はじめに
2022/1/15、南太平洋のトンガ王国で大規模火山噴火が発生しました。
以下の記事で、東京でIoTセンサにより噴火の衝撃波を観測した例が紹介されていましたが、
※東京ではなくシンガポールのようです
私の環境(大阪)でも同様の現象が観測できたため、データの取得方法および分析結果を紹介させて頂こうと思います。
データの取得方法
以下の記事で構築したIoTシステムを使用しました
使用したセンサ一覧
以下の2つのセンサを設置し、屋外および屋内の気圧を5分おきに測定&データ蓄積しています
・Omron 環境センサBAG型(2JCIE-BL01) → 屋外に設置
・Omron 環境センサUSB型(2JCIE-BU01) → 屋内に設置
データ取得プログラム
プログラム等のシステム構成は以下の記事を参照ください
データの可視化
Googleのデータ可視化アプリ「Googleデータポータル」により、データを可視化しました。(具体的なグラフ作成方法はこちらの記事を参照ください)
現象の分析
得られた屋内と屋外の気圧グラフに基づき、大阪における噴火衝撃波に関する情報を分析します。
第1波、第2波の特定
こちらの記事を見る限り、衝撃波の第1波は大阪に15日 20:40頃に到達していそうです。
またこちらの記事を見ると、地球を一周してきた衝撃波の第2波は大阪に17日 9:10頃に到達していそうです。
実際のデータを見た結果、ドンピシャで同時刻に気圧の上昇が見られました
第一波に関しては、前述の東京で観測した記事の20:22頃と比べて時間差が見られ、東京シンガポールと大阪では18分ほどのタイムラグがあることが分かります。
結果の集計と考察
ざっくりの集計となりますが、衝撃波による気圧の変化量は以下のようになります。
屋内 | 屋外 | |
---|---|---|
第一波 | 約1.5hPa | 約0.5hPa |
第二波 | 約1.5hPa | 約0.5hPa |
以下のような考察が読み取れます。 |
・屋内と屋外の変化量および変化タイミングにほぼ差はない
・第2波は第1波と比べて気圧変化が小さい
・第1波の気圧変化(1.5kPa)は、前述の記事とほぼ同じ
気圧の変化量、変化タイミング共にウェザーニュースのサイトでの分析結果とほぼ一致しており、家庭用のIoTセンサでも今回の噴火衝撃波が検知できた事が分かります。
また屋内に設置したセンサ(窓も密閉状態)でも屋外と同じ変化量が観測されたため、屋内であっても同様に衝撃波を検知する事ができそうです。
自然災害とデータ分析・IoT
大規模火山噴火のように、発生率は極めて低いがひとたび起こると被害が甚大な現象を、リスク管理の世界では**「テールリスク」または「ブラックスワン」**と呼ばれます。
このような現象はしばしば従来は想定されていなかった事態(「ブラックスワン」の語源は想定外の黒いハクチョウが発見されたことに由来)を伴うため、原因解明や再発防止のためには記録を残すことが極めて重要と言えます。
今回の噴火で当初の想定よりも早い速度で津波が到達したことは「想定されていなかった事態」の典型例であり、その原因として表題の衝撃波が有力視されています。
その根拠としてウェザーニュース社が独自に取得した全国の気圧データが挙げられていることからも、災害対策においてIoTによるデータ取得と分析の重要性が今後高まる可能性が高いと思われます。
終わりに
この噴火が「1000年に1度の規模」という報道もありますが、実際は同規模の噴火は世界ではほぼ20年ごとに起こっているようです(1963年アグン山→1982年エルチチョン山→1991年ピナツボ山→今回)
上記の3噴火ではいずれも世界的な気温低下が見られた(特に1991年のピナツボ山噴火は日本でもコメの冷害の原因となった)ため、今後農林水産業を初めとした気候への影響を注視する必要があります。
また本当に1000年に1度の噴火が起こった場合、未曾有の大災害となることはほぼ確実であり、日本で起こる可能性も否定はできないので、このような分析を通じて被害軽減のための対策に少しでも貢献できればと思います。
まずは何より、海外では前述の津波で犠牲者も出ており、また最も近いトンガの詳細状況は1/18現在も判明していないため、現地の方々の無事を祈りたいと思います。