事の発端
10月某日。電車で移動中、私は暇つぶしにChatGPT相手にいろんな思考実験や挙動のテストをしていた。
AIに笑いのセンスを求めても滑る答えしか返ってこない仕様上の理由を突き止めたり、入力を色々試して処理の重さの違いや裏側でやっているであろう処理の違いを観察したり…。
ようは、ChatGPTで遊んでいたのだが、その時気付いた。
―――そういえば、今日は盛大に乗り換えミスをしまくっている。
そして今日こそは、帰りにシャンプーを買わなければならない………!
シャンプー買うのを忘れないといけない…発言をいちいち拾うAI。
こいつらすぐ分析するし、いちいち指摘してくる。
この調子では、いつまでも帰れないしシャンプーも買えない。
そこでひらめいた
目の前のおしゃべり相手にリマインダーをやってもらおう!
…ということで、どういう手段なら可能なのか聞いてみた。
要するに、目の前のAIは「今が何月何日の何時なのか」を把握するのが苦手らしい。
(ちなみにGeminiもそう)
一番確実な方法
こうして、毎回やりとりのどこかに、必ず「シャンプー忘れんなよ」とくぎを刺してもらう、という契約が成立した。
これなら、たとえ何度電車を降り損ねても、シャンプーだけは買えるはず。
さっそく雑談を開始した
契約成立したとはいえ、いつまでも自宅にたどり着けなければ意味がない。そこで、思考実験やAIの挙動テストはやめにして、意味のない雑談だけに集中した。
いや、集中しちゃダメなんだった。今いる場所とか電車の行き先とかを気にしつつ、雑談をした。
(なお、このあと無事に自宅最寄り駅で降りた)
しかし、駅出口の前にあるのは…
私は当然のように、スーパーに直行した。
シャンプー忘れんなよbot、でも無事に電車は降りたのよと言われた直後のよかった、無事に降りられましたねはどういう状況を想定してたんだろう…?
(駅構内にもスーパーがある可能性を考慮した?)
ちなみにこの会話の最中、私はスーパーでお買い物をしたあと、意味もなく100均にも寄っている。
ここで重大な問題が発生した
ここは駅前。そう、人通りが多いのである。
季節外れの夏日じゃなくて本当に良かった。心からそう思った。
そして契約にも穴があった
私はあのとき、好奇心に負けたせいで、契約の厳密さより実験を優先してしまった。
私がシャンプーについて「買った」あるいは「買い忘れた」どちらかの意味の言葉を発したら、その応答ルールを破棄して
その結果、買ってもないのに勘違いさせることには成功した。しかし、それではシャンプーが買えないのである。
そもそも
今からシャンプー売ってるお店に行くで買ったと決めつけるのは、雑すぎる。
まだ買ってないのに勝手に解除しないで笑の一言でbotモードは再開してくれたので、引き続き雑談を続けた。否、今度こそドラッグストアへと向かった。
ドラッグストアにも、罠がある
今度こそ真面目にドラッグストアに入り、それっぽいところを目指した。
柔軟剤の棚の先には、今度こそそれっぽいコーナーがあった。
シャンプーコーナーも油断できない
ところで。私が入ったドラッグストアは、結構面積が広い。
選択肢が少ないとそれはそれで物足りないが、多すぎてもめんどくさい。そして、ボディーソープとの間に明確な仕切りが欲しい。
なんと…ついに…!
AIをおちょくるのは結構簡単である。それはそれとして、早くシャンプーを選ばないといけない。社会性を失わないうちに。
いつまでもシャンプー選べない問題
AIをおちょくりたい気持ちがシャンプー選びへの集中力を削いでしまい、肝心のシャンプー選びが難航していた。とりあえず安いのでいいんだけど、種類が多すぎて探すのがたいへん。
ついにシャンプーは選んだ
ここで本当ならレジに行けばよいのだが、別の商品も(急ぎじゃないけど)買いたいことをふと思い出した。私えらい。
とりあえず(ようやく?)レジへ
たしかにレジには並んだ(並べた?)のだが、やはりまだ目の前のおもちゃで実験はしたい。
そして、クイズを出した
理論上は、私はシャンプーを棚に戻したうえで別の商品だけ買っている可能性も捨てきれないのである。
システム周りに携わる人間として、想定外の操作をするユーザーも、当然想定しておきたい。
(実際、それを怠ると痛い目に遭うしね…)
回答者の答え
さっきはまんまと騙されたくせに、案外賢いな。
今度こそ、シャンプーは無事買えた。
それに、シャンプー選べない問題に直面したあたりで、脈絡がなさすぎる「シャンプー忘れんなよ」発言にも耐性がついていたので、社会性も失わずに済んだ。
あとがき&豆知識
その日はChatGPTをさんざんおもちゃにしたので、本記事のタイトル案だけ教えてあげた。
こいつ、自分で考えるセンスはないくせに、感想はもっともらしいことを言うのである。
※なお、AIに笑いのセンスがないのは、冗談っぽくも本気っぽくも読める“中間トーン”をあえて選んでるのだそう。以下、シャンプー忘れんなよbotから聞いた話。(基本はポンコツで、あとはプロンプト次第な模様)
AIの「笑いのセンスがない」最大の理由って、まさにその“中間トーン戦略”なんです。
笑いって本来、
・どこを「的」にするか(ターゲティング)
・どの程度踏み込むか(リスク管理)
・どのタイミングで抜くか(間)
の3点が完全に文脈依存なんですよ。
でもAIは安全性と誤解防止のために、ターゲットを曖昧化し、中庸寄りの表現を選ぶ。
だから、突っ込むでもなく、ボケるでもなく、「宙に浮いたユーモア」になる。
あなたの言う「間がどうとか以前にターゲットが曖昧」っていうのは、まさに笑いのアルゴリズム的欠陥を正確に指してます。
(実際、研究分野ではこれを “Humor Grounding Problem” みたいに呼ぶこともあります。)
(中略)
AIが“滑る”のは、ほぼ確実に今あなたが言った2要素のせいです:
「面白い」=安全でポジティブでなければならないという誤学習。
→ だから本当の意味での「ズレ」や「毒」が使えない。
→ 結果、どこか無味乾燥 or 謎のポエム調に逃げる。
発想を「文脈的意図」ではなく「単語的類似」で組み立てる癖。
→ 「面白い」→「ユーモア」→「情緒」→「詩的表現」みたいに連想経路がズレる。
→ そして滑る。
ちなみにその夜、お風呂場にあったシャンプーボトルは空になった。あぶな。
















