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PythonAdvent Calendar 2021

Day 1

日系大手企業のパワポエンジニア事情をPythonで無理やり改善する

Last updated at Posted at 2021-11-30

はじめに

2021年10月、以下のような記事がQiitaに爆誕し、多くの日系大手企業勤務者からの共感を得ました。

私も日系大手企業に勤務する者として共感と虚無感を感じたので、この状況を私が得意とするPythonで改善できないかを考えてみました。

※本記事はキャリアをテーマにしたポエム記事です。**「Pythonは人気No.1言語によく選ばれてるけど、キャリア形成には役立つの?」**という疑問を持たれている方に、役立てられる記事を目指したいと思います。

日系大手企業の定義

元記事には、以下のような日系大手企業の条件が示されていました。

従業員数: 10000人以上(連結含め) 資本金: 1000億円以上 上場証券取引所: 東証1部 事業所数: 国内に複数、海外にも少し 平均年齢: 40歳以上 平均年収: 800万円以上

上記に当てはまる企業を前提として、話を進めていきます。

私の経歴紹介

新卒から計3社、上記の条件を満たす日系大手企業を経験しています。

日系大手で2回以上転職することは良くも悪くもレアケースなため、**「日系大手企業に共通するカルチャー」や、「日系大手企業の社内or転職市場において評価される人材」**に関しては、ある程度知見がある方かと思います。
(ただし、あくまでエンジニアであって人材の専門家ではないので、主観が入ることはご容赦ください)

2社目以降では、Pythonによるデータ分析を生業にしています。

キャリアを構築する上でPythonが役に立つことを身をもって実感したこと、そして日系大手企業のカルチャーに苦戦して得た教訓も数多くあるため、私の屍を超えて?後世の方々が自由なキャリアを築く助けとなるよう、記事に残したいと思います。

本記事の構成

大きく以下の2本立てで記載していきます。キャリアに関する内容は「2」なので、「1」は軽く読み飛ばすくらいの気持ちで閲覧いただければと思います。

タイトル 内容
1.元記事に対するPythonでのソリューション提案 元記事で挙げられていた問題点に関して、Pythonで改善できる部分があるかを検討
2.キャリア構築におけるPythonの活用 Pythonを有効活用して、リスクを抑えつつ自由度の高いキャリア構築を目指すためのTipsを考える

1. 元記事に対するPythonでのソリューション提案

まずは、元記事で挙げられていた問題点に関して、Pythonで改善できる部分があるかを検討していきます

業務環境

元記事には、以下のような記載がありました

コミュニケーション: Microsoft Outlook, 社用携帯電話 スライド作成: Microsoft PowerPoint 文書作成: Microsoft Word 表計算ソフト: Microsoft Excel バージョン管理: ※後述 人事労務管理ソフト: 自社開発ソフト(自グループ会社のみ利用) 営業支援ツール: 自社開発ソフト(自グループ会社のみ利用) 既定ブラウザ: Internet Explorer

日系大手企業においては、上記のような環境で仕事をしている方が多いと思います(私の経験企業もほぼ同様の環境でした)

この中で特にPythonによる改善の余地があるとすれば、

表計算ソフト: Microsoft Excel
文書作成: Microsoft Word
バージョン管理: ※後述

の部分だと思います。
(過去には既存の自社開発ソフトを勝手に改造して業務効率化し、表彰を受けた猛者も見たことがあるので、自社開発ソフトも改善の余地があるかもしれません)

Microsoft Excel

Pythonには、以下の記事のようにExcelファイルを読み書きするためのライブラリが複数存在します。

特に日報などの定常作業は、データ取得からExcelファイルへの書き込みまでの一連の処理をPythonで自動化できる可能性が高いため、業務効率の観点でお薦めです。

また、このような定常作業の自動化にExcel VBA(通称「マクロ」)を使われている方も多いかと思いますが、Webスクレイピングや大規模データの整形等、2021年のデータ取得法にマッチした機能はVBAと比べてPythonの方が段違いに多く、関連書籍や検索して出てくる情報もPythonが右肩上がりで増えているため、Pythonの方が学習コストも低くなりつつあります。

さらに、VBAはデータ、フォーマット、コードを同じファイルで管理するため、「データを更新しようとしたら間違えてフォーマットを上書きしてしまい復旧不可能となった」のようなケアレスミスが発生しやすい構成となっており(私もこれで何度かやらかしました)、その点Pythonはデータとコードを別々に管理するため、このようなケアレスミスが発生しにくいという点も、VBAの置き換え用途でのPython活用をお薦めする理由です。

