@__asachi__です。
普段はプロダクトマネージャーとかデザインとかをやっています。
最近、会社・事業のインフラコストをどう評価するかという話に社内でなって、実際各企業どんなもんなんだろうなと気になり、IR資料から頑張って漁ってきました。
せっかく色々と見たので、気になった事例等含めて書いていこうかなと思います。
(追記):そもそも詳細な可視化&どう最適化していくかは難しいなと思ったので、そのあたりを支援するFinOpsツールをさっと作ってみました。https://clacos.dev/
TL;DR
- 上場企業のインフラコストを調べた
- 規模・業態問わずで30社くらいのデータを発掘できた
- 集計対象のうち最も費用が高かったのはゲーム会社アカツキ
約11-12億/年
- 次点はツイキャス運営のモイ
約5.8億/年
- 次点はツイキャス運営のモイ
- 「メメントモリ」が流行ったため、BANK OF INNOVATINが直近四半期でサーバー費用が
3億円/四半期
(前年同期比1,153%)になっていた - 各種会計項目に対してサーバー費の比率が安定しているのは、GunosyとGameWith
- 売上原価に占める割合が高いのは、AI Insideとギフティ
- ※売上原価に何を計上してるかは個社に依るのであくまで参考
- 各社なるべく事業と連動して費用が上昇するようには設計・運用しているとは思うが、適切な予算・割合は難しそうだ…
はじめに
データソースはこんな感じです。
決済説明会資料
有価証券報告書/届出書
決算短信
上場時の決算情報お知らせ等の適時開示
調査項目はいったん下記の通りです。
サーバー費(四半期もしくは通期)
売上、売上対比
営業費用(販管費+売上原価)、営業費用対比、売上原価対比
評価軸としては悩み中だけど、下記あたりを見れると本当は良いのではと思っています。一部は情報が開示されていないから難しい…
ソフトウェア系事業部門のみの売上対比
売上原価対比
ビジネスモデルとインフラの関連性
ビジネスKPIあたりのインフラコスト (*)
(*) FinOpsでは「ユニットエコノミクスを見ろ」と言われている
refs : https://enterprisezine.jp/article/detail/14813
本編
認知している企業さんの方がイメージも付きやすいと思うので、認知度を考慮して抜粋して書いていきます。
金額単位は百万
カオナビ
タレントマネジメントツール「カオナビ」を提供している企業。
集計期間:2022年3月期(2021/4 - 2022/3)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 26 | 2.58% | 2.66% | 8.87% |
Q2 | 25 | 2.36% | 2.52% | 8.59% |
Q3 | 30 | 2.58% | 2.92% | 10.42% |
Q4 | 29 | 2.29% | 2.19% | 8.87% |
通期 | 110 | 2.45% | 2.55% | 8.87% |
年間で約1.1億円でした。
ちなみに2023年3月期は3/4Q経過時点で約1.16億円でした。
IR情報はこちらから
AI Inside
「DX Suite」などを提供するAI×OCRで知られる企業。
集計期間:2022年3月期(2021/4 - 2022/3)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 38 | 3.83% | 5.27% | 19.19% |
Q2 | 55 | 7.74% | 8.04% | 25.58% |
Q3 | 37 | 4.76% | 5.59% | 17.29% |
Q4 | 37 | 4.46% | 5.49% | 19.07% |
通期 | 167 | 5.05% | 6.09% | 20.34% |
年間で約1.67億円でした。
Q2だけ上がっているのが気になるところですね。(有価証券報告書に書いてませんでした。)
IR情報はこちらから
rakumo
Google WorkspaceやSalesforce等のグループウェアを機能拡張するツール「rakumo」を提供。
集計期間:2022年1月期(2022/1 - 2022/12)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 12 | 4.76% | 5.91% | 12.90% |
Q2 | 14 | 5.30% | 6.64% | 14.58% |
Q3 | 17 | 5.94% | 7.52% | 16.19% |
Q4 | 18 | 5.84% | 8.00% | 16.98% |
通期 | 61 | 5.50% | 7.05% | 15.25% |
年間で約6,100万円でした。
段階的に徐々に費用が上がっていっていますね。
rakumoは決済説明会資料に
原価部門におけるSaaSサービスの変動費率(「Google向けのサーバー費用+プラットフォーム利用料(セールスフォース社)÷SaaSサービス売上高)は、2022年期末時点で10.6%となり、SaaSサービスにおいて高い限界利益率(約90%)を実現
という記載をしています。
source:rakumo 2022年12月期通期決算説明資料
IR情報はこちらから
モイ(ツイキャス)
ライブ配信サービス「ツイキャス」の運営企業。
集計期間:2023年1月期(2022/2 - 2023/1)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 131 | 8.08% | 8.22% | 16.01% |
Q2 | 135 | 8.32% | 8.63% | 16.69% |
Q3 | 178 | 10.23% | 10.11% | 20.55% |
Q4 | 137 | 8.45% | 8.65% | 16.91% |
通期 | 581 | 8.80% | 8.93% | 17.59% |
年間で約5.81億円でした。
サービス柄大きいですね…。
IR情報はこちらから
ギフティ
eギフトプラットフォーム「giftee」の運営企業。
