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初めに

マイコンボードやIoT端末を、購入して使ったり自作したりするときに、LiPoバッテリーを使用する機会があると思います。
LiPoバッテリーは充電して何回も使える上に、小さいサイズで大きな容量が得られるので便利です。
しかし、小さな体積に大きなエネルギーが凝縮されているということは、破損した際に大きな事故につながりかねません。
LiPoバッテリーを仕事で何度か使用する機会があったので、使用上の注意点をまとめました。
※文字が多くなってしまいました。お急ぎの方は太字部分をご確認ください。

ここで取扱うLiPoバッテリーの種類

構成は、セル(電池)の直列数が1個で、並列数も1個(1S1Pと呼びます)のバッテリーです。
これには2種類あって、セルと呼ばれるバッテリー単体のもの(写真:左)と、バッテリーパックと呼ばれる保護回路付きのバッテリー(写真:右)です。
          セルのみ.jpg      保護回路付き.jpg
現在はバッテリーパックでの販売が多く、安全の観点からもバッテリーパックの使用をお薦めします。
黄色い絶縁/耐熱テープで覆われている部分に保護回路が入っています。
              保護回路部分.jpg

過充電について

過充電とは充電時に、バッテリーの上限の電圧を超えて充電してしまうことです。
以前は少しでも充電容量を多くするために、上限電圧は4.3Vくらいに設定されていましたが、現在では安全のため4.2V程度としている場合が多いようです。
また、過充電を防ぐためには充電回路側、もしくはバッテリー側に電圧を監視する保護回路が必要です。
LiPoバッテリーを使用する場合には、過充電保護機能があることを確認してください。
充電側、およびバッテリー側の両方に保護回路があると、仮に片方が故障しても危険な状態にならないのでベターです。
充電回路側の過充電保護には、充電タイマー機能があるものがあります。これは、長時間充電しても、規定の電圧まで充電されない場合は、バッテリー側に不具合があると判断して充電を停止する機能です。

過放電について

過放電とは、LiPoバッテリーを使いすぎて一定以上の電圧より低くなってしまう状態を指します。LiPoバッテリーは、過放電状態になると、劣化します。
このため過放電しないように保護回路が必要です。過放電保護の電圧は2.8V付近です。
過放電保護回路は、バッテリーの電圧を監視していて、電圧が残っていても一定値を下回った場合に出力を止めます。過放電を防ぐために、充電回路側、またはバッテリー側に電圧を監視する保護回路が必要です
ただし、LiPoバッテリーは、使用していなくても自己放電によって、少しずつ放電し電圧が下がっていきます。ですので、過放電保護が働いた後、充電せずにそのまま時間が経過すると、過放電状態になります。
この場合、もう充電できないというわけではなく、トリクル充電といって、一定の電圧になるまで微弱な電流で充電して復活させます。ただ、充電には時間がかかります。トリクル充電の機能は、通常充電側で対応しています。

充電時の過電流

LiPoバッテリーを充電するときは、上限の充電電流があります。例えば1000mAhのバッテリーに充電できる最大電流は、一般的に1000mAです。これを1Cの充電電流と呼びます。このバッテリーは1Cで充電すれば、1時間で空から満充電まで充電できます。0.5Cで充電すれば2時間かかります。1C以上の電流で充電することは危険ですので行ってはいけません。充電側の過電流保護回路の電流の設定は、ハードウェアになっていることが多いので、注意が必要です。買ってきたマイコンボードの説明書に「バッテリーは○○mAh以上の物をお使いください」とか、「充電電流は○○mAです」と書かれていたら○○mAh以上のバッテリーを用意しなければなりません。容量が足りるからといって小さいバッテリーを選択すると、過電流充電になり危険です。LiPoバッテリーは、1C以下の電流で充電してください。

放電時の過電流

放電時にも、最大電流の制約があります。通常のバッテリーでは、これも上記の1C以下ですので、500mAhのバッテリーであれば、500mA以上を連続で使用してはいけません。バッテリー側にこの保護機能が付いていると安全です。
この1Cという値ですが、特別に規定されていないバッテリーはこの数値で考えておくと無難です。急速充放電を保証しているバッテリーであればその仕様でかまいません。LiPoバッテリーは、1C以下の電流で使用してください。

短絡保護

放電時の過電流保護と同じ機能ですが、危険度はこちらの方が高いので必ず保護されていなければなりません。LiPoバッテリーを使用する場合には、バッテリー側に短絡保護回路があることを確認してください。
バッテリー充放電は化学反応ですので、電流関係の制限は、発熱の制限からきています。

放電温度

LiPoバッテリーは、安全に放電できる温度範囲があります、一般的には、-20℃以上60℃以下と言われています。温度センサを内蔵しているバッテリー(3ピンコネクタ)もあるのですが、一般に入手できるものは温度センサがない物が多いと思います。熱がこもる場所や、寒気にさらさせる場所にバッテリーを配置しないよう注意が必要です。

充電温度

放電する場合と同様に、充電可能な温度範囲もあり、その範囲はさらに狭くなります。一般的には、0℃以上45℃以下です。LiPoバッテリーは、屋外、特に車室内では使用できないと考えたほうが無難です。

保存温度

一般に推奨されている保存温度は、-20℃~50℃、長期保存の場合は、-20℃~35℃です。

物理的応力

LiPoバッテリーの中でも、通常入手できるものは、ケース入りではなく、アルミパックのような形状です。これを狭い場所に無理に押し込めたり、面に対してピンポイントで押したりするようなマウント方法は内部に欠損が起きる可能性がありで危険です。また、バッテリーが劣化すると膨らみますので、実装する場所には厚みに対して30~50%の余裕が必要です。LiPoバッテリーの実装にはスペース的な余裕が必要です。(写真の右側のバッテリーは、劣化して膨らんでいます)
           膨らんだバッテリー.jpg

絶対にやってはいけないこと!

電圧が足りないから2個以上を直列で使うとか、容量が足りないから並列接続で使うといったことは危険です。ほとんどの汎用のバッテリー充放電保護ICは、前述の1P1S用に設計されていますので、2S1Pや1P2Pといった使い方をすると保護機能が正常に働きません。LiPoバッテリーは、直列、並列接続しないでください。
<参考>ノートPCのバッテリーパックは、5P2Sなどの接続で、内部にCPUを持っていて、各セルで電流・電圧・温度を測定し充放電を制御しています。

捨てる時に、ゴミ箱に捨ててはいけません。下手をすると火災になります。市区町村の廃棄方法に従ってください。

おまけ

LiPoバッテリーは、満充電状態で長時間置くと充電容量が減少します。次に使う時のことを考えると満充電にしておきたくなると思いますが、保存する場合は50%~70%充電状態にすることが寿命の観点では望まれます。メーカーが出荷するときも、その程度の充電で出荷しています。(安全/危険の話ではなく、性能寿命の話です。)
過放電のところで記載していますが、バッテリーが空(保護回路によって放電はできないが、電力は残っている)の状態での保存もいけません。そこからさらに自己放電が起きて過放電になり、寿命を縮めます。

LiPoバッテリーの仕様は公開されていないことも多いのですが、できれば仕様書を入手して確認しましょう。また、マイコンボードは回路図が公開されている物もありますので、バッテリー充放電ICのデータシートで機能、設定値を確認して、安全で快適なホビー・ライフ?をお楽しみください。

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