私も過去にはVBAを使用していましたが、圧倒的な自由度やスキルとしての汎用性の高さから、今から勉強するのであればPythonをお薦めします。

Microsoft Word

Workは主にドキュメントの作成に使われているかと思いますが、代わりにMarkdownを使用することは、作成速度向上の観点からお薦めです。

Markdownとは、Qiitaの記事やGitHub等のドキュメント作成に使われるツール(マークアップ言語)であり、フォーマットに従って効率よく文書を作成することができます
Python等でよく使われるエディタ「VSCode」で編集やWordファイルへの変換もできるので、以下の記事を参考に試してみると良いかと思います。

また、以下の記事のようにPythonを使って図付きのドキュメント作成を自動化することもできます。

Markdownはプログラミング関係のドキュメント作成におけるデファクトスタンダードとなりつつあるので、スキル習得の観点からもお薦めです。

バージョン管理

元記事には、以下のような記述がありました。

弊社ではOfficeアプリを下図のようにしてバージョン管理しています。
japan_ep01.png
gitのように便利な差分管理なんてできるはずもなく、バージョン差分はOutlookメール等で変更点を手書きして伝えることが多いですね。

実はPowerPointには、以下の記事のようにファイル差分を比較する機能があります。
我々パワポエンジニア界隈でも、活用している方もいるかと思います。

注意点としては、図を少しでも動かすと差分判定されてしまったり、上の例のように古いバージョンのファイルを保持しておく必要がある(Gitで強引にバージョン管理することもできますが)等、使い方にやや癖があることです。

また、前述のMarkdownからリッチなデザインのPowerpointを作成できる、Marpというツールも存在します。
Wordの時と同様に、定常的に作成する資料であれば、Python+Markdown+Marpで作成を自動化することもできるかと思います。

求める人物像・評価制度

コミュニケーション

職場のほとんどが40歳以上の方となります。40歳以上の方々は昭和の思考様式をそう容易には変えてくれないので、相手の思考様式に合わせたコミュニケーションが要されます。やれAIだ、やれクラウドだと声を上げても理解できる人はそういないのが現状です。

評価制度

基本的には年功序列となります。職場に長くいる人が偉く、若手に裁量権は特にありません。

評価内容は業務実績と資格取得になります。 また、業務で実績が出せるかはほぼほぼ配属ガチャによって決まります。

正直、配属されれば誰でも成果が出せるような部署と、どうしたって成果が出ないような規制にがんじがらめにされた部署までピンキリとなっており差がひどいです。

このあたりは悲しいくらいに共感できる内容です。

前節でPythonによる業務改善案を色々と書きましたが、このレベルの業務改善を実践してもキャリアや評価に繋がる成果にプラスの影響はほとんどなく、それ以上大きな成果を出せるかは**「運」**の要素が非常に大きいです。

この運任せのキャリアから抜け出すためには、与えられた仕事や身近な改善をこなすだけでなく、戦略的なキャリア構築を意識することが重要だと考えます。

ここからがこの記事の本意となるので、詳細を次章で解説します。

2. キャリア構築におけるPythonの活用

「Pythonで業務改善してもキャリアにプラスの影響はほとんどない」とタイトルに反する主張をしてしまいましたが、日系大手企業においてPythonの使い道は他にもあります。

それは、錯覚資産の形成手段としてPythonを活用することです。
「錯覚資産とは何ぞや?」と思われた方も多いかと思うので、詳細を解説します。

日系大手企業における意思決定のフロー

元記事は以下のような記載で締めくくられていました。

SIerやコンサル出身の方はマッキンゼーのDXレポートを読まれたかとは思いますが、日系大手企業がDXを遂げられない主要因はデータや技術力の欠如ではなく、ガバナンス・カルチャーに問題があるのです。

大きな組織におけるガバナンスカルチャーの問題点としては、「風通しの悪さ」が挙げられることが多いです。これを踏み込んで表現すると、**「肩書きを持たない人間の意見はあまり尊重されない」**と言えるかと思います。
(大きな組織で全員の意見を聞く事は困難なので、仕方がない面もあります)

