サブスクリプション管理サービス「サブベア」を公開しました。
「サブベア」は Subscription + Pare
「サブベア」という名前は、Subscription と Pare(削ぎ落とす) を組み合わせた言葉をもじっています。
使っていないサブスクを見直し、余分な支出を少しずつ削ぎ落とす。そんな使い方を名前に込めました。
もう一つ、名前を考えていた時期にクマの話題をよく目にしていたことも理由です。「サブペア」より「サブベア」のほうが覚えやすく、キャラクターも想像しやすいと思い、この名前にしました。
請求された後ではなく、更新前に見直せるようにしたかった
サブスクは、契約するときより、契約した後に把握し続けるほうが大変です。
動画配信、音楽、クラウドストレージ、開発ツール。少しずつ契約が増えても、一つひとつの料金はそれほど高くないため、そのまま使い続けてしまいます。年払いのサービスは、更新月を忘れることもあります。
自分自身、無料トライアルだけ試して、期間中に解約するつもりだったのに、そのまま忘れて課金されてしまったことがあります。忘れないように意識するだけでは、なかなか防げませんでした。
クレジットカードの明細を見てから思い出すのでは遅い。次の支払いが来る前に、続けるかどうかを考えられるようにしたいと思い、サブベアを作りました。
使っているサブスクの料金や更新日を登録すると、月払いと年払いを月額にそろえて集計できます。これからの支払い予定や更新日も確認でき、更新前には通知やカレンダーで気づけます。
基本機能は無料ですが、月額290円の有料プランも準備しています。Stripeを使った決済も実装しました。
それでも、有料プランはまだ公開していません。
一番の理由は、特定商取引法に基づく表記です。有料サービスを販売するなら、運営者の氏名、住所、電話番号などを表示する必要があります。
個人開発なので、住所として最初に思い浮かぶのは自宅です。しかし、自宅の住所をインターネット上へ公開することには、かなり抵抗があります。
コードは書けても、ここで手が止まりました。
サービス名だけでは販売者の表示にならなかった
有料化を考え始めたころは、サイト名と問い合わせフォームがあればよいと思っていました。
消費者庁の特定商取引法ガイドを確認すると、個人事業者の場合は、氏名または登記された商号、住所、電話番号の表示が必要とされています。サイト名や通称だけでは認められません。
住所は、現に活動している場所を正確に表示する必要があります。電話番号も、実際に連絡が取れる番号でなければなりません。
この条件を読んで、自宅住所と普段使っている電話番号を公開するのか、という問題にぶつかりました。
サービスを販売する以上、責任の所在を明らかにする必要があるのは理解できます。一方で、一人で運営している個人開発者にとって、自宅は生活の場所でもあります。
「有料プランを出したい」と「生活上の情報を広く公開したくない」が衝突しました。
表示を省略できる場合もあるが、何もしなくてよいわけではない
調べていくと、氏名、住所、電話番号を常にウェブサイトへ掲載する以外の方法も示されていました。
消費者から請求があった場合に、必要事項を記載した書面や電子メールを遅滞なく提供できるようにしておき、そのことを広告に表示していれば、一部の表示を省略できる場合があります。
ここでいう「遅滞なく」は、問い合わせを受けてからいつか返せばよい、という意味ではありません。消費者が申込みを決める前に、十分な時間的余裕をもって確認できることが求められます。
この方法を選ぶなら、少なくとも次の運用が必要になります。
- 情報開示を請求できる窓口を分かりやすく案内する
- 請求を見落とさない
- 申込み前に確認できる速さで回答する
- 誰に、どの情報を、どの方法で提供するかを決めておく
住所をページから消せたとしても、販売者としての情報提供そのものが不要になるわけではありません。
個人で開発と運用を続けながら、この対応を安定して行えるか。そこまで決めて、初めて選べる方法だと感じました。
バーチャルオフィスなら何でもよいわけではなかった
現在検討しているのが、バーチャルオフィスです。
