本記事はPepperアドベントカレンダーの一環です。何日目だったっけ。
はじめに断っておきますが、本記事はPepperやプログラミングにこれまであまり触れたことのない方を対象としています。
具体的な実装の話はqiitaなどにたくさん紹介がありますが、本記事のような「今さら聞けない基礎」について説明しているページがあまりないので書いてみました。
#Pepperに「人工知能」は組み込まれていない
私がアトリエ秋葉原(Pepperの開発スペース)のスタッフとして働いてきた中で何度か受けた質問の一例をご紹介します。
「Pepperには人工知能が入っているのか?」
「Pepperは家に置いておくと賢くなるの?」
「人工知能」という言葉の定義が曖昧なので、その言葉はあえて使わず上記の質問に回答をするならば、Pepperには
・人の顔を見分ける
・人の言葉を理解して返事をする
・人間のようにものごとをひとりでに学習する
といった、高度な認知機能は搭載されていません。
ですので、家庭にPepperをおいても勝手にあなたの名前を覚えてくれるわけではありませんし、お留守番をしてくれるようになるわけでもありません。
Pepperはあくまである程度の動作機能とネットワークを備えたハードウェアであり、【高度な計算や処理は外部媒体に投げる】ことを前提に作られたプロダクトです。
発売当初に「人工知能ロボット」という紹介のされ方をしていたので、こういった曖昧な言葉づかいが誤解を呼ぶきっかけになったのだと思います。
#「人工知能」が一般的に指すもの
非常に基礎的なお話ですが、「今さら聞けない」というタイトルの記事なので一応。
元々、一般的な会話で用いられていた「人工知能」という言葉は、ドラえもんや鉄腕アトムのようにロボットが人格を持って思考するようなものを指しているものだと思いますが、これは汎用人工知能と呼ばれるもので、近年のバズワードになっている「人工知能」はこれとは別物です。
ここ4、5年のバズワードの「人工知能」は「特化型人工知能」のことで、人の脳を模倣した「学習」によって、プログラムが特定のタスクを高い精度でこなせるようになる仕組みのことを指すことが多いです。
これによってコンピュータが画像に写っているものが何かを判別したり、対人戦では無敵の囲碁棋士を作り出したりすることができるようになりました。
ここに説明を割くと記事の本来の筋から逸れていく気がするので詳しくは
https://www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/AIwhats.html
などを参考にしてください。
#Pepperに「知能」を
では、話題の「人工知能」(ここでは機械学習・深層学習を用いたプログラムのことを指しているものと解釈します)とPepperを連携させて、
・Pepperの視界に何が写っているのかを判別したり
・人の顔を見分けたり
・人間の言葉を柔軟に判別したり
・通訳をさせたり
といったことを可能にするにはどうしたらよいでしょうか?
選択肢は大きく分けて2つ。
・自分で機械学習などのプログラムを組み、外部のPCで実行。そのプログラムの挙動に応じて外部PCからPepperに指示を出す。
・クラウドサービスを活用する。
前者はPythonを書き慣れている人にとってはそれほど敷居が高いものではありませんが、そうでない方にとっては非現実的な選択肢であると思います。
そこで後者の方法が圧倒的にオススメです。
「人工知能」ほどメジャーではありませんが「クラウド」もここ5,6年ほどこの界隈では相当なバズワードです。
クラウドとは何かと検索すると
「クラウド」とは、クラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でコンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションをはじめとした、さまざまな IT リソースをオンデマンドで利用することができるサービスの総称です。
参考:https://aws.amazon.com/jp/cloud/
といった難しい説明がいっぱいでてきますが、簡単に言えば、自分の手元にあるPCやサーバではなく、遠隔地にあるデータセンターのリソースを借りて、そこでサーバを立てたりプログラムを動かしたりすることができるサービスのことです。データセンターの巨大なリソースをみんなでシェアしているような感じです。
クラウドサービスは画像認識や音声認識などの知能系のサービスも沢山提供していて、「人工知能」が組み込まれた機能をお惣菜のような感覚で扱うことができます。
なお、クラウドサービスとしては
Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、IBM Cloud、Alibaba Cloud などが有名です。
ちなみに、人工知能の代名詞のような感じで名前が一人歩きしているWatsonとは、IBM Cloudが提供するサービスのうち、知能絡みサービスの名称です。
#つづく
というわけで、Pepperと人口知能についてよくある誤解と今さら聞けない基礎についての説明を書いてみました。
本記事の内容を前提として理解されている方を対象として、次回の記事ではWatsonをバックエンドとして、Pepperが視界に写っているものを発話するアプリを実装する方法をご紹介します。
アトリエ秋葉原でたまに開講している「Pepperで学ぶはじめてのWatson」というワークショップの簡略版みたいな感じにしようかな。ではまた。