1. はじめに
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で Oracle Linux を選ぶと、OS 本体だけでなくサポートや運用自動化の機能を追加費用なしで利用できます。本記事では、その Oracle Linux のメリットを観点ごとに整理します。
- 本記事の内容は 2026/06/19 時点のものです。OCI のイメージ・既定カーネル・無料の条件などは今後変わる可能性があります。採用判断の前に各公式ドキュメントで最新の状態をご確認ください
- 本記事は有償の OCI サブスクリプションを前提としています。ここで挙げるメリットには、Always Free Tier では適用されないもの(フリート管理の OS Management Hub など)もあります
結論(先出し)
- OCI の有償サブスクリプションでは、Oracle Linux の Premier Support 相当が追加費用なしで利用できる。OS サポートの別契約やサブスクリプションの持ち込み(BYOS)が不要
- Ksplice(無停止ライブパッチ)・Autonomous Linux(自己パッチ)・OS Management Hub(フリート管理) が追加費用なしで使える(OCI ならでは)
- OCI の 既定 Oracle Linux 9 イメージは最新の UEK 8(Linux 6.12)でそのまま起動する(実機で確認)
- Oracle Linux 自体の強みとして、UEK と RHEL 互換カーネルを選べ、DTrace も使え、RHEL と 100% アプリ互換(オンプレ・他クラウドでも共通)
- RHEL や他の Linux との位置づけは、参考情報として 5 章にまとめた
2. OCI 上での Oracle Linux のメリット
OCI の有償サブスクリプションで Oracle Linux を動かすと、OS 本体・サポート・運用自動化がまとめて使えます。
2.1. OS サポートが OCI サブスクに同梱
Oracle Linux の Premier Support 相当が追加費用なしで提供されます1。OS のサポートを別途契約したり、サブスクリプションを持ち込んだり(BYOS)する必要がありません。OS サポート費もコミコミでよいのは、運用と調達の両面で利点です。
2.2. Ksplice:無停止ライブパッチが追加費用なし
Ksplice は 再起動なしでカーネルや一部のユーザー空間のライブラリ(glibc・openssl)にセキュリティパッチを当てる Oracle Linux の機能で、OCI 上の Oracle Linux では追加費用なしで利用できます。
気になるのは「そのライブラリを使用中のプロセスはどうなるのか」ですが、Ksplice の userspace パッチは使用中プロセスのメモリ(in-memory)に直接修正を当てるため、プロセスを再起動せずに反映されます2。あわせてオンディスクのパッケージも更新されるので、以降に起動するプロセスも最新の状態で保護されます。なお、この仕組みを使うには、対象ライブラリを Ksplice 対応版へ切り替えておくのが前提です3。
実機(OCI ap-tokyo-1、Oracle-Linux-9.7-2026.06.15-0、VM.Standard.E2.1.Micro)では、ksplice-tools がプリインストールされ、dnf repolist に Ksplice 用リポジトリ ol9_ksplice が有効でした。sudo ksplice -y all upgrade を実行すると、glibc と openssl が ksplice1(Ksplice 対応)版へ更新され、この間 uptime は「up 13 min」のままでシステムの再起動は発生しませんでした。
Upgraded:
glibc-2:2.34-231.0.1.ksplice1.el9_7.10.x86_64
openssl-2:3.5.1-7.0.1.ksplice1.el9_7.x86_64
...(中略)...
今回確認したのは「Ksplice 対応版への更新が無停止で完了したこと」までで、特定の稼働中プロセスのメモリに当たったかどうかまでは追っていません(in-memory への適用は上記の公式の説明によります)。ライブラリのセキュリティ更新まで再起動なしで反映できるのは、可用性が求められる環境での利点です。
2.3. Autonomous Linux:自己パッチ
Autonomous Linux は、Ksplice を内蔵して 日次で自動的にパッチ適用・自己修復を行う Oracle Linux のバリエーションです。最新は Autonomous Linux 10(Oracle Linux 10 ベース) で、OCI のイメージとして提供されています(9 系・8 系も併存)4。
カーネル・glibc・openssl まで含めて無停止で当て続けられるため、パッチ運用の手間を下げたい場合の選択肢になります。
2.4. OS Management Hub:フリート管理
OS Management Hub は、オンプレ・OCI・他社クラウドにまたがる Linux 群のパッチや構成を一元管理する OCI のマネージドサービスです。
OCI のインスタンスでは追加費用なしで使え、対応 OS は Oracle Linux 7 / 8 / 9 / 10 です1。多数の Oracle Linux を運用する場合、フリート管理が追加費用なしで使えるのは運用上の利点です。
2.5. 既定イメージが最新(UEK 8 が既定・OCI ローカルリポジトリ)
OCI の Oracle Linux 9 既定イメージは、追加設定なしで最新の UEK 8(Linux 6.12 ベース) で起動します。2025年6月24日以降、UEK 8 が Oracle Linux 9 のプラットフォームイメージ(OCI の既定イメージを含む)の既定カーネルになっています5。
実機の OCI 既定イメージ(Oracle Linux 9.7)でカーネルを確認すると、追加設定なしで UEK 8 が動いていました。
$ uname -r
