はじめに
最近、スクラムの案件に取り組む中で、プロダクトオーナーの意思決定を促すことの難しさを実感しました。決定に迷いや遅れが生じることで、開発スケジュールに影響が出る場面もありました。そのため、意思決定をスムーズに進めるためのアプローチを模索し、先輩のフォローを受けながら調査・実践を重ねました。本記事では、その取り組みの記録と、意思決定を加速させるための具体的な手法を紹介します。
1. 意思決定の遅れを生む要因
プロダクトの仕様決定に時間がかかる要因は、大きく以下の3つに分けられます。
- 情報不足:判断に必要な情報が揃っていない。
- 選択肢の多さ:どの案を選ぶべきか迷う。
- リスクが不明確:決断した場合・しなかった場合の影響が見えにくい。
この課題を解決するために、以下のアプローチを実践しました。
2. 調査で分かった意思決定のアプローチ
(1) 選択肢を「二者択一」にする
「A案とB案のどちらが良いですか?」と問うよりも、
「A案で進めて問題ないでしょうか?もしB案が必要なら理由を教えてください」
のように提案型にすることで、意思決定のスピードを上げることができます。
(2) プロダクトオーナーの決定軸を整理する
プロダクトオーナーがどの基準で判断するのかを整理し、
- ユーザビリティを優先するのか?
- 品質を優先するのか?
- 開発コストを抑えるのか?
といった観点を明確にすると、適切な選択肢を示しやすくなります。
(3) リスクを見える化する
決断しないこと自体がリスクになるケースもあります。
例えば、
「他チームに影響する可能性があります」
「次のスプリントで開発できずリリースに影響します」
と影響力や期限を示すことで、意思決定を促せます。
3. プロジェクトでの実践事例
私が仕様検討を進める際には、次のポイントを意識しました。
(1) 一つの案を明確に提示する
仕様に複数の選択肢がある場合、限られた工数で実現可能かつユーザーのニーズを満たせる案を優先して提示しました。
特に主要な機能については、頻繁に使われるかを考え、ユーザーニーズを満たすかどうかを慎重に検討しました。
また、品質を重視するにあたり、影響範囲の把握、デグレーションリスクの抑制、およびメンテナンスコストの最小化を意識して提案しました。
(2) 仕様を決める専門家との対話を重視する
私は仕様の専門家ではないため、仕様に精通した人との対話を大切にしました。
その際、ユーザーストーリーの3C(Card, Conversation, Confirmation) を意識し、
- Conversation(会話) を通じて多角的な視点を取り入れる。
- プロトタイプを提示し、「実際に触ってみるとどうか?」と問いかける。
といったアプローチを取りました。
(3) 他の案を選ばなかった理由を用意する
選択しなかった案についても、明確な理由を整理しておくことが重要です。
- 技術的に実現が困難
- 工数的に間に合わない
- ユーザーのニーズに合わない
こうした説明を準備しておくことで、プロダクトや関係者との合意形成がスムーズになりました。
(4) 要求や仕様書を“絶対”と考えない
プロダクトに仕様書が存在する場合、開発者の多くはそれを神様のように絶対的なものと考えがちです。しかし、あくまで人間が作ったものであり、常に改善の余地があります。
「できないこと」を批判されるのではなく、別の方法を提案できるかが重要です。
4. スクラムの特性を活かす
スクラムの特性を最大限に活かし、
- 仕様考案者と開発者が切磋琢磨する
- 対話を重視し、柔軟に仕様を調整する
- リスクと判断軸を整理し、プロダクトオーナーの意思決定をサポートする
こうした取り組みを通じて、より良いプロダクトを作れることを実感しました。
仕様決定に悩むプロダクトオーナーにとって、開発者が適切な情報を提供することが、意思決定を加速させる鍵になるのではないでしょうか?