はじめに
特別高圧の送電線の電圧を『直接』計測することは不可能に近い。理由としては、高電圧より高い絶縁性能を有していなければならない。そこで、コンデンサを用いて系統電圧を分流させることで電圧を低下させるという方法が考えられる。この方法で系統電圧を測定可能電圧にする機器をコンデンサ形計器用変圧器(以下、CVT)という。今回は、CVTを系統に接続した瞬間に生じるコンデンサ電圧の過渡応答についてPythonを用いてシミュレーションを行う。
問題設定とモデル
電験一種H30の電力管理の問3をモデルとする。詳しい問題設定は電験王様を参考にした。
まず、CVTの回路設定は以下のとおりである。(画像は電験王様のサイトより引用した)
このように、まずは$C_1,C_2$で交流校電圧を分圧する。その後変圧器をとおして降圧させる。
ここで、$C_1,C_2$や系統をひとまとまりの巨大な電圧源$E$とするとテブナンの定理を用いることができる。したがって、以下のような回路に単純化することができる。(画像は電験王様のサイトより引用した)
さらに、トランスの励磁インダクタンスを$L_m$とし、$z$を開放として考え単純化すると以下のような回路図になる。(画像は電験王様のサイトより引用した)
したがってコンデンサ電圧$v_c(t)$に関する微分方程式は
v_c(t)+(L+L_m)\frac{di_c}{dt}=e(t)
ただし
e(t)=\frac{C_1}{C_1+C_2}V sin \omega t
であるものとする。
そこで、コンデンサ全体に蓄積される電荷である$q_{CVT}$は以下のように表すことができる。
q_{CVT}=(C_1+C_2)v_c(t)
まとめると、
(L+L_m)(C_1+C_2)\frac{d^2 v_c}{dt^2}+v_c=\frac{C_1}{C_1+C_2}
V sin\omega t
ゆえに、
\frac{d^2 v_c(t)}{dt^2}=\frac{1}{(L+L_m)(C_1+C_2)}(\frac{C_1}{C_1+C_2}
V sin\omega t -v_c(t))
ただし、初期条件は以下のとおりである。
i_c(t=0)=0,v_c(t=0)=0
アルゴリズム
アルゴリズムは微分方程式を離散化する差分法を用いる。詳しい説明等は以下の記事を参照されたい。
プログラム
以下のようなプログラムを作成した。
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
import math
# 初期条件
## 電圧
v_c = 0
## 電流
i_c = 0
## 初期時刻
t=0
delta_t=0.00001
#記録用配列
Time=[]
V_c=[]
# 電源の定数
V=1.0
f=50
# パラメータ
C_1=50*10**-6
C_2=50*10**-6
L=1.0*10**-6
## L_mについて
Lm=1000
L_m=Lm*10**-6
while(t<0.02):
v=V*np.sin(2*np.pi*f*t)
E=(C_1/(C_1+C_2))*v
dd_v_c= (E-v_c)/((L+L_m)*(C_1+C_2))
i_c= i_c + dd_v_c*delta_t
v_c= v_c + i_c*delta_t
Time.append(t)
V_c.append(v_c)
t= t + delta_t
plt.xlabel("応答時間[s]")
plt.ylabel("電圧[V]")
plt.plot(Time,V_c)
#グラフを保存する
plt.savefig("CVTに生じる電圧の過渡応答解析_"+str(Lm)+".png")
#グラフの表示
plt.show()
結果
以下のような画像が出力される。
Lmが小さいとき
Lmが大きいとき
このように、CVTの投入直後において過渡的な低周波の電圧成分が存在しているということが分かる。
まとめ
今回はCVTの過渡応答について差分法を用いたシミュレーションを行うことで調査した。そのための準備としてまず、テブナンの定理を用いて電源の等価回路を単純化し、変圧器をインダクタンスとみなすことで単純なLCで表される等価回路を作成した。その等価回路を用いてシミュレーションした結果、過渡応答電圧は系統周波数よりも低い低周波成分を含んでいるということが分かった。