0
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

「老後2000万円」を47都道府県で計算したら、1位が条件次第で37位になった

0
Last updated at Posted at 2026-08-02

シリーズ「その数字、誰の話?」 ― 公的統計を47都道府県で確かめる

★① 47都道府県ランキング(本記事)
② 何年働けば「2000万円」が要らなくなるのか(近日公開)
③ 「地方は安い」は九州だけだった(近日公開)
④ このシミュレーターの作り方(近日公開)
⑤ 1人なのに2人より高い県(近日公開)
⑥ 持ち家か賃貸か、フェアに比べる(近日公開)
⑦ 倍率1位と金額1位は違う(近日公開)
⑧ 「2000万円」が当てはまるのは7.3%(近日公開)
⑨ 安い県ほど介護費の割合が高い(近日公開)
⑩ 年金の地域差(近日公開)

TL;DR

  • 公的統計から、65歳から平均余命までに必要な老後資金を47都道府県ぶん計算しました
  • 夫婦・持ち家だと、いちばん必要なのは群馬県の2,793万円東京は4位(2,488万円)でした
  • ところが条件を変えると、1位の群馬が37位に落ち、最下位の沖縄が2位に上がります。ランキングがそっくり裏返りました
  • 県の差は3.5倍。でも同じ沖縄県の中だけで9.2倍動きます。地域差より条件差のほうが大きい、というのがこの計算のいちばんの結論です
  • 47県ぶんの再計算は全部ブラウザ上のJavaScriptでやっています。 データ埋め込みの静的サイト・フレームワークなし・GitHub Pages
  • この記事の数字はすべて data.js から機械生成しました。手打ちはゼロです

image.png

先に自分の県で見たい方はこちらからどうぞ 👉 あなたの老後資金、HOW MUCH?

この記事に出てくる条件は、すべてリンクになっています。クリックするとその条件でツールが開くので、数字が本当にそうなるかは手元で確かめてください。

何を、どういう前提で計算したか

「老後2,000万円」は、全国・全世帯を平均した1点です。でも実際に必要な額は、住む場所や世帯構成や持ち家かどうかで大きく動くはずです。それが知りたくて、47都道府県ぶん計算し直しました。

計算式そのものは単純です。

月の不足   = 月の生活費 − 月の年金
不足の累計 = max(月の不足, 0) × (老後年数 + 長生き年数) × 12
必要額     = 不足の累計 + 生活の予備費 + 健康・介護の予備費

使ったデータと前提はこうです。

項目 内容 出典
月の生活費 県別の10大費目(食料・住居・光熱水道・家具・被服・保健医療・交通通信・教養娯楽・その他) 家計調査2023/全国家計構造調査2024(e-Stat)
月の年金 県別の想定年金額(地域差反映) 公的統計をもとに算出
老後年数 65歳時点の平均余命(男性19.5年/女性24.4年) 簡易生命表2023
賃貸時の家賃 県別の借家家賃(家賃0円を含まない) 住宅・土地統計調査2023
健康・介護の予備費 500万円(標準シナリオ)+長生き+2年 生命保険文化センター2021をもとに設定
生活の予備費 300万円(大規模リフォーム等の一時費用) 固定値

この記事の表は、条件を次に固定しています。夫婦二人/持ち家/生活スタイルは県平均(実データ)/男性/年金は地域差反映/標準シナリオ

金融商品の話はしません。「こうすべき」も書きません。条件を変えると数字がどう動くか、それだけを見ます。

結果:47都道府県ランキング

必要額が多い順です。県名をクリックすると、その県の条件でツールが開きます(記事と同じ数字が出ます)。中間の32県は折りたたんであるので、自分の県を探すときは開いてください。

