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自動運転について

はじめに

自動運転に関係するお仕事を携わりました。業界知識を深めるべく自身の整理のためブログに纏めてみました。
※お仕事の内容は記載できないため一般的に世間に公開されている内容のみ記載しております。
※本記事の一部の検索や記載に生成AIを利用しております。誤りなどありましたらご指摘ください。


第1章:AD(自動運転)の現在地 — ADASから完全自動運転(AD)へのロードマップ

「自動運転」という言葉をは多くの人が知っていますが2025年現在に自動運転技術はがどこまで進んでいるか整理したいと思います。

しかし、一言で「自動運転」と言っても、高速道路でハンドルを軽く握るだけのものから、運転席に誰もいないロボタクシーまで、その中身には大きな隔たりがあります。本章では、まず自動運転の基本定義と、その進化の階段である「SAEレベル」について整理します。

1.1 自動運転の定義

自動運転(Autonomous Driving / Automated Driving)とは、センサーとAIによって、人間が操作することなく車両を安全に目的地まで走行させる技術の総称です。

ここで重要なのは、単に「自動で動く」ことではなく、**システムが自ら周囲を認識し、判断して実行する「自律性」**にあります。2025年の最新トレンドでは、これをさらに進化させた「AI (生成AIや基盤モデルの活用)」が注目を集めており、従来のルールベースのプログラムでは難しかった複雑な状況判断が可能になりつつあります。

1.2 進化の階段:SAEレベル

自動運転の進捗を語る上で欠かせないのが、米国の自動車技術会(SAE)が定義した「J3016」という基準です。

レベル 主体 運転タスク(DDT)の内容 現在の主な普及例
レベル1(運転支援) 人間 加速・操舵のいずれかをサポート。 衝突被害軽減ブレーキ(AEB)
レベル2(部分運転自動化) 人間 加速・操舵の両方を同時に支援。 アダプティブクルーズコントロール(ACC)
レベル2+(高度なL2) 人間 ハンズオフ(手放し)走行が可能。 テスラ FSD, 日産 プロパイロット 2.0
レベル3(条件付自動化) システム システムが主体。**「アイズオフ」**が可能。 ホンダ レジェンド, メルセデス・ベンツ
レベル4(高度自動化) システム 特定エリア内で完全無人走行。 Waymoなどのロボタクシー

2025年現在、多くの市販車は「レベル2」が標準となっており、テスラなどの先行企業は、より高度なレベル2である「レベル2+(高度な運転支援)」を通じて、事実上の自動運転体験を提供しています。一方で、レベル3以上になると「主体(責任)」が人間からシステムへと移り、法規制のハードルが一気に高くなります。

1.3 自動運転を支える「3つのサイクル」

自動運転車が「走る・曲がる・止まる」を行うプロセスは、人間の脳の動きを模倣した3つのステップで構成されています。

  1. 認知(Perception): カメラ、LiDAR、ミリ波レーダーといったセンサーを駆使して、周囲の車両、歩行者、信号、自車位置を把握します。
  2. 判断(Planning/Decision): 得られた情報をもとに、「この歩行者は飛び出してくるか?」「このタイミングで車線変更できるか?」といった予測を行い、最適な走行ルートを決定します。
  3. 操作(Control): 決定したルートに従って、アクセル、ブレーキ、ステアリングをミリ秒単位で正確に制御します。

1.4 都市部走行への挑戦

これまでの自動運転は、一方通行で歩行者のいない「高速道路」が主な主戦場でした。対して交差点や自転車、工事現場が入り乱れる「都市部(Urban)」はこの複雑な環境を攻略するために、これまでの「人間が書いたルール」ではなく、最新の「AIによる自律的な学習」が必要不可欠となっています。


第2章:自動運転の「法的定義」と「技術実態」の境界線

自動運転の議論において、最も混同しやすいのが「技術的に何ができるか」と「法的にどう定義されているか」の差です。第1章で触れたSAEレベルは、技術の高さだけでなく、「運転の主体(責任)」という法的な基準で厳格に区分されています。

2.1 法的レベル:すべてを分ける「責任」の所在

法的な観点では、レベル2とレベル3の間には巨大な壁が存在します。それは「事故が起きた際に誰が責任を負うのか」という点です。

  • レベル2(運転支援): システムがどれほど複雑な操作を代行していても、法的な主体は**「人間」**です。ドライバーには常に周囲を監視する義務があり、システムがミスをした際、それをカバーできなかった人間の責任が問われます。
  • レベル3以上(自動運転): 特定の条件下で、法的な主体が**「システム」**に移ります。この走行中、ドライバーは監視義務から解放されます。万が一事故が発生した際も、システム側の不備が原因であれば、原則としてメーカーや車両側が責任を負うことになります。

2.2 技術実態:レベル2の枠組みで提供される「L4級の知能」

現在の「都市型NOA」の多くは、法的にはレベル2(運転支援)ですが、その中身にはレベル3や4(高度自動運転)に相当する最新AI技術が投入されています。
メーカーは、AD(レベル3以上)ではなくNOA(レベル2)としてリリースするのは以下の戦略のためです。

  1. 「安全の証明」という高いハードル: 法的にレベル3以上を名乗るには、あらゆる環境下で人間より安全であることを100%近く証明しなければなりませんが、レベル2(人間が主役)であれば、技術をいち早く市場に投入できます。
  2. 実世界データの収集と改善: レベル2としてリリースすることで、実際の道路を走る何万台もの車両からデータを収集し、AIを改善させるサイクルを回しているのです。

2.3 運転タスク(DDT)から見る技術の深掘り

技術的なレベルを測る指標として、以下の2つのタスクへの対応力が重要になります。

  • DDT(Dynamic Driving Task): 「走る・曲がる・止まる」という基本的な車両制御。
  • OEDR(Object and Event Detection and Response): 「周辺の監視と異常への応答」。路上駐車を避ける、サイレンに反応するといった行動です。

2.4 フェイルセーフとリダンダンシー(冗長性)

技術的にAD(レベル3以上)を名乗るために欠かせないのが、知能だけでなく**「ハードウェアの信頼性」**です。レベル2であれば、システムが故障した瞬間に「人間がブレーキを踏む」ことで安全を担保できます。しかし、AD(レベル3以上)では、システムが故障してもバックアップが即座に起動し、数秒間は安全に走行し続け、安全に停止する仕組み(リダンダンシー)が求められます。


第3章:世界のAD法規制

自動運転(AD)の普及には、技術の進化と同じくらい「法律によるお墨付き」が重要です。しかし、そのアプローチは国によって驚くほど異なります。日本、中国、アメリカの3か国を例に、それぞれの法規制のスタンスと最新動向を比較します。

3.1 🇯🇵 日本:緻密な安全性定義と「段階的解禁」

日本は、世界に先駆けて自動運転に関する法整備を進めてきました。

  • 規制のスタンス: 国が中心となり、安全性を厳格に定義した上で、段階的に認可を広げていく中央集権的なスタイルです。
  • レベル3の商用化: 2020年に道路交通法を改正し、世界で初めて市販車(ホンダ・レジェンド)でのレベル3走行を公道で認めました。事故時の責任についても「システムに欠陥があればメーカー側」と明確にルール化されています。
  • 最新動向: 現在は「レベル4サービス(無人移動サービス)」に注力しており、許可制によって特定エリアでの走行を順次拡大しています。

3.2 🇨🇳 中国:国家戦略としての「爆速実装」

中国は、政府の強力な後押しのもと、特定都市を丸ごと実験場にする「実装優先」のスタイルです。

  • 規制のスタンス: 北京、深圳、上海などの都市ごとに「自動運転特区」を設け、法整備とインフラ整備を同時に進めます。
  • レベル3/4への大胆なシフト: 2025年4月に施行された「北京市自動運転車条例」など、個人が所有する車でも「特定の条件下でシステムが責任を負う」ことを認める法律を次々と制定しています。
  • 最新動向: 主要都市ではすでに無人タクシー(ロボタクシー)が日常の景色となっており、事故時の責任も「システム故障か、人間の操作ミスか」をデータから即座に判定する運用が確立されつつあります。

3.3 🇺🇸 アメリカ:州ごとの「自由競争と訴訟ベース」

アメリカは、国(連邦)が細かなルールを決めすぎず、各州の判断と企業の自己責任に委ねるスタイルです。

  • 規制のスタンス: 連邦政府(NHTSA)はガイドラインを出すのみで、走行許可は州ごとに異なります。アリゾナ州のように非常にオープンな州もあれば、カリフォルニア州のように厳しい認可が必要な州もあります。
  • 「法より技術」の先行: テスラに代表されるように、まずは高度なレベル2(NOA)としてリリースし、実走行データを通じて安全性を「実績」で証明していく手法が主流です。
  • 最新動向: 法整備を待つのではなく、実際に起きた事故の判例を積み重ねることで、「どこまでがシステムの責任か」という境界線を社会全体で探っています。

