背景
実求人をクロールし、どの言語がどれだけ求人を保有しているか実数を取得し、年収別の求人数から総合ランキングを作成してみました。個人の恣意的な価値観を反映しないよう、エンジニアとしての個人的な主観は可能な限り省いています。(解説のところで少し主観が入っているのでお気をつけください)
調査方法
Web上にある求人サービスから実求人をクローリングし、言語の頻出数から人気言語のランキングを調査しました。
クローリングとは何か
クローラーとは、ザックリ言うと、web上でデータを集めてくれるロボットです。webにある色々なサイトを飛び周り、こちらの命令(求めているもの)に該当するページで、データを集めてくれます。集まったデータは、各項目ごとに分別され、それぞれ値が抽出されます。抽出されたものは、何かうまいことやってデータベースに格納するなどします。
初心者でも分かる説明
水泳帽をかぶったロボットがプールの中をクロールで泳ぎまくり、「おとな20人」「こども12人」「おとこ20人」「おんな11人」「せいべつふめい1人」みたいな感じで情報、データを集めてくれる便利で良い奴です。
対象データ
調査した実求人総数は10万件ぐらい。
プログラミング言語はWikipediaの一覧から取得し、求人数が100件に満たないものは除外しました。
ref https://ja.wikipedia.org/wiki/プログラミング言語一覧
では早速見てみましょう。
年収別ランキング(絶対数順)
全体的にJava,PHP,JavaScriptが上位に位置しています。特にJavaの案件がダントツに多いことが分かりますね。
この3つの言語は幅広いスキル層に求人を提供しています。専門学校、プログラミングスクールなどを卒業したての駆け出しエンジニアから、バリバリ開発が出来る高レベル層のエンジニアまで幅広い種類の案件がたくさんあります。
傾向
上位はJava、C、PHP, C#, JavaScriptです。市場規模を考えると業務系はWeb系の8倍弱なのでJava,C,C#が上位に来るのは当然です。PHP,JavaScriptが健闘しています。
第2章 我が国における IT 関連産業及び IT 人材の動向
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY/ITjinzai_report_2.pdf
C言語はJavaに比べ高年収求人が比較的少ない事が分かります。逆にRuby,PythonはC言語と比較するとそれぞれ案件数に比べて高年収求人は比較的多い事分かります。組み込み寄りの言語は人あまりが発生しているのかもしれません。
高年収求人はTypeScript, Kotlin, Scalaが高年収求人に偏っています。TypeScriptはJavaScriptの、KotlinとScalaはJavaの後方互換言語で、これから言語学習を始める方はJavaかJavaScriptをやっておけば、高年収の道は確保されていると見て良さそうです。
年収別ランキング(相対数順)
単純な求人数だけの比較をしてしまうとどうしても母数の多い言語が有利になってしまうため「言語別の高年収求人の割合」を出して並び替えました。「人気がありかつ人手不足の求人ほど給料が高年収の求人割合が多い」と考えるなら、こちらのほうが人気度の実態を表していると考えられます。
傾向
400万円台までは組み込み系かWeb系、500万円台,600万円台からモダンな言語が増えていきます。700万円台ではProcessingの人気が際立っています。Processingは主に電子アートとビジュアルデザインのための言語です。その他、高年収求人には最近出て来たモダンな言語が割合多く見られます。
2019年 総合ランキング 決定版
絶対評価、相対評価だと結局どの言語が良いのか分からないので、絶対数と相対数から弊社独自の重み付けにより総合ランキングを算出しました。ランキングの仕組みは期待値を出しているだけで単純すぎて恥ずかしいので割愛しますが、要は「高年収求人の割合が多い言語」ほど上位に来る仕組みだと思ってください。(期待値のようなものです。というか期待値です。)
10位:Kotlin
Androidアプリ開発で採用する企業が年々と増えており、Android需要に後押しされた格好です。Androidアプリ開発自体はJavaでもできるため、Kotlinでの開発は選択的でiOS開発におけるSwiftほどのインパクトはなかったと見るべきでしょう。
KotlinはJavaよりもスマートに完結に書けることを目指していて、Javaとの互換性もあり、人気が高まっている言語です。最近は「サーバサイドでもkotlinで実装しよう」という動きが目立ち始めています。
国内のサーバーサイド Kotlin 公開採用事例まとめ
https://qiita.com/ptiringo/items/dd734ab8064f94139294
9位:Scala
国内ではあまり目立っていませんが「高単価求人の多さ」が援護射撃になり上位にランクイン。開発資産としてJavaライブラリが使用可能で(Kotlinも同じ)、生産性を高めるモダンな書き方も可能です。やや古い話ですが、2009年にはTwitterがバックエンドをRubyからScalaに移行しました。
Twitter、Ruby on RailsからScalaへ
https://it.srad.jp/story/09/04/10/0421223/
