はじめに
ここまでの記事で、
- 設計をコードで記述する
- FreeCAD で実際に形を生成する
- Part Design を捨てずにコードと併用する
という流れを見てきました。
では最後に、
なぜそこまでしてコード化するのか?
その答えのひとつが、
「差分が設計になる」 という点です。
GUI CADの差分は、なぜ意味を持ちにくいか
GUI CAD でも履歴やフィーチャツリーは残ります。
しかし次のような経験はないでしょうか。
- どこをどう変えたのか分からない
- なぜその寸法になったのか追えない
- レビュー時に「で、何が変わったの?」となる
GUI操作は、
「結果」は残っても「意図」が残りにくい のが問題です。
コード設計では、差分=設計変更
コード設計では、
設計変更はそのまま テキストの差分 になります。
例えば、板の長さを変えた場合。
- LEN = 120.0 # mm
+ LEN = 160.0 # mm
これだけで、
- どこが変わったか
- 何が変わったか
- 影響範囲はどこか
が一目で分かります。
設計判断も差分になる
寸法だけでなく、
設計ルールそのもの も差分になります。
- if LEN > 100:
- THK = 8.0
+ if LEN > 150:
+ THK = 10.0
これは GUI CAD ではほぼ不可能です。
- 「なぜ板厚が変わったのか」
- 「条件は何だったのか」
が、履歴として明示的に残る からです。
レビューが成立する
コード化された設計は、
Git を使うことで 設計レビューが成立 します。
- 数値変更の理由をコメントできる
- 差分単位でレビューできる
- 「元に戻す」ことが容易
これは、
設計を「作業」ではなく
管理可能な成果物 に変えます。
GUI CADとの差分比較
| 観点 | GUI CAD | コード設計 |
|---|---|---|
| 差分の可読性 | 低い | 高い |
| 意図の追跡 | 困難 | 明示的 |
| レビュー | 口頭・画面共有 | Git |
| 差戻し | 手作業 | commit revert |
引き継ぎが楽になる理由
コード設計では、
引き継ぐのは「操作方法」ではありません。
- 設計条件
- 設計判断
- 変更履歴
これらが コードとして残る ため、
「なぜこうなっているのか」
を、後から追えます。
すべてをコード化する必要はない
ここで誤解してはいけないのは、
- 形状の微調整
- 美観
- 最後の詰め
までコード化する必要はありません。
重要なのは、
差分として残したいものだけをコードにする
という割り切りです。
これまでの記事との位置づけ
- 03_:コードで形が作れる
- 04_:GUIとコードを併用できる
- 05_:なぜそれが強いのかが分かる
05_ は、
シリーズ全体の 答え合わせ です。
おわりに
設計をコードで書く最大の価値は、
自動化でもAIでもありません。
「変更が、意味のある差分になる」
この一点に尽きます。
GUI CAD を否定する必要はありません。
ただ、設計の中で
- 判断
- 条件
- ルール
だけは、
コードとして残しておく。
それだけで、
設計は長期的に扱える資産になります。
補足
本記事中のコードは設計手法の説明を目的とした例示です。
実運用・再配布を想定したものではありません。
実際の設計コードやライセンスについては、
以下のページで管理しています。
- Full Code Mechanical Design
https://samizo-aitl.github.io/full-code-mechanical-design/