はじめに
「なぜ人は動かないのか?」
この問いに対して、よくある答えはシンプルです。
- やる気がない
- スキルが足りない
- 優先度が低い
ただ、実務の現場で感じるのは、それだけでは説明しきれないケースが多いということです。
提案が通らない。
ユーザーが行動しない。
自分でもやりたいのに動けない。
この違和感を整理するために、クラウゼヴィッツの「意志」と「能力」の考え方をベースに、次のフレームワークを組み立てました。
行動を分解する4要素モデル
行動発生 = 環境 × 意志 × 能力 − 抑止力
このモデルは、「人や組織が動く条件」を分解するためのものです。
各要素の定義
環境(Environment)
行動が可能になる条件や文脈。
- 時間があるか
- 接点があるか
- 市場・状況が整っているか
- 制度的に可能か
👉 「できる状況か?」
意志(Will)
行動したい理由や目的。
- やりたい
- 変えたい
- 必要性を感じている
- 優先度が高い
👉 「やりたい理由があるか?」
能力(Capability)
実際にやり切るための力。
- スキル
- リソース
- 手順理解
- 実行力
👉 「やれる状態か?」
抑止力(Resistance)
行動を止める要因。
- 不安
- リスク
- 面倒さ
- 社内政治
- 認知負荷
👉 「何がブレーキになっているか?」
なぜ「掛け算モデル」なのか
このモデルは足し算ではなく、掛け算的に考えます。
- どれかがゼロに近い → 全体も動かない
例:
- 意志がない → 動かない
- 能力がない → 空回り
- 環境がない → 実行不可
- 抑止力が大きい → 停止
実務での使い方
ケース①:提案が通らない
分解
- 環境:予算・タイミングが合っていない
- 意志:優先課題ではない
- 能力:実行体制が不足
- 抑止力:責任リスクが大きい
対応
- 環境 → タイミング変更
- 意志 → 課題の再定義
- 能力 → 実行プラン明確化
- 抑止力 → リスク低減設計
ケース②:ユーザーが行動しない(UX)
- 環境:導線が悪い
- 意志:価値が伝わらない
- 能力:使いにくい
- 抑止力:登録が面倒・不安
👉 「やる気がない」ではなく設計問題
ケース③:自分が動けない
- 環境:時間がない
- 意志:方向性が曖昧
- 能力:何から始めるか不明
- 抑止力:失敗が怖い
👉 自己否定ではなく構造分解
実装:チェックリスト化
行動できない時は、この4つで分解します。
[環境]
- いつできるか?
- 場所・時間はあるか?
[意思]
- 本当にやりたいか?
- なぜやるのか?
[能力]
- 最初の一歩は何か?
- 誰かに聞けるか?
[抑止力]
- 何が怖いか?
- 小さく試せるか?
このモデルの利点
- 人を責めなくなる
- 問題の場所が特定できる
- 打ち手が明確になる
- UX設計に転用できる
- 自己分析に使える
おわりに
人は「正しいから動く」のではなく、
「条件が揃った時に動く」。
行動しない理由を性格で片づける前に、構造として分解してみると、見え方が変わります。