3.4 各国の法規制比較まとめ

比較項目 日本 中国 アメリカ
主要な推進主体 国(警察庁・国交省) 国家および特定都市 民間企業および各州
レベル3の扱い 法整備済み(型式指定制) 法整備済み(特区先行) 州ごとに異なる(法より技術先行)
レベル4の状況 限定エリアのサービス中心 都市部での商用化が加速 特定州での商用化が先行
責任の考え方 法規による事前定義 実装を通じたルール化 訴訟と判例による事後定義

3.5 法が技術に与える影響

これら法律の違いは、AIの開発手法にも影響を与えます。
例えば、「説明可能性(Explainable AI)」。厳格な日本や欧州では「なぜその判断をしたか」の説明が求められるため、モジュール型AIが好まれます。一方、実装スピードを重視する中国や米国では、ブラックボックスと言われる**「E2E AI」**の採用に積極的です。


第4章:レベル2自動運転とADAS

現在、多くの新車に搭載されている「自動ブレーキ」や「車間距離を保つ機能」。これらはすべて**ADAS(先進運転支援システム)**と呼ばれる技術の集合体です。

4.1 ADASの詳細:「3つの役割」

ADASは、ドライバーのミスを補い、疲労を軽減するために設計されています。大きく分けて、以下の3つの役割を担います。

  1. 衝突回避・被害軽減: 自動ブレーキ(AEB)、ペダル踏み間違い加速抑制。
  2. 運転負荷の軽減: アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、レーンキープアシスト(LKA)。
  3. 周辺監視・警告: ブラインドスポットモニター(BSM)、交通標識認識。

4.2 「レベル2(部分運転自動化)」への進化

レベル1とレベル2の決定的な違いは、「前後(加速・減速)」と「左右(操舵)」を同時に制御するかどうかにあります。

  • レベル1: 「ブレーキだけ」や「アクセルだけ」など、一つの機能を個別に支援。
  • レベル2: ACC(前後)とLKA(左右)が連携し、システムが車線に沿って速度を保ちながら走行します。ここで重要なのは、レベル2になっても「ドライバーが運転の主役」である事実は変わらないということです。

4.3 ADASを支える「目」の種類

センサー 得意なこと 苦手なこと
単眼/ステレオカメラ 標識の文字、信号の色、白線の認識 雨、霧、逆光などの悪天候
ミリ波レーダー 物体までの距離、速度の正確な測定 物体の「形」や「種類」の判別

最新のレベル2車両では、これらに加えて「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」というカメラが車内に設置され、ドライバーの視線や居眠りを監視することで安全性を担保しています。

4.4 「レベル2」の限界と、その先へ

レベル2は非常に便利ですが、あくまで「白線が見えていること」「先行車がいること」といった前提条件に依存しています。複雑な交差点や、白線のない道、急な割り込みなど、システムが対応できないシーン(システム限界)はまだ多く存在します。この「レベル2」の枠組みを維持しながら、より高度な判断——例えば、目的地に合わせて自動で車線を変更したり、分岐を曲がったりする——を可能にするのが、次章で解説する「NOA」です。


第5章:NOA(Navigate on Autopilot) — 都市走行へ挑む「レベル2+」

NOAについて話をしていきます。

5.1 ハイウェイNOA:高速道路での自動走行支援

NOAが最初に実用化されたのは、環境が整っている「高速道路」でした。カーナビで目的地をセットすると、システムが以下のタスクを自律的に提案・実行します。高速道路は歩行者がおらず、道路構造が一定であるため、高精度地図(HDマップ)を活用した「ルールベース」の制御が非常に有効に機能します。

  • 自動車線変更: 遅い先行車を追い越すための車線変更。
  • 分岐・ジャンクション走行: ナビのルートに従い、複雑な分岐を自動で選択。
  • 出入り口(ランプ)走行: 本線への合流や、出口への離脱。

5.2 都市型NOA(Urban NOA)

現在、テスラや中国の主要メーカー(Huawei, XPengなど)が激しく競っているのが、信号や交差点のある一般道を走る**「都市型NOA」**です。
高速道路に比べ、難易度は桁違いに高くなります。

  • 信号と交差点: 右左折時の対向車や歩行者の見極め。
  • 非定型な障害物: 路上駐車を避けるための車線はみ出し走行、工事現場の回避。
  • 予測不能な動き: 飛び出す自転車や、複雑な動きをするバイクへの対応。

これを実現するために、もはや従来の「もし赤信号なら止まる」という単純なルールでは対応できず、AIによる高度な判断が不可欠となっています。

5.3 「レベル2+(2.5)」と呼ばれる理由

NOAはしばしば**「レベル2+」「レベル2.5」と表現されます。これは、機能としてはレベル3(システム主体)に近い利便性を提供しながらも、「監視責任はあくまで人間にある」**というレベル2の枠組みを維持しているためです。

