プロジェクトを進めていると、パワポを作る機会は本当に多いですよね。
提案資料、進捗報告、投資の意思決定……気づけば、毎日のようにスライドと格闘している、なんてこともあるのではないでしょうか。Excelと比べても作るのに時間がかかって大変ですよね。。
ちなみに、実際の現場では、こんな"あるある"が起きがちです。
- 情報をたくさん詰め込んだのに、「で、結局何が言いたいの?」と言われてしまった
- 一生懸命作ったのに、レビューで大幅な作り直しを指示された
- 資料の量には自信があるのに、なぜか承認が下りなかった
本当は、「ちゃんと伝わる資料を作れるようになりたい」と思っているはずです。でも、何が足りないのか、どこを直せばいいのか、なかなかつかめない。
この記事では、そんな悩みを解決するためのスライドの基本構造と5つの作成ステップを、具体的なケースを使いながら解説します。
この記事でわかること
- スライドを作る目的の本質
- 効果的なスライドの4つの基本構造
- 人を動かすスライドを作る5ステップ
- 作成時に意識すべき3つのポイント
スライドを作る目的は「人を動かすこと」
スライドを作る目的は、情報をきれいに整理することではありません。
大事なのは、読み手に「行動を起こしてもらうこと」です。
- 承認を取る
- 共有して認識を合わせる
- 判断を促す
いずれも「相手が何らかの行動を取ること」がゴールです。スライドはそのための手段です。
スライドを作る目的
読み手に期待通りの行動を取ってもらうこと
この視点が抜けると、「情報量は多いのに伝わらないスライド」が生まれます。
なので、スライドを作るときは「相手にどんな行動を取ってほしいか?」を決め、そのために必要な情報をまとめていくことが大事です。
スライドの基本構造を理解する
効果的なスライドを作るために、まず「1枚のスライドが何でできているか」を理解するところから始めましょう!
基本構造は次の4つです。
| 構成要素 | 役割 | ポイント |
|---|---|---|
| タイトル | そのスライドに何が書いてあるかを端的に示す | 「何のスライドか」がひと目でわかる |
| メッセージライン | 主張+ボディ全体の要約。最重要セクション | ここだけ読んでも意図が伝わる |
| ボディ | メッセージラインを補足する情報を載せる | グラフ・図・箇条書きなど |
| 補足 | スライドのまとめや次スライドへの接続 | なくてもよい |
中でもメッセージラインが最も重要です。
「このスライドで一番伝えたいこと」を1文で書きます。読み手はまずここを読みます。ここが曖昧だと、ボディをいくら作り込んでも「何が言いたいの?」になってしまいます。
メッセージラインによくある失敗
- 事実をそのまま書いてしまう(「売上が減少している」)← 解釈・主張がない
- 長すぎて読み手が一瞬で理解できない
- 「〇〇は以下の通り」とボディに誘導してるだけ
メッセージラインには主張・解釈・結論を書きます。
現場でよくあるのはメッセージラインに「今後のスケジュールは以下の通り」のような「以下の通り」と記載してあるケースです。これはNG。メッセージラインとしては何も主張してなくて、ただ「下を読んでね」と誘導しているだけ。これは何も書いていないのと同じです。
この1枚のスライドを通して、読み手に伝えたいことを凝縮して1文にするのは非常に難しいです。だからこそ、しっかり考える価値のある最重要セクションなのです。
人を動かすスライドの作り方
スライドの構造を理解したら、次は「どう作るか」です。ここからは「IT投資の決裁を得る」という具体的なケースを例に取りながら、5つのステップで解説します。
ポイントは、いきなりパワポを作らないことです!順番に解説します。
STEP1:スライドのゴールを定義する
スライドを作る目的は、読み手に期待通りの行動を取ってもらうことでしたね!
なので、スライドを作る前に、まずゴールを言語化します。決めるのは次の3つです。
- 読み手:誰がこのスライドを見るか?
- 期待行動:相手に取ってほしい行動は何か?
- 実行条件:その行動を取るために、相手が必要とする情報は何か?
