ITコンサルを入れたい。でも、何をどう依頼すればいいのか分からない。
こんな悩み、IT企画やプロジェクトの立ち上げに関わる方なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
「DXを推進したい」「業務を効率化したい」という話は出ている。
でも、具体的に何をどう進めればいいか分からない。
とりあえずコンサルに相談すれば、なんとかしてくれるのでは……?
この「なんとかしてくれるのでは」という期待が、実はコンサル活用がうまくいかない最大の原因だったりします。
この記事では、ITコンサルの本質的な役割から、依頼の仕方、うまく活用するためのポイントまでを、発注者の視点で解説します。
この記事でわかること
- ITコンサルの本質的な役割
- 依頼していいこと・ダメなこと
- 依頼前に準備すべき3つのポイント
- コンサルをうまく活用するための姿勢
ITコンサルとは「整理屋」である
コンサルの本質は「相談に乗り、整理すること」
そもそも「コンサルタント」とは何者なのでしょうか。
語源は英語の "Consult"、つまり「相談する」です。クライアントの相談に乗り、困りごとを整理し、解決策を提案する。これがコンサルタントの本質です。
ITコンサルも同様です。ITに関する困りごとに対して、整理・分析・提案を行うのが基本的な役割です。
つまり、ITコンサルは物事を整理する 整理屋 なのです。
ITコンサルも多様化している
ただし、最近のコンサル企業は多様化しています。
- 戦略コンサル:経営戦略・IT戦略の策定支援
- 総合コンサル:戦略から実行まで幅広くカバー
- ITコンサル:システム導入・PMO・技術選定
アクセンチュアのように、コンサルティングだけでなくSI(システム開発)や保守運用までカバーしている企業もあります。本来の「整理」だけでなく、それ以降のフェーズまで取りに来ているコンサルも多いです。
ただし、ベースは「整理」
多様化しているとはいえ、どのタイプのコンサルでも共通しているのは、クライアントの困りごとを整理し、解決策を提案する という点です。
ここで重要なのは、本来コンサルの仕事は「整理して提案する」までだということ。
何かを「決めること」は、発注者であるクライアント側の仕事 です。
コンサルの商売が手広くなってきているので誤解しがちですが、この「整理屋」という役割を正しく理解しておくことが、コンサル活用の出発点になります。
ITコンサルに依頼していいこと・ダメなこと
コンサルの役割が「整理屋」だと分かると、何を依頼していいか・ダメかの判断もしやすくなります。
OK:企画・要件定義などの「支援」
コンサルに依頼して効果が出やすいのは、あくまで「支援」としての依頼です。
- 現状の課題を整理してほしい
- 対応策の選択肢を洗い出してほしい
- 要件定義の進め方をサポートしてほしい
こうした形で、部分的に作業を切り出してサポートしてもらう のが正しい使い方です。
発注者側に「こういう状態にしたい」という意志があり、そこに向かうプロセスをコンサルが支援する。この関係が成り立っているときに、コンサルは最大限の力を発揮します。
NG:企画・要件定義などの「代行」
一方で、避けるべきなのが「代行」としての依頼です。
- 全部お任せで、いい感じにまとめてほしい
- 何を作ればいいか、決めてほしい
- 社内の調整も含めて全部やってほしい
こうした丸投げは、うまくいきません。
なぜなら、コンサルは受注側であり、基本的に決定権を持っていない からです。社内の文脈や力関係、事業の方向性は発注者側にしか分かりません。
「全部代わりに決めてほしい」は、コンサルにはできないのです。
IT企画の現場では、困りごとをたくさん並べてくるケースはよくあります。しかし、「それで一体何がしたいのか?」「事業にどういい影響を与えるのか?」に答えられないまま依頼が来ることも少なくありません。目的やゴールが曖昧だと、課題解決の方向性そのものが定まらず、コンサルも動きにくくなります。
「支援」と「代行」の線引きを意識するだけで、コンサルとの関係は大きく変わります。
ITコンサルへの依頼の仕方
コンサルに依頼する前に、発注者側で準備しておきたいことがあります。
完璧に整理する必要はありません。ただ、次の3つを言語化しておくだけで、コンサルとの初回の会話がまったく違うものになります。
STEP1:困りごとの言語化
