みなさんこん**は。
この記事は、UiPath Advent Calendar 2025 の 1日目の記事です。
この記事について
UiPathの取り組むエージェンティックオートメーションについて、私なりに、これまでの経緯とこれからの展望を簡単にまとめてみました。
UiPath製品の活用による自動化アプローチの変遷
UiPathのRPA製品としての地位確立(2021年以前~)
UiPathは、RPA製品として世界的に認知されるようになりました。特に日本市場においては、デスクトップ業務の自動化ニーズの高まりとともに、多くの企業がUiPathを導入し、定型業務の効率化を実現してきました。この時期の自動化は、主に決められた手順を忠実に実行する「ルールベース」のアプローチが中心で、自動化の対象となる業務は、定型的かつボリュームの見込まれるものが中心でした。
AI機能の統合と進化(2022年~)
2022年ごろから、UiPathはAI技術を積極的に製品に組み込み始めました。特に注目すべきは「Document Understanding」の登場です。これにより、非定型な文書からのデータ抽出が可能となり、従来のRPAでは対応が困難だった業務領域にも自動化の適用範囲が広がりました。
AI機能は、従来の「定型的」でなければ適用することが難しかった業務にも自動化を取り入れる余地を与えるという点で、RPAによる自動化の転換期をスタートさせるものでした。
生成AI時代への対応(2023年~)
2023年以降、ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及により、自動化の概念そのものが大きく変化しました。UiPathは、従来のオートメーションをAIで拡張する戦略を推進しました。特筆すべきは「Autopilot」で、自然言語でのワークフロー作成や、AIによる開発支援、また自然言語での自動化プロセス実行が可能となりました。これにより、自動化の「実現速度」と「活用の簡易化」を同時に実現できるようになりました。
エージェンティックオートメーションへの転換(2025年)
2025年に入り、多くの企業でAIエージェントの活用が謳われる中、UiPathは自らのプラットフォームのなかでエージェントを開発し管理するための製品として、「Agent Builder」と「Maestro」をリリースしました。従来の「決められた手順を実行する」自動化から、「目標を与えられて最適な方法を自ら考えて実行する」自動化へと、パラダイムシフトが起きつつあります。
エージェンティックオートメーションとは
エージェンティックオートメーション(Agentic Automation)は、AIエージェントが自律的に判断し、目標達成のために最適な行動を選択・実行する次世代の自動化アプローチです。従来のRPAが「事前に定義された手順を忠実に実行する」のに対し、エージェンティックオートメーションは「与えられた目標に対して、状況を理解し、必要なタスクを自ら計画・実行する」点が大きく異なります。これにより、より複雑で非定型な業務にも対応できるようになり、人間のように柔軟に問題解決を行う自動化が可能となります。
エージェンティックオートメーションと従来のRPAの違い
エージェンティックオートメーションは、従来のRPAによる自動化とは根本的に異なるアプローチを取ります。以下に主要な違いを示します。
1. 実行方式の違い
- 従来のRPA: 開発者が事前に定義した手順を忠実に実行する。処理フローは固定されており、想定外の状況には対応できない
- エージェンティックオートメーション: AIエージェントが目標を理解し、状況に応じて最適な実行手順を自律的に判断・選択する。予期しない状況にも柔軟に対応できる
2. 開発アプローチの違い
- 従来のRPA: 「どのように実行するか(How)」を詳細に設計する必要がある。各ステップのアクション、条件分岐、エラー処理などを明示的に定義する
- エージェンティックオートメーション: 「何を達成したいか(What)」を定義する。具体的な実行手順はAIエージェントが自動的に計画する
3. 適用業務の違い
- 従来のRPA: 定型的で手順が明確な業務に適している。非定型業務や判断を伴う業務への適用は困難である
- エージェンティックオートメーション: 非定型業務や状況に応じた判断が必要な業務にも対応可能である。複雑な意思決定プロセスを含む業務も自動化の対象となる
4. メンテナンスの違い
- 従来のRPA: 業務プロセスやシステムが変更されると、ワークフローの修正が必要になる。変更への柔軟性が低い
- エージェンティックオートメーション: AIエージェントが環境の変化を認識し適応できるため、メンテナンスの負担が軽減される。ただし、目標やガイドラインの見直しは必要である
5. 必要なスキルの違い
- 従来のRPA: ワークフロー設計、プログラミング的思考、詳細な業務理解が必要である。技術的なスキルへの依存度が高い
- エージェンティックオートメーション: AIエージェントへの適切な指示の与え方、目標設定能力が重要になる。従来の技術スキルに加えて、AIとの協働スキルが求められる
| 比較項目 | 従来のRPA | エージェンティックオートメーション |
|---|---|---|
| 実行方式 | 事前に定義された手順を忠実に実行 | AIが目標を理解し、状況に応じて最適な手順を自律的に判断・実行 |
| 開発アプローチ | 「どのように実行するか(How)」を詳細に設計 | 「何を達成したいか(What)」を定義する |
| 適用業務 | 定型的で手順が明確な業務 | 非定型業務や判断を伴う複雑な業務にも対応可能 |
