はじめに
2025年、フロントエンド開発の世界でSolid.jsが大きな注目を集めました。ReactライクなAPIを持ちながら、Virtual DOMを使わない革新的なアプローチで、パフォーマンス重視の開発者たちから高い評価を得ています。本記事では、Solid.jsの特徴と2025年の主要な出来事について解説します。
Solid.jsとは
Solid.jsは、きめ細かいリアクティビティ(Fine-Grained Reactivity)をコアに設計されたJavaScriptライブラリです。Ryan Carniato氏によって作られ、以下の特徴を持っています。
主な特徴
1. Virtual DOMを使わない
Solid.jsはVirtual DOMの差分計算を行わず、直接DOMを更新します。これにより、React比で最大70%のパフォーマンス向上を実現しています。
2. Signalsベースのリアクティビティ
状態管理にSignalsを採用し、変更があった部分だけを更新する仕組みを実装しています。
import { createSignal } from "solid-js";
function Counter() {
const [count, setCount] = createSignal(0);
return (
<button onClick={() => setCount(count() + 1)}>
Count: {count()}
</button>
);
}
3. Reactライクな構文
JSXを採用しているため、React開発者にとって学習コストが低く、移行がスムーズです。ただし、コンポーネント自体は再実行されず、リアクティブな値のみが更新される点が異なります。
2025年の主要な出来事
1. SolidStart 1.0の正式リリース(2024年5月)
2024年5月21日、約3年の開発期間を経て、Solid.jsの公式メタフレームワーク「SolidStart 1.0」が正式にリリースされました。これは2025年のSolid.js人気の基盤となりました。
SolidStartの主な機能:
- ファイルベースルーティング
- サーバーサイドレンダリング(SSR)
- Server Functions(サーバーロジックをコンポーネント内に記述可能)
- Vinxiベースのビルドシステム
- Nitroによるサーバー層
SolidStartは、Next.jsのようなフルスタックフレームワークでありながら、より小さなバンドルサイズと高速な実行速度を実現しています。
2. SolidStart 1.1リリース - "Gear 5"(2025年初頭)
2025年初頭、SolidStart 1.1がリリースされました。このリリースでは:
- Vite 6への対応
- Server Functionsのバグフィックス
- TanStack Start チームとの協力関係の発表
- 専任サポートチームの設立
特に注目すべきは、Tanner Linsley氏(TanStack Queryの作者)とのパートナーシップで、今後のメタフレームワークの未来を共に築いていく方向性が示されました。
3. Solid 2.0への道のり発表(2025年3月)
2025年3月、Solid.js創設者のRyan Carniato氏により、Solid 2.0の開発が正式に発表されました。主な開発領域として以下が挙げられています:
- より洗練されたリアクティブシステム
- Props、JSX属性、分割代入の改善
- TypeScriptサポートの強化
- パフォーマンスのさらなる最適化
開発は#nextブランチで進められており、コミュニティからのフィードバックを受けながら段階的に実装されています。
4. ファインクレインドリアクティビティの新プリミティブ(2025年11月)
2025年11月のJSNation Conference で、Ryan Carniato氏がSolid.jsのリアクティブアーキテクチャに新しいプリミティブを導入する計画を発表しました。この発表では、React Compilerやその他のフレームワークとの比較を通じて、ファインクレインドレンダリングの優位性が強調されました。
Carniato氏は「状態管理を追加することで、フレームワークのパフォーマンス上限が下がってしまう」というReactチームの発見を引き合いに出し、Virtual DOMベースのフレームワークの限界を指摘しました。
5. 2025年に注目すべきフレームワークとしての評価
2025年1月、Carniato氏自身がブログで「2025年に注目すべきフレームワークはAngularとVue」と述べつつも、Solid.jsは性能とDXのバランスで独自の地位を確立しました。
開発者コミュニティでは、モバイルトラフィックが全体の60%を占める中、Solid.jsの軽量性と高速性が特に評価されています。
Solid.jsのパフォーマンス優位性
ベンチマーク結果
各種ベンチマークで、Solid.jsは以下のような結果を示しています:
- Reactの約10分の1の再レンダリング回数
- ミリ秒未満の更新速度
- 最適化されたバニラJavaScriptとほぼ同等の性能
なぜこれほど速いのか?