コンサルに依頼したいということは、何かしらの困りごとがあるはずです。
まずは、それを言葉にしてみましょう。
- 業務が属人化していて、引き継ぎができない
- システムが老朽化していて、改修コストが膨らんでいる
- DXを推進したいが、何から手をつければいいか分からない
このレベルで十分です。きれいに整理できていなくても構いません。整理するのはコンサルの仕事でもあるからです。
大事なのは、「困っている」という事実を言語化しておくことです。社内で人によって答えが違うなら、まず認識を揃えることが先決です。
STEP2:理想の言語化
次に、困りごとが解決された理想の状態を言語化します。
- 誰でも業務を引き継げる状態にしたい
- システムの保守コストを半分以下に抑えたい
- 3年後にはデジタルで業務が回る体制を作りたい
ここが曖昧なままだと、コンサルを入れても成果が出にくくなります。
困ってはいるけど、最終的にどうなりたいのか? この問いに対する答えが、コンサルの整理作業の方向性を決めます。
もちろん、ここも完璧に定義できなくてOKです。「だいたいこういう方向」くらいでも、あるのとないのとでは大きな差があります。多くの場合、ここが曖昧なまま走り出すと、うまくいかないケースが多いです。
STEP3:支援内容の言語化
最後に、コンサルに何をしてほしいのかを言語化します。
- 現状の業務を可視化してほしい
- 課題の優先順位を整理してほしい
- 要件定義の進め方を一緒に設計してほしい
ここでは、成果物も併せて言語化できるとさらに良いです。
- 「業務フローの可視化」→ 成果物:業務フロー図
- 「課題の優先順位整理」→ 成果物:課題・対応方針一覧
もし「何ができるか分からない」という状態であれば、それをそのまま伝えてOKです。「何ができるかを提案してほしい」という依頼の仕方もあります。
依頼前に準備する3点セット
- 困りごと :何に困っているのか
- 理想 :どうなりたいのか
- 支援内容 :何をしてほしいのか
完璧に整理できなくても大丈夫。この3点が「ある」だけで、コンサルとの最初の会話が変わります。
ITコンサルをうまく使うポイント
依頼の準備ができたら、次はコンサルとの「付き合い方」です。
IT企画の現場にいると、コンサルを入れたのにうまくいかないケースを目にすることがあります。多くの場合、コンサルの能力の問題ではなく、発注側の姿勢や体制に原因があることがほとんどです。
ここでは、コンサルをうまく活用するために発注者側が意識すべきポイントを3つ紹介します。
① 意思決定はこちらでやる
コンサルはあくまで支援役です。整理し、選択肢を提案してくれますが、最終的に決めるのは発注者側です。
ここを曖昧にしたまま進むと、「コンサルが決めたんでしょ?」「いや、そちらが承認したはず」といった責任の所在が曖昧になり、プロジェクトが停滞します。
特に重要なのは、社内の意思統一です。
コンサルが素晴らしい提案をしてくれても、社内で「そもそも目的が共有されていない」「部門間で認識が揃っていない」状態だと、何も前に進みません。
実際に、社内のデータ活用施策でコンサルを入れたケースがありました。困りごとは明確で、「データがバラバラで活用できていない」。コンサルは情報の整理を進めてくれていましたが、肝心の「データを活用して何がしたいのか?」が社内で決まっていませんでした。
コンサルは整理を続けるものの、ゴールが定まっていないので、いつまでも整理が終わらない。整理した先の課題解決の方向性も定まらない。結果として、コンサルの稼働だけが積み上がっていく状態になっていました。
困りごとはたくさんあるのに、「結局どうしたいのか」が定まっていない。この状態でコンサルを入れても、整理した結果を誰も判断できず、プロジェクトが宙に浮いてしまいます。
コンサルに依頼する前に、まず社内で「何のためにやるのか」の認識を揃えること。地味ですが、これがコンサル活用の成否を分ける最大のポイントだと感じています。
② 役割分担を定義する
コンサルは、すべてを代行してくれるわけではありません。
やろうと思えば対応してくれる場合もありますが、社内の情報・文脈・人脈にアクセスできない ため、精度は上がりません。
例えば、
- 業務フローのヒアリング → 現場のキーマンを知っているのは社内の人
- 経営層への説明資料 → 社内の意思決定プロセスを知っているのは社内の人