| 柔軟性 | 想定外の状況には対応できない | 予期しない状況にも柔軟に対応 |
| メンテナンス | 変更時にワークフローの修正が必要 | AIが環境の変化を認識し適応、メンテナンス負担が軽減 |
| 必要なスキル | ワークフロー設計、プログラミング的思考、詳細な業務理解 | AIへの適切な指示、目標設定能力、AIとの協働スキル |
エージェンティックオートメーションの具体例
エージェンティックオートメーションの具体的な活用例をいくつか紹介します。
1. カスタマーサポートの自動化
顧客からの問い合わせメールを受信したとき、AIエージェントが内容を理解し、過去の対応履歴や社内ナレッジベースを参照して、適切な回答を自動生成します。必要に応じて関連部署への確認を行い、最終的に人間の承認を経て返信を送付します。従来のRPAでは定型的な問い合わせにしか対応できませんでしたが、エージェンティックオートメーションでは個々の状況に応じた柔軟な対応が可能です。
2. 経費精算処理の高度化
従業員が提出した経費申請を処理する際、AIエージェントが領収書の内容を読み取り、経費規程に照らし合わせて適切性を判断します。不明瞭な点があれば申請者に自動で質問し、必要に応じて承認者を選定して承認フローを構築します。規程違反の可能性がある場合は、過去の類似事例を参照して判断材料を提示します。
3. 採用プロセスの効率化
応募者の履歴書を分析し、求人要件とのマッチング度を評価します。さらに、スケジュール調整システムにアクセスして面接官の空き時間を確認し、応募者に複数の候補日時を提案します。面接後には、面接官のフィードバックを収集・整理し、次のステップの推奨事項とともに採用担当者に報告します。
4. 営業活動の支援
商談後のフォローアップとして、AIエージェントが商談内容を分析し、顧客のニーズに応じた提案資料のドラフトを作成します。同時に、CRMシステムに商談情報を記録し、次回のアクションを提案します。また、競合情報や市場動向を自動収集し、営業担当者に関連情報を提供します。
5. IT運用の自律化
システムの異常を検知した際、AIエージェントが過去のインシデントログや技術文書を参照して原因を特定し、解決策を提案します。標準的な問題であれば自動的に復旧処理を実行し、複雑な問題の場合は適切な担当者にエスカレーションして必要な情報を提供します。
これらの例に共通するのは、AIエージェントが状況を理解し、複数の情報源から必要な情報を収集し、目標達成のために最適な行動を自律的に選択している点です。従来のRPAでは、これらすべての分岐や判断を事前に設計する必要がありましたが、エージェンティックオートメーションではAIが状況に応じて適切に判断することで、より柔軟で知的な自動化が実現されています。
私たちはエージェンティックオートメーションにどう向き合うのがよいのか
劇的に何かを変えていく必要はない――これまでの知識は無駄にならない
「エージェンティックオートメーション」という言葉を聞いて、「これまで積み上げてきたものが無駄になるのでは」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。
いま稼働している自動化プロセスは、これからも価値を提供し続けます。変化させることがゴールではないのですから、慌てる必要はありません。むしろ、これまでRPAに取り組んできた経験は、新しい技術を理解し活用するための強力な武器になります。業務プロセスの理解、システム連携の知識、例外処理の設計経験――これらすべてが、エージェンティックオートメーションの世界でも活きてくるのです。
マクロの視点を新たに持つ
従来のRPAでは、「この画面でこのボタンをクリックして、次にこのフィールドに入力して…」といった、いわばミクロな視点での自動化が中心でした。
しかしエージェンティックオートメーションの世界では、もう少し引いた、マクロな視点が必要になります。業務には複数の関係者が関わり、情報が行き交い、さまざまな判断が下されます。この全体像を俯瞰し、「誰が何をどのように連携するのか」を描き出す力が求められるのです。
これは、ビジネスアナリストやソリューションアーキテクトが日頃から行っている仕事に近いものです。技術だけでなく、業務全体を見渡し設計する能力――これからの自動化人材には、このスキルがますます重要になっていくでしょう。
ひと・AI・RPAの役割を考える
AIの進化は目覚ましいものがありますが、だからといってすべてをAIに任せられるわけではありません。ハルシネーションに代表されるように、生成AIにはまだ不確実な部分が残っています。
そして何より、業務における最終的な判断と責任は、やはり「人間」が負うべきものです。技術的な可能性だけでなく、企業倫理や法的責任の観点からも、重要な判断には人間の介在が不可欠なのです。
だからこそ重要なのは、「誰が」「何を」担うべきかを見極めることです。人間が判断すべきこと、AIエージェントに任せられること、従来のRPAで確実に処理すべきこと――この最適な役割分担を設計し実装することが、これからの自動化の成功の鍵となるでしょう。
終わりに
この記事を執筆を経て、過去に自身が経験した自動化の取り組みを今の自分が取り組むとしたら、どのような自動化が出来るのだろう、と思いを馳せました。
世の中には自動化を実現する余地が多数ある、と常々考えていますが、その自動化をより高いレベルで簡単に実現できるよう、ひとりのユーザーとしてこれからもUiPathに期待したいと思います。
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