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背景

スクフェス大阪のOpening Keynoteセッションの横溝さんの講演で知ったマネジングアップと、コミュニケーション研修の学びから信頼関係の作り方を実践してみました。
実際実践したときは、コミュニケーションが完全にうまくいっていない状態を改善したいと考えていました。

信頼関係を築くためにやったこと

となりのたぬきとは?

となりのたぬきとは、せなけいこ作の絵本です。
概要はこちら参照してみてください。
気になる方は、ぜひ絵本を買って読んでみてください、大人が読んでも対人関係に関する学びが深くおすすめです。
私は、社内のコミュニケーション研修の講師の先生から教えていただきました。

となりのたぬきにおける狙い

けんかばかりしてしまう仲の悪いもの同士が、自分の思考や態度を変えることで相手からの信頼貯金を積み、お互いがかけがえのないものになるというお話です。自分の行動を変え、優しさをGiveすることで、相手の信頼貯金が一定を超えると、相手から自分に対する存在承認に繋がり、相手が自分のことを大切にしてくれるようになるという、相互の心理的・行動変容が起き、お互いの関係性が良好なものに変化します。
となりのたぬき.png

今回は、職場の人間関係に持ち込み、信頼関係を構築する糸口にしました。

となりのたぬきの実践

どんなことをやったか説明します。失敗談の前に、過去の職場や今回支援しているスクラムチームでの成功事例と合わせて、失敗事例をお話します。

成功事例

前職の時代の先輩との事例

前職時代に、駆け出しソフトウェアエンジニアとして働いていたときに、先輩と信頼関係を築くことができた事例です。

当時、中途で入社して半年経つかどうかのとき(に、ちょっと繁忙期な時期に、仕事を受け身になってやっている時期がありました。右から来る仕事を左に流す感じで仕事をしていることを見かねた先輩(別チーム所属)から、「受け身で仕事してんじゃねぇ、自分からもっと仕事取りに行けよ!」とアドバイスをもらいました。
この時の自分は、そんなこと言われてもという気持ちでしたが、業務をこなすだけでチャレンジしていないことは事実だなと考え、チームメンバーのためになることをもっとやっていこうと決心しました。
受け身で実施してたデータ解析の仕事を、簡単なマクロを作って、入出力信号を簡単に選択できるようにして、効率化を実現しました。
簡単なツールを作った実績から、どんどん先輩に何が困ってますか?、なにかできることありますか?と積極的にコミュニケーションを取り、ちょっとした結果でも先輩のためになることを積み重ねていきました。
そんなこんなしているうちに、信頼貯金を積むことができて、転職するまでの2年間すごく可愛がってもらいました。
お互いに、分からないことを聞きあえる、頼みあえる、関係性を築くことができました。
本当に、先輩には感謝しかありません。

スクラムマスターとしてチームにジョインしたとき

今の業務で支援している開発チームメンバーとの信頼関係を築くことができた事例です。

スクラムマスターとして、チームを支援の仕方が少し複雑で、部署が違う開発チームの支援を行っています。私の上司からは、スクラムを広げることがお達しとしてある状況で、スクラムマスターをしています。

支援しているチームは、スクラムを始めたばかりのチームです。メンバーと、チームのテックリード全員と、1on1を実施して、どんな悩み、問題を抱えているのかを知った上で、問題解決とカイゼン活動が定着できるようにすることを合意して、支援を始めました。
上司のお達しに反し、スクラムイベントのすべての実施や上司の説くスクラムの実施は行いませんでした。なぜなら、チームの状況に適していないため、スクラムマスターからの押し付けになってしまう可能性が高かったからです。
問題解決とカイゼン活動を通じて、チームビルドを行い、チームの士気を高め、プロダクト開発に集中できるように、支援を行っています。
観察を通じて、メンバー間のすれ違いや困りごと、メンタリングなどを積極的に介入して支援を行いました。基本だと思いますが、ふりかえりで出たアクションをチームで実行できるように、場の準備などを支援してきました。(あくまで開発チームのメンバーが主体性を持って、カイゼンすることで問題解決の自信をつけてもらえるように、カイゼン活動をスクラムマスターが主導することを極力避けました。)
小さい積み重ねを繰り返すことで、いつからか筆者もチームメンバーの一員だよねと、複数のメンバーから言ってもらえるようになりました。言われた時、すっごく嬉しかったです。
ちょっとしたことがあれば、気軽に相談してもらえる関係性をは築くことができました。
これから、もっとチームメンバーとの信頼関係を築いて、チームの成長、ひいてはプロダクト開発の品質向上に貢献できるように、頑張りたいと思っています。

