はじめに
OracleからAIエージェント構築プラットフォーム「Oracle AI Database Private Agent Factory」がリリースされました。
ノーコードでAIエージェントを構築できるとのことで、どんなサービスなのか、既存のOracleサービスや他のAIプラットフォームと何が違うのか、公式マニュアルを読んで調べてみました。
Agent Factoryとは
Oracle AI Database Private Agent Factory は、2026年リリースの新サービスで、ノーコード/ローコードでAIエージェントを設計・構築・運用できるエンタープライズ向けプラットフォームです。
現行バージョンはRelease 25.3で、Oracle AI Database 26ai が前提条件となっています。
主な特徴
-
ドラッグ&ドロップで構築可能
- エンジニアリングスキル不要で直感的に設計可能
- Knowledge Search、Data Analysisなどのテンプレート提供
-
マルチクラウド・オンプレミス対応
- OCI限定ではなく、オンプレミスやマルチクラウド環境でも利用可能
- ExaDB-DやBase DBを使っている環境にも対応
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Oracle Databaseとの深い連携
- AI Vector Search等の最新DB機能をワークフローで活用可能
- Select AI等の機能との統合
-
セキュリティとガバナンス
- SSO対応(IDCS、Google、Okta、Auth0、Azure AD、Cognito)
- ロール管理、ガードレール設定、組み込み評価機能
-
多様なLLMを選択可能
- OCI GenAI、OpenAI、Ollama、vLLM等
- Grok (
xai.grok-4) も OCI GenAI 経由で利用可能
Oracle内の類似サービスとの違い
OracleにはAI関連のサービスがいくつかあるので、整理してみました。
| サービス | 特徴 | 環境 |
|---|---|---|
| OCI AI Agent Platform | 汎用的なエージェントを構築するマネージドの実行基盤 | OCI限定 |
| Oracle AI Data Platform | 分散データを一元管理し、AI/データ分析を統合した基盤 | OCI限定 |
| Oracle Fusion AI Agent Studio | Fusion アプリケーション内でのAIエージェント構築環境 | Fusion Apps内 |
| Agent Factory(新) | ノーコードでAIエージェントを構築・テスト・デプロイ | マルチクラウド&オンプレ対応 |
Agent Factoryのポジション
- マルチクラウド・オンプレ対応が他のOracleサービスとの大きな違い
- ノーコードに特化した直感的なGUI
- LangGraph/AutoGenで構築済みのエージェントをインポート可能
他のAIエージェント構築プラットフォームとの比較
OracleだけでなくAIエージェント構築プラットフォームは各社から提供されています。主要なサービスと比較してみました。
クラウドベンダー提供サービス
| 項目 | Agent Factory | AWS Bedrock Agents | Azure Foundry | Google Vertex AI |
|---|---|---|---|---|
| ノーコード | ◎ | ◎ Bedrock Flows | ◎ Logic Apps連携 | ◎ Agent Designer |
| マルチクラウド/オンプレ | ◎ | × AWS限定 | × Azure限定 | × GCP限定 |
| DB連携 | Oracle DB深度統合 | Aurora/RDS等 | Cosmos DB/SQL等 | AlloyDB/BigQuery等 |
| LLM選択肢 | OCI GenAI/OpenAI/Ollama | Claude/Llama/Titan等 | OpenAI+Claude | Gemini+OSS |
各社ともノーコード/ビジュアルビルダーを提供しており、機能面では大きな差はありません。Agent Factoryの特徴はマルチクラウド・オンプレミス対応である点です。
OSSプラットフォーム
| 項目 | Agent Factory | Dify | n8n |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | AIエージェント構築 | Agentic Workflow | ワークフロー自動化+AI |
| ライセンス | 商用(Oracle) | OSS(Apache 2.0) | フェアコード |
| セルフホスト | ◎ オンプレ対応 | ◎ OSSで自由 | ◎ OSSで自由 |
| 商用サポート | ◎ Oracle正式 | ◎ Enterprise版 | ◎ SOC2対応 |
Difyやn8nはOSSで自由度が高く、スタートアップからエンタープライズまで幅広く採用されています。Agent FactoryはOracle正式サポートとOracle Database深度統合が差別化ポイントです。
システム要件
前提条件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| データベース | Oracle AI Database 26ai(専用ユーザー推奨) |
| LLMエンドポイント | vLLM、OpenAI、Ollama、OCI GenAI のいずれか |
| Knowledge Assistant使用時 | BIGFILE テーブルスペースまたは最低100GB |
インストールモード
| 項目 | Quickstart | Production |
|---|---|---|
| セットアップ | 自動(ローカルコンテナ) | 手動(ユーザー指定エンドポイント) |
| データベース | Oracle AI Database 26ai Free | ユーザーの Oracle AI Database 26ai |
| ストレージ | ~30 GB | ~10 GB |
| RAM | ~10 GB | ~8 GB |
対応OS
- Oracle Linux 8 on AMD x86_64
- Oracle Linux 8 on ARM64
- macOS ARM64 (M.x チップセット)
- macOS Intel
--
サポートLLMモデル
生成モデル(Generative Models)
| プロバイダ | 対応モデル |
|---|---|
| OCI Generative AI |
xai.grok-4, xai.grok-4-fast-reasoning, llama3.3
|
| OpenAI |
gpt-4o, gpt-4o-mini
|
| Ollama |
llama3.2 等(ローカル実行) |
| vLLM | 任意のself-hostedモデル |
埋め込みモデル(Embedding Models)
| カテゴリ | モデル |
|---|---|
| ローカル |
multilingual-e5-base(768次元) |
| OCI Cohere |
