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無線IoTセンサを片っ端から比較してみた(温湿度センサ編)

Last updated at Posted at 2020-07-17

IoTと無線通信

IoTといえばセンサ!RaspberryPi!
というわけで実際に使ってみると分かるのですが、

とにかく配線が邪魔!(画像は我が家のタコ足)
takoashi.jpg

ちょっと数が増えるとハッカーの部屋みたいな見た目になりますし、コードに引っかかる危険も‥
無線化すれば見た目も安全も損なう事なく、たくさんのセンサをRaspberryPiで管理できます!

無線IoTセンサの比較

では無線センサはどれを買えばいいの?と思い調べましたが、実際に比較したサイトはほぼ皆無。
というわけで人柱の精神で、Bluetooth Low Energy(BLE)接続のセンサを実際に購入し、比較してみました

比較に使用したセンサ

最も需要が多そうな温湿度センサ、かつAPIでデータ取得が可能なものを選びました。
Omron 環境センサBAG型(2JCIE-BL01)
Omron 環境センサUSB型(2JCIE-BU01)
Inkbird IBS-TH1 mini
Inkbird IBS-TH1(使用感が良かったので2台目も購入して比較しました)
SwitchBot温湿度計
(※比較用:Nature Remo‥Wifi接続のスマートリモコン)

Omron 環境センサBAG型(2JCIE-BL01)

オムロン環境センサ.png
(左が2JCIE-BL01)

価格:¥9,350@チップワンストップ※価格は全て税込
サイズ:46×39×15mm
重量:19g(電池含)
電池:CR2032(ボタン電池)
コメント:日本が世界に誇るオムロン製!価格はちょっとお高め

Omron 環境センサUSB型(2JCIE-BU01)

オムロン環境センサ.png
(右が2JCIE-BU01)
価格:¥10,902@Digikey
サイズ:29×14×7mm
重量:3g
電源:USB供給
コメント:世界のオムロンその2!こちらは電源供給のみ有線(USB)です

Inkbird IBS-TH1 mini

Inkbird_mini.jpg
価格:¥2,899@Amazon
サイズ:35×35×10mm
重量:13g
電池:CR2032(ボタン電池)
コメント:コンパクトさが魅力

Inkbird IBS-TH1

Inkbird_IBS-TH1.jpg
価格:¥3,399@Amazon
サイズ:56×56×17mm
重量:31g
電池:単4電池
コメント:プローブ付き。プローブなしでも使用可能です

SwitchBot温湿度計

switchbot.jpg
価格:¥1,980@Amazon
サイズ:55×55×24mm
重量:69g
電池:単4電池×2
コメント:画面付きにも関わらず圧倒的コスパ

比較方法

下記の性能を比較するため、実験を行いました。
データの取得方法については、こちらの記事を参照ください

無線センサで考慮すべき性能

下記6項目で比較しました

1.測定精度

精度が悪いとセンサとしての役割を果たせません。
温湿度の全センサ平均との差を測定しました

2.信頼性

データ取得に失敗して欠損値だらけとなっては、分析が難しくなります。
何%の確率で正しくデータを取得できるか(欠損値とならないか)を測定しました
※停止しにくさ=可用性も課題でしたが、こちらの記事である程度クリアできたので、割愛します

3.応答時間

1回の測定に10分も掛かるようだったら、まともにロギングできません。
RapsberryPiでのデータ取得に何秒かかるかを、基準として測定しました

4.電池の持ち

電池が2週間で切れてしまっては、交換が大変、電池代もかさみ長期運用などできません。
電池が切れるまで何ヵ月かかるかを測定しました(随時更新します)

5.サイズ

大きすぎるセンサでは無線の意味がありませんね!
3辺の大きさを記載します
※電源供給が有線のOmron_USB型は、その分の評価をマイナスとしておきました

6.価格

どんなに良いセンサでも、お値段10万円!と言われたら、「温湿度測るだけでそれはちょっと‥」となりますね!
2020/6時点での価格を記載します

実験方法

・期間:6/2~7/10(電池交換、ルータ買替等のため中断あり)
・測定間隔:1回/5分
・測定点数:8834点
・測定場所:下図のように、室内に設置した箱の中で測定、場所依存性が出ないよう1日1回センサの位置をランダムに交換
sensors_in_box2.jpg

※なお、実験時の受信側RaspberryPiとセンサの距離は0.5m前後となっており、これより距離が離れると信頼性や応答時間が悪化するのでご注意ください
どれくらい悪化するかも記事の最後で評価しています

結果

比較結果を詳説します。要点だけ知りたい人は「結論」のみ読んでいただければ十分かと思います。
※Inkbird IBS-TH1以外は1個しかテストしていないため、個体差が考慮できていないことにご留意ください

