はじめに
SCS評価制度への対応を検討する際、最初に気になるのが「結局いくらかかるのか」でしょう。実はSCS★3の対応費用は、自社のセキュリティ対策の現状によって20万円から300万円まで大きく幅があります。
本記事では、3つのパターン別に費用をシミュレーションし、コストを抑えるためのポイントも紹介します。
パターン別費用シミュレーション
パターンA:セキュリティ対策がほぼ整っている企業(20〜50万円)
すでにMFA導入済み、パッチ管理を実施中、セキュリティポリシーも策定済みの企業です。ISMSやPマークを取得済みの企業はこのパターンに近い状況です。
必要な作業は対策状況評価シートの記入と、セキュリティ専門家のレビュー・署名のみ。期間は1〜2ヶ月で完了します。
パターンB:一部の対策は実施しているが不足がある企業(50〜150万円)
Microsoft 365やGoogle Workspaceを利用しているが、MFAは管理者のみ、セキュリティポリシーは未策定、インシデント対応手順書もない、という企業です。多くの中小企業がこのパターンに該当します。
必要な作業はMFAの全社展開、セキュリティポリシーの策定、インシデント対応手順書の作成、ログ設定の見直し、評価シートの記入、専門家レビュー。期間は2〜4ヶ月が目安です。
パターンC:セキュリティ対策がほぼゼロの企業(150〜300万円)
IT環境の棚卸しから始める必要がある企業です。
IT環境の全体把握→リスク評価→対策設計→対策実装→ポリシー策定→手順書作成→教育実施→評価シート記入→専門家レビューと、フルコースの対応が必要です。期間は3〜6ヶ月。
費用の内訳
セキュリティ対策の実装費用
- MFA全社導入:10〜30万円(設定作業費。M365/GWSのライセンスに含まれる場合が多い)
- アクセス制御設計(条件付きアクセス等):20〜50万円
- EDR導入設定:10〜20万円(ライセンス費用は月額500〜1,000円/台が別途)
- パッチ管理体制構築:10〜20万円
- ログ取得・保存設定:10〜30万円
ドキュメント策定費用
- セキュリティポリシー策定:10〜30万円
- インシデント対応手順書作成:5〜15万円
- 評価シートの記入支援:5〜10万円
専門家レビュー費用
- レビューのみ:20〜50万円
- 対策指導+レビューのパッケージ:50〜100万円
年間の継続費用
★3は毎年の更新が想定されています。更新時のレビュー費用は10〜30万円/年。セキュリティ運用の代行を外部に依頼する場合は月額18〜45万円が目安です。
大手コンサルとの比較
大手コンサルティングファームにSCS対応をフル依頼すると300〜500万円以上が相場です。中小企業向けのセキュリティサービスを活用すれば、同等の品質を1/3以下のコストで実現可能です。
「大手に頼んだ方が安心」と思われがちですが、中小企業のIT環境は大企業と根本的に異なります。中小企業の実態を理解した専門家に依頼する方が、実効性の高い対策が期待できます。
コストを抑える5つのポイント
1. クラウドサービスの標準機能を活用する
M365 Business Premiumには、MFA、条件付きアクセス、Defender for Business(EDR)、Intune(デバイス管理)等、★3対応に必要な機能の多くが含まれています。追加ライセンスなしで対応可能な範囲が広いです。
2. テンプレートを活用してドキュメント策定を効率化する
セキュリティポリシーやインシデント対応手順書はIPAのテンプレートを活用すれば、ゼロから書くより大幅に工数を削減できます。
3. 対策実装とレビューをパッケージで依頼する
別々の業者に依頼するとヒアリング工数が二重に発生します。ワンストップで対応できるサービスを選べばトータルコストを抑えられます。
4. SECURITY ACTIONの成果を活用する
二つ星取得済みなら、そこで整備した体制やドキュメントをSCS対応に活用できます。
5. まず自社でできることを進める
MFAの導入、ログの有効化、IT資産台帳の作成など、外部に頼らなくてもできることは先に実施しておけば、外部依頼の範囲が減り費用を抑えられます。
投資対効果の考え方
SCS対応の費用は「コスト」ではなく「投資」として捉えるべきです。
- 取引先からの信頼獲得 → 新規取引の獲得、既存取引の維持
- ランサムウェア被害の防止 → 中小企業の被害平均額は数千万円
- 情報漏洩リスクの低減 → 賠償金と信用失墜の回避
SCS対応に50〜150万円を投資することで、数千万円規模のリスクを低減できると考えれば、十分に合理的な投資です。
まとめ
SCS★3の対応費用は、自社の現状によって20万円から300万円まで幅があります。まずは本記事のパターンA〜Cのどれに自社が該当するかを確認し、概算予算を把握しましょう。「いくらかかるかわからないから手が出せない」のではなく、現状を把握すれば具体的な予算が見えてきます。
筆者: 株式会社BTNコンサルティング 亀田 英佑
中小企業に特化した情シスアウトソーシング「情シス365」を運営。M365/GWS環境の設計・構築50件以上の実績。
https://www.josis365.com