はじめに
本稿の記述は、2025年12月6日時点の情報となります。
最新の情報については公式ドキュメントをご参照ください。
2025年における Oracle Database 界隈の大きな出来事は個人的には次の二つになります。
- Oracle AI Database 26ai のリリース
- AWS、Azure、Google Cloudすべてで マルチクラウドソリューション(※) がGA
(※)Oracle Database@ハイパースケーラー1の総称
それぞれについて、概要を述べます。
1.Oracle AI Database 26ai のリリース
2025年10月14日の Oracle AI World 2025 のラリーの基調講演で発表されました。
2023年9月に Oracle Database 23c がGAとなって2年、23c → 23ai → 26ai と名前が変わりました。「名前が変わった」というのも、26ai 自体は 23ai のリプレースとなり、もともと 23ai だったものに対してアップデート(パッチを適用)する形で変更が可能となります。
なぜなら、23aiと26aiでは内部アーキテクチャや既存のAPIの修正は行われないため、アプリケーションの再テスト等は不要、とOracleは発表しています。ただし、ミッションクリティカルなシステムにおいては、本番環境への適用前に動作確認を行うことを推奨します。(下図の通り、26ai は Oracle AI Database 26aiと Oracle と Database の間に AI が入る形となりました)23
(出典:Upgrade/Update Path)
なお、26ai のオンプレミス版のリリースは TBA(To Be Announced)となり、そもそもリリースされるかもよくわからない状態になってしまいました。
が、2025年12月3日に次の blog で、Linux x86-64版の Oracle AI Database 26ai が 「January 2026 as part of the quarterly Release Update (version 23.26.1)」でリリースされる、という発表がありました。
基本的には Oracle の Quarterly Release Update は 1月、4月、7月、10月 の 第三火曜日 にリリースされる4ため 2026年1月20日(米国時間)にリリースされると想定されます。
2.AWS、Azure、Google Cloudすべてで マルチクラウドソリューション がGA
こちらは、2025年7月に Oracle Database@AWS が GA されたことで、AWS、Azure、Google Cloudすべてのハイパースケーラーのクラウド上で Oracle Database をOCIと同等に稼働させることができるようになりました。
「OCIと同等に」というところが特徴で、それぞれのクラウドで Oracle Database を OCI と同じ価格・同じ仕様で利用できます。
ただ、各クラウドによって提供されているOracleサービスは次図のように若干の差分があります。
(出典:Oracle AI Databaseマルチクラウドソリューション:主要ハイパースケーラーにおけるイノベーションを推進)
詳細は、Oracle社が提供する「Oracle Multicloud Capabilities」にて確認することが可能です。
本日時点の日本リージョンの場合には次のような状況となっています。
Oracle@Google Cloud の大阪リージョンは2026年初にはリリースされる予定、というような発表が Google Cloud のイベントで先日なされていました。
注意してみて頂く点としては、対象となる Availability Zones の値になります。
物理的な AZ に紐づいて利用できるかどうか、が決まってくるので、最高のパフォーマンスを得たい場合には、物理的な AZ も確認しておく必要があります。
- AWS
-
Azure
- Tokyo
- japaneast-az2(物理ゾーン)
- japaneast-az3(物理ゾーン)
- Osaka
- japanwest-az3(物理ゾーン)
- Tokyo
バージョンとマルチクラウドモデルの選択
バージョンの選択
まず、バージョンとサポート期限については前述もしておりますが、本日時点では下図のように整理されています。
この図によると、 2025年12月6日 時点における、データベースバージョンのサポート期限は次表のようになります。
| バージョン | 19c | 21c | 26ai |
|---|---|---|---|
| Premier サポート期限 |
~2029/12/31 | ~2027/7/31 | ~2031/12/31 |
| Extended サポート期限 |
~2032/12/31 | - | TBD |
そして、バージョンとしては19cと26ai(旧23ai)の二択である、という状況は今年も変更はありません。
基本的にはシステム更改対応などで既存の Oracle Database のマイグレーションを行う場合には Oracle Database 19c を選択する形で問題ないと考えています。26aiの新機能が注目されがちですが、19cでも Exascaleが利用できるようになっていたり、AI向けのツール拡充が行われていたり、と新機能の恩恵にあずかりつつ安定したバージョンを利用することが可能となります。
一方で、AI含めた新機能を活用していきたい、という場合には Oracle AI Database 26ai を選択する形 が望ましいと言えます。特に、23ai 以降では生成AI連携を加速する「AI Vector Search」、JSON文書とリレーショナル表を双方向で矛盾なく操作できる「JSON Relational Duality」や、アプリ側の改修が不要な高性能キャッシュ「True Cache」など、AI活用と開発効率を劇的に高める機能が追加されています。
それらの機能を利用したい場合には、26ai を選択すると良いでしょう。
マルチクラウドモデルの選択
前述の通り、全てのクラウド上で Oracle Database を稼働させることができるようになっています。
日本リージョンにおけるマネージドなOracle Database環境だとそれぞれ次のような違いがあります(RDSはAWSのマネージドデータベースサービス)。
| クラウド | リージョン | AZ (アベイラビリティゾーン) |
ExaDB-D5 | ExaDB-XS6 | ADB-D7 | ADB-S8 | BaseDB9 | RDS for Oracle |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| AWS | Tokyo | 0 | 〇 | - | 〇 | - | - | ◎(19c、21cのみ) |
| AWS | Osaka | 0 | 〇 | - | 〇 | - | - | ◎(19c、21cのみ) |
| Azure | Tokyo | 2 | ◎ | 〇 | - | ◎ | ◎ | - |
| Azure | Osaka | 1 | ◎ | 〇 | - | ◎ | 〇 | - |
| Google Cloud | Tokyo | 1 | ◎ | ◎ | - | ◎ | ◎ | - |
| Google Cloud | Osaka | 0 | 〇 | 〇 | - | 〇 | 〇 | - |
凡例:◎ GA、〇 計画済み、- 未計画
AWSでは RDS for Oracle が既に利用できるため、そのサービスと競合しそうなモデル(ExaDB-XS、ADB-S、BaseDB)は現時点では未計画となっています。一方、Azure や Google Cloud ではそれぞれの環境でのマネージドな Oracle Database は今後も提供されない、とみて良いでしょう。
オンプレ版 Oracle AI Database 26ai が発表されたため、RDS for Oracle でも近いうちに 26ai がリリースされると想定されます。
どのクラウドを選択するか、というポイントにおいては、日本では近々どのクラウドでも様々な利用形態でOracle Databaseを利用できるようになる可能性が高いため、現在利用しているクラウドを利用する形で問題ないと考えています。
おまけ
Oracle Databaseの利用にはやはりライセンス費用がかかる、のですが、BaseDB/ExaDBにおいて、特定の条件の元ライセンス費用が不要な Developer Release が提供されています(コンピュートや筐体・ストレージの費用は必要となりますのでご注意ください)。
また、Oracle Databaseのバージョンを選択するときは、クライアント側のバージョンとの相互接続性にも気を付けましょう。
- Client / Server の相互接続性について
- JDBCバージョンとDatabase(Server)の相互接続性について
バージョン・ナンバリング
Oracle Database の Full Version は xx.xx.xx.xx.xx のような形で表現されます。
23ai から次のように RU(Release Update) のリリース年・月が4セグメント目、5セグメント目に入るようになりましたが、26aiでまた変更となってます。ご注意ください。
- リリース番号 23ai
(26ai に統合されたため旧マニュアルは本日時点では参照できなくなっています)
真ん中の数字が入るのは、2003年の 9.0.1.4 以降で初!だと思います。







