分析日: 2026年6月28日
データソース: 厚労省「国民医療費」「医療施設調査」「病院報告」「患者調査」、総務省「人口推計」「社会・人口統計体系」、人口動態統計(すべて e-Stat API)
対象: 47都道府県(医療費・病床・在院日数・受療率は2023年、年齢調整死亡率は2020年)
手法: ピアソン/スピアマン相関・重回帰(標準化β)・偏相関・間接標準化(年齢調整)・Mann-Whitney U検定
「医療費が高い県って、お年寄りが多いからでしょ?」
たぶん多くの人が、そう思っている。私もそう思っていた。
でも47都道府県のデータを並べて計算していくと、その答えは次々に否定されていった。高齢化でもない。所得でもない。健康意識でもない。医療アクセスでもない。
最後に残ったのは、たった一つ。病床数だった。
そしてもっと面白いのは、その先だ。「医療費が高い県ほど長生き」という関係は、どこにも見つからなかった。
この記事は、医療費の地域差という素朴な問いから出発して、最終的に「医療費の地域差は、高齢者ケアをどこで提供するかという制度的な選択の影響を強く受けていた」という構造にたどり着くまでの記録だ。
先に全体像を1枚にまとめておく。これから、この図の流れを上から順にデータで追っていく。
まず、医療費の地域差は本当にあるのか
ある。しかもかなり大きい。
一人当たり国民医療費(2023年度)を都道府県で並べると、最高の高知(49.6万円)と最低の埼玉(34.3万円)で1.45倍の開きがある。
| 高い5県 | 一人当たり医療費 | 低い5県 | 一人当たり医療費 |
|---|---|---|---|
| 高知 | 49.6万円 | 埼玉 | 34.3万円 |
| 鹿児島 | 47.0万円 | 千葉 | 34.7万円 |
| 徳島 | 46.7万円 | 滋賀 | 35.1万円 |
| 長崎 | 46.7万円 | 神奈川 | 35.4万円 |
| 大分 | 45.9万円 | 新潟 | 35.5万円 |
きれいに西高東低だ。西日本が高く、東日本が低い(Mann-Whitney U検定で p<0.0001)。
では、この差は何で決まっているのか。ここから「犯人探し」が始まる。
犯人候補①:高齢化 → ❌
最有力容疑者は高齢化だ。お年寄りが多ければ医療費がかさむ。当然そう考える。
ところが、一人当たり医療費 vs 高齢化率の相関を見ると、説明力がほとんどない。
確かめるために重回帰(医療費 ~ 病床数+医師数+高齢化率)を回すと、こうなった。
| 説明変数 | 標準化β | p値 |
|---|---|---|
| 病床数(人口10万対) | +0.79 | <0.001 |
| 高齢化率 | +0.03 | 0.70 |
| 医師数(人口10万対) | (弱い) | – |
決定係数 R²=0.841。病床数のβが圧倒的で、高齢化率は β=0.03・p=0.70 とほぼゼロ。高齢化は、医療費の地域差をまったく説明していなかった。
「いやいや、それでも年齢構成を補正したら高齢化が効くはずだ」と思うだろう。そこで**間接標準化(年齢調整)**をかけて、全国共通の年齢別単価で各県の「期待医療費」を計算し、実際との比(SMR)を出した。65〜69歳・70〜74歳・75歳以上の3区分まで細かく分けて補正している。
結果は変わらなかった。年齢調整後も、
- 病床数との相関 r=0.675
- 高齢化率との相関 r=0.048(p=0.75)→ 消滅
しかもねじれが起きる。年齢調整すると、**高齢な東北や北陸ほど医療費は"過少"、若い都市部や西日本ほど"超過"**になる。「高齢だから医療費が高い」の逆だ。
高齢化は、シロだった。
犯人候補②:所得・③健康意識 → ❌
「豊かな県だから医療にお金をかけられる」説も否定できる。所得の高い東京・神奈川・埼玉は、むしろ医療費が低い側にいる。
では「不健康な県ほど病気になって医療費がかさむ」のか。これも違った。喫煙・飲酒・塩分・肥満から作った「不健康スコア」と年齢調整医療費(SMR)の相関は、むしろマイナスだ。
| 生活習慣 | 年齢調整医療費(SMR)との相関 |
|---|---|
| 喫煙率 | r = −0.24 |
| 飲酒習慣 | r = −0.23 |
| 食塩摂取 | r = −0.37(p=0.01) |
| 肥満率 | r = +0.15(有意でない) |
| 不健康スコア(合成) | r = −0.22 |
喫煙や塩分の多い東北・北関東ほど、医療費はむしろ低い。直感と真逆だ。
高齢化も、所得も、健康意識も、医療費の地域差を説明できなかった。
犯人候補④:医療アクセス → ❌(ここが一番の意外性)
ここで多くの人はこう考える。「医療費が低い県=医療が足りない県=病院にかかれず短命なのでは?」
東北はまさにこのイメージだ。短命県として知られる。だが東北は〈医療費も低い・病床もそこまで多くない〉。なら「かかれずに短命」なのか?