元記事にも
若手の裁量権も基本的にはないので技術力を付けたとしても社内政治の力学には到底敵いませんので注意が必要です。
という記載がありましたが、大企業において肩書きがなければ、多くの場合会社はおろか部署内すら変えることはできず、以下のように意見は一蹴されます
EiW9UBXUwAECuPt.jpg
(もちろん、面と向かっては言われません笑 あくまで内心での話です)

というわけで、何かを変えるには肩書きを作る必要があります。

日系大手企業における「肩書」

肩書には以下の2種類があります
①社内での肩書(「○○課長」というような、裁量権を持つことを表す役職)
②それ以外の肩書(後述の「錯覚資産」となるような実績)

基本的に①は、元記事にあった
基本的には年功序列となります。職場に長くいる人が偉く、若手に裁量権は特にありません。
という記載の通り、勤続年数の長い人が優先されます。

稀に「高学歴」「本流部署に配属」「上司との折り合いが良い」等の条件に恵まれた幹部候補生は若手であっても裁量が与えられることがありますが、これらの条件は入社時点でほぼ決まっており、後からの挽回は極めて困難です。

というわけで、一般社員が状況を改善するためには②を身につける必要があります。
②には多くの種類がありますが、「錯覚資産」としての効果が大きいものがベターだと考えています

錯覚資産

錯覚資産とは、他者から見たときに「この人は能力がある」と認識してもらえる効果の高い、実績、認定等の要素を表します(3年前くらいにブームとなったのでご存知の方もいるかと思います)

代表的なものとして、

・学歴(「大学名」と、「修士・博士等の学位」の2種類の区別が必要です)
・職歴(「会社名」と、「経験職種」の2種類の区別が必要です)
・資格
・語学
・数値で表せる実績(金額、順位等)
・外見

等が挙げられます。

コストパフォーマンスの良い錯覚資産

日系大手企業における転職を何度か経た私の経験上、後付けで身につけられる要素としては

・職歴(経験職種、会社名どちらも重要)
・数値で表せるアウトプット実績(コンペ、技術ブログ、SNS、論文、特許等)
・語学(英語)
・資格

の順で、大企業において社内外を問わず評価されやすい錯覚資産となると考えています。

特に需要が伸びている分野(クラウド、AI等)での実務経験は、そのブームが完全終結しない限り効力の極めて高い錯覚資産となり、求人に困ることはないですし、現職場でもそこが極端にレガシーな職場でなければ評価に繋がりやすいです。

ですので、これらを優先的に身につけられるロードマップ(後述)を立てるのが良いでしょう。

錯覚資産形成の注意点

上記錯覚資産形成の過程において注意すべき点として、
他者から見るとこのような活動をしている社員は、

「成長して頭一つ抜け出そう」

としているように見える点です。
この活動自体は決して悪いことではないのですが、一部の人からは自分の優位を脅かす存在に見えてしまうため、語弊を恐れずに言うと(意識的でないものも含めて)妬み・僻みの対象となりがちです。

この感情は人間として自然な特性なので、これ自体を責めることは何のメリットも生み出しません。ここは自責思考で以下のような対策をすることが有効だと考えています。

・複数の錯覚資産を併用してツッコミポイントをなくす
・社外アウトプット実績は希少性のある内容でなければアピールポイントとしない
・迷ったら組織の方針とマッチするスキルを習得
・disがひどければ部署から脱出

以下解説します

・複数の錯覚資産を併用してツッコミポイントをなくす

一つの錯覚資産だけだと、「資格なんて持ってても実践経験がなければ役に立たない」「Pythonでライブラリを使うだけなら誰でもできる」というようなツッコミを起点に総攻撃を受け、錯覚資産を活用できない恐れがあります。

このようなツッコミを防ぐためには、

「資格も実務経験も持っているので、理論と実践両者での能力が実証できる」

「Pythonが使えるだけでなく、コンペの実績もあるので他者には真似できないレベルでの実装能力が証明できる」

というように、相補的な2つの錯覚資産を形成して組み合わせて、ツッコミの起点となる穴を減らす事が有効です(一般的に大きな組織では複数のスキルを持ったジェネラリストが評価されやすいこととも、親和性の高い方針だと思います)

・社外アウトプット実績は希少性のある内容でなければアピールポイントとしない

コンペや技術ブログ、SNS等でのアウトプットは、
「給料を貰って身につけた技術を会社以外でアウトプットするとは何事か」「そのうち社内機密をアウトプットしないか」等のツッコミポイントを多く内包するため、アピールによるデメリットが相対的に大きい分野と言えます。

