IDプロバイダーの主なサービス・製品一覧
No | サービス・製品名 | 特徴 | 使用例 |
---|---|---|---|
1 | Amazon Cognito | AWSのクラウド基盤でスケーラブルな認証を提供 | AWSベースのウェブアプリケーション、API認証 |
2 | Google Identity Platform | Googleアカウントと連携可能。OIDCに対応 | Google Workspaceやモバイルアプリの認証 |
3 | Azure Active Directory | Microsoftの企業向けID管理サービス | Windowsログイン、シングルサインオン |
4 | Okta | 多くのプロトコルをサポート。カスタマイズ性高い | Webアプリや企業内SSOの実装 |
5 | Auth0 | フレキシビリティの高いIDプロバイダー | クラウドネイティブアプリの認証 |
6 | Ping Identity | SAML、OIDC、OAuthを完全サポート | 大規模企業のユーザ管理 |
7 | Keycloak | オープンソースで無料。OIDC、SAMLに対応 | OSSプロジェクトの認証 |
8 | IBM Security Verify | IBMのID・アクセス管理ソリューション | 大規模エンタープライズ向けソリューション |
1. 初期の認証システム (1970年代〜1990年代)
時代背景
- インターネットが一般的ではなく、ネットワークは閉じた企業内LANや大学のネットワークで使用されていた。
- 初期の認証はシンプルで、ユーザー名とパスワードによる認証が主流。
特徴
- 各システムが独自の認証方式を持ち、分散管理されていた。
- 主にUNIXやメインフレーム環境で、PAM (Pluggable Authentication Modules) のような認証フレームワークが登場。
- セキュリティの問題:
- ユーザーはシステムごとに別々のパスワードを管理する必要があった。
- パスワードの平文保存や監聴のリスクが高かった。
2. ディレクトリサービスの登場 (1990年代〜2000年代初頭)
時代背景
- ネットワークが広がり、複数のシステムを一元的に管理する必要性が増加。
- クライアントサーバーモデルが普及し、組織内でユーザ管理を統合する取り組みが始まる。
重要な技術
-
LDAP (Lightweight Directory Access Protocol)
- 1993年に登場したディレクトリプロトコル。
- ユーザ情報を一元的に管理する仕組みを提供。
- システム全体で共通のユーザデータを利用可能に。
-
Active Directory (AD)
- 1999年、MicrosoftがActive Directory (AD) をリリース。
- LDAPをベースにしたディレクトリサービスで、ユーザ認証を一元管理。
- Windows環境でのシングルサインオン (SSO) の基盤を提供。
特徴
- システムごとに分散していたユーザ管理が統合される。
- シングルサインオンの基盤となるディレクトリサービスが登場。
3. アイデンティティ連携とSAMLの登場 (2000年代中直〜)
時代背景
- Webアプリケーションが急速に普及し、企業やサービス間での認証情報の共有が必要になる。
- 1つのIDで複数のサービスにアクセスする仕組み (Federated Identity, フェデレーション) が重要に。
重要な技術
-
SAML (Security Assertion Markup Language)
- 2002年にOASISにより標準化されたフェデレーションプロトコル。
- XML形式のアサーション (認証情報) を利用して、IDプロバイダーからサービスプロバイダーにユーザ情報を渡す。
- シングルサインオン (SSO) を実現。
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Kerberos
- ネットワーク認証プロトコルで、Windows環境やSAMLの基盤に採用。
- パスワードを直接送信せず、トークン (チケット) を用いて認証を行う仕組み。
特徴
- IDプロバイダー (IdP) という概念が明確化され、組織内外で認証情報を共有可能に。
- 初期のIDプロバイダーは、LDAPやSAMLに基づくシステムとして構築。
4. OAuth 2.0とOpenID Connectの台頭(2010年代)
時代背景
- モバイルアプリケーションやクラウドサービスが爆発的に普及。
- フェデレーションを簡素化し、より柔軟な認証方式が求められるようになる。
重要な技術
-
OAuth 2.0 (2012年)
- 認証そのものではなく、リソースへのアクセス許可を管理するプロトコル。
- 「アクセストークン」を発行し、外部サービスがそのトークンを使ってリソースにアクセスする仕組み。
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OpenID Connect (OIDC) (2014年)
- OAuth 2.0の拡張として、認証そのものを扱うためのプロトコル。
- JWT (JSON Web Token) を利用して、簡素かつセキュアな認証を実現。
- OIDCは、フェデレーションやシングルサインオンを容易にする。
特徴
- OIDCの登場により、IDプロバイダーがAPIやモバイルアプリケーションと統合しやすくなる。
- Google、Facebook、Amazonなどの大手クラウドプロバイダーが、OIDCに基づくIDプロバイダーを提供。
5. 現在のIDプロバイダー(2020年代)
時代背景
- クラウドネイティブアーキテクチャの普及に伴い、IDプロバイダーがさらに進化。
- ゼロトラストセキュリティの重要性が高まる。
重要な技術とトレンド
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クラウドベースのIDプロバイダー
- AWS Cognito、Okta、Auth0などが台頭。
- クラウド環境でスケーラブルかつセキュアな認証を提供。
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ゼロトラストセキュリティ
- 「常に疑う」モデルで、ネットワーク内外を問わず、すべてのアクセスに対して認証を要求。
- IDプロバイダーがゼロトラストセキュリティの中核を担う。
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多要素認証 (MFA) の標準化
- パスワードだけでなく、SMSコードや生体認証 (指紋、顔認証) を組み合わせた認証が一般化。
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分散型アイデンティティ
- ユーザー自身がIDを管理する概念 (例: Self-Sovereign Identity)。
- ブロックチェーン技術を寸用した新しい認証モデル。
IDプロバイダーの進化のまとめ
- 1970-1990年代: 各システムが独自の認証を実施。認証情報は分散管理。
- 1990-2000年代: LDAPやActive Directoryの登場で認証の統一化が進む。
- 2000年代中直: SAMLやフェデレーション技術で、複数システム間の認証共有が可能に。
- 2010年代: OAuth 2.0とOpenID Connectの登場で、モバイルやクラウドサービスとの統合が容易に。
- 2020年代: クラウドネイティブとゼロトラストセキュリティに対応したIDプロバイダーが普及。
現代におけるIDプロバイダーの位置付け
IDプロバイダーは、クラウド、モバイル、IoT環境のセキュリティを支える中核的な存在となっており、企業や個人のデジタルセキュリティにおいて不可欠な役割を担っています。今後はAIやブロックチェーンの導入による新たな進化が期待されています。