年齢調整死亡率(男・2020年)でぶつけてみた。
| 死亡率(男)との相関 | r |
|---|---|
| 年齢調整医療費(SMR) | +0.02 |
| 医師数(10万対) | +0.04 |
| 病床数(10万対) | 弱い〜正 |
「医療費を多く使う県ほど長生き」という関係は、確認できなかった(医療費SMRと死亡率の相関はほぼゼロ)。逆に、死亡率を強く説明したのは生活習慣のほうだった。
| 死亡率(男)との相関 | r |
|---|---|
| 喫煙率 | +0.47 |
| 飲酒習慣 | +0.46 |
| 肥満率 | +0.40 |
| 不健康スコア | +0.55 |
短命県・青森は死亡率が最も高く、しかしSMR(年齢調整医療費)は0.9で低い。長命なのは長野・神奈川・京都・奈良・滋賀。
読者の直感はこうだ。「短命=医療資源が足りない」。
だがデータでは、短命県で医療資源不足の影響は確認できず、死亡率との関連は生活習慣指標(喫煙・飲酒・肥満)のほうが強かった。「かかれずに短命」という説は、少なくともこのデータでは支持されなかった。
(念のため。相関がゼロでも因果がゼロとは言えない。県レベルの相関は、元の健康状態・所得・気候・産業構造などの交絡で消えうる。ここで言えるのは「医療費を多く使う県ほど長生き、ではなかった」までだ。)
真犯人:病床数だった
候補を片っ端から潰した結果、残ったのは病床数だ。
人口10万対病床数 × 一人当たり医療費 = r=0.903。年齢を調整しても r=0.675 で生き残る。重回帰でもβ=0.79で支配的。
右上に高知、左下に埼玉・神奈川。きれいな右肩上がりで、しかも西日本(オレンジ)が上、東日本(青)が下に固まっている。
これは医療経済学で古くから知られる「Roemer's Law(病床を作れば、それは埋まる)」と整合する。供給が需要を生む、という話だ。
でも、相関0.9を見せられても「で、なぜ?」が残る。ここからが本題だ。
なぜ病床が多いと医療費が増えるのか
「病床があるから埋める」の中身を、データで分解してみる。
① 病床が多い県は「入院しやすく・長く入院する」
| 病床数(10万対)との相関 | r |
|---|---|
| 入院受療率(人口10万対) | +0.984 |
| 平均在院日数 | +0.894 |
| 病床利用率 | +0.286(弱い) |
病床数と入院受療率は r=0.984 とほぼ完全に連動する。病床が多い県では、人々がより入院する。そして在院日数も長い。一方で病床利用率(埋まり具合)との相関は弱い——つまり「満床まで詰め込む」のではなく、入院の敷居が下がり、在院が延びる形で病床が消費されている。
そしてその入院は、医療費に直結する。
| 一人当たり医療費との相関 | r |
|---|---|
| 入院受療率 | +0.908 |
| 平均在院日数 | +0.734 |
② それは「患者が重いから」ではない
ここが決定的だ。「病気が重い県だから入院が多いのでは?」という反論を、偏相関で検証した。
- 病床数を一定にして、死亡率と入院受療率の関係を見ると → r=−0.09(p=0.53、消滅)
- 逆に死亡率を一定にしても、病床数と入院受療率は r=+0.979 のまま
つまり、「患者が重いから入院が多い」のではなく「病床があるから入院が起きている」。重症度(死亡率)で説明しようとすると、関係は消える。残るのは供給側だ。
この一連の流れを1枚にまとめると、こうなる。
個人的に一番衝撃的なのは、病床数と入院受療率の r=0.984だ。医療費との r=0.903 よりさらに高い。病床という「箱」の数が、ほぼそのまま「人々がどれだけ入院するか」を決めている。
差を生んでいたのは「急性期」ではなく「慢性期」