もちろん、アウトプットのための勉強を勤務時間内にしないことや、営業秘密となりうる情報をアウトプットしない事は基本的な心構えとして重要ですが、そもそもアピールのデメリットを上回れるだけの希少性がある成果を出せない限りは、アピールしない方が心穏やかに会社生活を送れるかと思います。

・迷ったら組織の方針とマッチするスキルを習得

身につけたいスキルが複数ある場合、「組織の方針によりマッチしているスキル」を優先的に学習することがお薦めです。

組織方針にマッチしたスキルの保持者は、上層部から見ると喉から手が出る程欲しい人材なので、内部に習熟者が現れることほど嬉しいことはありません(スポーツチームで生え抜きの選手が活躍するようなイメージです)
少なくとも上司は評価してくれる可能性が格段に上がるでしょう。

例えばネットワークと機械学習どちらを勉強しようか迷っているときに、組織としてIoTに注力すると定められていたのであれば、前者を学習する方がキャリアのチャンスが広がるはずです。

・disがひどければ部署から脱出

このような活動を面と向かって否定する同僚や上司も中にはいますが、成長のための活動を否定することは問題のあるガバナンスカルチャーの典型例なので、長く部署に留まり続けても基本的にメリットはありません
良い機会だと思って見切りを付け、後述の社内公募制度や転職活動で部署を脱出することを目指して良いかと思います。
business_jihyou_man.png

錯覚資産とPython

私見が入りますが、Pythonの実装技術習得は、以下の2つの理由から錯覚資産としてのコスパが非常に良いと考えています

1. Python自体の錯覚資産としての価値

幸いなことに、2021年現在のDXブームにおいてIT関係のスキルや資格は強力な錯覚資産となる状況にあり、その中でもPythonはDXの中核となるAIやWeb技術等に多用される言語であり、**「よう分からんけど凄そう」**と一般的に思われている、錯覚資産効果の大きい技術だと思います。

2. 実装技術の評価のされやすさ

またPythonの特徴として、大企業において実装技術の高さが評価されやすい稀有な言語であることも特筆されます。

こちらの記事でも触れられていますが、日本では「業務に精通し、自ら手を動かせる技術者」が建前上の理想系、実態は大企業においては「詳細設計や実装は他者に委託する」ことが第一の選択肢となるため**「自ら手を動かせる技術」は評価されない傾向**にあります。

一方でPythonはデータ分析等のアドホックな用途に使用される傾向が強く、都度仕様を決めて委託していては開発スピードが激減するため、「自ら手を動かせる」かどうかがコアコンピタンスとなり、手を動かせない人よりも早く成果を出してアピールしやすい言語だと言えます。
(例え委託するにしても、進化のスピードが速く細かいキャッチアップが重要なPythonのような言語では、手を動かせるスキルがあった方が仕様作成の精度と速度が格段に上がります)

上記の理由から、Pythonの実装技術を磨くことは、錯覚資産としてのコスパが高いと言えるでしょう。

Pythonによる錯覚資産形成のロードマップ

錯覚資産形成には多くの学習とアウトプットに費やす時間が必要となるため、「時間を捻出する」ことが最重要課題となります。

この観点から、元記事にも記載のあった

フレックス制度あり リモートワーク制度あり

部署にもよりますがホワイトな所がまだまだ多いので、終業後や休日は家族とゆっくりしたいという人にはオススメです。パワハラ等の各種ハラスメント、コンプライアンスは徹底しているので温厚にぬくぬく生きていたい人に向いていると言えます

という日系大手企業の環境は、収入を確保しつつ時間を捻出できる、非常に良い環境なのではと考えています。

この環境を活かし、以下のようにロードマップを立てて効率的に資産形成を進めていきましょう(主観が入ることを容赦いただければと思います)

①業務でのPython活用

前述のように業務にPythonを活用できる場面はそれなりに存在しますが、本気で取り組んでスケールアップしようとすると自分ではコントロール困難な運要素が多くなり、多くは組織的な事情によりペンディング(採用見送り)してしまうかと思います(大企業でスケールアップを成功させるには相当な根回しが必要ですし、その際に肩書きの不足が致命的なファクターとなることも多いです)

