はじめに
AI エージェントや組織構造の議論を日々見かけますが、土台となるマインドセットが崩れていてはどんな最新技術や組織論も上手く機能しないと感じます。
自分の経験のなかで、「最低限これだけあればいいチームが作れる(いいチームになっていける)」と感じているものをご紹介したいと思います。
十数年間、システム設計/構築経験した1個人の体験談(ポエム)です。
暖かくみていただければと思います。
TL;DR
- 「早く失敗して早く変わる」というマインド
- 「許可より謝罪」というマインド
- 「チーム運営自体の定期的な振り返り」という仕組み
この三つがそろえば、チームは健全な自浄作用をもって、継続的に改善していけると考えています。
組織に好循環をもたらす3つのシンプルルール
“To improve is to change; to be perfect is to change often.(改善するとは変化することであり、完璧になるとは変化を頻繁にすることである)” — Winston Churchill
変化は短期的には痛みを伴うことがありますが、長期的には必ずプラスに働くと信じています。
その変化を促進させるために、自分は以下の3つを重視しています。
1. 「早く失敗して早く変わる」というマインド
"Fail fast, fail cheap, and fail smart.(早く失敗せよ、小さく失敗せよ、賢く失敗せよ)" - Eric Schmidt
変化の一歩には勇気が必要です。その障壁を小さくするうえで、このマインドは欠かせません。
少なくとも自分は「Fail fast」、「失敗する人がえらい」のような考えに、これまで何度も背中を押してもらいました。
ポイントは、適切なタイミングで失敗を認知し、軌道修正することです。
失敗はより良い道を見つけるステップであり、悪いことではありません。誤魔化さずに失敗を正しく認識し、次の行動に活かしましょう。
2. 「許可より謝罪」のマインド
"It's easier to ask forgiveness than it is to get permission.((事前に)許可を求めるより、(事後に)許しを乞うほうが簡単である)" - Grace Hopper
まず動く文化はチャンスを逃さず、改善速度を高めます。
先述の「早く失敗」の考え方とも相性抜群で、私自身もこの 2 つを意識するようになってから気持ちが軽くなりました。
実際にコミュニケーションが変わる
このマインドは日々のコミュニケーションも円滑になり、業務自体が効率化されます。
例 1: バグを見つけたとき
従来 | 改善後 | |
---|---|---|
メンバー | 「XXX という挙動があります。バグとして起票していただけますか?」 | 「XXX という挙動を見つけたのでバグとして起票しました(URL)」 |
リーダー | 「分かりました」 | 「ありがとう」/「バグではないのでキャンセルお願いします」 |
改善後は リーダーの判断を待つ時間と、回答までメンバーが頭で記憶しておく負荷がゼロ になり、タスクが前に進むスピードが上がります。リーダーの確認が漏れ、タスク自体が起票されないリスクもゼロです。
例2: オープンクエスチョン
従来 | 改善後 | |
---|---|---|
メンバー | 「XXX が決まっていません。どうしましょう?」 | 「XXX が決まっていません。目的 AAA を考えると ZZZ が良いでしょうか?」 |
リーダー | 「YYY にして」 | 「ZZZ で行こう」/「BBB の観点から YYY にしよう」 |
改善後は リーダーが決断するためのエネルギーを節約(※) できます。
メンバー自身も考える習慣が身に付きます。
※決断にはエネルギーを使います。参考: 決断が多いほど疲労する?ジョブズやザッカーバーグに学ぶ「思考のミニマリスト化」
このように、自分で考えて動く習慣が身についていきます。
とはいえ、承認なしで勝手に進めて大ごとになる事態は避けるべきです。少しずつ OK ラインを広げたり、「何をやったら NG か」を事前に確認しながら進めましょう。
3. 「チーム運営自体の定期的な振り返り」という仕組み
個人は上記マインドで改善できますが、チームは自然と慣性が働き、変化が起こりにくいものです。
そこで 強制的に変化を促す仕組み が「振り返り」です。
- 振り返りの場で ペイン(やりづらさやモヤモヤ) を共有
- 何かを試しに変えてみる
- 次回の振り返りで KEEP/DROP を判断する
このループを回すことでチームは着実に良くなります。取り組みが効果ゼロ/マイナスなら捨てればいいだけ。早く取り組み、早く失敗し、早く変化する ことが肝要です。
こうして取り組むうちに、「許可より謝罪」の精神で、振り返りイベントを待たずにチーム内から変化が生まれてくるようになってきたら最高です。
これらをチームに浸透させるために個人ができること
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」 - 山本五十六
知見を共有するだけではチームは変わりません。
まずは、以下のような行動をとってみましょう。
- 失敗談をオープン に共有する
- 許可より謝罪 の精神で素早く動き、具体例を増やす
- チームでの 振り返り を始める
仮にあなたの行動が失敗したとしても、謝った後、別の方法を試せばいいだけ です。
失敗しやすい仕組みを整える
- CI/CD、自動テスト、モニタリング を活用し、失敗が小さなうちに早期に検知する仕組みをつくりましょう
- 検知後は 素早く修正 し、失敗報告が改善につながる良い循環をつくりましょう
- 人を責めない。毎回重たい再発防止をしないことで、変化のスピードを保つことを重視しましょう。
本気で良くしようと行動した失敗には価値があります。失敗をポジティブに捉える文化 を率先して築きましょう。
おわりに
技術や組織構造のアップデートは魅力的ですが、チームの根底にあるマインドセットと振り返りの仕組み が機能していなければ長続きしません。
失敗と学習を高速で回すことで、チームはいつでも時代の変化に適応できる “しなやかさ” を手に入れられると信じています。
参考文献
- Winston Churchill "To improve is to change; to be perfect is to change often."
- Eric Schmidt "Fail fast, fail cheap, and fail smart."
- Grace Hopper "It's easier to ask forgiveness than it is to get permission."
- LayerX羅針盤 「NoじゃなきゃGo」、「大きな失敗を防ぐため、小さく失敗しよう」、「失敗する人がえらい」