More than 3 years have passed since last update.

TeXで縦書き小説を書く

Posted at 2021-11-18

TeXで縦書き小説を書く

みなさん小説書いてますか。

どんなツールを使ってるでしょうか。普通はWordやInDesignですかね。PCだけでなく、最近ではスマホから使えるWEBサービスも出てきたようですね。

時代に逆行してる感はありますが、TeXは良いです。こういう感じの文書が簡単に作れます。

ある程度長いものを書いたりする場合、TeXはとても使いやすいです。

今回はTeXを使用して小説を書く方法を、TeXをあまり使ったことのない方に向けてまとめました。

1. TeXとは

読み方は『テフ』または『テック』です。

TeXとは、フリーの『文書作成ソフトウェア』または『組版システム』です。WordやGoogle Documentの仲間です。

もともとは論文作成に使われていたものでしたが、少しずつ拡張されていき、技術書や小説でも使われるようになりました。

最近はRequirements for Japanese Text Layout | 日本語組版処理の要件に準拠したjlreqドキュメントクラスが提供され、縦書き小説はもちろん日本語の文書全般がとても簡単に作れるようになりました。

1.1 メリット

何も考えなくてもある程度綺麗になる

とりあえずの設定で綺麗なフォントや字幅で仕上がります。もちろんカスタマイズも簡単です。

設定を流用しやすい

何度も出てくる設定をコピペやマクロで流用できます。長編小説や掌編はもちろん、他の人の設定を使わせてもらうのも簡単です。文章の量が多ければ多いほどこのメリットは大きくなります。

数式が綺麗に書ける

もともと理系の学者さんが論文を書くために作成したというのもあり、数式がとても綺麗に簡単に書けます。異常論文を書くときも無問題です。

1.2 デメリット

環境を整えるのが大変

初心者はまずインストールでつまずくことが多いです。いちおう昔よりは簡単になりました。

プログラミングっぽくてとっつきにくい

ソースコードを編集してコマンドを打ったりと、初心者にはかなりとっつきづらいです。まず間違いなく最初は苦戦するでしょう。

そのうち慣れます。

開発メンバーの中心が英語圏

組版処理ソフトウェアという性質上、言語（話す方）の違いは大きいです。通常のOSSと同じく開発は英語を中心で行われているので、多くの機能は英語圏のユーザー向けにまず提供されます。

検索して出てくる情報が英語だったり、日本語がおいてけぼりにされる疑惑が出たりと、ちょっと注意が必要かもです。

2. TeX LIVEのインストール

実際にTeXをPCにインストールしてみましょう。Windows, Linux, Mac対応です。無料です。

いろいろ一括で配布してくれる『TeX LIVE』をインストールします。記事作成時点では2021が最新でしたが、多少バージョンが違っても大丈夫です。

2.1 インストールファイルをダウンロードする

Installing TeX Live over the Internet

install-tl-windows.exe for Windows (~20mb)
install-tl-unx.tar.gz (~5mb) for everything else
install-tl.zip (~25mb) which is the same as the .exe

2.2 インストールする

ダウンロードしたインストールファイルを実行します。

Windowsだとこんな感じ、他OSでもだいたい同じです。基本は画面に従っていけばよいでしょう。

install-tl-windows.exeを右クリックから『管理者として実行』
- 『Windows によって PC が保護されました』と表示されたら『詳細情報』から『実行』をクリック
『Next』→『Install』を押すとインストーラが展開される（インストールされている訳ではない）
『TeX LIVE 2021インストーラ』という画面が表示される。『インストール』を押すとインストールが開始される
- 後述するGUI環境を使う場合は『TeX Worksをインストール』にチェックを入れる
- 『高度な設定』で詳細なオプションが表示されるが、基本的にはいじらなくてよい
- インストールには１〜２時間かかる
『Complete』が表示されたら『Close』を押して終了

2.3 その他

万が一トラブルがあった場合は、公式のインストール手順を参考にしてください。

3. 文書を作成する

インストールが終わったら実際に文書を作成してみましょう。

色々な方法がありますが、流れはどれも同じです。

.texファイルを編集
.dviファイルを生成
.pdfファイルを生成

テンプレートを用意しましたので今回はこちらを使ってください。フォルダ／ファイルの名前は任意ですが、日本語を含まない方が望ましいです。

document.tex - Github

中身についての解説は今回は省きますので、いろいろ編集してどうなるか見てみてください。検索すれば大抵の情報は出ます。

3.1 TeXの文書作成環境

実際にTeXで文書を作成するにあたり、色んなやり方があります。

素朴にテキストエディタとコマンドプロンプトでやったり、リッチで高機能な統合環境を使用したりと、人によって全然違います。

今回は２つだけ詳しく説明しますが、お好きな方法を試してみてください。

TeXmaker
TeXworks
TeXstudio
VScode+プラグイン
コマンドプロンプト＋テキストエディタ
Make
latexmk
llmk
OMake

3.2 TeXstudio

TeXの文書作成をサポートしてくれるグラフィカルな統合環境です。

本体のダウンロード

TeXstudioのDownloadからダウンロードしましょう

コマンドの指定

日本語文書に対応させます。『オプション』→『TeXstudioの設定』から下記の通り設定を変更してください。

『コマンド』タブ『LaTeX』のplatexをuplatexに変更
『コマンド』タブ『DviPdf』のdvipdfmをdvipdfmxに変更
『ビルド』タブ『ビルド＆表示』をDVI->PDFチェーンに変更
『ビルド』タブ『既定のコンパイラ』をLaTeXに変更

ビルド＆表示

ダウンロードしたdocument.texファイルを開き、ビルド＆表示を実行（緑色の矢印が２つ重なったアイコン）。

ちゃんとできればこうなります。

3.3 コマンドプロンプト＋テキストエディタ

コマンドプロンプトからコマンドで実行する人は少数派ですが、基本はこちらです。他の方法で動かない時の原因究明として、なるべく知っておいてください。

ファイルのあるフォルダでコマンドプロンプトを開いてコマンドを２つ実行します。

uplatex document.tex
dvipdfmx document.dvi

正しく実行できればこんなのが出てきます。

$ uplatex document.tex
This is e-upTeX, Version 3.141592653-p3.9.0-u1.27-210218-2.6 (utf8.uptex) (TeX Live 2021) (preloaded format=uplatex)
 restricted \write18 enabled.
entering extended mode
(./document.tex
pLaTeX2e <2021-06-01u04>+2 (based on LaTeX2e <2021-06-01> patch level 1)
L3 programming layer <2021-07-12>
(/usr/local/texlive/2021/texmf-dist/tex/latex/plautopatch/plautopatch.sty)
Document Class: jlreq 2019/09/24 jlreq
...
(./document.aux) 《縦組モード》
(/usr/local/texlive/2021/texmf-dist/tex/latex/lm/ot1lmss.fd) [1] [2] [3]
[4] (./document.aux) )
Output written on document.dvi (4 pages, 7608 bytes).
Transcript written on document.log.

$ dvipdfmx document.dvi
document.dvi -> document.pdf
[1][2][3][4]
86966 bytes written

.texファイルはお好きなテキストエディタで、.pdfファイルはSumatraPDFなどで開いてください。

Adobe Readerはどういう神経してるのか.pdfを編集モードで開いてしまうので使えません。