はじめに
因果推論・効果検証を継続的に学んでいる中で、良い本にいくつか出会ったので、他の学習者の方にもお勧めしたく、紹介します。
(因果推論という分野を全く知らないよ!という方には下記の記事の前半部分を読むことをお勧めします。)
https://comemo.nikkei.com/n/neec7d5c18666
私が読んだことのある本
私が読んだことのある本を紹介します。お勧め度も雑に5段階評価で付けました。時間が立つにつれて評価を変えるかもしれません。間違いやコメントあれば教えてください。
政策評価のための因果関係の見つけ方
この本は主に実証に基づいた政策作成(Evidence-Based Policy Making, EBPM)についての本で、例えば教育政策において割引のクーポンを国民に配るとどうなるか?といった題材を取り扱っています。元は論文なので少し説明が簡素ですが、説明すべき事項は多岐にわたっていて、因果推論を学びたい方で特に政策関連に興味のある人であればとっつきやすい本かと思います。本文自体ももちろん価値のあるものですが、私がお勧めしたいのは付随している訳者による解説で、本文の俯瞰にとどまらない補足事項もあり、是非読むことをお勧めします。
内容としては一般的なランダム化比較試験(RCT)の内容+実例を紹介しています。これ一冊で理論面は万全というわけにはいかないでしょうが、次の本にむけてのファーストステップとしてとても良い本だと思います。また、RCTがうまく使えない場合の事例や、実際に検証する際のサンプルサイズの推定など、実務向きの話もきっちりとかかれており、実際にRCTを用いる際に何を気をつければいいかという俯瞰図を得ることができる本です。これ一冊で完結!というわけにはいかないので、そこには注意が必要です。また、コーディング例などはないので手を動かせるようにはなりません、これも注意。お勧め度3。
効果検証入門
因果推論の中でもマーケティングよりの題材を扱っています。2020年に出たばかりの因果推論系の中では比較的新しい本です。実務でまず何を考慮すればいいかという点をきっちり扱っており、かつ理論をしっかりと扱っている点で他の本よりもバランスが取れている良い本だと感じました。また、コーディング例もRでしっかりと載っているので、手を動かしつつ学ぶことができるのが特に評価ポイントかと思います。pythonの場合の実装例もググればいくつか見つかります。例としては以下リンクなど。
差分の差分法(DID)や、傾向スコア、あるいは回帰不連続デザイン(RDD)など、RCT以外の手法に重きをおいてきちんと知りたいことが書かれているように思います。コードもさわりつつ、じっくり学ぶことでかならず自分の糧になるかと思います。今のところあまり不満な点はないです。実務でマーケティングよりの効果測定をしたい人ならこれをまず読むべきだと思います。お勧め度5。
この本で扱われているCausal Impactというパッケージについて、Qiitaにも良い紹介記事があったのでリンクを貼っておきます。
https://qiita.com/neuman71/items/342f56f31ac35b7532e5
私は物理の本というか、紙の本で読みました。Kindle版は以下のように脚注が読みにくいという話もあります。
gihyoはpdfやepubに力を入れていて、好感の持てる出版社なので、Kindleで買うくらいなら版元サイトから電子書籍を買うことを個人的にはお勧めします。
入門統計的因果推論
大御所Pearlによる言わずとしれた著書。中身は結構理論よりで、グラフィカルモデルや線形システムなど、数理よりの話が多いのが上二つとの違いかと思います。上二つよりも理論よりで、実務家ならば全部抑えておく必要はないかと思っていますが、手元に置いておいて損はないかと思います。万人にお勧めする本ではないかな、と思っています。因果推論でずっとご飯を食べて行こう、と思っている人や大学院生などであれば読むべきなのかな。お勧め度3。
岩波データサイエンス Vol.3
オムニバス形式に様々な話題が扱われています。日本の研究者たちによる本ですが、実装例が載っている章もあります。薄めの本で、記述も必然コンパクトになりますが、どの章もレベルが高く、理解に必要十分な記述が揃っている印象です。手元において、1章づつ手があいた時間に読んでいますが面白いです。様々な話題があって、理論よりの話もあれば実務よりの話もありますし、自分の興味が薄い章でも読んでみる価値があるかと思います。いろんな人に気楽に読んで欲しいと思う本です。お勧め度4。
施策デザインのための機械学習入門
効果検証の観点からは少し外れるかもしれないが、機械学習を中心に施策を改善する際の知見がまとまっている。機械学習以前の前段階のところの話が語られており、必ずしも機械学習を使わない場合でも有用なことが多々あると思う。実務よりの内容。
読んでみたい本
まだ読んでいない、時間を作って読んでみたい本たちをここに書いておきます。他にオススメがあればコメント下さい。また、読んだ際にはこの記事をアップデートいたしますので、興味のある方はストック等していただけると嬉しいです。計量経済学よりの本は特に読んでみたいです。また、お勧めあればおしえてください!
作りながら学ぶ!Pythonによる因果分析
著者による紹介記事がqiitaにもあるので貼っておきます。pythonで実装しながら因果推論を学べる書籍は他にあまりないので読んでみたいです。
What if
pdfでゲットできる英語の教科書。分量も多いですが説明もしっかりしており、扱う話題も豊富で、時系列データを扱う章もあり、読んでみたい本です。
SAS, Stata, python, Rでのコード例もサイトからリンクで辿れるようになっており(著者ではない人たちによるものですが、これも英語コミュニティの力か)、素晴らしい学習環境になっているようです。
実証分析入門
2014年刊行。章の副題をみるとクセがありそうですが、経済よりの本として読んでみたい本の一つ。紹介記事をみると数学が苦手でも大丈夫という記述がありました。
実証分析のための計量経済学
因果推論系の内容はすくなめのようですが、計量経済学も勉強してみたいです。
調査観察データの統計科学
岩波シリーズの中で読んでみたい本その2。
統計的因果推論
ピンクの本の前に挟むとよさそう。