最初に考えるのは「読み手は誰か?」です。プレゼン相手が1人のこともあれば、複数になることもあります。今回の「IT投資の決裁を得る」というケースであれば、投資決裁をする人が読み手です。事業側とIT側の両者の決裁が必要であれば二人になることもあります。
次に考えるのは、相手に期待する行動です。資料を作るからには、それを読んでもらい(聞いてもらい)、なんらかのアクションを期待しているはずです。今回のケースであれば、「IT投資を承認してほしい」というのが期待する行動ですね。なので、この行動をしてもらうためにスライドを使って説得を試みるわけです。
最後に考えるのが、実行条件です。相手に期待する行動を取ってほしいのですが、どうすればその行動を取ってくれるのか?その条件はなにか?を考えます。今回のケースであれば、投資対効果があり、リスクも適切であれば、投資は承認されるだろうと仮定します。ここで考えた条件を満たすように、スライドを使って情報を伝えていきます。
ここまでをまとめると、こんな感じです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み手 | IT投資の決裁者(CTO・事業責任者) |
| 期待行動 | 投資の承認(Yes/Noの決断) |
| 実行条件 | 投資額・期待効果(ROI)・リスクが判断できること |
もし余裕があれば、読み手についてはリサーチしていくことも重要です。例えば、こんなことを調べます。
- 前提知識はどれくらいあるか?
- 判断するときに気にするポイントはどこか?
ITに詳しい人にはシステム用語を使っても大丈夫ですが、ITの前提知識がない人には難しい言葉を使ってはいけません。余計なツッコミが増えるだけです。相手の言葉をつかって話す、というのは重要です。
STEP2:論理構造を設計する
ゴールが決まったら、相手が納得して行動するための論理を組みます。
期待する行動を取ってもらうには、内容を説明し、納得感を作り出し、行動してもらうというプロセスを踏みます。そして、納得感を作り出すために必要になってくるのが論理です。
論理とは、情報のつながりです。単発の情報を乱射するのではなく、論理的なつながりをもって情報を伝達していくことで、納得感を作り出す確率が高まります。
例えば、IT投資決裁を得るケースで考えてみましょう。
論理がないパターン
- 〇〇というツールを入れたいと思っています
- 導入スケジュールはこんな感じです
- 使える機能はこんな感じです
- ちなみに、〇〇円かかります
- Appendix:現場の課題感
論理があるパターン
- 現状、当部門にはXXという課題があります
- その課題の解決のためにこういう方針を取ります
- そして、その方針を実現するためには、こんな機能が必要です
- その機能を実現するために〇〇というツールを入れたいと思っています
- 使える機能はこんな感じで、こういう効果が期待できます
- トータルコストとスケジュールはこんな感じです
「納得してもらう」ためには、相手が自然に「Yes」と言いたくなるストーリーを設計する必要があります。このストーリーを論理と呼びます。そして、これが最も難しく、最も重要な工程です。
IT投資決裁の場合、ストーリー構成をつくるならこんな感じです。
- 現状の課題(なぜ今、投資が必要なのか)
- 解決策の概要(何をするのか)
- 投資額(いくらかかるか)
- 期待効果・ROI(何が変わるか、元は取れるか)
- リスクと対策(どんなリスクがあり、どう備えるか)
- 意思決定のお願い(いつまでに決めてほしいか)
この流れに沿って情報が積み上がれば、読み手は自然に「判断できる状態」になります。逆に言えば、ストーリーが崩れているスライドは、情報量がいくら多くても判断できません。
STEP3:骨格を作る
ここからは、実際にパワポを開いて作業していきます。ただ、いきなりボディを作り込む前に、まずは骨格だけを作ります。
やることは、パワポを開き、タイトルとメッセージラインだけを全スライド分入力します。
ボディはまだ作りません。まず骨格だけを並べて、論理が破綻していないかを確認します。
IT投資決裁の場合はこんな感じに骨格を作っていきます。(MLはメッセージライン)
スライド1: 投資の背景 / ML:「XXシステムの老朽化により、年間〇〇件の障害が発生している」
スライド2: 解決策と投資額 / ML:「システム刷新により、投資額〇〇百万円で問題を根本解決できる」
スライド3: 期待効果 / ML:「3年以内にROI〇〇%を達成し、運用コストを〇〇%削減できる」
スライド4: リスクと対策 / ML:「主なリスクは移行期間中の業務負荷で、並行稼働で対処する」
スライド5: 意思決定のお願い / ML:「今月中に承認いただくことで、来期からの効果創出が可能になる」
メッセージラインだけを順番に読んで、ストーリーとして成立しているかをチェックします。ここで違和感があれば、ボディを作る前に修正します。
骨格チェックのポイント
・メッセージラインだけを順番に読んで意味が通じるか?