失敗事例

上司

スクラムを広めたい上司と私の間の信頼関係構築の失敗した事例です。

上司をPOとして、上司の説く(オリジナルな)スクラムをやることになったスクラムチームに、スクラムマスターとして所属しています。少し特殊で、管理と効率化の側面の強いスクラムフレームワークを活用して、日々の業務を行っています。
(スクラムの原則や価値基準が働いているかというと、少し違う状況と言えます)
この状況で、上司の求めるスクラムから逸脱すると、即指摘が入る状況でした。チームとしてプロダクト開発に集中し、アウトカムを得ることをスクラムチームのメンバー(PO除く)で合意していたので、グッとこらえて従うことにしました。また、従順に従うことで、信頼関係を築くことができることを期待し、上司の求めるスクラムを日々着々と実践してきました。(相手の喜ぶことを実施したつもりでいました)
また、そんなスクラムの実践とは別に、スクラムチームの問題解決力を伸ばしたり、エンゲージメントを高める施策をアングラで実施して、チームの成長を支援してきました。実際、スクラムチーム(POを除く)のエンゲージメントや心理的安全性は向上しています。
ただ、そうした定性的に感じられる成果よりも、日々の暮らしがオリジナルスクラムを遵守しているかどうかの方が、上司にとって重要であることが分かりました。

私はふりかえりの場で、勇気を出して、スクラムマスターが求められていることは何か、「スクラムを回すこと」なのか、それとも「スクラムチームがアウトカムを作り出せるようにチームの成長を支援すること」なのか、質問しました。この質問は、上司の心理的安全性を阻害していると上司から指摘されてしまいました。
このとき、上司(PO)と私(スクラムマスター)の間で、信頼関係を構築できなかったと悟りました。
以来、どのように信頼関係を構築することができるのか、とても悩んでいる状況です。

学び

有機的組織作りのアンチパターンリーダー相手には難しいかも

GMワインバーグ氏著の「スーパーエンジニアへの道」の第18章で紹介されている、有機的組織の障害となるリーダーの特徴があります。
アンチパターンリーダーの特徴

・お偉いさんゲームをする
・人を機械扱いする
・自分でやってしまう
・有効でない組織作りに褒賞を与えてしまう

上司が部下に対してレッテルを貼ってしまっている状態、部下のために上司自らやってあげているんだと考えている状態では、部下が上司のために行動する行為自体の影響が小さいかもしれないと思いました。アンチパターンリーダー自身も、相手のためにやっていると思い込んでいる状態であり、アンチパターンリーダーからの指示を実施することが、支持された人の当然の義務と思っている可能性が高いと思われます。その状態では、うさぎ側のキャンペーンが有効に機能しない可能性が高いことに気づきました。

キャンペーン期間は絶対遵守する

コミュニケーション研修の先生から、となりのたぬきのうさぎのような立ち回りをすることで、相手から存在承認(いてくれてありがとう)に心理的変容が得られる可能性が生まれる、と教えていただきました。相手のことを認めて、相手のためになることを率先してやることをキャンペーン化して、実践しましょうと教えていただきました。ただし、注意事項があり、キャンペーンは一定期間を設けて実施すること、1〜2週間でキャンペーンを受ける相手の変化がなければ必ずやめる必要があります。そうしなければ、キャンペーン実施側の精神がすり減ってしまうため。
実際、私はすり減って、体に不調が出たので、絶対に無理はしないこと、違う方法で信頼関係が構築できないか検討することが重要だと学びました。
(寧ろ2週間は、微塵も心理的変容がない相手とは、信頼関係自体構築できないのかもしれません。。。心理学的にはどうなんでしょう?)

相手の接し方の種類を見極める

厳しさの裏があるかどうかを知る必要があると気づきました。厳しさの「ムチ」に対する、認めているという「アメ」がない場合は、要注意しましょう。
そもそも、相手側の心理変容が起きていない可能性が高いです。その場合は、うさぎ側を実践する方の精神がスリ減るだけなので、期間限定キャンペーンだとしても、早急にとりやめ、別の手段を考えるようにした方が良いと感じました。

ラスボスゾンビに要注意

スクフェス仙台2023のオーノ・Aさんの発表のラスボスゾンビ相手には、となりのたぬきの信頼関係構築のやり方は、すこぶる相性が悪いのではないかと感じました。(N=1なので、全員ではない)
ラスボスゾンビは、有機的な組織の障害となるアンチパターンリーダーと似た傾向があります。ボスゾンビに関しては、目の前に盲目的に執着しているスクラムがあり、ボズゾンビ特有のゾンビスクラムで、チームが価値提供できていないことも顧みないので、スクラムマスターが支援している支援先のチームの成果とか業務遂行がボスゾンビに対する信頼貯金にはならないことがわかりました。

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