- ステークホルダーとの調整 → 社内の力関係を知っているのは社内の人
こうした「社内にしかできないこと」と「コンサルに任せるべきこと」を明確にして、協業の形を作ることが重要です。
役割分担のポイント
- コンサル :整理・分析・提案・成果物の作成支援
- 発注者 :情報提供・社内調整・意思決定・ステークホルダーマネジメント
③ こちらも工数を出す
「発注したから、あとは成果物を待つ」というスタンスはNGです。
コンサルが成果を出すためには、発注者側のサポートが不可欠です。
- 社内の情報を提供する
- 必要な人をつなぐ
- レビューやフィードバックを返す
こうした形で、自社のリソースを提供し、コンサルのアウトプット作成を支える姿勢が必要です。
業務プロセスの整理でコンサルを入れたケースでは、発注者側がヒアリングや資料提供に時間を割けていませんでした。既存の業務フローも整理しないまま渡して、読み解きからコンサルに任せることになった結果、コンサル側の工数が膨らみ、本来やるべき分析や提案に手が回らない状況に。
既存業務を一番よく知っているのは発注者側です。完璧でなくても、可能な限り整理したり、補足説明を添えてから渡すだけで、コンサルのアウトプットの精度とスピードは格段に上がります。
コンサルとの関係は「発注者と受注者」ではありますが、プロジェクトを成功させるという意味では パートナー です。両者が協力し合うことが、前に進むためには不可欠。一緒に成果を作るという意識で向き合うことが、結果的に最もコストパフォーマンスの高い活用方法になります。
まとめ
この記事では、ITコンサルの役割から依頼の仕方、うまく活用するためのポイントまでを解説してきました。
改めて、重要なポイントを振り返ります。
ITコンサルは何でもやってくれる魔法使いではありません。クライアントの困りごとを整理し、解決策を提案する 整理屋 です。
そして、整理屋を活かすも殺すも、発注者側の準備と姿勢次第です。
依頼前に準備する3点セット
- 困りごと :何に困っているのか
- 理想 :どうなりたいのか
- 支援内容 :何をしてほしいのか
うまく活用するための3つのポイント
- 意思決定はこちらでやる (特に社内の意思統一が重要)
- 役割分担を定義する (社内にしかできないことを明確に)
- こちらも工数を出す (パートナーとして一緒に作る姿勢)
コンサルに依頼する前に、まず「自分たちは何がしたいのか」を言語化してみてください。完璧でなくて構いません。
それが、コンサル活用を成功に導く最大の準備になります!
おまけ:NGパターン
最後に、コンサル活用がうまくいかない典型パターンを3つ紹介します。「見覚えがある」と思ったら、立ち止まるサインです。
NG① ゴールがないまま依頼する
「とりあえず困っているから」とコンサルに発注するケースです。
困りごとはある。でも、どうなりたいかの意志が発注者側にない。
- 困りごとは大量に出てくるが、目的が定まっていない
- コンサルが整理しても、良し悪しを判断する基準がない
意志がないまま任せても、出来上がったアウトプットの良し悪しを判断できません。「なんか違う」と感じても、「何が違うのか」を言語化できない状態に陥ります。
依頼の前に、「最終的にどうなっていたいか」をざっくりでもいいので言葉にしておくことが大切です。
NG② すべて決めてくれると思っている
コンサルに対する期待値が高すぎるケースです。
確かに、コンサルには優秀な人材が多いです。しかし、すべてを代行してくれるわけではありません。
- 「コンサルが入れば全部解決する」と思っている
- 意思決定をコンサルに委ねてしまう
特に意思決定は発注者の仕事です。コンサルが提案した選択肢の中から、自社にとって最適なものを選び、決断する。この役割は発注者側にしかできません。
NG③ とりあえず丸投げしている
困りごとを伝えて「あとはよろしく」になっているケースです。
- 情報提供や社内調整に協力しない
- コンサルを「使役」する姿勢になっている
コンサルは社外の人間です。社内の情報や文脈にアクセスするには、発注者側の協力が不可欠です。
現状の課題と最終的なゴールを伝え、支援してほしいことを明確にし、意思決定はこちらで行う。この姿勢があって初めて、コンサルとの協業は機能します。
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