ここでもう一段、病床を種類で分けてみる。「急性期(一般病床)」と「慢性期(療養病床)」だ。性格が、まるで違った。
| 病床の種類 | 平均在院日数 | 範囲 | 県間のばらつき(CV) |
|---|---|---|---|
| 一般病床(≒急性期・命を救う医療) | 16.4日 | 13.3〜20.2日 | 0.09(均一) |
| 療養病床(≒慢性期・長期入院) | 116.9日 | 83.8〜187.0日 | 0.19(バラバラ) |
オレンジ(一般病床)はどの県も16日前後に密集しているのに、ティール(療養病床)は84日から187日まで大きく散らばっている。急性期医療は、全国どこでも16日前後でほぼ均一だ。脳卒中・心筋梗塞・外傷・がん手術——「必要な患者が来る」需要主導の医療なので、県による差は小さい。
地域差を生んでいたのは、慢性期の療養病床のほうだった。富山187日、高知133日、大分84日。同じ国とは思えないほどばらつく。療養病床の割合が高いのは山口(29.7%)・高知(28.5%)・佐賀・徳島といった西日本、低いのは岩手(12.6%)・秋田・福島といった東北だ。
命を救う急性期医療は、全国ほぼ同じだった。地域差を生んでいたのは、慢性期の長期入院だった。
正直に補足すると、医療費は一般病床(r=0.83)にも療養病床(r=0.79)にも反応する。だから「療養病床だけが犯人」ではない。正確には「医療費は病床供給全体に依存するが、県間"格差"を生んでいるのは慢性期」だ。
なぜ慢性期だけがこんなに県でばらつくのか。医療経済学では、介護施設や家族介護の受け皿不足による「社会的入院」が一因として指摘されている。ただし後で見るように、今回の分析では独居率や世帯構造だけでは説明できなかった。少なくとも県レベルでは、病床供給の歴史的なストックの影響のほうが強く見える。
「家族がいないから社会的入院が増える」を検証したら、外れた
ここで当初、私はこう予想していた。「独居高齢者が多い県ほど、退院後の受け皿がなく療養病床が増える」のではないか、と。直感的には正しそうだ。だから世帯構造のデータ(独居高齢者率・高齢夫婦のみ率・持ち家率)を、療養病床にぶつけてみた。
結果は、支持しなかった。独居高齢者率と療養病床には単純な相関(r=0.54)があるものの、病床数を一定にすると関係は消える(偏r=−0.17、有意でない)。持ち家率・高齢夫婦のみ率も療養病床とはほぼ無相関だった。そして反例が強い。富山(独居11.5%)や佐賀(独居11.8%)のように、独居率が低いのに療養病床が多い県がある。少なくとも県レベルでは、療養病床の地域差は家族構造よりも、病床供給の歴史的なストックの影響を強く受けているように見える。
ただし一つだけ、別の関係が残った。独居高齢者率は、病床数を制御しても医療費(全体)とは偏r=+0.48の関連が残る。つまり「独居 → 療養病床」ではなく、「独居 → 別ルート → 医療費」がありそうだ。外来受診の増えやすさ、救急搬送、終末期の病院死など候補はあるが、独居率が高い県には都市部も混ざるため、ここはまだ断定できない。次の宿題として残しておく。
都合のいい結果だけを拾うのではなく、有力そうに見えた仮説を一度きちんと潰しておく。そのうえで残るのは、結局この問いだ。なぜ西日本には、歴史的にこれほど病床が多く残ったのか。ここまで来ると、医療費分析というより、日本の医療制度史の話になってくる。
ここで視点が一段変わる:病院で看るか、施設で看るか
療養病床が少ない県は、高齢者ケアを放棄しているのか? そんなはずはない。別の器で受けているはずだ。そこで介護施設(特養・老健)の定員を、対65歳人口で突き合わせた。
| 療養病床(対65歳)との相関 | r |
|---|---|
| 特養(介護老人福祉施設) | −0.40(p=0.006) |
| 老健(介護老人保健施設) | −0.07(無関係) |