5.4 マップレス(Mapless)への転換

都市型NOAの最新トレンドは、**「高精度地図に頼らない」**ことです。世界中のすべての路地を地図化し、最新の状態に保つのはコスト的に不可能です。そのため、最新のNOAは、車載カメラから得られる映像だけを頼りに、その場で「道」や「ルール」を理解して走る知能へと進化しています。


第6章:「ルール」から「学習」へ。E2E(エンド・トゥ・エンド)AI

都市部の複雑な走行を攻略するため、AIの構造が劇的に変化しています。

6.1 従来の主流:モジュール型 × ルールベースの限界

これまでの自動運転システムの多くは、**「モジュール型」の構造を採用し、その中身を人間がIf-Thenで記述する「ルールベース」**で構築していました。

  • モジュール型(構造): 機能を「認知」「予測」「判断」「操作」といった部品に切り分け、数珠つなぎにする設計手法。
  • ルールベース(知能): 人間が「もし(If)〜なら(Then)〜する」という指示をすべてコードで書き込む手法。
    この組み合わせは、「赤信号なら止まる」といった明確な状況には強い一方、**「情報の欠落」「ルールの限界」**という弱点がありました。

6.2 E2E AI:入力から出力までを一貫して「学習」する

これに対し、E2E(エンド・トゥ・エンド)AIは、構造と知能のあり方を根本から変えました。機能を小分けにする(モジュール型)のをやめ、すべてを一括で、かつ**「学習ベース(AI)」**で処理します。

  • 仕組み: カメラからの生データを一つの巨大なニューラルネットワークに入れ、直接「ハンドルの角度」や「加減速」といった操作を出力します。
  • 「情報の劣化」がない: センサーが捉えた豊かな情報をそのまま操作に反映できるため、より緻密な制御が可能になります。
  • ヒューマンライクな挙動: 熟練ドライバーの膨大な走行データを学習することで、人間のような滑らかで自然な運転を実現します。

6.3 なぜE2Eは「都市型NOA」に向いているのか

  1. 複雑な相関関係の理解: 複数の要因が絡み合う状況を、一つの「パターン」として理解できます。
  2. 低レイテンシー(低遅延): 情報の処理速度が上がり、飛び出しなどの突発的な事態に素早く反応できます。
  3. 地図への依存低減: 目の前の映像から「今どこを走るべきか」をリアルタイムで判断して進むことができます。

6.4 E2E AIが抱える「ブラックボックス」の課題

システム全体が一つの脳として動くため、「なぜ今、急ブレーキを踏んだのか?」という理由が人間には分かりにくいブラックボックス化が起こります。そのため、現在の最先端開発では、監視用AIが判断の妥当性をチェックするような安全担保の仕組みとセットで開発が進められています。


第7章:AIの学習について

E2E AIは、教えられたルールではなく、見せられたデータから学び取ります。つまり、AIの賢さは「データの量と質」に完全に依存します。しかし、毎日世界中で収集される膨大な走行データ(数百万時間分)を、すべて人間がチェックして学習させるのは不可能です。

そこで重要になるのが、**「機械学習を用いて、学習プロセス自体を自動化する」**という考え方です。

7.1 「AIを育てるためのAI」の役割

クラウドに上げられた生データにタグ(アノテーション)を付ける際、単なる手作業ではなく、別の機械学習モデルを介在させます。その主な目的は以下の3つです。

  1. 自動アノテーション(Auto-labeling):
    すでに学習済みの高精度なモデルを使って、未学習の映像に「これは車」「これは信号」といった仮のタグを自動で付けます。人間はその結果を確認・修正するだけで済むため、データ作成のスピードが飛躍的に向上します。
  2. アクティブラーニング(重要なデータの選別):
    AIにとって「もう知っている当たり前のシーン」ではなく、「まだ知らない珍しいシーン(エッジケース)」を機械学習が見つけ出し、優先的に学習させます。例えば、100万枚の快晴のデータより、1枚の「雪道で工事をしているシーン」を優先的に抽出して学習に回します。
  3. データのクレンジングと匿名化:
    映像内のプライバシー(顔やナンバープレート)を自動でぼかしたり、ノイズの多いデータを除去したりする際にも機械学習が活躍します。