結論

各センサごとに星取表を作成しました。
◎:2点
〇:1点
△:-1点
×:-3点
で採点しています(マイナスを大きめに評価)

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
測定精度(温度) (△)
測定精度(湿度) (◎)
測定成功率 (◎)
応答時間 (〇)
電池の持ち 〇~ × 〇~ 〇~ (◎)
サイズ (×)
価格 △¥9,350 △¥10,902 〇¥2,899 〇¥3,399 ◎¥1,980 (△¥9,900)
総合判定 〇(9点) 〇(7点) △(3点) ◎(10点) 〇(7点) (判定外)

Inkbird IBS-TH1mini以外はどれも、「特に問題なく使える」という印象(Inkbird IBS-TH1miniは電池の持ちが‥)
イチオシはInkbird IBS-TH1(miniじゃない方)
サイズの小ささや5m以上離しての使用ならOmron BAG型
お買い得感を求めるならSwithbot
電池の持ちを極限まで追求するならOmron USB型(+モバイルバッテリー)
・応答時間はBroadcastモードよりもConnectモードの方がやや速い、ただし電池の持ちとトレードオフ
・近くでWiFiルータを使用している場合、5GHzをメインで使用した方がBluetoothが安定する(2.4GHzはBluetoothと干渉する)

各性能ごとの比較詳細

1.測定精度

温湿度の全センサ平均との差を測定しました

・温度
全期間における平均との温度差が下記となります。

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
平均との温度差 +0.122℃ +0.08℃ +0.10℃ +0.11℃(1個目), +0.04℃(2個目) -0.123℃ -0.32℃
判定 (△)

上記の差がセンサの個体差によるものかを判断するため、
1日ごとに平均との温度差を集計して箱ひげ図にしました。
温度箱ひげ図.png

Nature_Remo_1が他のセンサから大きく外れ、SwitchBot_Thermo_1も少し外れています。
これらは箱ひげ図のばらつきを超えた差となっており、センサの個体差と言えそうです。

いずれにせよNature_Remo以外は四分位点でも温度差が0.2℃以下に収まっており、
アナログ温度計でも絶対温度±1℃程度の保証が主流であることを考えると、
かなり信頼できる値となっていそうです
(Nature_Remoはそもそも温度測定の分解能が0.7℃前後となっており、他センサと比べやや不足は否めません)

・湿度

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
平均との湿度差 +0.77% +1.96% +3.20% -0.82℃(1個目), -1.12%(2個目) -1.35% +1.53%
判定 (◎)

こちらも温度と同じく、1日ごとに平均との温度差を集計して箱ひげ図にしました。
湿度箱ひげ図.png

IBS-TH1mini、Omron_USBが他のセンサから外れており、
特にIBS-TH1miniは4%近い差があり、絶対精度としてやや不安を感じる結果となっています。

・温度と湿度の精度比較
温度の四分位点の差0.2℃÷温度の絶対値20℃ = 1%オーダー
湿度の四分位点の差4%÷湿度の絶対値40% = 10%オーダー
のように、湿度の方が1ケタ個体差が大きく、精度が悪いと言えそうです。
湿度の精度が求められる場合は、キャリブレーション(高精度な湿度計や、上記のような平均との差を利用して補正)が必要となりそうですね。

2.信頼性

何%の確率で正しくデータを取得できるか(欠損値とならないか)を測定しました

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
試行 8834 8834 8834 8834(1個目), 5444(2個目) 8834 8834
成功 8816 8808 8791 8823(1個目), 5439(2個目) 8717 8831
失敗 18 26 43 11(1個目), 5(2個目) 117 3
成功率 99.80% 99.71% 99.51% 99.88%(1個目),99.94%(2個目) 98.68% 99.97%
判定 (◎)

全体的には値段の差が如実に出ていますが、比較的安価なInkbird IBS-TH1の健闘が目立ちます。
Amazonで3000円で売っているセンサが、産業向けの目安と言われる99.9%を超えているのはビックリです。

・WiFiとの干渉の影響
なお、今回の実験中、6/15にルータを交換して家の中のWiFi回線を2.4GHz帯メイン→5GHz帯メインに変更しましたが、
下図のように6/15を境に成功率(縦軸)が上昇する傾向(特にOmronの2個のセンサ)が見えます。
成功率折れ線グラフ.png

ルータ交換前後での成功率を集計すると下記のようになります。
ほぼ変化のないInkbird IBS-TH1miniを除くと、明らかに成功率が上昇しています(太字は99.9%を超えたもの)

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo) 試行数
ルータ交換前(2.4GHz)成功率 99.50% 99.29% 99.53% 99.79%(1個目),-(2個目) 97.88% 99.91% 3390
ルータ交換後(5GHz)成功率 99.98% 99.96% 99.50% 99.93%(1個目),99.94%(2個目) 99.17% 100.0% 5444

