はじめに
データ活用が進む中で、Power BIやTableauなどのBIツールを導入する企業は増えています。
しかし、BIツールを導入しただけですぐにデータ活用がうまくいくわけではありません。
例えば、次のような課題に心当たりはないでしょうか。
- システムごとにデータが分散している
- 同じ売上なのに部署によって数字が違う
- 毎回Excelでデータを加工している
- レポート作成に何時間もかかる
- データ量が増え、分析に時間がかかる
このような課題を解決するために重要な役割を果たすのが DWH(Data Warehouse) です。
私は現在、Snowflake・dbt・Power BI を組み合わせた分析基盤の構築に携わっています。
本シリーズでは、実際のプロジェクトで得た知見も交えながら、DWHの設計から実装、BI連携、運用までを紹介していきます。
この記事では、その第一歩として 「DWHとは何か」「なぜ必要なのか」 を解説します。
DWHとは?
DWH(Data Warehouse)は、一言でいうと「分析に利用するためのデータを集約・蓄積する場所」です。
業務システムには、それぞれ目的の異なるデータが保存されています。
- 販売管理システム
- 顧客管理システム(CRM)
- 会計システム
- 在庫管理システム
- Webアクセスログ
これらのシステムは日々の業務を支えるために設計されており、分析を目的としているわけではありません。
そのため、複数のシステムを横断した分析を行う場合は、必要なデータを集約し、分析しやすい形に整理する必要があります。
その役割を担うのがDWHです。
イメージすると、次のような構成になります。
DWHがあることで、分析に必要なデータを一元的に管理できるようになります。
なぜDWHが必要なのか
例えば、会社の月次売上を確認するとします。
営業部での売上計上:1,000万円
経理部での売上計上:980万円
マーケティング部での売上計上:1,050万円
同じ「売上」を見ているはずなのに、数字が違うという経験はありませんか。
原因として考えられるのは、
- 集計対象期間が違う
- キャンセルデータの扱いが違う
- 税込み・税抜きが混在している
- データ更新タイミングが異なる
などです。
このように、それぞれが独自に集計してしまうと、「どの数字が正しいのか」が分からなくなります。
DWHでは、集計ルールを統一し、全員が同じデータを参照できる環境を整えます。
これにより、「信頼できるデータ」をもとに意思決定ができるようになります。
DWHだけでは完成しない
DWHという言葉を聞くと、「データを保存する場所」と考えがちですが、実際の分析基盤はもう少し広い範囲で構成されます。
一般的な構成は次のようになります。
業務システム
│
▼
ETL / ELT
│
▼
Data Warehouse
│
▼
Data Mart
│
▼
Power BI
それぞれの役割を簡単に紹介します。
ETL(Extract → Transform → Load) / ELT(Extract → Load → Transform)
各システムからデータを取得し、分析可能な形に変換して取り込みます。
従来は取り込み前に加工する「ETL」が主流でしたが、近年ではSnowflakeなどのクラウドDWHの性能向上に伴い、データをそのままDWHに取り込んでからDWH上で加工・変換する「ELT」が採用されるケースも増えています。
Data Warehouse
分析に必要なデータを統合・蓄積する場所です。
履歴管理やデータ品質の担保なども重要な役割になります。
Data Mart
利用目的ごとに最適化したデータです。
例えば
- 売上分析
- 顧客分析
など、BIツールが利用しやすい形に整理します。
BIツール
Power BIやTableauなどからData Martを参照し、
- ダッシュボード
- レポート
- KPI
などを作成します。
最近のDWHでよく使われる技術
近年の分析基盤では、クラウドサービスを組み合わせるケースが一般的です。
例えば、以下のようなサービスが使われています。
| 分野 | 代表的なサービス |
|---|---|
| DWH | Snowflake、BigQuery、Amazon Redshift |
| ELT | dbt、Fivetran、Matillion |
| BI | Power BI、Tableau、Looker |
| オーケストレーション | Airflow、Azure Data Factory、Dagster |
それぞれに特徴がありますが、本シリーズでは私が実務で扱っている Snowflake・dbt・Power BI を中心に解説していきます。
このシリーズで扱う内容(予定)
今後は、以下のテーマを予定しています。
| 回 | 内容 |
|---|---|
| 第1回 | DWHとは?分析基盤の全体像 |
| 第2回 | DWH設計(レイヤー構成・データモデリング) |
| 第3回 | Snowflakeを利用したDWH構築 |
| 第4回 | dbtによるELT実装 |
| 第5回 | Data Mart設計 |
| 第6回 | Power BIとの連携 |
| 第7回 | パフォーマンス改善 |
| 第8回 | 運用・監視・データ品質 |
単なる製品紹介ではなく、
- なぜその設計にしたのか
- どのような課題があったのか
- どのように改善したのか
といった実務で得た知見も交えながら紹介する予定です。
まとめ
今回は、DWHの役割と分析基盤全体の構成について紹介しました。
DWHは単なるデータベースではなく、組織全体で共通のデータを活用するための基盤です。
分析の精度やスピードは、この基盤の設計に大きく左右されます。
次回は、実際にDWHを設計する際に重要となるレイヤー構成やデータモデリングの考え方について詳しく解説します。
おわりに
この記事が「DWHって何だろう?」という疑問を持つ方の第一歩になれば幸いです。
次回も、実務で役立つ知識をわかりやすくお届けします。