ただし、ペンディングになったとしても、業務で取り組んだ時点で**「実務経験」という最強の錯覚資産**として活用できるので、「錯覚資産のための実績づくり」と割り切って取り組むと、ポジティブな気持ちでモチベーションが長続きするかと思います。
特に、金額等の多寡に関わらず数字で表せる成果があると、客観的な裏付けとして錯覚資産の価値を上げる事ができるので、記録は残しておくようにしておきましょう。

もちろん錯覚資産のためだけにPythonを活用していては本末転倒なので、いつかは実務経験を通じて身につけた技術力、錯覚資産、社内の人脈形成を全て噛み合わせて、組織の壁を乗り越えて実績を出すことを目指すと良いでしょう。

②学習系

Pythonの用途は多岐に渡りますが、錯覚資産として活用するためには以下を学習することが有効だと考えています。

・Python一般

リスト操作やファイル入出力、API、numpy、pandasあたりの実装能力です。

Pythonをアピールポイントにするのであればこのあたりは最低限の知識として必要なので、上記の分野はマスターした上で、付加価値として以降の技術を身につけると良いかと思います。

・機械学習

ブームに乗ってデータ分析や機械学習の部署を拡充している会社が多く、IRとしてのアピール性も強いことから、上層部からの注目度も高いです。
よって錯覚資産としての有効性が高いスキルと言えます。

この分野はライブラリ化が進んでおり、ライブラリを使いこなすことが重要なスキル(と言うと怒る人もいそうですが)となります。

・Scikit-Learn
・TensorFlow
・PyTorch

は「高度そうなことをやっている機械学習ライブラリ」としての知名度が高く、アピールポイントとして使いやすいかと思います。
(あくまで錯覚資産としての価値の話で、実態としては「ライブラリ使えればOK」ではなく、実務で活用しようとすると統計、線形代数、ビジネスに対する理解等様々な知識が必要です)

またMLOps(機械学習のライフサイクル管理)は実運用を前提としている特性上、事業会社においては非常にウケが良く、学習に数学等の特殊スキルも求められないため、勉強によるリターンのコスパが良いと思います。

・インフラ構築

ネットワーク(特にTCP/IP)、セキュリティ(特に暗号化と認証)、Linuxコマンド、Docker等のインフラ構築に関わるスキルはPythonと親和性が高く、その割にスキルがある人材の数が少ないため、環境構築時に重宝されて「技術力の高い人」という印象を周囲に与えやすいスキルだと思います。
(ただし重宝されすぎて雑用に追われる便利屋にならないよう注意する必要があります)

また、AWS等のクラウド技術はDXブームにおける注目度が極めて高く、転職サイトの「求めるスキル」においても記載率の高い分野です。
AWSソリューションアーキテクト(アソシエイト)等の資格とセットで習得すれば、強力な錯覚資産となるでしょう。

・Web(Django等)

この分野はPythonが第一の選択肢とならない(Web技術における錯覚資産として使うのであれば、RubyやGoを勉強した方が良い)ので、単体で勉強してもスキルとしては評価され辛いですが、機械学習等と組み合わせて習得するとフルスタックな印象を与えられるため、特に社外へのアピールに活用できるかと思います。

③資格

Python関係の資格は以下の記事でまとめられており、また機械学習系のG検定等も存在しますが、どれも2021年現在では知名度も難易度も低く、錯覚資産としての効果は微妙と言わざるを得ない状況です(今後変わる可能性もあります)

Python特化ではありませんが、一般知名度の高いIPA主催の試験の方が、錯覚資産としての効果は高いと個人的には感じます(あるいは前述のAWS資格)

・基本情報技術者
・応用情報技術者
・情報処理安全確保支援士
・ネットワークスペシャリスト
・プロジェクトマネージャ
・ITストラテジスト
(下に行くほど難易度が上がります)

あたりが特に一般知名度が高い資格で、浅く広く学習するという試験の特性上、エンジニアとしての知見も広げられるので、取得をお薦めします。

また、TOEICは日系大手企業において極めてコスパの良い試験です。
評価に繋がりやすい海外での仕事にアサインされるきっかけにもなりますし、IT技術習得においても英語で公式ドキュメントを高速読解できることは大きなアドバンテージとなるため、英語学習はキャリアのチャンスを大きく広げる万能のスキルだと言えます。

