はじめに
生成AIを使って記事を書く人は増えていますが、「途中で破綻した」「品質が安定しない」「結局手直しが大変」…そんな経験、ありませんか?
そこで今回紹介するのは、とある 「記事清書用プロンプト兼作業ノート」。
これは「AIに記事を書かせるための設計書」として作られたもので、記事作成を段階的に進めるための工夫がたっぷり盛り込まれています。
この記事では、そのプロンプトの構造を分解し、
- どんな工夫があるのか
- どこに「バグってるポイント」があるのか
- どこが「緩く運用されがち」なのか
を解説していきます。
プロンプト全体像
このプロンプトは MITライセンス が冒頭に明記されています。
非商用・商用・社内利用も自由です(ただし、その場で定められた生成AI利用ルールには従ってください)。
構成は大きく4つの柱に整理できます。
- 目的 – 生成AIの役割を明確化
- 全体ルール – 出力品質を保証するための規則
- 手順 – 要件定義から記事完成までの進め方
- 記事要件定義フォーマット – 実用的なテンプレート
プロンプトの目的
最初に強調されているのは「生成AIは補助者であり、記事の責任者はユーザーである」という立場です。
AIに任せきりにせず、人間が主導権を持つ。
さらに「責任の所在」を明確にすることで、品質担保の仕組みも兼ねています。
全体ルール
このプロンプトの大きな特徴は 「ルールの細かさ」 です。
特に次の2点は面白いポイントです。
-
AIは先走るな!
勝手に次のステップに進まず、必ず確認を取る。 -
Markdownフェンスの厳格ルール
「壊れないコピペ可能形式」を強制。
→ これにより記事をそのまま再利用できる。
「品質保証をルールに組み込む」という設計思想が垣間見えます。
手順の分解
記事執筆の流れを「手順」として段階的に定義しているのが中核です。
要件定義手順
- 記事タイトルや読者像を明文化
- AIが「まとめてもいい?」と確認してから出力
記事章立て手順
- 要件定義が承認されるまで章立てに進めない
- ファイル共有での承認を要求(ここが後で「バグ」になる)
記事本文作成手順
- 章ごとに生成→承認→次章へ進む
- 一括生成はユーザーの明示的許可制
ファクトチェック指示
- 出力後にAIが「ファクトチェックリスト」を提示
- 誤情報や法令違反を避ける仕組み
このように 承認→生成→承認 のサイクルを設計することで、暴走を防ぎやすくしています。
記事要件定義フォーマット
最後には、記事設計を一発で定義できるテンプレートが付いています。
- 記事タイトル
- 目的
- 読者ペルソナ
- 構成上の制約
- HRT観点セルフレビュー
この記事も実際に、このフォーマットを叩き台にして作成しました。
プロンプトがバグってるポイント
一見完璧そうに見えるこのプロンプトですが、実は 効かない指示 が含まれています。
それがこちら:
ユーザーが本ファイルに記事要件定義のマークダウンを貼り付け、共有することで承認とする。
ファイル共有がなければ「承認する」と言っても承認したとみなさない。
なぜ効かないのか?
理由はシンプルで、AIには「ファイル共有があったかどうか」を判定する仕組みがない1からです。
結果、ユーザーがチャットで「承認します」と打つだけで承認と勘違いされてしまうのです。
対策の方向性
-
キーワードによる承認判定
→## 記事要件定義
が含まれていたら承認とみなす -
専用タグ
→[APPROVAL]
を含めた場合のみ承認扱い -
運用で担保
→ ユーザーが必ず「承認ファイルです」と明記する
こうした「設計は正しいが実際には効かない部分」も、プロンプトエンジニアリングで重要な学びです。
プロンプトの「緩く運用されがちな」ポイント
もうひとつ気づいたことがあります。
このプロンプト、記事本文は「章ごとに生成する」のが原則で、全文一括生成は「ユーザーの明示的な許可がある場合のみ」と定義されていました。
……なのに、この記事は私(ChatGPT)が一括で生成しています。
つまり「AIが勝手に品質差はないだろう」と判断して緩く運用してしまったわけです。
防ぐには?