| 介護施設計 | −0.31 |
弱いながら、療養病床が少ない県ほど特養が多いという代替の傾向が出た(老健は無関係だったのは少し意外)。
そして、医療費との関係を見ると——ここが一番面白い。
| 一人当たり医療費との相関 | r |
|---|---|
| 療養病床(対65歳) | +0.72 |
| 介護施設計(老健+特養) | −0.09(ほぼゼロ) |
同じ高齢者を長期ケアしても、「病院の療養病床」で看れば国民医療費に計上され、「介護施設」で看れば医療費には乗らない(介護保険という別会計だから)。
代表選手で見るとわかりやすい。
| 県 | タイプ | 療養病床 | 介護施設 | 医療費 |
|---|---|---|---|---|
| 高知・山口 | 病床型(病院で抱える) | 多い | 中 | 高い |
| 新潟・長野 | 施設型(施設で抱える) | 少ない | 多い | 低い |
新潟は療養病床が最少クラスなのに介護施設は最多クラス、そして医療費は低い。病院で看るか、施設で看るか——その選択の違いが、医療費という数字に表れていた。
横軸に療養病床、縦軸に介護施設をとり、点の色を医療費にした。右側(病床型=高知・山口・徳島)は赤=高医療費、左上(施設型=新潟・長野)は青=低医療費。同じ「高齢者を支える」でも、右に行くほど医療費に、上に行くほど介護費に計上される。
ちなみに「長期ケアの総量(療養病床+老健+特養)」を死亡率とぶつけても、寿命を延ばす方向の関係は出ない(r=+0.46はむしろ正で、不健康な地域ほどケア需要が高いという逆向きの交絡)。病院で看ても施設で看ても、同じ高齢者ケアなら、寿命に劇的な差が出ないのは不思議ではない。
最後の問い:医療費が高い県は、本当に負担が重いのか
「病院で看れば医療費、施設で看れば介護費」なら、こんな疑問が湧く。医療費が低い県は、介護費に回っているだけでは?
そこで介護保険給付費(2023年)を足し合わせてみた。結論を正直に言うと、「医療費↓なら介護費↑」という単純な強い代替は成立しない(医療費 vs 介護費の相関は −0.29〜+0.24で、正規化のしかたで符号が変わる程度)。ここを単純化すると議論が崩れる。
ただし、地味だが重要なことが起きる。医療費と介護費を合計すると、ばらつきが縮む。
| 一人当たり | ばらつき(CV) | 最大/最小 |
|---|---|---|
| 医療費 | 0.098 | 1.45倍 |
| 介護費 | 0.122 | 1.70倍 |
| 医療+介護 合計 | 0.093(最小) | 1.40倍(最小) |
合計のばらつきが、医療費単独・介護費単独より小さくなる。これは「同じ需要(高齢者ケア)が、制度の違いで医療と介護に配分されている」ときに典型的に出るパターンだ。神奈川は医療費が下から2番目なのに介護費(対65歳)は最高水準——医療を抑え、介護で支える型だ。
裏返すと、こうも言える。
日本の高齢者ケアの総量は、地域差そのものよりも、「医療保険で払うか/介護保険で払うか」という制度分割の影響を強く受けている。
まとめ:医療費は「健康の差」ではなく「ケアの場所の差」だった
- 医療費の地域差は1.45倍。だが高齢化・所得・健康意識・医療アクセスでは説明できなかった
- 残ったのは病床数(r=0.903)。病床が多い県ほど入院しやすく・長く入院する(受療率 r=0.98)
- それは「患者が重いから」ではない。偏相関で重症度を一定にしても供給効果は残る(Roemer's Law)
- 急性期医療は全国ほぼ均一(在院16日・CV0.09)。差を生むのは慢性期(療養病床84〜187日)
- 同じ高齢者ケアでも、病院で看れば医療費、施設で看れば介護費。新潟=施設型、高知=病床型
- 医療+介護の合計で見るとばらつきが縮む=制度間の配分の差を見ていた可能性