・「だから次のスライドへ」という流れになっているか?
・スライドの順序を変えたくなる感覚はないか?
STEP4:ボディを仕上げる
骨格が固まったら、いよいよボディを作り込みます。
ここでの鉄則は**「メッセージラインの補足情報だけを入れる」**こと。
メッセージラインで主張したことを、グラフ・図・箇条書きなどで「証明・補足」するのがボディの役割です。メッセージラインと関係のない情報は、どれだけ正確でも入れません。言い換えると、メッセージラインがボディの要約になっているという状態を作るとも言えます。
IT投資決裁のケースで、最初の「投資の背景」のスライドであればこんな感じにします。
「XXシステムの老朽化により、年間〇〇件の障害が発生している」というメッセージラインにする場合、それを補足する内容だけをボディに書きます。
確かに、ユーザビリティや保守のコストもネガティブ要素として伝えたくなるのはわかります。ただ、そうするのであれば、メッセージラインも書き換えてあげる必要があります。
例えば、「XXシステムの老朽化により、障害件数、ユーザビリティ、保守コストと複数の観点から問題が発生」のようにすると、メッセージラインとボディの整合がとれます。
STEP5:全体を見直す
最後に、全体を通して見直します。チェックポイントは2つです。
① メッセージラインとボディの整合性
ボディを見たとき、「このメッセージラインを言うためにこのボディがある」と自然に思えるか。メッセージラインとボディが噛み合っていないスライドは、読み手に「で、何が言いたいの?」を生みます。
② ノイズになっている情報はないか
「このスライドに絶対必要か?」と問いかけて、答えが「念のため入れておいた」なら削除します。ノイズが多いほど、読み手の注意が本来伝えたいことから逸れます。
ノイズを減らす3つのポイント
論理構造が整ったら、次は「見た目のノイズ」を減らします。
ノイズとは、読み手の注意を本来伝えたいことから逸らすすべての要素です。内容がどれだけ良くても、ノイズが多いスライドは「なんか見づらい」という印象を与え、集中力を削ぎます。
スライドを作る目的は、相手に期待する行動を取ってもらうことでした。なので、そのためにスライドを使って情報を伝えるのですが、その本筋以外のところに気が行ってしまっては、こちらの狙いが達成できません。そうならないように、余計なところに相手の気が回らないように、見た目にも配慮していきましょう。
① オブジェクトを揃える
オブジェクトの配置・配色・フォント・フォントサイズを統一します。
揃っていないスライドは、内容以前に「見た目の違和感」が気になります。伝えたいメッセージより先に「ここズレてる」が気になってしまいます。配置はパワポの整列機能を使えば簡単に揃います。特にオブジェクトを使って表を組んでいる場合は、気をつけましょう!
フォントやフォントサイズも、揃えます。スライドによってフォントが違ったり、場所によってフォントサイズが異なっているスライドをよく見かけます。そういったスライドは、切り貼りして作ったんだろうなとか、細かいところまで気が利かない人なんだなという印象を与えます。(事実はどうあれ)
スライドマスターの機能も使って、全体としての統一感をもたせるようにしましょう。
② 情報量を減らす
1スライド1メッセージを徹底します。
「念のため入れておこう」という情報は削除します。Appendixも極力つけません。Appendixがあると、本題とは関係のない質問が生まれ、承認の議論からズレていくことがあります。
読み手に期待する行動を思い出し、その行動に必要な情報だけを残す。この判断基準をもとに、情報を削っていきましょう。
そもそも、たくさんの文字を読みたい人は少ないはずです。たくさんの情報を投げつけるのは、相手に失礼でもあります。たくさんの情報処理を、読み手に押し付けているわけですから。
スコープと対応方針という2つを一気に伝えようとしているのでNG。それぞれ別の話なので、スライドを分けること。
③ フッターを整える
細かい話ですが、スライド番号やコピーライト表記も統一します。
フッターが揃っていないと、細部へのこだわりがない印象を与えます。見る人は見ています。ノイズを徹底して排除する姿勢が、読み手への配慮になります。
【実体験】承認者が見た「伝わらないスライド」