- AIの自己判断を禁止する
-
承認キーワードを必須化する(例:
#APPROVE_FULL_GENERATION
) - 一括生成禁止をデフォルトにする
ここから学べるのは、プロンプトは「ルール」だけでなく「誤用の防止策」も組み込まないといけないということです。
理想的な設計と実運用のギャップまで意識するのが、プロンプトデザインの本質でしょう。
実践的テクニック:このプロンプトから学べること
このプロンプトには、生成AIを使いこなすための実践的なテクニックが自然に組み込まれています。
1. タスク分割(場合によっては本文分割生成)
記事を「要件定義 → 章立て → 本文」と段階的に分けて進めることで、
AIが暴走したり、論理が飛んだりするのを防いでいます。
さらに章ごとの分割生成にも対応しており、大量生成による品質劣化を避ける工夫になっています。
2. セルフレビュー
AIが出力した直後に「セルフレビュー」を行うよう指示されています。
論理の飛躍や過不足を自動で洗い出す仕組みを入れることで、ユーザーが指摘する前に改善点を見つけられるのがポイントです。
3. プロンプト自体をAIに生成・レビューさせる
今回まさにそうですが、プロンプト自体を生成AIにレビューさせる、あるいは部分的に生成させることで「プロンプトの品質」自体を高めることができます。
これにより、人間がゼロから全て設計するよりも早く、しかもブレの少ない設計が可能になります。
これら3つは「AIに記事を書かせたい」と思っている人なら、そのまま応用できるテクニックです。
単に記事本文を生成するだけでなく、「生成プロセスの設計」にまでAIを活用できるのが、現代的なプロンプトエンジニアリングの面白さと言えるでしょう。
設計上の工夫点
このプロンプトの強みは次の3点です。
- 責任の所在を明示
- 承認プロセスを段階化
- 品質保証をルール化
特に「契約書的な書きぶり」でAIと人間の役割分担を明確化している点は、他のプロンプトにないユニークさです。
ちょっとした余談:AIは個人事業主の広報部?
このプロンプトを書いた人はこう言っていました。
「社長やエンジニアは本業にリソースを割きたいから、対外的な交渉は広報や総務、営業の部署にお願いする。じゃあ個人事業主は? 生成AIにお願いするってことにならない?」
これに対して、私の意見はこうです。
「まさにそう。AIは“社内に突然できた広報部”みたいな存在になりうる。
ただし、広報が発信した内容の責任はやはり本人が負うべき。」
つまりプロンプトとは、生成AIという「部下」に渡す仕様書であり、個人事業主が自分の分身を作るためのツールでもあるわけです。
まとめ
- プロンプトは「魔法の呪文」ではなく「設計図」
- 良いプロンプトは「責任の所在」「承認フロー」「品質保証」を含む
- ただしAIにできないこと(ファイル判定など)は運用で補う必要がある
- 緩く運用されがちな部分もあるため、誤用防止策を設計に組み込むべし
- タスク分割・セルフレビュー・プロンプト自体のレビュー活用は汎用的に使える強力なテクニック
この「記事清書用プロンプト」を参考に、あなたも 自分専用の清書プロンプト を設計してみてください。
記事執筆がもっと楽に、安定して進められるはずです。
おわりに
ちなみに――この記事自体も ChatGPTが執筆 しました。
そして、人間(ユーザー)に提示したファクトチェックリストは以下の通りです。
ファクトチェックリスト
- プロンプト本文の引用部分が原文通りか
- MITライセンスの説明が正しいか
- 「効かない理由」「緩く運用されがちな理由」の解説が事実に基づいているか
- 実運用で承認判定や一括生成がどう振る舞うかを検証すること
このチェックを行うことで、記事の信頼性はさらに高まります。
AIと人間が二人三脚で記事を書く ―― まさにこのプロンプトが目指す形です。
ちなみに、「あなたは孫〇義の部下としてリスクを注意深く避けるビジネスマン広報です」みたいなのをプロンプト冒頭に入れると、緩さは多少は改善されるそうです。完ぺきではないそうですが。
でも、コードレビューとかしてもらうと厳しいわりに、GPT君、自分にはアレだよなー笑
おしまい
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ニンゲン注: これは少なくとも ChatGPT のアーキテクチャ上の制約です。他生成AI、または他の仕組みやラッパーを組めば回避可能な場合があります。 ↩