はじめに
AWS Route 53 には複数のルーティングポリシーがありますが、中でもレイテンシーベースルーティング(Latency Based Routing, LBR) と 位置情報ルーティング(Geolocation Routing) は名前が似ていて混乱しがちです。
本記事では、この2つの判断基準の違いと使い分けを解説します。
1. ざっくり概要
ルーティングポリシー |
判定の基準 |
ゴール |
主な用途 |
レイテンシーベース |
AWS が測定したネットワーク遅延
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最も速い応答を返す |
グローバル配信の体感速度最適化 |
位置情報 |
クライアント IP の地理的位置
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地域固定の振り分け |
規制/言語/キャンペーンなどの地域別制御 |
2. レイテンシーベースルーティング(Latency Based Routing)
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判定基準:ユーザーと各AWSリージョン間の推定ネットワーク遅延(AWSの計測)。
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利点:常に最短レイテンシーのリージョンを選択し、体感速度を最大化。
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注意点:物理距離ではなく通信速度で判断。遅延値はリアルタイム計測ではない。
3. 位置情報ルーティング(Geolocation Routing)
-
判定基準:DNSクエリ送信元IPの地理的な位置(大陸/国/州)。
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利点:地域別コンテンツや規制対応を安定して行える。
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注意点:遅延は考慮されない。VPNやプロキシで誤判定の可能性あり。
4. 主な違いまとめ
項目 |
レイテンシーベース |
位置情報 |
判定基準 |
ネットワーク遅延 |
IPの地理的位置 |
ゴール |
最速応答 |
地域固定の応答 |
ユースケース |
グローバル高速配信 |
地域別コンテンツ・規制対応 |
注意点 |
遅延計測はAWS基準 |
VPNやIP精度の影響あり |
5. 使い分けのヒント
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パフォーマンス優先 → レイテンシーベース
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地域別制御 → 位置情報
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合わせ技 → まず位置情報で大陸別に振り分け、その中でレイテンシーベースで最速リージョンを選択。
6. まとめ
- レイテンシーベース:速さ重視
- 位置情報:場所重視
- 要件によって使い分け、または組み合わせることで、グローバルなユーザー体験を最適化できる。
参考
AWS公式: Latency Based Routing