営業がブロードキャストオンリーなのをテクノロジーで解消できないでしょうか。
できればTCPのように3ウェイハンドシェイクにできればすごく良くないですか?私はそう思います。
背景
AI技術が急激に進化している現在ですが、私のプライベートではこのようなことが最近起こりました。
私は知らない電話番号から電話がかかってきたとき、まずはGoogleでその電話番号を検索します。
例えばこんな感じ。
Web検索に電話番号が引っかからない場合、その後再度電話が掛かってくるか、SMSで通知がくるか、あるいはSNSやLINEなどのコミュニケーションツールで連絡が来るか待ちます。留守録サービスを利用されている方もいるでしょう。(私はしてません……)
ただ、今回はさすがにこれだけ短時間に数回電話を掛けられると、知らない電話番号といえども緊急を要するものだと考え電話を取りました。
結果は 「以前のイベントでお話させていただきました株式会社XXです」 というSaaSサービスの勧誘・紹介電話でした。
何が起きたのか
そもそもこの営業電話はいつから私の電話番号が顧客先ユーザーとして企業側の顧客リストに載っていたのでしょうか。電話越しに確認できたところでは、私が過去所属していた企業で参加したイベントにて入手した個人情報だったようです。
そこで私はすでに退職している旨と現在は検討段階にすらないことを伝え、お互いハッピーに終わりました。
Fin...
問題点
お互いの期待値が擦り合わない
現代の営業活動において、営業電話は未だに重要な手法の一つです。しかし、私のように小さな会社で働いていたり、社給のスマホや携帯を持っていない従業員にとって、知らない電話番号からの着信に出ることはかなりの決断力を必要とします。
事実、知らない電話番号に出る人は、以下の調査ですと4割弱となっており多数派ではないのです。
方や営業担当者としては、多数派の人たちに電話を取ってもらうことがビジネスでは重大なミッションとなっています。
この時点でお互いの期待値「電話は受けたくない、電話を受けてほしい」というねじれの位置もといメビウスの輪が生じるのです。
SMSの功罪
そんなこんなで、電話でのコミュニケーションはお互いの時間と労力をすり減らすことのほうが大変多いわけです。そんな中、2008年のiPhoneの登場によりSMSにも再度脚光が当たり始め、「短い通知ならSMSで送れば非同期でコミュニケーションできるし効率的なのでは」ということを多くの人が発想したはずです。
もちろんビジネスとしての活用もメリットはあったわけですが、現実問題としてSMSだけでは振り込め詐欺や闇サイトへの勧誘などの悪どいメッセージと判別がつかない場面もあります。
正当性・公平性が微妙
今回の私のように特定企業のイベントや講演会へ参加する際に提供した電話番号が、退職や転職後も使われ続けるという問題も存在します。これでは顧客データの正当性が確保できません。
また、参加者登録時に電話番号の入力が必須となっていることもよくあり、メールでの連絡で済む内容であっても手っ取り早い電話を掛けてきます。せめて「メールでの連絡を希望する」旨の覚書を記述する欄があっても良いかもしれません。このあたりの公平性も若干欠けてるなぁと感じますね。
解決策
ここからようやく本題です。それぞれの問題について解決策を考えていきます。
なお解決策が1対1で問題に対応しているわけではないので、章立ては少し変えています。
顧客側: 自動応答アプリの作成
こちらはAndroid限定にはなりますが、アプリを自作し、電話に対してSMSで折り返すという方法があります。iOSはOSのセキュリティとプライバシー上電話への自動応答ができないようになっています。MDM(Mobile Device Management)を使っても無理なようです。諦めましょう。
加えて、電話の相手(営業)がSMSを使っているとは限りません。SMSが届かないことを前提とすると、無駄にSMS送信でお金を払うのも馬鹿らしいので、この解決策では残念ながら何も解決できません。そもそも勝手に電話をかけてきているのは営業側です。受け手としてはできるだけ穏便に、正確に、公平性を持ってお断りできる仕組みが必要です。
しかし現状では、顧客側は電話以外に何か策を練ることができないのです……。
お金が多少掛かっても良いのであれば、AIに折り返し電話をさせてついでに応対させるという手はあるでしょう!
営業側: SMS事前/事後通知システムの導入
これはすでに実装している企業もあるかもしれません。
ただし、顧客側と期待値をすり合わせる(かつ公平性を担保する)ためには以下のように「この連絡が今後不要なら連絡してね」の1文があっても良いと思うのです。
株式会社XXの山田です。YYの件でお電話差し上げました。
このメッセージが不要な方はこちら:https://short.url/abcdef
そもそも 特定電子メール法 によってメルマガですら配信停止を明記することが必須であるのに対し、営業電話にはそれに相当するものが存在しないというのは、技術の進化にプライバシー保護・情報の公平性が追いついていないといえるでしょう。
「電話」というアナログな技術に対して、AIですらこの課題に対する明確な解決策が何もないのです。困ったもんです。
営業側: CRMおよび他システムとの連携
上記のSMSにてhttps://short.url/abcdef
というリンクを作っていますが、ここを開くとフォーム入力ができるようになっており、そこから回答内容をCRMに連携できれば、たとえ断られたとしても「なぜ断られたのか」や「顧客の最新情報」を得ることができるかもしれません。例えばこんな感じ。
顧客回答フォーム
フィールド名 | 説明 | データタイプ | 必須 | 備考 |
---|---|---|---|---|
phone_number | 顧客の電話番号 | 文字列 | はい | URLのクエリパラメータから自動入力される |
顧客のメールアドレス | 文字列 | いいえ | 任意入力 | |
unsubscribe_reason | メッセージが不要な理由 | 文字列 | いいえ | 任意入力 |
status | 今後の連絡方法の希望 | 文字列 | はい | 選択肢から選択 |
comments | その他のコメントやメッセージ | 文字列 | いいえ | 任意入力 |
これがあるだけで「この企業なら今後も付き合えそう」と思っちゃいますよね。
あとはこの内容を加工して、CRMツールやその他情報元のドキュメントへ連携するだけです。
営業側: オプトイン/オプトアウトの明確化
イベントや講演会の登録時に、電話での連絡を希望するかどうかを明確に選択できるようにします。これにより、電話連絡を希望しない顧客には、メールやSMSなどの代替手段を用いることができます。たった1つの親切で印象が変わるはずなんですよね。
ちなみにファッション業界(服飾店での顧客名簿登録)では割とこれを聞かれますし書かされます。
あるいは、「この電話番号から営業電話をかけます」という文や記載があれば、それを事前に 着信拒否 電話帳へ登録することはできそうです。
営業側: 電話番号の開示
個人的に公平性を保つためには、企業側も「営業をかける電話番号」を開示してもよいのではないかと思います。
現状すでに野良サイトみたいな電話番号検索サイトで、多くの営業電話の番号が晒されています。他にもhttps://ivry.jp/telsearch/ は、IVRyをサービス展開している企業(企業名同一)が運営しているようですが、ここにも電話番号の記載がいくつかあります。
ただし、 このサイトは、電話自動応答サービスIVRy(アイブリー)をご利用いただいたクライアント様のデータは利用していません という一文が記述されているとおり、サービス利用者の個人情報は扱っていないということでした。
このあたりは判断が難しいところで、明確に「営業側なんだから電話番号は晒されて当たり前」ということでもないでしょう。しかし、公平性という面では、電話番号が事前に営業電話であることがわかるというのは、かなり重要な点だと考えます。
まとめ
色々考えましたが、営業電話について営業側・顧客側双方が納得の行く形にテクノロジーで解決するのは、現代においても正直難しい! ということしかわかりませんでした🥺