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【コラム】SIEMとLLMをベクトル雲で考える

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Last updated at Posted at 2026-01-26

はじめに:なぜ生成AIは「分析しているように見える」のか

生成AI、とりわけLLM(Large Language Model)と対話していると、ときどき強い既視感を覚えます。

  • 過去の会話を踏まえている
  • 傾向を捉えて評価してくる
  • まるでSIEMの相関分析結果のような文章が出てくる

だが、この「分析している感じ」は、本当に分析なのでしょうか。

本コラムでは、SIEMとLLMを対比しながら、生成AIが何をしていて、何をしていないのかを整理してみます。

SIEM(Security Information and Event Management)
複数のシステムやセキュリティ機器のログを集約し、ルールや統計的手法に基づいて異常や兆候を検知する仕組み。事実の検知と可視化を担うシステム。
LLM(Large Language Model/大規模言語モデル)
大量のテキストから言語の分布を学習し、文脈に対してもっともらしい続きを生成するモデル。ログ検索や相関分析を行っているわけではなく、入力全体を高次元ベクトル空間に写像し、その形状に沿って文章を生成する。


SIEMはAIか?という違和感

まず前提として、現在主流のSIEMはAIとは言い難いでしょう。

SIEMがやっていることは、突き詰めれば次の延長だからです。

  • ログの収集と正規化
  • ルールや条件による相関
  • 統計的な逸脱検知

これは非常に高度ではあるものの、本質的にはデータ分析と観測の延長であり、「意味」を扱っているわけではないのです。

SIEMは「異常」を検知するが、「状況を語る」ことはできない。ここが重要です。


LLMはログを解析しているのか?

生成AIが性格分析や状況整理を行っているように見えるとき、つい次のように考えてしまいます。

  • 過去ログを検索しているのでは?
  • 特徴量を抽出して分類しているのでは?
  • SIEMのように相関分析しているのでは?

しかし、実際にはどれも行っていないのです。

LLMはログをDBのように検索しないし、ラベル付きで要素を切り出してもいないのです。


実態は「ベクトル雲」

LLMがやっていることを、できるだけ正確に表現するとこうなります。

  • 言葉(トークン)を高次元ベクトルに変換する
  • 会話全体を、巨大な意味ベクトルの分布として保持する
  • その分布(雲)の形状と勾配に沿って、次の単語を選ぶ

ここで重要なのは、

  • 単語は検索キーではない
  • 意味はラベル化されていない
  • 要素は明示的に分離されていない

という点です。

すべては連続値であり、ニュアンスとして重なり合った意味の雲」として存在しています。


なぜ会話が大きく逸れないのか

生成AIは「一番それっぽい単語を選んでいるだけ」なのに、なぜ会話は破綻しにくいのでしょうか。

理由は単純で、

  • ベクトル雲には形がある
  • 雲の外へ飛ぶ方向は確率勾配が急
  • 局所的に一番滑らかな経路を進む

からと言えます。

理解しているから逸れないのではないのです。
逸れにくい地形の中で生成しているだけなのです。


SIEM × LLM を考える

ここまで来ると、自然に次の発想に行き着きます。

SIEMにLLMを組み込んだらどうなるのか?

このとき重要なのは、

  • SIEMをそのまま「AI化」しようとしないこと
  • 判断をLLMに委ねないこと

です。

現実的な構成は、次の三層です。

  1. 真実層(従来SIEM)
    決定論・完全性・監査性を担保する
  2. 意味層(ベクトル雲)
    ログやイベントをEmbeddingし、形状や遷移を捉える
  3. 翻訳層(LLM)
    状況を言語化し、対応候補や類型を提示する

LLMは判断者ではなく、状況翻訳機として使うべきなのです。


ハルシネーションという本質的制約

クリティカルな障害対応やセキュリティインシデントにおいて、ハルシネーションは許されません。

これは偶発的な欠陥ではなく、LLMの本質的性質なのです。

  • LLMは「正しさ」ではなく「もっともらしさ」を最適化する
  • 確率が高いことと、正解であることは別

だからこそ、

LLMに全幅の信頼を置かない設計

が重要になります。


おわりに:AIっぽさの正体

生成AIが分析しているように見える理由は、

  • 分析結果を出しているからではない
  • 分析レポートを書く人間の文体を再現しているから

SIEMとLLMは、似ているようで全く違います。

  • SIEMは「事実を検知する装置」
  • LLMは「意味を語る装置」

この違いを混同しないことが、これからのAIOpsやSOC設計において、最も重要な前提になるでしょう。
使う側、紹介する側も、より高度なリテラシーが求められますね。

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