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第6回: データベース設計(RDB編):オンプレ継続判断とセキュリティ

Last updated at Posted at 2025-12-12

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これまで、コンピューティング基盤(GKE)、ネットワーク接続、セキュリティ(ゼロトラスト/SASE)の各レイヤーの設計を解説してきました。

最終的なハイブリッド戦略において、最も重要かつ判断が難しい リレーショナルデータベースRDB)の設計に焦点を当てます。オンプレミスDBを維持し続けることの是非を判断するための客観的な基準と、クラウドワークロードからのセキュアなDBアクセスを実現する最小権限設計を提示します。

TL;DR — RDBのオンプレ継続判断は「ライセンス」「データ主権」「接続要件(RTT/帯域)」の3基準で決定する。クラウド上のワークロードからは、長期クレデンシャル(パスワード)を使用せず、IDベースでアクセスすることを徹底する。

簡易チェック: 現在のDBのバージョン、ライセンス費用、専門家の確保が、クラウド移行のメリットを上回るか?


RDBのオンプレミス継続判断とマネージドサービス選定基準

この節を読めば:オンプレDBを維持すべきか、Google Cloud のマネージドDBへ移行すべきかの客観的な判断軸を確立できます。

ハイブリッドクラウド環境において、RDBの配置を決定する際、単純な技術的適合性だけでなく、ビジネス的・法的側面での判断が必要です。

  1. オンプレミス継続判断の3基準

    オンプレミスDBを維持し続けるかを判断する主要な軸は以下の3つです。

    • データ主権とコンプライアンス: 医療や金融など、特定の法規制によりデータが特定の地理的場所(例:国内データセンター)から出られない場合。
    • レガシー依存とライセンス: 旧バージョンのDBでしか動かないアプリケーション依存性がある場合、または既存のエンタープライズライセンス(Oracle, SQL Serverなど)の初期投資を最大限に活用したい場合。
    • 極めて低いレイテンシ要件: オンプレミスで稼働するレガシーアプリケーションが、同一ネットワーク内のDBに対し1ミリ秒未満のRTTを要求する場合。クラウド接続では実現が困難。
  2. マネージドRDB(Cloud SQL, AlloyDB)の選定基準

    • 上記の継続基準に該当しない場合、運用負荷の低いマネージドDBへの移行が推奨されます。
    • Cloud SQL: MySQL, PostgreSQL, SQL Server などのオープンソースおよび商用DBに対応したフルマネージドサービス。最も一般的に使用されます。
    • AlloyDB for PostgreSQL: PostgreSQLとの互換性を保ちつつ、高いトランザクション性能と可用性を要求する基幹システム向け。

IaC実践: Cloud SQL for PostgreSQLの最小定義

オンプレミスのレガシーDBからの移行先として一般的なCloud SQLのTerraform定義です。

resource "google_sql_database_instance" "postgres_instance" {
  database_version = "POSTGRES_14"
  name             = "hybrid-app-db"
  region           = "asia-northeast1"
  project          = var.project_id

  settings {
    tier = "db-f1-micro"
    # VPCネットワーク内の限定された接続を許可(セキュリティ強化)
    ip_configuration {
      ipv4_enabled    = false
      private_network = google_compute_network.hybrid_vpc.id
    }
  }
}

ゼロトラストに基づくDBアクセス最小権限設計

この節を読めば:パスワードなどの長期クレデンシャルに依存しない、セキュアなDBアクセス方法を実装できます。

オンプレミスDBへのアクセスは、ハイブリッド環境におけるセキュリティの最弱点となりがちです。GKE PodやCloud Runサービスが、DBのユーザー名とパスワード(長期クレデンシャル)を環境変数やSecretとして持つ方法は推奨されません。

1. IDベース認証の適用(最も安全)

Workload IdentityとIAMを組み合わせ、DBアクセスに必要な最小限の権限を持つサービスアカウントをPodに付与します。

  • Google Cloud SQLへのアクセス: Cloud SQL Auth Proxy / Cloud SQL Auth Socket を利用し、IAMユーザーまたはサービスアカウントとして認証することで、パスワードなしでDBへ接続できます。
  • オンプレミスDBへのアクセス: DB側がKerberosやLDAPなどのIDプロバイダと連携し、クラウドサービスアカウントと連携させる仕組み(IDフェデレーション)を構築する必要があります。

2. 権限とネットワークの最小化

オンプレミスDBへのアクセス権を付与する際は、以下の原則を徹底します。

  • DBユーザー権限: アプリケーションが実行に必要な SELECT/INSERT/UPDATE のみを与え、DB管理権限(DDL、DBユーザー作成など)は分離します。
  • VPCファイアウォール/DB Firewall: 接続元のVPC ConnectorのIPアドレス、またはGKE Podが属する特定のCIDRレンジのみを許可します。
  • データ暗号化: Cloud VPN または Interconnect 経由のトラフィックは暗号化されていますが、DB接続自体もSSL/TLSを強制します。

IaC実践: 最小権限のデータベースユーザー定義(概念)

これは、オンプレミスDB側でDBAが設定すべき最小権限制限の概念です。

-- GKE Pod のサービスアカウントから接続される DB ユーザーの作成例
CREATE USER 'gke_app_writer'@'10.x.x.x' IDENTIFIED BY 'IAM_AUTH_PROXY';
-- 実行に必要な権限のみを付与(最小権限)
GRANT SELECT, INSERT, UPDATE ON app_database.* TO 'gke_app_writer'@'10.x.x.x';
-- DBAの管理用アカウントとは権限を完全に分離する

最終チェックとオブザーバビリティの重要性

この節を読めば:シリーズ全体を通して設計したアーキテクチャの健全性を評価できます。

本シリーズで設計したハイブリッドクラウドアーキテクチャの健全性は、**オブザーバビリティ(可観測性)**によって担保されます。特に、オンプレミスとクラウドをまたぐデータアクセスにおいて、以下の3要素を統合して監視することが、性能問題やセキュリティインシデントの迅速な解決に不可欠です。

  • ログ(Logging): GKE Podのアプリログ、VPC Connectorのフローログ、DBのSlow Queryログなど、分散したログを一元的に集約(例: Cloud Logging)。
  • メトリクス(Metrics): RTT(第3回)、DB接続数(第3回)、IOPS(第4回)、CPU/メモリ使用率を定量的に監視(例: Cloud Monitoring)。
  • トレース(Tracing): アプリケーションのユーザーリクエストがGKE、VPC Connector、オンプレDBを横断する際の処理時間を可視化(例: Cloud Trace)。

最終的に、この統合された監視基盤によって、設計どおりのSLA(サービス品質保証)が達成されているかを継続的に検証します。


まとめ:ハイブリッドクラウド設計の総括images-025.png

全8回のうち、第6回までで設計の主要な要素が完了しました。

  1. コンピューティング基盤
  2. ネットワーク接続
  3. データ永続化
  4. セキュリティ
  5. データベース

この設計パターンは、レガシーを抱えつつクラウドネイティブを目指すエンタープライズ企業にとって、安全かつ効率的なハイブリッドジャーニーの確かな設計指針となるでしょう。

ハイブリッドクラウド × ゼロトラスト × IaC の実践アーキテクチャ設計

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