概要
SiC-SBDとSiC-MOSFETで5vのフィードバック型安定化電源を作ります。
一応、オーディオ向け電源ということになります。
NanoPi-NEOとMPDとLCDとI2S-DACとTDA7297で音楽再生サーバ(完全体)とかの電源として利用可能です。
それぞれの特徴
SiC-SBD
- 逆回復時間(Revere recovery time)が短い(音に効く)
- 順方向電圧(Vf)は大きめ(電圧ドロップが大きい)
- ピーク順方向サージ電流は小さめ(トランス強力でコンデンサ容量多くすると、爆発したりする)
- 値段が高い (普通の整流用ダイオードは5円とかだけど、これは240円~)
参考:
http://micro.rohm.com/jp/techweb/knowledge/sic/s-sic/03-s-sic/4656
代表例:
Infineon IDH04G65C6 (第6世代)
Infineon IDH03G65C5 (第5世代)
Rohm SCS106AGC
SiC-MOSFET
- 入力容量Cissが小さく高速動作可能(音に効く)
- Vgs がかなり高い
- Vds もちょっと高い
- 値段が高い (普通のFETは30円~とかだけど、これは800円~)
代表例:
Cree C3M0280090D
Rohm SCT2450KE
※MOSFETの最新素材として、GaNもあります。
実装
回路図
SiC-MOSFETのVgsが高めなので、倍電圧回路組んで駆動用に回します。

BOM (Bill Of Material)
一例です。
出力電圧調整は、特性のバラつきを利用して、J1とD1を目標電圧に近くなるように選別し調整することになります。
J1=2SK369vの場合、D1は、4.2vや4.1vのほうが良いかもしれません。
Symbol | Description | パーツ型番例 | 値段 |
---|---|---|---|
D1 | ツェナーダイオード 4.3v | Vishay TZX4V3C-TR | ¥4.19 x1 |
D2,D3,D4,D5,D5,D6 | SiC-SBDダイオード | Infineon IDH03G65C5 | ¥252 x6 |
J1 | J-FET 7~10mA程度 | 2SK246BLなど | ¥30 x1 |
Q1 | NPN 小電力トランジスタ | 2N2222A CANタイプ | ¥260 x1 |
M1 | SiC-MOSFET | Cree C3M0280090D | ¥476 x1 |
C7 | ツェナー用 | 0.1uF 630v X7R | ¥20 x1 |
C6 | 反応速度調整用。発振しない容量で。~0.1uF | - | |
C1,C2 | 平滑用 | LXJ 8200uF 16v | ¥50 x2 |
C4,C5 | 平滑用 | LXJ 2200uF 35v | ¥50 x2 |
C3 | 平滑用 | MUSE KZ 220uF 50v | ¥60 x1 |
C11,C13 | デカップリング用 | 4.7uF 25v X7S | ¥20 x2 |
C9,C10,C12,C8 | デカップリング用 | 0.1uF 630v X7R | ¥20 x4 |
R1 | 電圧検出用 | 1kΩ | ¥3 x1 |
- | 基板 | Cタイプ 72x47.5mm | ¥60 x1 |
- | SiC-MOSFET用 | ターミナルブロック 3ピン | ¥30 x1 |
- | 電源ライン用 | ターミナルブロック 2ピン | ¥20 x2 |
- | J1,C6乗せ換え用 | ピンソケット | ¥50 x1 |
基盤レイアウト例
完成図
測定
トランスは、115v → 9v 25VAを使用。
出力素子はMOSFETであれば、SiCである必要がないので、手持ちの2SK3163もついでに計測。
C6の容量と電圧波形
100mA → 200mA の負荷変動時の波形。
変動負荷は、2SK2232をオシロのプローブ調整用矩形出力使って駆動。
Ch1は出力。
Ch2は変動負荷用の2SK2232のゲート電圧。
なし
2700 pF
0.1 uF
1000uF
ついでに実施。スケール変わっています。
ここまで容量を大きくすると、ノンフィードバック電源の特性になってきます。
出力デバイス変更時の挙動
固定負荷
C6は無し で計測。
Load | 20Ω (250mA) | 10Ω (500mA) | 5Ω (1000mA) |
---|---|---|---|
Cree C3M0280090D | 5.064 v | 5.048 v | 5.022 v |
Rohm SCT2450KE | 5.060 v | 5.038 v | 4.944 v |
Renesas 2SK3163 | 5.056 v | 5.045 v | 5.020 v |
結構いいんじゃないでしょうか?
動的負荷変動
50Ω(100mA) → 25Ω(200mA)の負荷変動時の波形。
変動負荷は2SK2232のゲートをオシロのプローブ調整用矩形出力へ接続して実施。
Vccと2SK2232のDrainに50Ωを繋げば、オシロの矩形High期間が25Ω相当になる。
Cree C3M0280090D
Rohm SCT2450KE
Renesas 2SK3163
NJM7805 (比較用)
※垂直スケール 10mv/divです
※水平スケール 8us/divです
LM350(比較用)
LM338(比較用)
おわりに
- 100v 使うので安全確保の上、自己責任にてお願いします。
- ループ回路があるため、発振する場合があります。必ず測定の上ご利用ください。
- 過電流保護回路等ありませんので、理解した上でご利用ください。
- 特に、フィードバック系の故障・接触不良・はんだ不良等は、入力電圧がそのまま出る場合がありますので、覚悟してください。
おまけ
素子変えつつ計測していたら、いろいろ大変なことがありました。
- 出力をショートさせていて、SiC-SBDのハンダがメルトダウン。それでも壊れなかったSiC-SBDすごいですね。
- 2N2222A x1 昇天。電源入れたまま素子交換したら死にました。このとき出力10v出ました。
- Zenarダイオード x2 昇天。電源入れたまま素子交換したら死にました。故障モードは、OpenとShortの2パターンありました。Openの場合は、10v出ました。
- 倍電圧回路の出力は、24vくらいになるので触るとピリピリします。
やるときは電源切ってやろう!みんなも気を付けて!