消費者庁のQ&Aでは、一定の条件を満たす場合、バーチャルオフィスの住所や電話番号を表示することで、特定商取引法の要請を満たせるという考え方が示されています。
ただし、住所だけ借りればよいわけではありません。消費者から連絡が取れない状態では、表示義務を果たしたことにならない可能性があります。私書箱を表示するだけでも、活動場所を表示したことにはなりません。
そのため、料金だけを比べて契約するのは危ないと考えています。候補を選ぶ際は、次の点を確認するつもりです。
- 特定商取引法に基づく表記へ住所を使用できるか
- 個人事業やWebサービスで利用できるか
- 郵便物の受け取りや転送に対応しているか
- 問い合わせを受けられる電話番号を用意できるか
- 解約した場合、掲載済みの住所をいつまで使えるか
- 本人確認や情報開示に関する運用が明確か
バーチャルオフィスを使えば必ず問題が解決する、と判断したわけではありません。自分のサービスと運用方法でも条件を満たせるかを確認している段階です。
有料プランを「提供準備中」にした
住所と連絡先の方針が決まっていない状態で、課金だけ先に始めるのは避けることにしました。
現在のサブベアでは、有料プランを「提供準備中」と表示しています。申込み画面だけでなく、決済処理も無効にしています。
Stripeの実装が終わっているため、そのまま公開したくなる気持ちはありました。しかし、販売者情報をどう示すか決まっていない以上、公開できる状態ではありません。
有料化を止めたことで、次に解決すべき課題がはっきりしました。
- 自宅住所を公開しない場合の運用を決める
- バーチャルオフィスの利用条件を確認する
- 確実に連絡を受けられる電話番号を用意する
- 特定商取引法に基づく表記を完成させる
- 申込み直前に料金、継続条件、解約方法を確認できるようにする
決済機能の完成を、そのまま販売開始の条件にしなくてよかったと思っています。
特商法を調べると、ほかの曖昧さも見えてきた
運営者情報の問題がきっかけでしたが、確認を進めると、ほかにも決めることがありました。
たとえば、サブベア上でサブスクを「利用終了」にしても、NetflixやSpotifyなど、サービス提供元との契約は解約されません。
以前は、画面に「解約する」「解約しました」と表示していました。これでは、実際の契約まで終了したように見えます。
現在は、ボタンを「解約済みとして記録する」に変更しました。操作後にも「サービス提供元での解約手続きは別途必要です」と表示しています。
また、プライバシーポリシーを作る過程では、メールアドレス、登録したサービス名、料金、通知先、カレンダーへ渡す情報などを洗い出しました。カレンダー連携用URLが漏れた場合に備えて、URLの再発行と連携解除もできるようにしました。
法律を確認する作業は、書類を用意するだけでは終わりませんでした。サービスの説明や画面の文言、情報を削除する方法まで見直すことになりました。
個人開発では、住所の問題を後回しにしないほうがよい
今回の経験で一番反省しているのは、運営者情報の公開について、有料化の直前まで具体的に考えていなかったことです。
決済の実装には時間がかかります。その前に、自宅住所を公開するのか、表示省略の仕組みを運用するのか、バーチャルオフィスを利用するのかを検討しておけば、有料化の直前で止まらずに済みます。
特に個人開発では、開発者と運営者が同じです。サービス上の問題が、そのまま自分の生活やプライバシーに影響します。
サブベアは現在、基本機能を無料で公開し、有料プランは準備中としています。バーチャルオフィスを含めて運営方法を整理し、安心して販売できる状態になってから有料プランを始める予定です。
- サブベア: https://subbare.shiftonton.net/lp
- 登録なしで試せるデモ: https://subbare.shiftonton.net/demo
同じように個人開発サービスの有料化を考えている方は、決済機能を作る前に「販売者として何を公開する必要があるか」も確認してみてください。
なお、この記事は専門家による法的助言ではありません。実際にサービスを販売するときは、最新の一次資料を確認し、サービス内容に応じて専門家や関係窓口へ相談してください。