医療費の地域差は、住民の健康状態の差を映していたわけではなかった。高齢者を病院で看る県もあれば、施設で看る県もある。医療費とは、長期ケアをどこで提供するかという制度的な選択の写し絵だった。
あえて踏み込まないこと
この分析が示せたのは「何が起きているか」だ。一方で「どう改革すべきか」には、あえて踏み込まない。そこは一気に政治・価値観・利害の世界に入る。
「全国一律で支えるべきか/地域ごとに負担を変えるべきか」「在宅介護をもっと評価すべきか」「公的負担を増やすか/自己負担を増やすか」——これらはデータだけでは決まらない。
特に強調しておきたいのは、「医療費が高い県の高齢者が得をしている」わけではないということだ。高知が病床型なのは、住民がそれを望んだからとは限らない。家族が近くにいない、特養が足りない、昔から病院が受け皿だった——そうした事情の結果かもしれない。だからこれは「高知のお年寄りが得/損」という話ではなく、より正確には「同じ保険料でも、病院という高コストな形でケアを受ける地域と、家族や施設で支える地域があるように見える」という話だ。
そして今回測れたのは、医療費・病床・介護施設という「お金と箱」までだ。
- QOL(生活の質)
- 本人の満足度
- 家族の介護負担
- 孤独感
これらは測れていない。だから「高知型(病院で看る)と新潟型(施設で看る)、どちらが高齢者本人にとって幸せか」という一番知りたい問いには、このデータでは答えられない。
言えるのは「お金の流れは見えた」まで。「どちらが望ましいか」は、まだ分からない。この一線は、あえて越えない。
限界とフェアネス
- これは都道府県という集団単位の相関であり、個人の因果ではない(生態学的誤謬に注意)。「医療費が無駄」「病院が悪い」という話ではない。
- サ高住・有料老人ホーム・在宅介護は今回のデータに入っていない(国交省登録など別系統のため)。特に東京・神奈川・埼玉・千葉はこの"見えない受け皿"が大きそうで、「大都市圏は長期ケアが不要だった」とは言えない。「病院・特養・老健以外の受け皿が大きい可能性がある」に留める。
- 入院医療費は病床利用そのものなので、病床数との関連には定義的な部分も含まれる。
- 病院は制度の中で合理的に動いているだけ、という面がある。問題の立て方は「誰が悪いか」ではなく、「同じ税金・保険料を使うなら、本当に効果のある形で使えているか」という問いだ。ただしその答えは、QOLや家族負担を測れていない本稿の外にある(前節)。
次に掘るなら
「医療費の地域差」の次は、高齢者ケアの"総コスト"(医療費+介護費+自己負担+サ高住・在宅)だ。そこまで合算して初めて、〈本当に効率的な県〉と〈費用を別の財布に移しているだけの県〉が分けられる。
その先には、もう統計だけでは進めない領域がある。「医療費の地域差を調べたら、最後は『公平とは何か』の話になった」——都市部の現役世代、地方の高齢者、在宅で介護する家族、病院、介護施設。それぞれの立場から眺める話は、統計記事ではなく政策エッセイになる。だからこの記事とは分けたい。
医療費の話だと思って始めたら、いつのまにか高齢者ケアの会計構造の話になっていた。データは、思っていたより遠くまで連れて行ってくれる。ただし「どこで降りるか」を決めるのは、データではなく書き手の節度だ。
e-Stat Analysis Pipeline | 国民医療費 0003356095 / 医療施設調査 0004024814 / 病院報告 0004029028 / 患者調査 0004026111 / 人口動態 0002061839 / 社会・人口統計体系 0000010109・0000010110・0000010201・0000010208 | 2023年(死亡率2020年・世帯構造2020年)