上位10県

順位 都道府県 必要額(持ち家) 月の生活費 月の年金 月の不足 賃貸なら
1 群馬県 2,793万円 294,000円 216,733円 77,267円 3,309万円
2 石川県 2,779万円 307,000円 230,298円 76,702円 3,527万円
3 高知県 2,602万円 273,000円 203,168円 69,832円 2,602万円
4 東京都 2,488万円 284,000円 218,583円 65,417円 4,320万円
5 鳥取県 2,483万円 290,000円 224,749円 65,251円 2,561万円
6 山梨県 2,440万円 279,000円 215,423円 63,577円 3,317万円
7 秋田県 2,397万円 263,000円 201,087円 61,913円 3,223万円
8 栃木県 2,363万円 277,000円 216,425円 60,575円 2,698万円
9 岡山県 2,303万円 279,000円 220,741円 58,259円 2,845万円
10 千葉県 2,269万円 286,000円 229,065円 56,935円 3,353万円
11位〜42位を開く(32県)― 自分の県はここにあるかもしれません
順位 都道府県 必要額(持ち家) 月の生活費 月の年金 月の不足 賃貸なら
11 岐阜県 2,224万円 270,000円 214,806円 55,194円 3,179万円
12 福島県 2,195万円 262,000円 207,947円 54,053円 2,994万円
13 茨城県 2,189万円 285,000円 231,146円 53,854円 3,015万円
14 長野県 2,136万円 275,000円 223,208円 51,792円 3,091万円
15 奈良県 2,134万円 278,000円 226,291円 51,709円 3,218万円
16 富山県 2,102万円 281,000円 230,530円 50,470円 3,160万円
17 静岡県 2,090万円 282,000円 231,994円 50,006円 3,019万円
18 山形県 2,069万円 273,000円 223,824円 49,176円 2,765万円
19 愛知県 2,067万円 270,000円 220,895円 49,105円 3,151万円
20 兵庫県 2,033万円 271,000円 223,208円 47,792円 3,194万円
21 京都府 2,009万円 279,000円 232,148円 46,852円 3,015万円
22 新潟県 1,932万円 267,000円 223,131円 43,869円 3,041万円
23 北海道 1,881万円 252,000円 210,105円 41,895円 2,552万円
24 岩手県 1,862万円 275,000円 233,844円 41,156円 2,687万円
25 三重県 1,787万円 259,000円 220,741円 38,259円 2,509万円
26 埼玉県 1,785万円 265,000円 226,830円 38,170円 2,843万円
27 福井県 1,772万円 275,000円 237,312円 37,688円 2,417万円
28 徳島県 1,744万円 250,000円 213,419円 36,581円 2,750万円
29 神奈川県 1,673万円 265,000円 231,146円 33,854円 3,170万円
30 宮城県 1,618万円 253,000円 221,281円 31,719円 2,676万円
31 香川県 1,588万円 258,000円 227,447円 30,553円 2,620万円
32 滋賀県 1,553万円 240,000円 210,799円 29,201円 2,714万円
33 大阪府 1,450万円 236,000円 210,799円 25,201円 2,689万円
34 熊本県 1,381万円 223,000円 200,471円 22,529円 2,310万円
35 愛媛県 1,212万円 225,000円 209,026円 15,974円 2,038万円
36 青森県 1,180万円 222,000円 207,253円 14,747円 2,109万円
37 鹿児島県 1,160万円 224,000円 210,028円 13,972円 1,496万円
38 広島県 1,131万円 253,000円 240,164円 12,836円 2,292万円
39 島根県 1,038万円 246,000円 236,773円 9,227円 1,812万円
40 山口県 1,029万円 230,000円 221,127円 8,873円 1,829万円
41 佐賀県 1,011万円 229,000円 220,818円 8,182円 2,043万円
42 福岡県 987万円 231,000円 223,747円 7,253円 2,019万円

下位5県

順位 都道府県 必要額(持ち家) 月の生活費 月の年金 月の不足 賃貸なら
43 大分県 876万円 228,000円 225,057円 2,943円 1,702万円
44 宮崎県 866万円 224,000円 221,435円 2,565円 1,666万円
45 長崎県 819万円 216,000円 215,269円 731円 1,644万円
46 和歌山県 800万円 199,000円 212,032円 0円 1,238万円
47 沖縄県 800万円 181,000円 187,676円 0円 1,763万円

