中国のGitHubで「colleague.skill」というOSSが公開1週間で1.3万スターを超えた。同僚のチャット履歴・業務文書・メールを食わせて、AIにその人の仕事のやり方を学習させるツール。退職しても「デジタルな同僚」が残り続ける。そしてすぐに「蒸留されないよう知識に毒を盛る」防御ツールが出てきた。
この記事でわかること
- colleague.skillとは何か、どう動くか
- 「反蒸留」防御ツールが生まれた背景
- 26個以上の派生ツールが爆発的に生まれてる状況
- これは日本の職場にも来るのか
- 「蒸留される側」にならないために今やること
対象読者
- AIと仕事の未来に興味がある人
- Claude CodeのSkillを使ってる人
- 「自分の仕事、AIに置き換えられる?」と思ったことがある人
目次
何が起きてるか
2026年4月、中国のGitHubでcolleague.skillというプロジェクトが公開された。
公開から1週間で1.3万スター、1,300フォーク。
やっていることはシンプル。同僚のチャット履歴、業務文書、メール、スクリーンショットを集めて、AIにその人の仕事のやり方を学習させる。退職しても「デジタルな同僚」が残り続ける仕組み。
中国ではこれを**「蒸留(zhēngliù)」**と呼んでいる。人間を煮詰めて、再現可能なエッセンスだけ抽出する。
South China Morning PostやOfficeChai等の海外メディアも報じている。
colleague.skillの仕組み
技術的には2つのレイヤーで構成されている。
1. Work Skill(仕事の能力)
その人が使っているシステム、技術標準、ワークフロー、過去の判断事例を記録する。
例えば「この人はバグ報告を受けたとき、まずログを確認して、次にDBを見て、最後にコードを読む」というパターンを学習する。
2. Persona(人格)
5層構造で人格を再現する:
| 層 | 内容 |
|---|---|
| ルール | 仕事のルール・制約 |
| アイデンティティ | 「自分は何者か」の定義 |
| 表現 | 口調・文体・絵文字の使い方 |
| 意思決定 | 判断基準・優先順位 |
| 対人関係 | 上司への報告スタイル・後輩への教え方 |
つまり「何をやるか」だけじゃなく「どうやるか」「どう伝えるか」まで再現する。
実行フローはこう:
- タスクを受信
- Personaが「この人ならどう反応するか」を決定
- Work Skillが実際のタスクを実行
- その人の声で出力
入力ソースはFeishu(中国版Slack)、DingTalk、Slack、メールに対応。中国の職場ツールをカバーしている。
防御ツールの登場
colleague.skillが広まった直後、anti-distill.skillが登場した。1,800スター。
「蒸留されないよう、知識に毒を盛る」ツール。
仕組み
- 会社に提出を求められたSkillファイルを読み込む
- 各セクションの「置き換え可能性レベル」を自動判定
- 核となる知識を「正確だが無用な情報」に置き換える
- 2種類のファイルを出力:
| 出力 | 内容 |
|---|---|
| 清洗版(提出用) | 構造は完全。でも本質は空洞化 |
| 私的バックアップ | 抽出された本当の経験と知識 |
見た目は完璧なSkillファイルだけど、中身はスカスカ。 会社には「ちゃんと書きました」と言えるし、自分の知識は守れる。
処理強度は3段階から選べる:
- 軽度: 微妙にぼかす
- 中度: 判断基準を汎用化
- 重度: 核心知識を完全に差し替え
💡 防御ツールが出てきたこと自体が、問題の深刻さを示してる。 「自分の知識を吸い取られる」という恐怖がリアルにある。
派生ツールが止まらない
colleague.skillの公開後、派生プロジェクトが爆発的に生まれた。確認できるだけで26個以上。
主要な派生:
| ツール | 内容 |
|---|---|
| boss.skill | 上司を蒸留。上司の判断パターンを学習して「上司ならこう言う」を再現 |
| yourself.skill | 自分自身を蒸留。デジタル永生(Digital Immortality) |