こちらのサイトに記載されているように、
2.4GHzのWiFiとBluetoothは干渉を起こしやすいそうですが、その影響が本実験の成功率にも表れていると考えられます。

というわけで、センサの信頼性向上のためには、
「Bluetoothセンサと同じ場所でWiFiルータを使用している場合、5GHzをメインで使用した方が良い」
と言えそうです

3.応答速度

RapsberryPiでのデータ取得に何秒かかるかを、基準として測定しました

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
平均応答時間 4.08秒 0.84秒 2.85秒 2.75秒(1個目), 2.78秒(2個目) 4.36秒 2.36秒
判定 (〇)

Omron USB型の応答が速く、タイムアウト値を待たないといけないOmron BAG型およびSwitchbotがやや遅めです。
いずれにせよ、数分に1回ロギングする目的なら十分な応答速度だと思います

4.電池の持ち

電池が切れるまで何日かかるかを測定しました(随時更新します)

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
電池切れまでの日数 80日 有線 26日(1回目), 18日(2回目), 14日(3回目), 12日(4回目) - - 有線
判定 × 〇~ 〇~ (◎)

運用開始から2.5ヵ月ほど経っていますが、Inkbird IBS-TH1mini以外はまだ電池切れしていません。
※追記:Omron BAG型が80日(3ヵ月弱)で電池切れしました

一方でInkbird IBS-TH1miniは4回も電池切れ、平均3週間足らずで電池が切れてしまっています。
同じCR2032ボタン電池を使っているOmron BAG型の1/4以下の期間です。
Amazonのレビューでも「電池がすぐ切れる」と書かれてますし、
この事実のみで、Inkbird IBS-TH1miniは選択肢として微妙だと感じてしまいました

5.サイズ

3辺の大きさを記載します
※電源供給が有線のOmron_USB型は、ここを評価をマイナスとしておきました

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
3辺サイズ(mm) 46×39×15 29×14×7(有線) 35×35×10 56×56×17 55×55×24 74x74x18(有線)
判定 (×)

有線電源供給のOmron USB型以外は、特に邪魔になるような大きさではないと思います

6.価格

調査時(2020/6)の最安価格を記載します

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 Switchbot (Nature Remo)
価格 ¥9,350 ¥10,902 ¥2,899 ¥3,399 ¥1,980 ¥9,900
判定 (△)

安心と信頼のオムロンはやはり高いです。保証とサポセン代と思って納得するしかなさそうです。
最安なのに液晶表示付きのSwitchbotはコスパの良さが際立っていますね。

追加検証:距離による成功率と応答時間への変化

実際は受信側のRaspberryPiと距離を離して使用することが多そうなので、成功率・応答時間への距離・障害物の影響を実験してみました。
【実験条件】
・期間:7/11~7/17(電池交換のため中断あり)
・測定間隔:1回/5分
・測定点数:1462点

成功率

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 1個目 Inkbird IBS-TH1 2個目 Switchbot
距離 5m (0.5m(上記実験と同場所)) 4m 2m 5m 4m
障害物 ガラス戸&カーテン(屋外) (木箱) なし ソファー 木製ドア なし
離した後の成功率 99.93% 99.93% 98.70% 99.04% 98.43% 99.17%
離す前の成功率 99.98% 99.96% 99.50% 99.93% 99.94% 99.17%

※Omron BAG型とSwitchbotはタイムアウト値を4秒→5秒に長くした(4秒のままだと成功率が95%を切るレベルまで激減したため)のでご注意ください。

軒並み成功率は悪化しており、距離・障害物ともに影響を受けていそうです。
一方でBroadcastモードのOmron BAG型とSwitchbotはタイムアウト値を伸ばすという裏技を使ってはいますが、
成功率が悪化していません。
距離や障害物の制約が厳しい場合は、タイムアウト値で調整可能なBroadcastモードのセンサを選択するのが良いかもしれません。

取得時間

Omron BAG型 Omron USB型 Inkbird IBS-TH1mini Inkbird IBS-TH1 1個目 Inkbird IBS-TH1 2個目 Switchbot
距離 5m (0.5m(上記実験と同場所)) 4m 2m 5m 4m
障害物 ガラス戸&カーテン(屋外) (木箱) なし ソファー 木製ドア なし
離した後の平均応答時間 5.15秒 0.78秒 3.09秒 3.14秒 3.25秒 5.45秒
離す前の平均応答時間 4.08秒 0.84秒 2.85秒 2.75秒 2.78秒 4.36秒

取得時間箱ひげ図_離した後.png

タイムアウト値を長くしたOmron BAG型とSwitchbotはもちろん、それ以外も距離に応じて長くなっています。
とはいえ数分に1回ロギングするには問題ないレベルだと思います

本記事は以上です。
最後まで見て頂きありがとうございました!

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