GCP インスタンスグループ入門(実案件で感じた価値)
はじめに
Google Cloud Platform(以下、GCP)へのシステム基盤移行を進める中で、主に Compute Engine(以下、VM)の構築を担当してきました。
オンプレミス環境で運用されてきた VM をクラウドアーキテクチャとして再設計・構築する過程で、GCP が提供する VM 管理の仕組みである「インスタンスグループ」を活用することの重要性を強く感じました。
本記事では、インスタンスグループの概要と採用理由、そして実際に案件で利用して感じた所感をまとめます。
案件概要(参考)
- オンプレミス上に構築された Web アプリケーションシステムを、クラウドアーキテクチャへ移行する案件です。
- クラウド基盤には GCP を採用しています。
担当業務概要
- Web アプリケーションシステムのうち、VM 上で稼働するバックエンド機能・周辺機能のインフラ設計および構築を担当しました。
- インフラ構築および設定管理は Terraform による Infrastructure as Code(IaC)を採用しています。
インスタンスグループとは
インスタンスグループとは、複数の Compute Engine VM インスタンスを論理的なグループとしてまとめ、一元的に管理するための GCP の仕組みです。
インスタンスグループには、主に以下の 2 種類があります。
マネージド インスタンスグループ(MIG)
インスタンステンプレートを元に VM を自動生成・管理する方式です。VM 台数のスケーリング、障害発生時の自動復旧、ローリングアップデートなどを GCP が管理してくれます。
アンマネージド インスタンスグループ
既存の VM を手動でグルーピングする方式です。スケーリングや更新は利用者が個別に管理する必要があります。
一般的なクラウドアーキテクチャでは、可用性や運用負荷軽減の観点から、マネージド インスタンスグループ(MIG)が採用されることが多いです。
インスタンスグループを採用する理由
インスタンスグループ(特に MIG)を採用する主な理由は以下の通りです。
-
可用性の向上
VM 障害時に自動でインスタンスを再作成でき、サービス停止リスクを最小限に抑えられます。 -
スケーラビリティの確保
負荷に応じて VM 台数を自動・手動で増減でき、将来的な負荷増加にも柔軟に対応できます。 -
運用負荷の軽減
パッチ適用や OS 更新、VM 再作成などをインフラレイヤで吸収でき、個別 VM 管理が不要になります。 -
ロードバランサとの高い親和性
GCP のロードバランサと組み合わせることで、ヘルスチェックに基づいたトラフィック制御が容易になります。 -
IaC との相性の良さ
Terraform などの IaC ツールと組み合わせることで、再現性の高いインフラ構築が可能になります。
インスタンスグループで感動したこと(所感)
ここからは、実際に案件で利用して感じた個人的な所感をまとめます。
VM をフルマネージドリソースに近い形で扱える
- 一般的に VM はステートレス運用が推奨されますが、インスタンスグループを活用することで「VM 個体」を意識せず、サービス単位での運用が可能になります。
- 障害時の自動復旧、ヘルスチェックによるトラフィック制御、ローリングアップデートなどを組み合わせることで、VM をフルマネージドリソースに近い形で扱えるようになります。
※ データの永続化が必要な場合は、Persistent Disk や Cloud Storage、外部データベースなどとの役割分離が前提です。
Terraform との相性が非常に良い
- インスタンスグループは「インスタンステンプレート + 管理ポリシー」で構成されるため、Terraform の思想と非常に相性が良いです。
- ベースイメージ管理やスタートアップスクリプトによる初期設定を組み合わせることで、類似構成の VM を安全かつ迅速に横展開できます。
- インフラ構成の属人化を防ぎやすく、「コードが正」の状態を維持しやすい点も大きなメリットです。
担当者の引き継ぎがしやすい
- 個別 VM の手作業設定が不要になるため、引き継ぎ時に説明すべき内容が大幅に減ります。
- 極端な話、「この Terraform コードを apply すれば同じ環境が再現できます」と説明できるケースも多くあります。
まとめ
インスタンスグループを用いた運用は多くのメリットがありますが、すべてのシステムに最適というわけではありません。
例えば、強いステートフル要件を持つシステムや、個別 VM の細かな制御が必要な場合には、単体 VM 管理の方が適しているケースもあります。
これらのメリット・デメリットや、インスタンスグループが向いていないアーキテクチャについては、別の記事で整理する予定です。