はじめに
レモン電池で豆電球がつかないという話を受けて,内部抵抗と負荷消費電力に関して簡単な考察を行った.
負荷抵抗と負荷消費電力
ここでは,電池の起電力 $E$,内部抵抗 $R_\mathrm{b}$,負荷抵抗 $R_\mathrm{l}$ のみが介在する,簡単な回路を考える.この負荷抵抗が豆電球だとすると,ここでの消費電力が大きいほど明るく光ることになる.この回路に流れる電流は,
I=\frac{E}{R_\mathrm{b}+R_\mathrm{l}},
だから,負荷での電圧降下 $V_\mathrm{l}$ は,
V_\mathrm{l}=IR_\mathrm{l}=\frac{R_\mathrm{l}E}{R_\mathrm{b}+R_\mathrm{l}},
となる.よって,負荷消費電力 $P_\mathrm{l}$ は,
P_\mathrm{l}=V_\mathrm{l}I=\frac{R_\mathrm{l}E^2}{(R_\mathrm{b}+R_\mathrm{l})^2},
となる.ここで,$R_\mathrm{l}=xR_\mathrm{b}$ とおいて整理すると,
P_\mathrm{l}=\frac{E^2}{R_\mathrm{b}}\cdot\frac{x}{(1+x)^2},
と書ける.定数 $E^2/R_\mathrm{b}$ で除したものを$x$について微分すると,
\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x}\frac{x}{(1+x)^2}=\frac{1-x}{(1+x)^3},
となり,$x=1$のとき,つまり$R_\mathrm{l}=R_\mathrm{b}$のときに最大となることが分かる.
通常,内部抵抗は十分小さいと考えられるから,負荷抵抗が小さいほど消費電力も大きくなるが,内部抵抗が負荷抵抗より大きい場合は,負荷抵抗を大きくしたほうが,負荷消費電力は大きくなるのである.このような場合,抵抗値の大きい,「暗い豆電球」のほうが明るくなる場合がある.ただし,抵抗器をつないでも,抵抗器で電力が消費されるようになるだけで,豆電球での電圧降下も電流も低下するので,より暗くなる.
また,上記は$R_\mathrm{b}$を固定して,$R_\mathrm{l}$を変数として見たときの話であり,$R_\mathrm{l}$を固定して$R_\mathrm{b}$を変数にした場合は,内部抵抗が小さいほど,負荷消費電力が大きくなる.
電池の直列つなぎと並列つなぎ
起電力と内部抵抗が同じ電池2つを直列につなぐと,電圧と抵抗はともに$2$倍になり,並列につなぐと,電圧はそのままで,抵抗は半分になる.このとき,直列につないだときの負荷消費電力$P_\mathrm{s}$と,並列につないだときの負荷消費電力$P_\mathrm{p}$は,それぞれ次のようになる.
P_\mathrm{s} =\frac{R_\mathrm{l}(2E)^2}{\left(2R_\mathrm{b}+R_\mathrm{l}\right)^2}=\frac{4R_\mathrm{l}E^2}{\left(2R_\mathrm{b}+R_\mathrm{l}\right)^2}, \\
P_\mathrm{p} =\frac{R_\mathrm{l}E^2}{\left(\frac{1}{2}R_\mathrm{b}+R_\mathrm{l}\right)^2} =\frac{4R_\mathrm{l}E^2}{\left(R_\mathrm{b}+2R_\mathrm{l}\right)^2}.
すなわち,$R_\mathrm{l}>R_\mathrm{b}$ のときは直列のほうが明るくなるが,$R_\mathrm{l}<R_\mathrm{b}$ のときは並列のほうが明るくなるのである.境界は負荷消費電力が最大となる $R_\mathrm{l}=R_\mathrm{b}$ の場合であり,このときは直列につないでも,並列につないでも,負荷消費電力は変わらない.