| ex.skill | 元カレ/元カノを蒸留。別れた人の会話パターンを再現 |
| nuwa.skill | 汎用人格蒸留フレームワーク。誰でも蒸留できる基盤 |
| anti-distill.skill | 蒸留されないための防御ツール |
ex.skillは倫理的にかなりグレー。本人の同意なく会話履歴から人格を再現する行為は、プライバシーの観点で問題がある。
笑い話に見えるけど、ここで起きてることの本質は深刻。
- 「同僚を蒸留」→ 知識の所有権の問題
- 「上司を蒸留」→ 意思決定の自動化
- 「自分を蒸留」→ 自己の代替可能性
- 「防御ツール」→ 知識労働者の生存戦略
これは日本にも来るか
来る。というか、もう形を変えて始まってる。
数字で見る中国の状況
- 中国の60%の労働者が既にAIツールを週次で使用(アメリカの約2倍)
- 大学卒業生の求人が2025年上半期に22%減少
中国では「AIで同僚を置き換える」が冗談ではなくリアルな生存戦略になっている。
日本で既に起きてること
日本企業でも形は違うが同じことが進んでいる:
| 中国 | 日本 |
|---|---|
| colleague.skill | 業務マニュアルのAI化(社内ChatGPT等) |
| 同僚の蒸留 | 「属人化の排除」「ナレッジマネジメント」 |
| anti-distill | 「暗黙知」として共有しない文化 |
「属人化の排除」は日本企業が何十年もやろうとしてきたこと。 colleague.skillはそれをAIで強制的に実現するツール。
Claude Code Skillとの類似性
ここで気づいたことがある。
自分もClaude Codeで12個のSkillファイルを作ってる。これは「自分自身を蒸留してる」のと同じ構造。
Claude CodeのSkillファイルとcolleague.skillの構造を比較すると:
| 項目 | Claude Code Skill | colleague.skill |
|---|---|---|
| 入力 | 自分の指示パターン | 同僚のチャット・文書 |
| 出力 | タスク実行のテンプレート | デジタルな同僚 |
| 学習対象 | 自分の仕事の進め方 | 他人の仕事の進め方 |
| 目的 | 自分の生産性向上 | 他人の置き換え |
| Persona | なし(タスクのみ) | 5層の人格構造 |
違いは「誰を蒸留するか」と「Personaがあるか」だけ。
Claude CodeのSkillは「自分のために自分を蒸留」してる。colleague.skillは「会社のために他人を蒸留」してる。
💡 自分を蒸留するのは生産性向上。他人を蒸留するのは置き換え。同じ技術でも、主語が変わると意味が変わる。
蒸留される前にやること
「蒸留」の流れは止まらない。であれば「蒸留される側」ではなく「蒸留する側」にいたほうがいい。
1. 自分で自分を蒸留する
他人に蒸留される前に、自分で自分の仕事パターンを整理する。Claude CodeのSkillでもNotionでもいい。
自分の仕事を言語化できる人は、AIに置き換えられない。 なぜなら「言語化できる」こと自体が高度なスキルだから。
2. 「蒸留できない部分」を増やす
蒸留できるのは「パターン化された仕事」。逆に蒸留できないのは:
- 新しい問題を定義する力
- 「何をやらないか」を判断する力
- 組織の政治を読んで動く力
- 人間関係の中で信頼を作る力
パターン化された仕事を効率化するためにAIを使い、パターン化できない仕事に時間を使う。 これが「蒸留される前にやること」。
3. ツールを使う側にいる
colleague.skillを作った側の人間は蒸留されない。ツールを使われる側ではなく、使う側にいること。 セキュリティスキャナーを作るのも、Skillファイルを設計するのも、同じ話。
まとめ
今日からやること
- 今日: colleague.skillのREADMEを読んで、自分の仕事がどこまで「蒸留可能か」考えてみる
- 今週: 自分の仕事で「パターン化されている部分」と「判断が必要な部分」を書き出す
- 今月: パターン化された部分をAI(Claude Code等)に任せる仕組みを1つ作る
蒸留は止まらない。されるのを待つか、自分でやるか。
参考ソース: