$30になりました。しかしそれでもこれまでと比べればはるかに少ない使用量です。Cheepseekのフェーズ2が開始しているとのことですので、それまではOpenCode Goの使用量を温存したいところです。
そこで、「Cheepseek」が実現するまでの間OpenCode Goの使用量を節約するために「さくらのAI Engine」を試してみることにしました。
「さくらのAI Engine」とは
今回試す「さくらのAI Engine」はさくらインターネットが運営する、国内完結型・格安のLLM APIサービスです。さくらインターネットが運営するクラウド上でホスティングされたモデルをOpenAI・Anthropic互換APIから利用できます。
さくらインターネットのクラウドは政府のガバメントクラウドにも選定されており、国内完結と合わせて大きな安心材料となっています。(微妙に不安な要素もありますが...)
「さくらのAI Engine」のすごい点は国内完結だけではありません。なんと、ほとんどのLLMに対し、月間3000リクエストの無料枠を提供しているのです。
無償プランでは無料枠を使い終わっても自動で課金は行われず、従量課金プランであってもしっかりはじめの3000リクエストは無料で使えます(珍しい)。
3000リクエストというとOpenCode Goでの改悪後DeepSeek-v4-flashの5時間制限より少ないですが、私が契約しているQwen Cloud Token Plan liteの週間制限がもうすぐ復活するため、そのつなぎとしては十分な使用量だと思います。
また、無料枠を使い切った後の従量課金でも「さくらのAI Engine」は良心的な価格でモデルを使い続けられます。円安の今、ドルではなく円で支払えることは大きなアドバンテージとなるため、利用体験が良ければ課金しても良いかもしれません。
登録してみる
公式サイト、「ご利用の流れ」に従って登録します。
さくらインターネット会員ID作成
- メールアドレスを入力します
- メールで認証コードが送られてくるのでコピペします
- 会員情報を入力します
- 契約種別(「個人」など)
- 氏名(漢字/カナ)
- 生年月日
- 性別(任意)
- 郵便番号/住所
- 電話番号
- 同じページでパスワードを設定します
- メルマガの受信設定をOFFにすることをおすすめします
これでIDの作成は完了です。思った以上に多くの情報入力が必要なこと、フローの中で電話番号認証がないことは意外でした(電話番号認証は後ほど手動で行う必要があります)
「さくらのクラウド」プロジェクト作成
まずはさくらのクラウドホームで「プロジェクトの作成」をクリックします。
適当に入力して「作成」をクリックしましょう。
追加情報の入力
プロジェクトを作成できたら「さくらのクラウドホーム」のトップへ移動しましょう。左サイドバー上部の「トップ」をクリックしてください。プロジェクトでしかトップを開けない(ユーザー/組織としてのトップがない?)ので先ほど作成したプロジェクトを選択します。
上部に画像のような警告が表示されるため電話番号認証を行ってください。
電話認証はSMSではなく音声電話で行うようです。開始するとさくらインターネットから電話がかかってきます。音声で5桁の認証コードを伝えられるため入力してください。早口ですが繰り返し言ってくれるため落ち着いて入力しましょう。
電話番号認証を終わらせると、今度はクレジットカード情報を入力するよう要求されます。
案内に従ってクレジットカード情報を入力してください。お使いのクレジットカードブランドによる認証が行われます。
クレジットカード情報を入力したにも関わらず警告が消えない場合は複数回再読み込みを試してください。私はそれで解決しました。
ついに「さくらのAI Engine」を始める
コントロールパネルから利用を開始します。はじめに、利用約款に同意する必要があります。
プラン選択画面が表示されるのでとりあえず基盤モデル無償プランを契約します。
これで準備は完了です!プレイグラウンドで試してみましょう!
無事に動作を確認できれば成功です。
APIキーを作成する
コントロールパネルで「アクセストークン」タブを開いてAPIキーを作成します。他の多くのAIサービスではAPIキーと呼ばれていますが、「さくらのAI Engine」では「アクセストークン」と呼ぶようです。
画面の表示に従ってアクセストークンを作成します。名前はわかりやすいものがいいでしょう。
アクセストークンは一度だけしか表示されません。コピーしてBitwarden等に保存しておきましょう。アクセストークンが外部に漏洩すると誰もがあなたとして「さくらのAI Engine」を使えてしまいます。公開するソースコードやチャットに載せないのはもちろん、AIへの入力も控えた方が安全でしょう。
万が一漏洩したときわかりやすいように、APIキーは使うアプリごとにバラバラなものを作るのがおすすめです。
APIドキュメントは以下から確認できます。base_urlはhttps://api.ai.sakura.ad.jp/v1です。
ChatBoxから使ってみる
せっかくのAPIなので好きなクライアントアプリからのリクエストを試してみましょう。
ChatBoxの 設定 > モデルプロバイダー で追加を押して「さくらのAI Engine」を追加します。公式にはサポートされていないためカスタムプロバイダーとして追加します(プロバイダー一覧の下部にある)。
名前はわかりやすいものを、APIモードは「OpenAI API 互換」を選択します。OpenAI Responsesでは画像入力等一部非対応の機能がありますし、Anthropic形式に対応しているモデルは一部のみです。
APIホストにhttps://api.ai.sakura.ad.jp/v1を入力し、自身のAPIキー(アクセストークン)を入れてください。「取得」ボタンをクリックすると利用できるモデルの一覧が表示されます。
正直なところ対応モデルはしょっぱいですがKimi-K2.7-Code、Gemma-4-31B-it、gpt-oss-120b、 Qwen3.6-35B-A3Bは十分実用的だと思います。
無事にChatBoxからチャットすることができました!
Kelivo、RikkaHubでも同様の手順で追加できました。
Piから使ってみる
今回の本命です。愛用のAIエージェントハーネスであるPi Coding Agentから「さくらのAI Engine」を使えるようにします。
シンプルさを重視するPiが標準でサポートしているモデルプロバイダーはあまり多くなく、さくらは当然含まれません。また、PiのTUIからはOpenAI互換プロバイダーを登録することすらできません。基本的には拡張機能をインストールすることでプロバイダーを追加しますが探しても見つかりませんでした。
ファイルを直接編集することで対応させることもできますが、今回Piで「さくらのAI Engine」をプロバイダーとして使えるようにする拡張機能を作ってみたので是非使ってみてください:
以下のコマンドでインストールできます:
pi install git:github.com/daizu-007/pi-sakura-ai-engine
インストールしたらPiを再起動してください。
Piで/login sakura-ai-engineを実行し、アクセストークンを登録するかSAKURA_AI_TOKENという環境変数にアクセストークンをセットしてください。
これでPiでも「さくらのAI Engine」を使えるようになりました!!
どれくらい使えるか
チャット利用では月に3000ターンの会話ができるためかなりの量ですが、エージェントは1つのタスクの中で複数回のAPIリクエストを送信するため使用可能回数は大幅に減少します。そこで、実際の使用量を見てみることにしました。
Pi拡張機能の確認
先ほどお見せしたpi-sakura-ai-engineは手動でデータを集めましたが、信頼性の低い情報源や類似モデルからの借用があったため、「さくらのAI Engine」から利用できるKimi K2.7 Codeに事実確認をしてもらいました。
プロンプト:
C:\Users\daizu\UserFile\Projects\Other\pi-extensions\pi-sakura-ai-engine
各AIの情報が正しいか確認して
コードを自律的に確認した後、複数回のWeb検索を行い事実確認してくれました。結果として複数の設定ミスが見つかり修正することになりました。
実行前: 6リクエスト
実行後: 28リクエスト
消費リクエスト: 22リクエスト
ベンチスコアのWeb検索
いくら無料で使えるとはいえ、性能が劣っていれば意味がありません。LLMは日進月歩です。古いモデルばかりホスティングしている「さくらのAI Engine」ではその点がネックになり得ます。そこで、普段使っているモデルとの性能比較をやってもらうことにしました。モデルはKimi K2.7 Codeです。
プロンプト:
Kimi K2.7 CodeとDeepSeek v4 flash 0731のベンチマークスコアを比較してください。それぞれが公式に提供しているベンチマークスコアはハーネスや条件が異なり厳密な比較が困難であることは理解していますので、公式のベンチマークにこだわらず、第三者による(ただし信頼できる)ベンチマークも含めてください。多少の厳密さの欠如も許容します。
複数回にわたるWeb検索を行い解説してくれました。両方で実行されたベンチマークがあまり多くないらしく、やはり比較は難しそうです。軽くまとめるとこんな感じでした。
| モデル | コンテクスト長 | 画像 | Intelligence Index | DeepSWE |
|---|---|---|---|---|
| DeepSeek-v4-flash | 1M | × | 50 | 54.4% |
| Kimi K2.7 Code | 256K | ○ | 42–43 | 31% |
画像を使えるのは強いですがDeepSWEの弱さとコンテクスト長の短さは気になりました。
実行前: 28リクエスト
実行後: 35リクエスト
消費リクエスト: 7リクエスト
記事の校閲
投稿直前に思いつきました。この記事の全文を見せて校閲までさせてしまおうと。モデルは先ほどと同様Kimi K2.7 Codeです。
プロンプト:
記事の誤字/脱字/誤り等を指摘してください
{ここに記事の全文}
誤字の修正や詳細なファクトチェックまで行ってくれました。できる範囲で修正済みです。
実行前: 35リクエスト
実行後: 58リクエスト
消費リクエスト: 23リクエスト
1つのタスクで15リクエストほどと考えると、1ヶ月で200タスクほどは無料で利用できることになります。トークン課金導入前のGitHub Copilot Studentと同等と考えれば悪くない使用量だと思います。
まとめ
DeepSeekの値上げとOpenCode Go改悪の一時的な避難場として「さくらのAI Engine」を使えるか試してみました。初めて触ったサービスでしたが、無料枠が寛大でモデルの性能も悪くなさそうであったため、Cheepseek実現までのバックアップとしては十分に使えると感じました。
皆さんも是非、「さくらのAI Engine」を試してみてください!