ここまで「どう作るか」を解説してきました。最後に、私が承認者として実際に体験した「伝わらなかったスライド」の話を紹介します。
あるシステム改修プロジェクトの投資決裁の場でのことです。
担当者から資料の説明を受けたのですが、スライドは次のような内容でした。
- 改修するシステムの背景説明が長い(しかも、複数の資料を寄せ集めたため、全体が不揃い)
- 改修後のシステム構成や要件の詳細が数十枚(ベンダー資料の切り貼り)
- 情報量は確かに多い。でも、投資額とそれに見合うリターンの説明が極めて薄い
私は「結局、これに投資してどんないいことがあるの?」と質問してみました。でも、担当者から、納得できる答えは返ってきませんでした。結果として、投資決裁はNGとしました。
このスライドの問題は、情報量ではありません。むしろ情報量はとても多かった。そうではなく、ゴールの定義がなかったことです。
「投資決裁を得る」というゴールに対して、決裁者が必要とする情報(投資額・ROI・リスク)が整理されていなかった。ゴールが定義されていないから「何を入れるべきか」の判断もできず、結果として「とりあえず全部入れる」になってしまったのだと思います。
「情報が多い=丁寧」ではありません。
ゴールに必要な情報が揃っているかどうかが、スライドの質を決めます。
まとめ
人を動かすスライドを作るために、押さえておきたいポイントをまとめます。
- スライドの目的は情報整理ではなく、読み手に行動を起こしてもらうこと
- 1枚のスライドはタイトル・メッセージライン・ボディ・補足の4構成でできている
- 作成は5ステップで進める:ゴール定義 → 論理設計 → 骨格作成 → ボディ仕上げ → 全体見直し
- 骨格(メッセージライン)から作ることで、論理の破綻を早期に発見できる
- ノイズを減らすことが、伝えたいことへの集中を生む
スライドを作ろうと思ったら、いきなりパワポを開いてしまうのもわかります!でも、そこはぐっとこらえて、まずは次の3つを考えるところからスタートしましょう。
スライド作成で最初に問うべき3つの問い
- 誰に見せるのか?(読み手)
- 何をしてほしいのか?(期待行動)
- そのために何が必要か?(実行条件)
あとは、構成を守って最低限の情報でスライドを作っていけば大丈夫です。スカスカかな?と思うくらいが、実はちょうどいいものです。
おまけ:NGパターン
NG① 情報量が多すぎる
「念のため全部入れておこう」という資料を作ってしまいがちです。相手が何を質問してくるかわからないし、Appendixもたくさんつけておこうと。でも、それは逆効果です!
- 文字がびっしり、グラフもたくさん、スライドが100枚超
- こちらが持っている情報をそのままぶつけている状態
- 読み手はどこを読み、何を判断すればいいかわからない
結果として「で、何が言いたいの?」が生まれます。情報量ではなく、読み手の期待行動に必要な情報だけを入れるという判断基準を持つことが解決策です。情報を絞ることは、相手への配慮でもあります。読むことはストレスですから。
NG② 見た目が汚い
オブジェクトの位置がバラバラ、フォントがスライドごとに違う、配色に一貫性がない。
- 論理以前に見た目の違和感が先に来る
- 読み手の注意が「内容」ではなく「ズレ」に向いてしまう
見た目が汚いスライドは、中身への信頼も下がります。「この人、ちゃんと考えてるのかな」という印象につながりやすい。私は実務では、スライドの見た目や構成で、その人のレベル感を判断しています。
解決策はシンプルで、とにかく揃えること。フォント・配色・配置のルールを決め、全スライドで統一します。
NG③ 情報がつながっていない
各スライドが独立していて、全体のストーリーが見えない。プレゼンしたときもスライド間のつながりがなく、聞き手も内容の理解に苦しみます。
- スライドを順番に読んでも、「で、何が言いたかったの?」となる
- メッセージラインだけを抜き出しても文脈が繋がらない
これはSTEP2(論理構造の設計)をスキップして、いきなりスライドを作り始めたときに起こります。解決策はゴールを決め、論理構造を設計してからスライドを作ること。骨格(タイトル+メッセージライン)だけで全体が流れるかチェックしてから、ボディを作り込む順序を守ることです。
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