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Amazon WorkSpacesでFreeCAD 0.19 + FEM_FrontISTRを動かす①

Last updated at Posted at 2022-03-24

1. 背景

Amazon WorkSpacesはクラウド上で利用できるデスクトップ環境であり,利用者に依存せず同じ環境を提供できることから,授業や講習でも有用なものです.CAEの分野でも,CADソフトによる造形から構造解析までのデモンストレーションを行うものとして利用価値があります.

しかしながら,Amazon WorkSpacesの「無料利用枠の対象」であるWindowsは,デフォルトでは,オープンソースのCADであるFreeCADのバージョン0.17以前しか利用できません.オープンソースのソルバであるFrontISTRをFreeCADから利用可能にしたアドオンが昨年リリース1されましたが,こちらはFreeCAD 0.19で導入可能なため,対応していないという問題がありました.

この記事①では,Amazon WorkSpacesの新規立ち上げから解決策の実施までを紹介します.次いで②では,WorkSpaces上でのFEM_FrontISTR利用例と利用上の注意を見ていきます.

次の記事↓
(準備中)


2. 用語のざっくりとした説明

  • Amazon WorkSpaces: AWS (Amazon Web Services)の提供する仮想デスクトップ環境
  • FreeCAD: オープンソースのCADソフト.フリーのCAD
  • FEM_FrontISTR: オープンソースの構造解析ソルバ FrontISTR をFreeCADのアドオン化したもの.FreeCAD上でモデリング〜解析〜可視化を行える.

3. Amazon WorkSpacesの新規作成

AWSのアカウント作成まではできているとして,新規にWorkSpacesを作成する過程を順に見ていきます.

  1. AWS マネジメントコンソールの「WorkSpaces」へ行き,左上の「WorkSpacesを起動」を押します.
    1_launch-0.png
  2. 利用するディレクトリを選択します.新規作成 or 目的のものを選択し,次へ進みます.
    1_launch-1.png
  3. 利用するユーザーを追加します.「ユーザー名」「名」「姓」「Eメール」を入力し,「ユーザーの作成」を押します.
    1_launch-2-1.png
    作成されると画面下部に反映されますので,確認の上,次へ進みます.
    1_launch-2-2.png
  4. 利用するバンドル(マシンのタイプやOS)を選択します.今回は「無料利用枠の対象」である「Standard with Windows 10 (Server 2019 based),日本語」としました.画面下部の割り当てを確認し,次へ進みます.
    1_launch-3-1.png
    1_launch-3-2.png
  5. 設定の確認です.知らぬ間の課金を避けるため,「AutoStop」を選択します.画面下部のタグは任意です.
    1_launch-4-1.png
    1_launch-4-2.png
  6. WorkSpacesの最終確認です.設定事項に誤りがないことを確かめ,「WorkSpacesの起動」を押します.
    1_launch-5.png
  7. 新たに作成したものが一覧画面に反映されます.ステータスが「PENDING」のうちは準備中で利用できません.
    1_launch-6.png
  8. 数十分(公式では20分,それより短いことも長いことも)経つと,ステータスが「STOPPED」に変化し,利用可能になります.次項のはじめに示すメールの到着でこの準備完了を知ります.
    1_launch-7.png

4. Amazon WorkSpacesの立ち上げ

利用可能になったWorkSpacesを立ち上げる過程を順に見ていきます.

  1. 利用可能のお知らせは,ユーザー追加の際に入力したEメール宛に届きます.
    2_signin-1.png
  2. メールの「1」のリンクにアクセスし,パスワードを設定します.
    2_signin-2.png
  3. パスワード設定が完了すると,クライアントのダウンロード画面に自動で遷移します.適切なものを選択し,自身の環境にインストールしてください.
    2_signin-3.png
  4. クライアントを立ち上げ,メールの「2」に記載された登録コードを入力して次へ進みます.
    2_signin-4.png
  5. ユーザー名と先程設定したパスワードを入力し,次へ進みます.
    2_signin-5.png
  6. 入力情報に問題がなければ,起動の準備に入ります.
    2_signin-6.png
  7. しばらく待つと,Windows環境が立ち上がります.失敗した場合は,入力をやり直したり,マネジメントコンソールから再起動を試みたりします.
    2_signin-7.png

5. FreeCAD 0.19をとりあえず入れる

冒頭の文章より,ここまでの手順で作成したWindows環境ではFreeCAD 0.19を利用できないことは明らかですが,一度インストール〜起動をやってみましょう.

  1. ブラウザ2でFreeCADのダウンロードページにアクセスし,Windows版のインストーラを取得します.
    3_freecad-1.png
  2. 特別な設定はせずインストールを進めます.
    3_freecad-2.png
  3. 起動してみます.やはりローディング画面のみ表示されて落ちてしまいます.
    3_freecad-3.gif

6. 問題の解決へ

立ち上がらない問題の原因究明〜解決の過程を記録として残します.最終的な結論だけ知りたいという方は,次項 7 へ進んでください.

