はじめに
「AIを使った攻撃に、AIで対抗する」
2026年5月28日(RSAC 2026)、Google は Google AI Threat Defense を発表しました。
Gemini、Wiz、Mandiant、CodeMender、Google Security Operations を統合した、AI セキュリティの包括的なプラットフォームです。
この記事では、Google AI Threat Defense が何を解決するのか、どんなコンポーネントで構成されるのか、エージェント向けの新しいセキュリティ機能は何かを整理します。
注記:この記事は Google Cloud 公式ブログ、RSAC 2026 発表資料、Google Cloud Next '26 発表資料に基づいています。2026年6月時点の情報です。GA / Preview の区別は各機能に明記しています。
Google AI Threat Defenseの必要性
AI を使った攻撃は、脅威のスピードが以前とは大きく変わっています。
Google の脅威インテリジェンス(Mandiant)によると、脆弱性の発見から悪用までにかかる時間は、かつては数週間かかっていたものが、いまは数時間から数日に短縮されています。
これは攻撃者も AI を使っているからです。
人間がアラートを見てトリアージして対応する従来の SOC ワークフローでは、このスピードに追いつけません。
Google AI Threat Defense は、この問題に対して「AI で AI に対抗する」アプローチを取ります。
Google AI Threat Defenseの5つのコンポーネント
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Gemini | 高度な推論・コード生成。脅威分析とコード修復の中核エンジン |
| Wiz | クラウド環境全体のリスク可視化・優先順位付け・ペネトレーションテスト |
| Mandiant | Google傘下の脅威インテリジェンス専門組織。最前線の攻撃者情報を提供 |
| CodeMender | AIエージェントによる脆弱なコードの自動修復 |
| Google Security Operations | SOC機能の中核。ネットワーク・アイデンティティ・アプリのテレメトリを一元管理 |
これらは単体の製品ではなく、エンドツーエンドのセキュリティワークフローとして統合されています。
4つのフェーズで構成されるフレームワーク
Google AI Threat Defense は「準備 → スキャン → 修復 → 監視」の4フェーズで機能します。
フェーズ1:準備(Prepare)
Wiz が環境全体を継続的にスキャンして基盤を強化します。
スキャン対象は広範囲です。
- コードリポジトリ
- CI/CDパイプライン
- AIプラットフォームとモデル
- ハイブリッドクラウド環境全体
フェーズ2:スキャンと優先順位付け(Scan and Prioritize)
AI 主導の敵対的テスト(アドバーサリアルテスト)で、本当に悪用可能な脆弱性だけを優先します。
マルチ AI 戦略を採用しています。
- 軽量・高速モデル → 広範囲の継続的カバレッジ用
- フロンティアモデル → 最高リスク資産向けの深い分析
単純なアラートリストではなく、実際に悪用されうるリスクに絞った優先順位付けが特徴です。
フェーズ3:修復(Remediate)
CodeMender が IDE や CLI で直接、修復コードを提案・生成します。
- 脆弱なコードの置き換え案を自動生成
- レガシーコードを最新のメモリセーフ言語(Rustなど)へ書き換え
- 本番環境適用前の自動テスト生成
- ソース管理・本番環境でのパッチ追跡
人間が最終承認するまで、AI が修復案を準備しておくという流れです。
フェーズ4:監視(Monitor)
Google Security Operations がマシンスピードで継続的に監視します。
- ネットワーク、アイデンティティ、アプリケーションのテレメトリを統合監視
- Mandiantの脅威インテリジェンスに基づく異常検知
- 自動トリアージと対応
Google Security Operationsの自動化エージェント
Google Security Operations(SOC 機能)にも複数の AI エージェントが追加されました。
| エージェント名 | 機能 | ステータス |
|---|---|---|
| Triage and Investigation Agent | アラートの自動調査・証拠収集・判定。30分の手動分析を60秒に短縮。年間500万件以上を処理 | 稼働中 |
| Threat Hunting Agent | 新規攻撃パターン・潜伏型の脅威を能動的に検出 | Preview |
| Detection Engineering Agent | 検出ギャップを特定し、新しい検出ルールを自動生成 | Preview |
| Third-Party Context Agent | サードパーティの情報でワークフローを補完 | 近日Preview予定 |
特に Triage and Investigation Agent の実績は目立っていて、30分かかっていた手動分析が60秒に短縮されています。
従来のセキュリティソリューションとの違い
| 比較項目 | Google AI Threat Defense | 従来のセキュリティツール |
|---|---|---|
| 脅威対応 | 修復コードの自動生成まで | アラートの生成のみ |
| 優先順位付け | 実際に悪用可能なリスクに絞る | 大量のアラートリスト |
| 対応速度 | マシンスピード(秒〜分) | 人間によるトリアージ(時間〜日) |
| リスク評価 | ライブアーキテクチャ・ランタイムコンテキストを使用 | 静的スキャンのみ |
| AIエージェント保護 | Model Armor・Agent Gatewayで専用対応 | エージェント向け機能なし |
まとめ
Google AI Threat Defense は、個別製品の集合体ではなく、準備 → スキャン → 修復 → 監視の4フェーズを一気通貫でカバーするプラットフォームです。
エンジニアが特に注目すべきポイント
- CodeMenderによる自動修復:アラートを受け取るだけでなく、修復コードの案まで自動生成される
- SOCの自動化:Triage Agentが年間500万件以上のアラートを処理し、人間は高優先度の脅威に集中できる
AI が攻撃に使われる時代に、AI で防御する。
Google AI Threat Defense は、その一つの答えです。

