この記事は、日立ソリューションズ OSS Advent Calendar 2021 の記事になります。
はじめに
こんにちは。日立ソリューションズの森下です。
早いもので2021年も終わりですね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
今回は年末ということで、この1年OSS界隈で話題になった出来事を10選としてまとめてみたいと思います。
個人的には10月にOSS管理ブログをスタートしたことが最大のニュースなのですが、この記事ではOSS界隈全体で話題になったニュースを取り上げたいと思います。
参考までに、2019年版、2020年版のリンクも載せておきます。よければご覧ください。
前提
- 選定対象はOSS全般のニュースに限ります。個々のOSSプロジェクト内で盛り上がった話題ではなく、OSS界隈全体で盛り上がった話題が選択対象です。
- 本記事で取り上げるニュース・出来事においては、法的な事案、および社会的な思想に関する内容を一部含みます。各内容を紹介することは、各当事者の立場を肯定および否定することを意図しておらず、あくまで多くの議論を呼んだ"事実(fact)"の紹介として取り上げておりますので、その点ご承知おきください。
2021年のOSSニュース10選
それではさっそく行ってみましょう!
[1月] GitHubに銀行などのソースコードが流出
<概要>
委託先の企業に勤務するエンジニアがソースコードをGitHubに公開してしまった問題が各所で大きな話題となりました。情報流出先がGitHubだったことから、エンジニア界隈からは「GitHubを禁止する企業が増える」「GitHubは悪くない」などの意見が多数見られました。
[3月] リチャード・ストールマンがFSF理事に復帰
<概要>
2019年に失言で辞任していたリチャード・ストールマン氏がフリーソフトウェア財団(Free Software Foundation:FSF)の理事に復帰しました。本件にはRed HatやSUSEのほか、MozillaやOpen Source Initiative(OSI)らも反発しており、またFSFの内部メンバーも辞任するなど、さまざまな議論を呼びました。
[4月] Java著作権侵害訴訟でGoogleがOracleに勝訴
<概要>
10年続いたGoogleとOracleの裁判が決着しました。本裁判では、Java APIをAndroidに流用することがフェアユースになるか否かが争点となっていました。AndroidとOSSの今後を占う裁判だっただけに、OSS界隈でも注目となっていました。
[4月] 経産省が国内企業のOSS管理手法に関する事例集を公開
<概要>
産業界でOSS利用が加速していることを受けて、経済産業省は上記の事例集を公開しました。トヨタ、ソニー、日立など、15社のOSS管理手法が事例として掲載されています。
[6月] AIプログラミング機能「GitHub Copilot」公開
<概要>
Copilotでは、イーロン・マスク氏らが立ち上げた米OpenAIの「OpenAI Codex」が用いられています。自然言語処理モデル「GPT-3」が基になっており、学習にはGitHubの公開リポジトリにあるコードなど数十億行のコードが使われているそうです。革新的な技術である一方、著作権やセキュリティの問題も各方面から叫ばれており、今後の展開が注目されます。
[6月] オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」が7月で更新停止
- MOONGIFT Archived
- MOONGIFT更新停止のご連絡 (リンク切れのためInternet ArchiveのURLとなります。)
<概要>
ITエンジニア向けにオープンソースを紹介するサイト「MOONGIFT」が更新を恒久的に停止しました。2004年から"毎日"更新を続けてきた当サイトについては、「自分のOSSを掲載してもらった」というエンジニアも多かったようで、多くの方々がSNSなどで労いのコメントを寄せていました。
[7月]趣味で作ったソフトウェアが海外企業に買われ分野世界一になるまでの話
<概要>
コンテナイメージの脆弱性スキャナー「Trivy」が競合のツールを抜いてGitHubのスター数で世界一のOSSになりました。本ツールは日本人エンジニアが趣味で開発したOSSでしたが、2019年にイスラエルのAqua Security社に買収された後、現在ではGitLabやHarborなどで採用される著名OSSになっています。国産のOSSが世界で使われている事例として、多くのエンジニアに注目されました。
[8月] Linux生誕30周年
<概要>
言わずと知れたLinuxですが、今年の8月25日に誕生から30周年を迎えました。上で言及したTrivyと同じく、Linuxも趣味から始まっているとのことです。
[10月] GitLabが時価総額1兆円規模で上場
<概要>
GitLabが米国ナスダック市場にIPO(新規株式公開)を果たしました。OSSの開発者向けツールであるGitLabは、開発基盤として利用しているエンジニアも多かったようで、大きな反響を呼びました。
[10月] トランプ前大統領の新SNSがAGPL違反
<概要>
TwitterやFacebookなどのSNSから追放されたアメリカ前大統領ドナルド・トランプ氏は、独自のSNS「TRUTH Social」の立ち上げを発表していました。このSNSには「Mastodon(マストドン)」というAGPLのOSSが利用されているとのことで、マストドン陣営はライセンスに基づいてソースコードの公開を要求しており、その動向に注目が集まりました。
番外編
他にも数多くのOSS関連ニュースがありました。個人的に掲載したかったものを番外編としていくつか載せておきたいと思います。
- [1月] AWSをElasticが名指しで非難 ElasticsearchとKibanaのライセンスを、AWSが勝手にマネージドサービスで提供できないように変更へ
- [2月] Google、オープンソースソフトウェアの脆弱性をバージョンごとにデータベース化する「OSV」(Open Source Vulnerabilities)プロジェクトを開始
- [2月] オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)が解散
- [6月]Google、オープンソースのモジュール依存関係を分かりやすくグラフ化してくれる「Open Source Insights Project」公開
- [9月] SPDXがSBOMの国際標準に
- [9月] オープンソースのサプライチェーン攻撃は650%増加、米Sonatype
- [10月] OSS管理ブログをはじめました!
- [10月] SFCがVizioをGPL違反で提訴、「コピーレフトライセンスに遵守していない」
- [10月] OSS「Keycloak」開発プロジェクトのメンテナに日立の社員が就任
- [10月] 東京都がオープンソースソフトウェアを活用するためのガイドラインを公開
- [11月] 日米OSDN離合集散、苦闘の21年史
- [12月]「OSSで生きる」を実現するDEVプロトコルが、第19回北東アジアOSS貢献者賞を受賞
まとめ
皆さんが期待したOSSニュースはありましたでしょうか?
それではまた、来年もOSS界隈の盛り上がりに期待しましょう!