cohere.embed-v4.0, cohere.embed-multilingual-v3.0 等 |
| Self-hosted | vLLM/Ollama経由で任意モデル |
Agent Builder コンポーネント
Agent Factoryのコア機能であるAgent Builderには、様々なノードが用意されています。
コアオーケストレーション
| ノード | 用途 |
|---|---|
| LLM | テキスト生成、要約、推論、エージェントの基盤 |
| Agent | 多段階タスク、ツール呼び出し、マネージャー/ワーカー オーケストレーション |
ツール系ノード
| ノード | 用途 |
|---|---|
| Bug Tools | バグ/課題トラッカーの統合、クエリと更新 |
| MCP Server | MCPサーバーの統合、カスタムツール公開 |
| REST API Tools | 外部API/マイクロサービス呼び出し |
データ系ノード
| ノード | 用途 |
|---|---|
| Read CSV File | CSVインポート → DataFrame出力 |
| File Upload | ファイルアップロード処理 |
| SQL Query | データベースクエリ(SELECTのみ) |
処理系ノード
| ノード | 機能 |
|---|---|
| Condition | 条件分岐(equals, contains, regex match等) |
| Type Convert | Message ↔ JSON ↔ DataFrame 変換 |
| Combine JSON Data | 複数JSONをマージ(Deep/Replaceモード) |
| Parser | JSON/DataFrame → 可読メッセージ変換 |
プリビルトエージェント
Knowledge Agent
SharePoint、Webサイト、ファイルシステムに接続し、Oracle AI Vector Searchで応答を根拠付けるエージェントです。
データ処理パイプライン:
クローリング → パージング → ストレージ → チャンキング → 埋め込み → インジェスション
主要機能:
- 文脈的検索(非構造化データ対応)
- グラウンデッド応答(ソースへのトレーサビリティ)
- メタデータ自動抽出(PDF等)
- スマート質問提案機能
Data Analysis Agent
エンタープライズデータベースと連携するAI駆動型分析エージェントです。
主要機能:
- スキーマ自動認識
- 自然言語クエリ → SQL自動生成
- LLM駆動の説明生成
- 自動ビジュアライゼーション
- Oracle Database 19c以上と直接接続
対応データソース
| タイプ | 用途 | 制限 |
|---|---|---|
| Web Source | 公開Webページのクローリング | クロール深度・頻度設定可 |
| File Source | ファイルシステムからの取り込み | .pdf/.txt/.rtfのみ、最大1GB/ファイル |
| SharePoint | SharePointドキュメントリポジトリ | Client ID/Tenant ID/Client Secret必要 |
| Database | リレーショナルDB接続 | SELECTのみ |
| REST API | 外部API連携(OpenAPI) | API Key等の認証設定 |
Template Gallery
すぐに使えるテンプレートも用意されています。
| テンプレート | 説明 |
|---|---|
| Intent Based SQL Dispatcher | 入力を分類し、SQL実行かLLM処理かを振り分ける条件付きワークフロー |
| Multi-Agent Refund Orchestrator | 顧客払い戻しリクエストを処理するマルチエージェント自律サポートシステム |
| Market Sync Agent | Alpha Vantage/CoinGecko接続のハイブリッド資産運用エージェント |
| On Demand Email Sender | 会話からメール作成・送信するエージェント |
外部フレームワークのインポート
LangGraphやAutoGenで構築済みのエージェントをインポートできます。
サポートフレームワーク:
- LangGraph
- AutoGen
インポート手順:
- LangGraph/AutoGenでフローを作成
- PyAgentSpecライブラリでJSON/YAMLに変換
- Agent Factoryの「My Custom Flows」からインポート
現在の制限:
- ツール参照のあるエージェント設定は未対応
- インポート後のフロー編集は不可
MCP Server構築
MCPサーバーを構築して、モデルが呼び出せるカスタムツールを公開できます。
from fastmcp import FastMCP
mcp = FastMCP(name="Custom_Server")
@mcp.tool
def custom_tool_name(a: str, b: int) -> dict:
return {"result": f"{a}_{b}"}
if __name__ == "__main__":
mcp.run(transport="sse", host="0.0.0.0", port=8080)
ユーザー管理とセキュリティ
SSO対応プロバイダ
- Oracle Identity Cloud Service (IDCS)
- Okta
- Auth0
- Microsoft Azure AD
- Amazon Cognito
ユーザーロール
| ロール | 権限 |
|---|---|
| Chat-Only Users | チャット機能のみ利用可能 |
| Editor Users | エディタ機能を含む拡張権限 |
| Administrators | 全システム管理権限 |
APEXとの棲み分け
Agent FactoryとAPEXは競合ではなく、補完関係にあります。
組み合わせパターン
- APEXアプリにAIチャット埋め込み - 既存APEX画面に対話型アシスタントを追加
- 役割分担 - 問い合わせ・検索→Agent Factory、データ入力・更新→APEX
- Agent FactoryからAPEX連携 - 自然言語で指示→Agent Factoryが情報収集→APEXで処理実行
想定ユースケース
Agent Factoryが活きる場面を整理してみました。
| ユースケース | 説明 |
|---|---|
| 社内ナレッジ検索 | SharePointやファイルサーバーの文書をRAGで検索 |
| カスタマーサポート | 問い合わせ対応の自動化、FAQチャットボット |
| データ分析アシスタント | 自然言語でDBクエリ、結果の可視化 |
| 既存Oracle DB資産の活用 | AI Vector Searchと組み合わせた高度な検索 |
| オンプレミス環境での運用 | クラウドに出せないデータを扱うAIエージェント |
さいごに
Agent Factoryは、ノーコードでAIエージェントを構築できるプラットフォームで、特にOracle Databaseを既に使っている環境や、マルチクラウド・オンプレミス環境での運用が求められる場面で力を発揮しそうです。
良いAgent開発ライフを!