最多の群馬県2,793万円と、最少の800万円で3.5倍。2,000万円を上回るのは21県、下回るのは26県でした。

ただし先に言っておくと、この順位は条件を1つ変えるだけで崩れます。 最下位の沖縄が2位まで飛びます。その話は後半でやります。

なぜ東京が4位なのか

「都会のほうが老後にお金がかかる」という直感が、ここで外れます。分解したら理由がはっきりしました。

まず、東京の月の消費支出は47県中7位です。1位は石川県の305,692円。そもそも最高ではありません。

費目別に、上位の県と並べてみます。

費目 東京都 群馬県 石川県 高知県
食料 95,000(1位) 84,000 86,000 78,000
住居 17,000(17位) 26,000 18,000 43,000(1位)
交通・通信 28,000(41位) 59,000 62,000 36,000
教育・教養娯楽 36,000(2位) 25,000 22,000 21,000
その他(交際費等) 43,000 39,000 49,000 40,000
合計 284,000 294,000 307,000 273,000

東京が突出しているのは食料(47県で1位)と教育・教養娯楽(2位)です。ところが交通・通信が41位で、群馬・石川との差が月3万円以上あります。食料と教養娯楽で稼いだ差を、交通・通信の差が食い切ってしまう。これが東京が4位になる理由でした。

さらに持ち家前提だと、東京の住居費は17位(17,000円)にとどまります。結果、月の不足額は東京65,417円に対して群馬77,267円。順位が入れ替わります。

ただし「地方は車社会だから交通費が高い」と単純化はできません。交通・通信費の最高値は京都府の70,000円です。ツール側では交通費が高い県に「車社会」の注記を出しているのですが、この判定から大都市圏を明示的に除外しました。データから文章を生成する処理は、例外を先に潰さないと平気で嘘をつきます。

このランキング、条件を変えると壊れます

ここからが本題です。

上の表は「夫婦・持ち家・県平均の暮らし・男性」という、たった1つの条件での結果でしかありません。条件を賃貸・ゆとりのある暮らし(月36万円)・女性に変えて、同じ47県をもう一度並べ直しました。

都道府県 持ち家・県平均・男性 賃貸・ゆとり・女性 変化
沖縄県 47位(最下位) 2位 +45
熊本県 34位 4位 +30
滋賀県 32位 3位 +29
青森県 36位 7位 +29
大阪府 33位 5位 +28
群馬県 1位 37位 −36
石川県 2位 39位 −37
高知県 3位 45位 −42
鳥取県 5位 47位(最下位) −42

1位と最下位が、ほぼそっくり入れ替わりました。

理由はデータから説明できます。3つあります。

生活費が安い県ほど「上げしろ」が大きい。 「ゆとり」を選ぶと、生活費は全国どこでも月36万円に揃います。県平均が18.1万円しかない沖縄は倍近く増えるのに対して、もともと29.4万円ある群馬はほとんど増えません。県平均が安いということは、平均から外れたときの伸びしろが大きいということでもあります。

安い県ほど、年金も薄い。 沖縄の想定年金は187,676円で47県中最低です。生活費が上がった瞬間、不足額が他県より大きく膨らみます。

住居費の置き換わり方が逆向きに効く。 高知の持ち家住居費43,000円は47県最高ですが、家賃も43,093円なのでほぼ同額です。賃貸にしても増えないどころか、「ゆとり」で膨らんだ住居費が実家賃に置き換わって下がります。東京や沖縄はその逆でした。

自分で入れ替えてみる 👉 沖縄・賃貸・ゆとりで開く群馬・賃貸・ゆとりで開く

地域差より、条件差のほうが大きい

計算する前、私は「地域差がどれくらいあるか」を知りたいと思っていました。結果はその想定より、もっと身も蓋もないものでした。

47県の幅は、800万円から2,793万円で3.5倍です。これでも十分大きい。

ところが、沖縄県ひとつの中だけで800万円から7,368万円まで動きます。持ち家・県平均・男性なら800万円、賃貸・ゆとり・女性なら7,368万円。同じ県で9.2倍です。