- コンパイル時最適化: テンプレートをビルド時に最適化されたDOM操作に変換
- 選択的更新: 変更された値に依存するDOM要素のみを更新
- オーバーヘッドの削減: Virtual DOMの差分計算が不要
エコシステムの成長
2025年、Solid.jsのエコシステムは着実に成長しました:
- Solid Router: 公式ルーティングライブラリ
- Solid Meta: メタデータ管理
- SolidUI: コンポーネントライブラリの充実
- TanStack Router for Solid: 高機能なルーティングソリューション
- Drag and Drop by FormKit: ドラッグ&ドロップ機能
Solid.jsが適しているケース
最適な用途
-
パフォーマンスクリティカルなアプリケーション
- ダッシュボード
- リアルタイムデータ可視化
- チャットアプリケーション
-
モバイルファーストの開発
- 小さなバンドルサイズが重要な場面
- ネットワーク環境が不安定な地域向け
-
複雑なUIの効率的な管理
- 頻繁な状態変更が必要なアプリ
- 大量のデータを扱うインターフェース
導入を検討すべき場面
- 新規プロジェクトでパフォーマンスを最優先する場合
- Reactの学習経験があり、より速いフレームワークを探している場合
- バンドルサイズを最小化したい場合
ReactとSolid.jsの比較
構文の類似性
// React
const [count, setCount] = useState(0);
return <button onClick={() => setCount(count + 1)}>{count}</button>;
// Solid.js
const [count, setCount] = createSignal(0);
return <button onClick={() => setCount(count() + 1)}>{count()}</button>;
主な違い
| 項目 | React | Solid.js |
|---|---|---|
| 再レンダリング | コンポーネント全体 | 変更箇所のみ |
| Virtual DOM | あり | なし |
| バンドルサイズ | 大きめ | 小さい |
| エコシステム | 非常に豊富 | 成長中 |
| 学習曲線 | 緩やか | やや急(リアクティビティの理解が必要) |
実装例: カウンターアプリ
import { createSignal } from "solid-js";
import "./styles.css";
export default function Counter() {
const [count, setCount] = createSignal(0);
return (
<div class="container">
<h1>Solid.js Counter</h1>
<p>Count: {count()}</p>
<button onClick={() => setCount(count() + 1)}>
Increment
</button>
<button onClick={() => setCount(count() - 1)}>
Decrement
</button>
</div>
);
}
このシンプルなコードで、ボタンクリック時にcountの表示部分のみが効率的に更新されます。
今後の展望
Solid 2.0への期待
- より直感的なAPI設計
- TypeScript体験の向上
- 開発者体験(DX)の改善
- エコシステムのさらなる拡大
コミュニティの成長
- Discord コミュニティの活性化
- 日本語ドキュメントの充実
- 企業での採用事例の増加
フロントエンド開発のトレンド
2025年、Carniato氏は「サーバーファースト」から「バランス重視」へのトレンドシフトを予測しました。SolidStartのようなフレームワークは、SSRとSPAの両方の長所を活かせる柔軟性を提供しています。
まとめ
Solid.jsは2025年、以下の理由で大きな注目を集めました:
- SolidStart 1.0の正式リリースにより、本格的なプロダクション利用が可能に
- 卓越したパフォーマンスにより、性能重視のプロジェクトで選択肢に
- Solid 2.0の開発開始により、さらなる進化への期待
- エコシステムの成長により、実用性が向上
- コミュニティの拡大により、学習リソースが充実
ReactやVueと比較すると、まだエコシステムは発展途上ですが、パフォーマンスを最優先する場合や、新しい技術にチャレンジしたい開発者にとって、Solid.jsは非常に魅力的な選択肢となっています。
2026年以降、Solid 2.0のリリースとともに、さらなる飛躍が期待されます。フロントエンド開発の新しい可能性を探求したい方は、ぜひSolid.jsに触れてみてください。