7.2 AIが「知能」を獲得するまでのステップ

アノテーションされたデータを使って、AI(E2Eモデル)がどのように学習していくのか、そのプロセスを分解してみます。

  1. 入力と正解のペアリング: AIに「カメラ映像(入力)」と、それに対応する「熟練ドライバーの操作ログ(正解ラベル)」をセットで与えます。
  2. 推論と誤差の計算(バックプロパゲーション): AIが現在の自分の脳で仮の答え(例:ハンドルを5度切る)を出します。それを正解(例:ハンドルを10度切る)と比較し、その**「誤差(ロス)」**を計算します。
  3. 重みの微調整: 計算された誤差を元に、脳内の神経結合(パラメータ)を少しずつ調整します。このサイクルを何億回と繰り返すことで、AIは徐々に「この景色なら、こう動くのが正解だ」という直感を磨いていきます。

7.3 フリート学習:数百万台の車がひとつの脳を作る

この学習プロセスの究極の姿が、テスラなどが実践している**「フリート学習」です。街を走る数百万台の車が、AIが苦手とするシーン(介入が発生した場所など)を自動でクラウドに報告し、その日のうちに学習データが生成され、数日後には全車両のAIがアップデートされる。この「データエンジン」**の回転速度こそが、現代の自動運転開発における最大の競争力となっています。


第8章:評価の極意 — シミュレーションで「未来」を予測する。Open-loopとClosed-loopの重要性

最新のE2E AIを搭載した自動運転車が「賢くなった」と判断するには、膨大なテストが必要です。しかし、すべてのテストを公道で行うのは危険であり、効率も悪すぎます。そこで重要になるのがシミュレーションを用いた評価ですが、ここには**Open-loop(オープンループ)Closed-loop(クローズドループ)**という、性質の異なる2つの手法が存在します。

8.1 Open-loop評価:過去の記録による「答え合わせ」

Open-loopは、日本語で「開ループ」や「ログ・リプレイ」とも呼ばれます。

  • 仕組み: ドライバーが過去に走った際の「映像データ」をAIに見せ、AIに「次にどう操作するか」を予測させます。その答えを、実際に人間が行った操作(正解)と比較して採点します。
  • メリット: すでにある走行データを使ってPC上で高速に回せるため、学習初期の精度確認や、大量のデータセットでの一括評価に向いています。
  • 弱点(ドリフト問題): AIの出した「答え」が、その後の展開に反映されません。例えば、AIが少しハンドルを右に切りすぎても、次の瞬間の映像は「正しく直進しているドライバーの視点」のままです。そのため、「ミスが蓄積して最終的にどうなるか」を評価できないという致命的な弱点があります。

8.2 Closed-loop評価:仮想世界での「実走行テスト」

Closed-loopは、「閉ループ」や「インタラクティブ・シミュレーション」と呼ばれます。

  • 仕組み: 仮想空間(CARLAなどのシミュレーター)の中で、AIに実際に車を運転させます。AIがハンドルを切れば、それに応じて仮想世界の景色もリアルタイムに変化します。
  • メリット: **「自分の操作が未来を変える」**状況を評価できます。小さなミスが重なって車線からはみ出しそうになった時、自力でリカバリーできるか。あるいは、自車の動きを見て周囲の歩行者がどう反応するかといった、現実の運転に近い相互作用を確認できます。
  • 弱点: 高度な物理演算や画像生成が必要なため、Open-loopに比べて計算コストが非常に高く、評価に時間がかかります。

8.3 「都市型NOA」ではClosed-loopが必須

高速道路のような単調な環境ではOpen-loopでも一定の評価が可能ですが、都市部での運転は、他車や歩行者との**「譲り合い」や「駆け引き」**の連続のため「こちらが少し前に出たから、相手が待ってくれた」という相互作用は、過去のビデオを再生するだけのOpen-loopでは再現できません。E2E AIが都市部で通用するかを証明するには、このClosed-loopによる「対話的な評価」が不可欠です。

8.4 評価指標の転換:L2誤差から「安全性」へ

これまでのAI評価(Open-loop)では、正解の軌跡との距離(L2誤差)が指標でした。しかし、最新の評価では以下の指標が重視されています。

  • 衝突率(Collision Rate): どれだけ事故を起こさずに走れたか。
  • 目的地到達率(Success Rate): 複雑な交差点を抜けて目的地に着けたか。
  • 不快指数(Comfort): 急ブレーキや急ハンドルがなく、人間にとって快適か。

おわりに

今回は、自動運転の世界を、一般公開されている情報を元に自分なりの視点で整理してみました。

自動運転の技術は、日進月歩で進化しています。これまで当たり前だった「人間がルールを書く」手法から、AIが「世界の仕組みを自律的に学ぶ」手法への転換期を目の当たりにし、そのスピード感とスケールの大きさに改めて圧倒される思いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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