8位:JavaScript
SPAの需要拡大に伴いTypeScriptと共に上位に浮上しました。Adobe AcrobatがJavaScriptのマクロ機能を積んでいるなど、サードパーティ製ツールもJavaScript解析エンジンを積んでいる例が散見されます。また昨今ではJavaScriptの言語的特性(NonBlocking I/Oと相性が良い)からサーバサイドでもJavaScript(NodeJS)を使う動きが見られています。
githubでは注目度断トツの1位。世界的にも現在、もっとも注目を浴びている言語の1つとして過言ではないでしょう。
https://githut.info/
7位:Python
Pythonはシンプルで少ないコードで書けるので、C言語などと比較し扱いやすい人気言語です。近年よく耳にするAI/機械学習/統計解析に必要なライブラリを揃えている事で上位にランクイン。AI需要もありこれからもPython需要は高まっていくかもしれません。
既にAI分野のディファクトスタンダードのような扱いで、Jupyter Notebook(https://jupyter.org/ )など使えば比較的簡単に環境が手に入ります。これから学ぼうという方にも良いかもしれません。
6位:Ruby
日本で開発されたプログラミング言語で、初めて国際電気標準会議(IEC)で国際規格に認証されたことでも有名です。『Y combinator』出身の時価総額上位10社のうち6社が採用している言語で、世界のテクノロジーを支えていると言って過言ではないでしょう。Webアプリケーション開発と非常に相性がよく、日本では下火になったと言われて久しいですが、求人ベースだと人気は健在。国内のスタートアップが積極的に採用している言語の1つです。
ref
https://news.ycombinator.com/item?id=21138422
5位:TypeScript
TypeScriptはマイクロソフトによって開発されたプログラミング言語。JavaScriptに「型」の概念を持ち込みました。『ReactJS』『VueJS』での開発にも大きな影響を与えました。スパゲティになりがちなフロントエンド開発にオブジェクト指向の概念を持ち込み、優れた保守性を持ったSPAアプリケーション開発を実現します。
4位:Apex
Salseforceのプログラミング言語です。ApexはJavaに似ており、Java言語ユーザには親しみのある記述方法を提供しています。Salesforceは開発者に高いインセンティブを支払うことで有名であり、中小ベンダーにとって採用の敷居が低い人気言語となっています。
実は現在、人材市場ではApex開発者の争奪戦が繰り広げられており、歴3年もあればヘッドハントは当たり前。開発者からすると東京で1000万、大阪でも800万も狙える非常に魅力的なプログラミング言語となっています。
3位:PowerShell
PowerShellは2006年に生まれた言語でMicrosoft発のプログラミング言語です。WindowsやMicrosoft製品のシステム管理を行うためのシェル言語を提供しており、オブジェクト指向で開発ができることでも有名です。Bashで書くかPowerShellで書くかで悩んだ開発者も多いでしょう。現在はオープンソース化されています。
Apexと同様、この2つの言語は使用用途が偏っているため求人数が多くないのですが、その分開発経験者が少なく、高単価になったと考えられます。わざわざこれから始めようという言語ではないかもしれませんが、既に業務で経験されていたり触る機会のある方にはGood Newsかもしれませんね。
2位:Swift
Swiftは、モダンな記述で開発がしたい開発者とiOSアプリの開発需要のダブルアタックで上昇したプログラミング言語です。Swift自体は初心者にも優しく、駆け出しの方にもオススメですが、ある程度ターミナルの知識を求められるので、知識が全くないと環境構築の段階で沼にハマってしまうかもしれません。そして言うまでもないかもしれませんが、Swiftでの開発には「MacBook」が必要です。
1位:Golang
GolangはGoogleによって設計されたプログラミング言語です。動作は軽量でソフトウェアを効率的にシンプルに構築できるとされていてオススメです。Goのツール、コンパイラ、ソースコードは全てオープンソースです。実装はオブジェクト指向にも関数型にも適応しており、優れたメモリ管理アルゴリズムが非常に軽快で高いパフォーマンスを発揮します。ある程度の言語経験者には非常に人気の高いプログラミング言語ではあります。一方で低年収求人には少なく、初心者向きではないので注意が必要です。
まとめ
プログラミング言語別総合ランキングはGolangが一位を獲得しました。今までGolangには興味あるけどなんとなく遠ざけてきた開発者の方は一度Tryしてみる価値はあるかもしれません。しかし入門者が始めるには敷居が高く、これからプログラミング言語を始める人はJava/Ruby/JavaScriptあたりが良いかもしれません。全体的にモダンな言語や用途が限定的ではあるが需要の高い言語が上位に来ており、既に得意になっている言語の延長で取り組めば効率よく年収アップが狙えるかと思います。
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