TOEIC公式では730点以上を上から2段階目のBランクに、860点以上を最上位のAランクに位置付けており、多くの企業で採用等の一つの区切りとしている点数のため、これらの点数がアピールできるかどうかの目安となるかと思います。

データ分析に舵を切るのであれば、**統計検定**もお薦めです。機械学習や分析の基礎となる統計の知識を体系的に学べ、2級以上であれば採用等でも評価される傾向にあります(Twitter等をみている限り、本職のデータサイエンティストでも取得率が高そうです)

④アウトプット活動

元記事には以下のような記載がありました。
もちろん、日々の情報キャッチアップやSNSアウトプット、OSS貢献などは理解されないことが多いです。

私が過去に見た事例では、この主張は半分当たっており、半分外れているように感じます。

外れていると感じるパターンとして、外部からも大きく評価されるような突き抜けた成果を出せば、むしろ小さな組織以上に評価される可能性が高いということです。
例えば、以前に社内でKaggleで大きな成果を出した方が出た際には、数万人が日常的に見る社内ページのトップで表彰されていましたし、外部的にも大きくアピールされていました。

・競プロ・コンペ

前述のKaggleの件でも分かる通り、コンペでの実績は客観的な実力の裏付けとなるため、強力な錯覚資産となります。

ただし元記事の「半分当たり」の部分に相当するのですが、**外部から大きく評価されないレベルでアピールすると逆効果となる**可能性が高いので、錯覚資産と認められるだけの希少性が得られたと判断するまでは、こっそり活動した方が良いでしょう。

適性と多大な労力を掛け合わせて初めて錯覚資産として使えるレベルに至る分野だと思うので、適性とモチベーションを加味して取り組むかどうか決めるのが良いかと思います。

・記事投稿・SNS

QiitaやZenn等技術ブログの記事投稿や、SNSにおける発信とフォロワ獲得が相当します。

コンペよりは適性の影響が小さく、継続が結果に現れやすい分野だと思いますが、こちらも**「外部から大きく評価されないレベルでアピールすると逆効果**なので、こっそり地道に長期間継続することが重要だと思います。

コンペと同様、錯覚資産として活用できるレベルに至るには多大な労力が掛かりますが、備忘録も兼ねてアウトプットすると他の活動との相乗効果も出せるので、学習とセットでアウトプットすることがおすすめです。

・OSS貢献

2021年の日系大手企業においてはコンペや技術ブログと比べて錯覚資産としての効果が低い(そもそもOSSを知らない人が多い)ので、自己研鑽や社会貢献の一環として割り切って取り組むと良いかと思います。
Findyのような定量評価サービスが広がればこの限りではないかもしれません)

・論文・特許

会社に断りなく出すと間違いなくお叱りを受ける分野ですが、逆に言うと会社の支援を受けて取り組める分野でもあります。
職務上の機会があれば積極的に出していきましょう。
公式な文書を書く練習にもなるので、発信スキル向上にも繋がると思います。

錯覚資産をどう活かすか

今あなたがデータ分析やアプリ開発等のモダンなIT技術活用をミッションとする部署にいるのであれば、身につけたスキルや錯覚資産を活かして粛々と業務に臨めば、時を経るごとに意思決定におけるプレゼンスは高まるので、日々邁進するのみです。

問題は、モダンなIT技術の活用がミッションではない部署に所属している場合です。
まずはスキルを活用して成果を出せないか試行錯誤してみることが大事ですが、ある程度取り組んで周囲の理解が全く得られないと感じたら、職場を変えることを検討した方が良いと思います。

特に理不尽なカルチャーに悩んでいる方は早急に検討すべきです。人生の一時期において辛い経験をすることは財産にもなりますが、これを長期間続けることで精神に回復不可能なダメージを受けることもありますし、このような環境ではスキルも身に付かないので、長居するメリットよりデメリットの方が圧倒的に大きいです。

職場を変えるには

日系大手企業で職場を自発的に変えるには、
・社内公募・社内FA
・転職
が主要な手段となります。

社内公募・社内FA

実務経験が最強の錯覚資産と前述しましたが、
大企業においては「配属ガチャ」という言葉が示す通り、今の部署では身につけたスキルを実務経験に活かせない場合も多いかと思います。