6.12.0-203.76.7.1.el9uek.x86_64
$ cat /etc/oracle-release
Oracle Linux Server release 9.7
el9uek がカーネル名に入っており、Linux 6.12 系(UEK 8)であることが分かります。また dnf repolist は OCI ローカルの Oracle Linux リポジトリ(ol9_UEKR8 / ol9_ksplice / ol9_oci_included / ol9_baseos_latest 等)を指しており、更新の取得に追加のサブスク登録は不要でした。
3. Oracle Linux 自体のメリット(オンプレ・他クラウドでも共通)
ここからは OCI に限らず、Oracle Linux というディストリビューション自体の強みです。
- カーネルを選べる:Oracle 独自の UEK(最新は UEK 8 / Linux 6.12 LTS ベース、Oracle Linux 9.5 以降・Oracle Linux 10 で利用可)と、RHEL 互換カーネル(RHCK)を起動時に選べます6
- DTrace 2.0:本番環境でも使える動的トレースツールで、カーネルからアプリケーションまでの挙動を細かく調べられます7
- RHEL 互換:Oracle は、Oracle Linux が RHEL と 100% アプリケーションバイナリ互換で、RHEL 向けに認証されたアプリケーションを改変なしで動かせると説明しています7。CentOS / RHEL からの移行スクリプトも提供されています
4. 留意点
メリットを中心に見てきましたが、あわせて知っておきたい点もあります。
- サードパーティ認証・パートナーの広さ:RHEL は業界標準としての実績が厚く、認証ベンダーも多いです。特定の商用ソフトが「RHEL でのみ認証」という形の場合は、Oracle Linux での対応状況を確認しておくとよいです8
- OCI / Oracle 前提の付加価値:Ksplice・Autonomous Linux・OS Management Hub は OCI / Oracle を前提とした機能です。他のクラウド/オンプレ環境ではこれらのメリットは享受できません
Ksplice について本記事では userspace(glibc / openssl)の無停止更新までを実機で確認しました。カーネル側 Ksplice はサーバ接続・登録など追加の手順が必要なため、本記事では扱っていません。
5. 参考:RHEL・他の Linux との位置づけ
OS 選定の参考として、RHEL や RHEL 互換リビルドとの位置づけを簡単に整理します。乗り換えを勧めるものではなく、Oracle Linux の立ち位置を示すための参考情報です。
| 観点 | Oracle Linux on OCI | RHEL on OCI | RHEL 互換リビルド(Rocky / Alma) |
|---|---|---|---|
| OS ライセンス費 | 無償 | RHEL サブスクが前提 | 無償 |
| サポート | 有償 OCI サブスクに Premier Support 相当が同梱 | Red Hat と別途契約(OCI では BYOS) | 無償〜任意サポート |
| Oracle 独自の付加機能(Ksplice / Autonomous Linux / OS Management Hub / UEK) | あり | Red Hat サブスク範囲の別機能 | なし |
| RHEL 互換 | あり | (本体) | あり |
- RHEL を OCI で動かす場合は、自前の Red Hat サブスクリプションの持ち込み(BYOS) になります(2026/06/19 時点、OCI 課金でのオンデマンド(PAYG)は提供されていません)9
- Ubuntu は Debian 系で、RHEL 互換の話は当てはまりません
6. まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| サポート(OCI 固有) | OS サポート(Premier Support 相当)が OCI 有償サブスクに含まれる。別契約・BYOS が不要 |
| 運用自動化(OCI 固有) | Ksplice / Autonomous Linux / OS Management Hub が追加費用なしで使える |
| 既定イメージ(OCI 固有) | OCI の既定 OL9 イメージが最新の UEK 8 で起動(実機でも確認) |
| カーネル・互換性(OL 自体) | UEK と RHCK を選べる。DTrace も利用可。Oracle は RHEL 認証アプリを改変なしで動かせると説明 |
| 留意点 | サードパーティ認証の広さは RHEL が厚い。OCI / Oracle 前提の機能である点 |
OCI で Linux を動かすなら、Oracle Linux は OS サポートが追加費用なしで付き、Ksplice や Autonomous Linux、OS Management Hub、最新の UEK 8 までを含めて「OCI に最適化された基盤 OS」として使えます。今回は実機でも、OCI 既定の Oracle Linux 9 イメージが UEK 8 で起動すること、Ksplice で glibc / openssl を再起動なしに更新できることを確認できました。
-
Oracle Cloud Infrastructure Computeインスタンス(OCIインスタンス)は、Premier Supportを無料で受け取ります ↩ ↩2
-
https://docs.oracle.com/ja-jp/iaas/oracle-linux/oci/ol-ksplice.htm ↩
-
Unbreakable Enterprise Kernel 8 (UEK 8)がOracle Linux 9プラットフォーム・イメージのデフォルト・カーネルになりました ↩
-
RHEL runs on OCI(BYOS)— Oracle Blog / FAQ: OCI and RHEL — Red Hat Blog ↩