はじめに
直流回路では、ケーブルの抵抗が大きく、伝送距離が長い程、電力損失が大きくなり、受電端に送れる電力が小さくなる。
そこで、今回はケーブルを2つの抵抗で構成される4端子回路を無数に直列に接続したモデルとして考え、数値計算を行う。
4端子回路数は、当然伝送距離に比例する。なので、伝送距離と受電側の電圧、電流、電力が送電端と比較してどのように変化するのかを調査する。
また、受電端の抵抗負荷も含め、送電端から見た合成抵抗と伝送距離の関係性についても調査した。
回路モデル
以下のような直流回路(ケーブル伝送回路)を考える。
本回路は4端子回路の集合体として構成され、抵抗R1を送電端側に直列接続するとともに、R2に対して受電端側を並列に接続する構成を採る。
電源には直流電源を用い、当該4端子回路を複数段にわたり縦続接続した上で、その終端に抵抗負荷R_Lを接続するものとする。
4端子回路1素子分の電圧と電流の関係式は以下のようになる。
\begin{pmatrix}
E_1\\
I_1\\
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 & -R_1 \\
-\frac{1}{R_2} & \frac{R_1+R_2}{R_2}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
E_2\\
I_2\\
\end{pmatrix}
ただし、$E_1,I_1$が送電側で$E_2,I_2$が受電側である。
ここで、n素子の4端子回路が接続されていると考え、受電端電圧$E_r=E_2=1$と固定する。
このとき、
\begin{pmatrix}
E_s\\
I_s\\
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
1 & -R_1 \\
-\frac{1}{R_2} & \frac{R_1+R_2}{R_2}
\end{pmatrix}^n
\begin{pmatrix}
E_r\\
I_r\\
\end{pmatrix}
となる。これを理論解析で考えると固有値を算出し少し計算が面倒になる(以下の記事を参照)。
そこで、計算機を用いた数値計算を用いる。
数値計算で行いたい内容は、受電端電圧と電流を固定したとき、送電端電圧と電流はどれ程大きくする必要性があるのかということである。したがって、以下のようなプログラムを作成した。
プログラム
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import math
#4端子回路1つの定数
##R1とR2を送電端側に直列に接続し、R2に平行に受電端側を接続する。
R1=0.5
R2=1000
A=np.array([[1,R1],[1/R2,(R1+R2)/R2]])
#4端子回路の回路数
n=100
# 受電端をRLで終端する。
RL=10
#受電端電圧および電流
E2=1
I2=E2/RL
x=np.array([E2,I2]).T
#空配列の作成
E_ary=np.zeros(n)
I_ary=np.zeros(n)
P_ary=np.zeros(n)
R_ary=np.zeros(n)
ii_ary=np.zeros(n)
for i in range(n):
E_ary[i]=x[0]
I_ary[i]=x[1]
P_ary[i]=x[0]*x[1]
R_ary[i]=x[0]/x[1]
ii_ary[i]=n-i
x=A@x
plt.xlabel("送電距離(4端子回路数)")
plt.ylabel("電力,電圧,電流")
plt.plot(ii_ary,E_ary,label="電圧")
plt.plot(ii_ary,I_ary,label="電流")
plt.plot(ii_ary,P_ary,label="電力")
plt.legend()
plt.savefig("4端子定数の接続_電力と電圧と電流.png")
plt.show()
plt.xlabel("送電距離(4端子回路数)")
plt.ylabel("合成抵抗")
plt.plot(ii_ary,R_ary,label="抵抗")
plt.legend()
plt.savefig("4端子定数の接続_合成抵抗.png")
plt.show()
結果
結果として、以下のような2つのグラフを得る。
電流・電圧・電力
このように、$n$が大きくなる程、必要な送電電力や電圧、電流値までもが指数関数的に大きくなる。
これは、$R_1$だけでなく、$R_2$も送電電力を奪っているためである。
合成抵抗
合成抵抗については、$n$を大きくすると初めは急激に上昇するが、ある程度までいくと頭打ちになる。
これは、以下の記事のように、$n$が極端に大きくなっても$R_2$が緩衝材として効いていて、合成抵抗の上昇を抑制しているためと考えられる。
まとめ
電気信号や電力の伝送では、線路の抵抗値が少ない程有利になる。
理由は、伝送距離に応じて指数関数的に送電可能な電力は低下していき、抵抗値が大きいほど伝送線路が電力を消費してしまうからである。
そこで、今回はそのことを視覚的に確認するべく、数値計算を行った。
この考え方は、分布定数回路にもつながる重要な考え方である。