「amazon workspaces freecad 0.19」で検索すると,仮想環境で利用できないという似たような事例がFreeCAD Forum3で見つかりました.曰く,GPUが搭載されていないことが立ちがらない原因のようです.このスレッドの一番下,投稿者による解決策として示されていたのは

  • Mesa3Dのopengl32.dll4 (dllの形で配布されているもの)をbinフォルダ(=アプリケーションのあるところ)に入れる
  • Stack Overflowに解説あり

という内容でした.そこで,リンクされたStack Overflow5を確認すると,トップ回答の内容は

  • LLVM + Mesa3Dをビルドし,opengl32.dllを作成する
    C:\Windows\System32\opengl32.dllを置き換える
  • アプリケーションと同じフォルダに入れても動かない

というものでした.FreeCAD Forumの投稿者は自身でFreeCADをビルドしたのに対し,今はインストーラで入れたものを使いたいという違いがあります.しかし,Stack Overflowの方にしたがってビルドから行うのは面倒です.また,dllの置き場にも食い違いがあります.ひとまず試していくしかない...ということで以下のような作業を実験として行いました.

  1. dllがアプリケーションと同じところにあれば良い?と考え,C:\Windows\System32\opengl32.dllをFreeCADのexeがあるところにコピーしました.
    →何も変わりませんでした.後で気付きましたが,Stack Overflowの方でC:\...のものを「置き換え」(replace)と書かれているのに,「1. ビルドしたものか,2. C:\...のものを利用」と,このときは勘違いしていました.
  2. Stack Overflowを信用しC:\...のdllを置き換えるものの,ビルドは面倒なので配布されているMesa3Dのdllを利用することにしました.opengl32.dllなので32 bit用をダウンロードし,C:\Windows\System32\opengl32.dllを置換しました.このとき,Stack Overflowの次点の回答も参照し,C:\Windows\SysWOW64\opengl32.dllも置換しました.
    →FreeCADがローディング画面さえ出ずにエラーで落ちてしまいました.
  3. dllの名称は32であるものの,OSは64 bitなので64 bit用が必要ということに気付き,改めて64 bit用Mesa3Dのopengl32.dllをダウンロードしました.上と同様にSystem32SysWOW64内に配置しました.
    →無事起動しました!

7. FreeCAD 0.19を使えるようにする

解決策の結論を簡単に述べます.

  1. Mesa3D 64 bitのopengl32.dllを入手する
  2. Windowsにはじめから存在するopengl32.dllを置き換える

という2つの作業を行います.以下では,必要なファイルのダウンロード〜既存のファイルのセキュリティ変更・置換までの過程を順に見ていきます.

  1. Mesa3Dのダウンロードページにアクセスし,64 bit用を入手します.
    4_mod-1.png
  2. Mesa3Dは7z形式で圧縮されているため,解凍用に7-Zipも導入します.
    4_mod-2.png
  3. 7zを右クリック,「7-Zip」 > 「ここに展開」を選択し,解凍します.opengl32.dllREADME.txtの2ファイルが得られます.
    4_mod-3.png
  4. WorkSpacesでは,ユーザー環境はDドライブに存在します.エクスプローラー上部のバーにC:\と入力し,Cドライブにアクセスします.
    4_mod-4.png
  5. C:\Windows\System32の様子です.このopengl32.dllを置き換えます.
    4_mod-5.png
  6. WorkSpacesを利用するユーザーは管理者扱いであるものの,置き換えようとすると拒否されてしまいます.C:\...のdllのアクセス許可を変更することで対処します.
    4_mod-6.png
  7. C:\Windows\System32\opengl32.dllを右クリックし,プロパティを開きます.プロパティの「セキュリティ」タブの下部,「詳細設定」へ進みます.ここからの作業はシステムの一部を改変するものですので,自己責任で行ってください
    4_mod-7.png
  8. 所有者が「TrustedInstaller」となっているので,これを変更します.
    4_mod-8.png
  9. フィールドに自身のユーザー名(WorkSpaces作成時に設定したもの)を入力し,「名前の確認」を行います.入力した文字列を含むユーザーが複数存在する場合(例: user01,user02など)は,適切なものを選択してください.
    4_mod-9.png
  10. 所有者が変更されたことを確認し,「適用」を押します.
    4_mod-10.png
  11. 今度はプロパティの「セキュリティ」タブより,「編集」(アクセス許可の変更)へ進みます.図のような画面が表示されるので,上のユーザーなど一覧から「Users」を選択し,「フルコントロール」にチェックを入れてください(どうせ置換してしまうのでフルコントロールで良いです).すると,拒否されることなく,入手したMesa3Dのopengl32.dllで置き換えられます.一連の操作をC:\Windows\SysWOW64\opengl32.dllに対しても行ってください.
    (2022.3.31修正: 再検証したところ,SysWOW64内のファイルは置換しなくても良いことが判明しました.)
    4_mod-11.png
  12. Mesa3DのdllがSystem32SysWOW64 に配置された後,改めてFreeCAD 0.19を起動します.期待通り画面が表示されました.
    4_mod-12.gif

次の記事②↓では,FEM_FrontISTRアドオンを入れた上で実際にFreeCADを使っていきます.
(準備中)

  1. https://twitter.com/FrontISTR_/status/1385620772123668486?s=20&t=cUZxtej4PJZJfWadxSp8ew

  2. IE 11とFirefoxがあります.

  3. https://forum.freecadweb.org/viewtopic.php?t=42264

  4. https://fdossena.com/?p=mesa/index.frag

  5. https://stackoverflow.com/questions/48433641/does-azure-allow-app-need-opengl-any-way-to-go-around

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