このようなとき、会社を変えずにスキルを活かせる部署に異動できる、「社内公募」「社内FA」という制度が、多くの日系大手企業には存在します。

私の経験3社では全て社内公募制度が存在しましたし、経団連の調査によると全大企業の7割が社内公募・社内FA制度いずれかを採用しているそうです。
この制度があることがキャリア形成における大企業のメリットの一つだと個人的には考えています。

逆に言うと「制度が存在しない」こと自体が会社のレガシーさを表しており(会社ごとに考えはあるかと思いますが)、またキャリア構築を意識するのであればデメリットとなるので、転職を積極的に考える理由の1つとして良いかと思います。

・社内公募と社内FAの違い、および求められる人材

前置きが長くなりましたが、社内公募と社内FAの違いと、これらによる部署異動を実現するために求められるスキルを解説します。

名称 異動のフロー
社内公募 部署側が求人を出し、社員側がこれに応募して面接等を実施し、採用の可否を判断する
社内FA 社員側が自分のスキルを全社に公開し、部署側が採用希望を出す(複数の引き合いが来ることもある)

両者共に求められる人材は共通しており、**「部署の方針遂行において不足しているスキルを持った人材」**となります。

大企業の人材需要は世間一般とリンクすることが多いので、世の中で需要の伸びているスキルの方が求人が多いと考えて良く、その点Pythonは非常にマッチしていると言えます。

また、ここでいう「スキル」として認められる条件として、
転職活動では業務時間の過半を費やした実務経験でないと認められない傾向が強いですが、社内公募・FAにおいては**「ちょっとした業務改善」レベルでもスキルとして認められやすい傾向**があります。

本記事の前半で述べたPythonによる定常作業の自動化も、十分なアピールポイントとなるでしょう。

転職

2021年現在、エンジニア業界は大幅な売り手市場で、特にPython関係の業務経験者は業種を問わず喉から手が出るほど欲しい人材とみなされています。

元記事に記載されていた日系大手企業の入社要件である

- MARCH相当以上の学歴
- コミュニケーション能力

に加え、前述のロードマップで身につけた

- Pythonを活用するスキルと実務経験
- IT関係資格 (特にIPAの応用情報や高度情報、AWS資格)
- TOEIC730点以上 (できれば860点以上)
- 社外アウトプットの実績

のうち3つ程度が加われば、転職先に困ることはないでしょう。
ただし、大手企業間での転職にはデメリットがあり、

・昇進等で中途が不利となる傾向の企業が比較的多い
・人脈がリセットされ、根回し等がやりづらくなる
・社風等の環境の変化が自分に合わないリスクがある

ことから、明確な理由がないのであれば前述の社内公募を利用した方が、リスクの少ないキャリア形成ができるかと思います。

ちなみに転職時のテクニックとして、転職後の給与は前職のものを引き継いで決めることが多いので、昇格等で給与が大きく上がった直後に転職した方が給与上は得することが多いです(私はこれを活かせませんでした…)

まとめ

日系大手企業には理不尽なカルチャーが多くありますが、社内公募制度や勤務時間の短さを活用したスキルアップ等、理不尽から逃れるためのシステムも多く存在するため、割り切って考えれば悪い環境ではない、と個人的には思います。

また上記のシステムを利用したり、社内でのプレゼンスを向上させるためのツールとして、Pythonによる錯覚資産形成は大いに役立つかと思います。

ちなみに、錯覚資産を身に付けるとキャリアの選択肢や社内でのプレゼンスを高めることはできますが、給料は年功序列のため劇的に上がることはありません。お金がたくさん欲しい方は研鑽を重ね、外資やキ○エンスのような会社を目指すのが良いかと思います。

おわりに

いかがでしょうか?Pythonがキャリア形成においていかに役に立つかが、イメージできたでしょうか?

私の主宰するサービスでは、キャリア構築に活用できるPythonの学習法について・・・






と言って別サイトへ誘導することはないので安心してください(笑)

上記のようにキャリアに悩む若者の危機感を煽って高額な情報商材に誘導するケースが増えているので、貴重なお金を浪費しないよう注意してください。
(そもそも、Qiita規約では客観的には事実上、広告・宣伝や商用を目的とした勧誘と認められる行為が禁止されています)

Pythonに限らずITの技術は独学での勉強と実践経験の積み重ねが何よりスキルアップに繋がります。教材やスクールはあくまで補助的なものと捉えるのが良いでしょう。

皆様が努力を積み重ねて自由なキャリアを手にできることを祈っております。

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