集計期間:2022年1月期(2022/1 - 2022/12)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 35 | 3.23% | 3.72% | 20.96% |
Q2 | 41 | 3.41% | 3.80% | 20.92% |
Q3 | 44 | 4.01% | 4.34% | 25.58% |
Q4 | 52 | 3.89% | 3.90% | 23.53% |
通期 | 172 | 3.64% | 3.94% | 22.75% |
年間で約1.72億円でした。
徐々に増加傾向。
IR情報はこちらから
Retty
グルメ情報サービス「Retty」の運営企業。
集計期間:2022年9月期(2021/10 - 2022/9)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 35 | 8.18% | 5.91% | 18.52% |
Q2 | 31 | 7.49% | 5.39% | 15.82% |
Q3 | 36 | 8.26% | 5.63% | 17.91% |
Q4 | 36 | 8.26% | 5.45% | 16.07% |
通期 | 138 | 8.05% | 5.59% | 17.04% |
年間で約1.38億円でした。
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Gunosy
キュレーションサービス「Gunory」等の運営企業。
集計期間:2022年5月期(2021/6 - 2022/5)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 109 | 4.79% | 5.11% | 8.54% |
Q2 | 118 | 5.61% | 5.66% | 9.99% |
Q3 | 114 | 5.15% | 5.21% | 9.23% |
Q4 | 114 | 4.75% | 5.24% | 8.67% |
通期 | 455 | 5.06% | 5.30% | 9.09% |
年間で約4.55億円でした。
大量トラフィック・情報ソースだし、アドネットワークもやっているので割と良い金額ですね。
ちなみに結構前の資料から、サーバー費用を開示しています。
調査の中で各種比率がブレが少ない企業でした。
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GameWith
ゲーム攻略情報サイト「Gamewith」等の運営企業。
集計期間:2022年5月期(2021/6 - 2022/5)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 24 | 3.37% | 3.54% | 6.19% |
Q2 | 25 | 3.35% | 3.65% | 6.22% |
Q3 | 25 | 3.04% | 3.36% | 5.75% |
Q4 | 25 | 3.37% | 3.07% | 5.59% |
通期 | 99 | 3.37% | 3.39% | 5.92% |
年間で約1億円でした。
かなり安定していますね。
こちらもGunosy同様、各種比率のブレが少ない企業でした。
ちなみに2023年4月期は2/4Q経過時点で約5,700万円で、売上成長に伴い微増しています。
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アカツキ
スマホゲームの開発やコミック事業等を行うエンタメ企業。
集計期間1:2020年3月期(2019/4 - 2020/3)
集計期間2:2021年3月期(2020/4 - 2021/3)
集計期間3:2022年3月期(2021/4 - 2022/3)
※通期の有価証券報告書でのみ開示されていたため年間での費用
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
2019/4-2020/3 | 1,141 | 3.88% | 5.43% | 10.91% |
2020/4-2021/3 | 1,228 | 4.03% | 6.20% | 10.10% |
2021/4-2022/3 | 1,193 | 4.63% | 6.35% | 11.12% |
年間で約12億円くらいでした。
規模がデケェ…
比較的安定していますね。
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BANK OF INNOVATION
「恋庭」「メメントモリ」等のスマホゲームの開発を行うゲーム会社。
集計期間:2022年9月期(2021/10 - 2022/9)
期間 | サーバー費用 | 対売上比率 | 対営業費用比率 | 対売上原価比率 |
---|---|---|---|---|
Q1 | 26 | 5.52% | 3.55% | 4.68% |
Q2 | 28 | 4.15% | 3.47% | 4.84% |
Q3 | 35 | 5.86% | 4.00% | 5.96% |
Q4 | 52 | 7.58% | 5.10% | 7.89% |
通期 | 141 | 4.03% | 4.11% | 5.92% |
年間で約1.41億円でした。
おそらく恋庭の成長・メメントモリの開発に伴い、サーバー費用が増加していそうです。
source:BANK OF INNOVATION 2023年9月期
メメントモリが爆当たりしており(売上で前年同期比17倍w)、2023年9月期の1/4四半経過時点で約3億円になっています。ブリッツスケール🚀
売上成長率が凄まじいからか対売上比率で見ると 3.59%
で減少傾向にあるのですが、対売上原価については 9.13%
まで上昇しています。
IR情報はこちらから
さいごに
みなさんの企業では、予算策定・管理時のロジックや妥当性をどうしていますか?
ぜひそのあたりコメント/議論/ヒアリングさせてください!
Spreadsheetにまとめた&今回やりきれなかった情報部類や項目での分析・評価もやっていきたいので、需要があれば下記から権限申請リクエストしてください!