何を変えたか
住む県を変える(条件は固定) 800万円 〜 2,793万円(3.5倍)
沖縄県の中で条件を変える 800万円 〜 7,368万円(9.2倍

つまり「老後資金がかかる県ランキング」という表現自体が、条件を書かないと意味を持ちません。冒頭の「東京は4位」も「群馬が1位」も、持ち家・県平均という条件の上でしか成り立たない話です。

そして裏を返せば、どこに住むかより、どう暮らすかのほうが効くということでもあります。移住は簡単ではありませんが、条件のほうはある程度こちら側で選べます。この連載では、その「どの条件がどれだけ効くのか」を1本ずつ確かめていきます。

正直な注意点

数字を出す以上、限界も書いておきます。大事なものを3つだけ。

  1. 和歌山県・沖縄県の800万円は「床」です。 この2県は県平均の生活費が想定年金を下回るため月の不足が0になり、残るのは予備費300万円+健康・介護500万円だけになります。「800万円で足りる」という意味ではありません。実質的な最少は長崎県の819万円からです。
  2. 上位数県の順位は標本誤差に敏感です。 県別の消費支出は家計調査の県別標本によるもので、調査年で並びが入れ替わり得ます。「群馬が1位」ではなく「この統計ではこうなる」として読んでください。
  3. 「ゆとり」は全国一律で月36万円にスケールする仕組みです。 県別の費目の構成比は保ったまま総額だけを揃えるので、県平均が安い県ほど増加幅が大きくなります。「沖縄が2位に上がる」という結果は、この設計を理解したうえで読んでください。

そのほか、消費支出ベースなので固定資産税は持ち家に入っていません(フェアに比べ直す話は第6回で)。都道府県平均なので県内の差も出ません(ツール側で10費目を1円単位で編集できるようにして補っています)。将来の年金・物価・制度変更も織り込んでいない、概算の一例です。

実装メモ

  • HTML + JavaScript のみ、フレームワークなし。 47県 × 10費目をJSオブジェクトに埋め込んでいるので、fetchもCORSも不要です。ダブルクリックでも動くし、GitHub Pagesにそのまま置けます。47県ぶんの再計算は毎回クライアント側で回していますが、この規模なら十分軽量でした。
  • URLパラメータで状態を復元できるようにしました。この記事の県名リンクはその仕組みです。?p=群馬県&pm=region&h=couple&t=own のように条件を渡すと、その状態で開きます。記事の数字と読者が見る数字が食い違わないようにするためです。
  • この記事の数字は、すべて data.js から機械生成しています。 アプリと同じ計算関数を写したスクリプトの出力をそのまま貼っただけで、手打ちは1つも挟んでいません。データを更新したら記事も作り直せます。

作り方の詳細(e-Statのデータ整形からGA4の計測設計まで)は、連載の第4回で書きます。

次回

「あなたの県で、2,000万円を不要にするには何年働けばいいか」を47都道府県で逆算します。

65歳以降も働いて不足を埋めるとして、必要な年数は県ごとにまったく違いました。何年働いても届かない条件もあれば、そもそも0年でいい県が26あるというのが計算結果です。

よかったら教えてください

この記事、読んで終わりだと半分もったいないので、2つだけ聞かせてください。

  • あなたの県は何位でしたか?
  • 持ち家を賃貸に切り替えると、何位に動きましたか?

ツールの上でラジオボタンを1つ変えるだけです。動き方には相当な差があって、東京は1,832万円も増えるのに、高知はまったく動きません(+0万円)。理由は本文の3つ目に書いたとおりです。自分の県がどちら寄りだったか、コメントで教えてもらえると嬉しいです。

あなたの老後資金、HOW MUCH?

47都道府県 × 世帯 × 持ち家/賃貸 × 生活スタイルで必要額を計算して、何を変えると必要額がどれだけ変わるかを並べて表示します。無料・登録不要・金融商品の勧誘は一切ありません。個人が公的統計を使って作っているものです。


この記事は連載「その数字、誰の話?」の第1回です。全10回で、47都道府県のデータを使って老後にまつわる思い込みを1つずつ検証していきます。次回以降を読み逃したくない方は、フォローしていただけると届きます。

0
1
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
1

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?